連帯保証人に迷惑をかけたくない

銀行などから融資を受ける際に「絶対に迷惑はかけないから」と親、兄弟姉妹あるいは友人に借入れの連帯保証人になってもらった、という話は決して珍しくありません。もちろん、頼み込んだときの気持ちに嘘偽りはなかったはずです。当初は順調だった返済がだんだん厳しくなってきて、ついには滞るようになってしまった。このような場合、連帯保証人は不利益を被るのでしょうか。

1.連帯保証人とは

そもそも保証人とは「主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」者とされています(民法446条1項)。そして、保証契約は「書面でしなければ、その効力は生じない」とされています(ただし、平成16年12月1日以降の保証契約に限る)(民法446条2項)。

すなわち、仮に保証人になることを承諾していたとしても、書面(電磁的記録を含む)を作成していなければ保証人ではないということになります(保証契約の成立要件を満たしていないため)。また、書面に自分の住所・氏名を記載したとしても、「単なる緊急連絡先としての記載」などということであれば主債務者の債務を履行する責任を引き受けているわけではありませんので、やはり保証人ではないということになります。

つまり、保証人とは「主債務者が債務を履行しないときに自らがその債務を履行することを引き受け、その旨の書面を作成した者」ということになります。

では、単なる保証人と連帯保証人との違いはどこにあるのでしょうか。債権者は、単なる保証人であっても連帯保証人であっても、主債務者が債務を履行しなければその履行を求めることができます。そのとき、単なる保証人であれば「まずは主債務者に催告をしてほしい」と反論することができ、主債務者に弁済に十分な資力があることを証明できた場合には、債権者の請求を拒むことができます(民法452、453条)。また、保証人が複数人いる場合には頭数で均等割りした金額を負担すれば足りることになります(民法466条、427条)。一方、連帯保証人はこの民法452、453条の適用がありません。また、連帯保証人が複数人いたとしても、誰かに請求があればその全額の支払いをしなければなりません。すなわち、仮に主債務に十分な資力があったとしても、他にも保証人がいたとしても、債権者から支払いを求められたら支払いを拒めないというわけです。そのため、「連帯保証人になるということは自分が借りたのと同じだと思え」とも言われることになるわけです。

2.連帯保証人への影響

連帯保証人は上で述べたように、自分が借りたのと同程度の責任を負うことになるわけですが、主債務者が順調に弁済を継続しているかぎりにおいてはこの重い責任の問題が顕在化してくることはありません。主債務者が約束どおりに完済すれば連帯保証人も重い責任から解放されることになります。

問題となるのは当然のことながら、主債務者が途中で返済が困難になってきたときです。では、主債務者の支払いが滞ると債権者から連帯保証人にどのような請求がくるのでしょうか。

①全額の支払い請求

債権者からはもちろん返済が済んでいない残額全ての請求がくることが一般的です。「残額全て」には、借入れた元本だけでなく、利息や遅延損害金も上乗せされます。この請求がきたときに「主債務者に資産があるから主債務者に請求するべきだ」「他にも連帯保証人がいるのだから全額は支払わない」などの主張ができないことは既に述べたとおりです。

②一括請求

話合いなどによって変わることはありますが、基本的には残額全てを一括で請求されることになります。「主債務者は分割で支払っていたのになぜ」という疑問があるかもしれません。

そもそも、借金を分割で支払えば足りることを「期限の利益」と言います。期限の利益はお金を借りる人の利益と推定されています(民法136条1項)。そのため、債権者は契約時にあらかじめ契約書に、「こういった事情があった場合には期限の利益を喪失する」といった文言を入れておくことが一般的です(民法上でも期限の利益が喪失するケースの規定はあります)。「返済が1回でも滞れば」と規定されていることはさすがに多くありませんが、複数回の滞りで期限の利益が喪失されると規定している契約は少なくありません。

したがって、上で述べた事情の通り、債権者が連帯保証人に対して請求してきた段階では、すでに主債務者が複数回にわたって滞納しており、期限の利益が失われた状態であるがゆえに、債権者は連帯保証人に対して分割ではなく一括請求をしてくるというわけなのです。

3.信用情報

債権者から連帯保証人に対して請求があった場合、その請求どおりに支払いができれば連帯保証人の信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に事故情報が登録されることはありません。しかし、「全額を一括で」などと請求された場合、請求どおりの支払いが困難なケースは少なくないはずです。そこで、連帯保証人自身も弁護士に依頼をすることになりますと連帯保証人の信用情報に事故情報が登録されることになります。信用情報に事故情報が登録されますと、選択する手続により期間の長短はありますが、当面の間、連帯保証人自身も借入が困難になります。

4.主債務者が任意整理を行った場合

①連帯保証人が付いている債務も整理の依頼をした場合

主債務者が任意整理を弁護士に依頼しても、弁護士が代理人を引き受けているのは主債務者のみとなります。連帯保証人の依頼を受けているわけではありませんので、連帯保証人の代理人ではありません。そのため、債権者から主債務者に対する請求は弁護士が間に入ることで止まりますが、連帯保証人に対する請求は止まらないことが十分に考えられます。

そのため、債権者からの請求どおりに返済ができるなどの特別な事情がないかぎりは、主債務者の任意整理と同時に連帯保証人も任意整理を行った方が弁護士に交渉を依頼できることから好ましいといえます。また、主債務者と合わせての包括的な和解を債権者と結ぶこともできます。

②連帯保証人が付いている債務の整理を依頼しない場合

主債務者に複数の債務があるとき、任意整理の場合、特定の債権者を除外して手続を進められることもあります。このような場合、連帯保証人がついている債務を除外し、主債務者が当該債務を約定どおりに支払い継続していけば基本的に連帯保証人に請求が来ることはありません。また、特に信用情報に事故情報が登録されるということもありません。

ただし、主債務者の債務の状況や返済能力を考慮したうえでの判断が不可欠です。

5.主債務者が破産や個人再生を行った場合

①破産

主債務者が破産手続を行って借金を免除(免責)されたとしても、免責の効果が及ぶのは主債務者に限られます。主債務者に対する免責の効果は連帯保証人には及びません。そのため、連帯保証人が特に何らの手続をとらない場合には、債権者からの支払い請求を拒むことができません。通常、主債務者に対して支払いを求められなくなった金額を一括で請求してきます。

債権者からの請求額が連帯保証人自身の返済能力を超えている場合には、連帯保証人も破産などの方針を検討した方がよいでしょう。

②個人再生

個人再生手続は裁判所を通して負債を圧縮する手続になります。主債務者は裁判所の認可を受けますと圧縮された額を返済すれば足りることになりますが、破産手続同様、この効果は連帯保証人には及びません。そのため、連帯保証人が特に何らの手続をとらない場合には、債権者からの支払い請求を拒むことができません。通常、主債務者に対して支払いを求められなくなった金額を一括で請求してきます。

主債務者の破産手続同様、債権者からの請求額が連帯保証人自身の返済能力を超えている場合には、連帯保証人も破産などの方針を検討した方がよいでしょう。