弁護士と司法書士の違い

「借金問題をどう解決しよう…」「どこに相談すればいいのかな?」とインターネットで検索していると、「弁護士」と「司法書士」という文字を多数見かけるはずです。同じく借金問題に取り組んでいる「弁護士」と「司法書士」ですが、その違いについて説明します。

1.資格の違い

弁護士資格を取得するためには、司法試験法に基づき法務省の司法試験委員会が行う司法試験に合格し、さらに最高裁判所の司法研修所に入所したうえで司法修習を修了しなければなりません(一部例外あり)。

一方、司法書士資格を取得するためには、司法書士法に基づき法務省が行っている司法書士試験に合格しなければなりません。

2.業務の範囲

弁護士は、民事・刑事を含む法律業務全般を行うことができます。取り扱う事件の金額によって制約を受けることはありません。

一方、司法書士の一般的な専門分野は登記・供託業務となります。例外的に、一定の研修・課程を修了した場合には法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」となり、140万円以下の事案の相談・交渉・和解や簡易裁判所管轄(訴額140万円以下)の訴訟代理権を有すことができます。「140万円以下の案件であれば司法書士でも取り扱える」という規定ですが、裏返せば「140万円を超える案件については認定司法書士でも取り扱えない」ということです。

では、依頼者に複数の借金がある場合、「140万円以下」をどのように判断するのでしょうか?この件に関して、平成28年6月27日の最高裁判決があります。端的にまとめると、この判決では「140万円以下と言えるか」は、個別の借金額を基準とするとしています(下記参照)。この基準からすると司法書士に複数の業者の債務整理を依頼しようとした場合、「A社とB社は140万円以下なので交渉できるが、C社は140万円を超えているので交渉できない」ということもありえることになります。

 
(最高裁判所平成28年6月28日判決抜粋)

「…認定司法書士が裁判外の和解について代理することができる範囲は、認定司法書士が業務を行う時点において、委任者や、受任者である認定司法書士との関係だけでなく、和解の交渉の相手方など第三者との関係でも、客観的かつ明確な基準によって決められるべきであり、認定司法書士が債務整理を依頼された場合においても、裁判外の和解が成立した時点で初めて判明するような、債務者が弁済計画の変更によって受ける経済的利益の額や、債権者が必ずしも容易には認識できない、債務整理の対象となる債権総額などの基準によって決められるべきではない。

以上によれば、債務整理を依頼された認定司法書士は、当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。」

3.依頼後の違い

①任意整理、過払い金返還請求

弁護士は取り扱う事件の金額による制約はありませんので、借金の金額によってご依頼をお断りしなければいけない、ということはありません。

一方、司法書士の場合、そもそも「個別の借金額が140万円を超えている」あるいは「過払い金額が140万円を超えている」ことが判明している場合には依頼を受けることができません。

依頼したときは分からなかったが、実際に調査した結果、借金・過払い金の額が140万以上だったことが判明した場合には、司法書士として取り扱える金額を超えていますので、一般的にはその時点で辞任をせざるを得なくなります。その場合、依頼者はご自身で交渉を行うのか、あるいは改めて弁護士に依頼するのかという選択を迫られることになります。

②裁判

任意整理で弁護士や司法書士に依頼をしたとしても、債権者の中には「貸金返還請求」などで裁判を起こしてくることがあります。また、過払い金返還を求める場合も業者の提示額に納得がいかない場合には裁判を起こして適切な金額回収を図ることがあります。「相手方から訴訟を提起されたので対応する」、「こちら側から訴訟を提起する」いずれのケースも債務を整理する中で起こりうる事柄です。

弁護士の場合、簡易裁判所の案件であっても最高裁判所の案件であっても訴訟の代理人となることができます。基本的に訴訟は代理人が出頭すれば足りるので、弁護士に依頼をしている場合には依頼者ご本人様が出頭する必要はありません(裁判所から指示があった場合や尋問を行う場合などは除く)。

一方、司法書士の場合、訴訟の代理人になれるのは簡易裁判所管轄案件に限られます。そのため、訴額が140万円以下の訴訟の場合には司法書士が代理人として出頭すれば足り、依頼者ご本人様が出頭する必要はありません。しかし、「訴額が140万円を超え第1審の管轄が地方裁判所の案件」や「第1審の管轄は簡易裁判所だったが判決に不満があり一方(もしくは双方)が控訴した案件」については、地方裁判所で行われますので司法書士に訴訟の代理権は認められていません。そのため、司法書士との契約を維持したまま訴訟を継続する場合には、依頼者ご本人様が裁判所に出頭して手続を進めていかなくてはなりません。

なお、司法書士事務所の中には「本人訴訟支援業務」を謳っている事務所もあります。本人訴訟支援業務とは、司法書士が訴訟代理人となれない訴訟事件について、本人で行う裁判の書類作成を本人の指示に従い作成するという業務です。合わせて、訴訟の期日に司法書士が裁判所へ「同行する」というサービスも提示している事務所もあります。裁判書類の作成から裁判所への出頭まで司法書士のサポートを受けられる点で、本人訴訟の労力を軽減できる点でメリットのあるサービスではあります。

しかし気をつけなければいけないのが、あくまでもサポートであるという点です。司法書士は「裁判所に同行してくれるだけ」なので、依頼者ご本人様が裁判所に行かなくて済むわけではないのです。また、法廷の中でのやり取りも同様です。司法書士は傍聴席で見守ってくれはするでしょうが、発言権がないので、裁判官や相手方とのやり取りは全て依頼者ご本人様で行わなければなりません。司法書士のサポートが受けられても、やはり自分自身の負担もそれなりにあるサービスだと認識した方が良いでしょう。

③破産・個人再生

破産手続も個人再生手続も裁判所で行う手続です。弁護士の場合、申立書作成から破産・個人再生の申立、申立後の裁判所や破産管財人・再生委員とのやり取りまで幅広く代理人としての業務を遂行できます。

一方、破産手続や個人再生手続に関して司法書士に代理権は認められていません。そのため、司法書士が行える業務は「書面作成代行」に限られてしまいます。したがって、破産申立や個人再生の申立は「本人申立」という形で行わなければならなくなります。ここに、注意しなければならない点があります。

たとえば、弁護士が代理人として破産手続を申立する場合には「少額管財手続」という比較的費用が安い手続を利用できます(東京地方裁判所の場合、予納金は20万円から)。しかし、本人申立の場合にはこの少額管財手続を利用できないことから通常管財手続になってしまい、予納金が50万程度となります。(※予納金:申立の際に、破産管財人の費用や通信費などとして、予め納める金員)。個人再生手続も、弁護士が代理人として申立をするする場合、裁判所が再生委員を選任せずに手続を進めることがあります(但し、東京地方裁判所は全件再生委員を選任)。再生委員が選任されますとやはり申立人に18万円程度の負担が発生します。これが本人申立となりますと、東京地方裁判所に限らず、原則全件再生委員が選任されることになります。

このように、破産手続や個人再生手続については、裁判所などと直接やり取りしなければならないという手続面の負担に加え、費用面でも大きな違いが出てくることになります。どちらに依頼されるかは、メリット・デメリットをお考えの上、検討されることをおすすめします。