特定調停 [公開日]2017年11月9日[更新日]2023年9月13日

特定調停のデメリット|特定調停があまり行われない理由とは?

特定調停」とは、特定調停法に定められた手続で、借金の返済が滞りそうな場合に、裁判所に借主と貸主との話し合いを仲介してもらい、返済条件の軽減等の合意をして経済的な立ち直りを支援する制度です。

裁判所の力を借りて債務を整理できるという点でメリットが大きいように思えますが、実際はデメリットも多く、毎年の利用者はかなり少なくなっています。
実際、弁護士が介入して債務整理を行う場合、通常は特定調停を勧めることはなく、任意整理や自己破産など他の債務整理の方法を取っています。

以下では特定調停の詳しい内容やデメリットについて解説していきます。

1.特定調停の内容

(1) 利用条件

特定調停の利用条件は、大まかにいえば「①債務があること」「②将来的に債務の支払いが困難になりそうであること」の2点です。

このような状態にあれば、裁判所に「特定調停手続により調停を行うことを求める申述」を行うことで、特定調停が開始されることになります。

申述の際には、財産の状況や債務の状況などについて記載した資料・一覧表の提出が必要となります。

(2) どこの裁判所で行われるのか

基本的に、相手方(貸主=債権者)の住所などを管轄する裁判所です。

もっとも、運用上は申立人の選択を尊重してもらえるようですので、まずは最寄りの裁判所への申立をしてよいと考えられます。

(3) 誰を相手にするのか

相手方は、債権者の全てとしなければならないわけではなく、特定の債権者を相手方とすることができます。これは任意整理と同じです。

また、複数の債権者について別々に申立てたとしても、基本的には併合して一つの手続の中で進行していきます。

2.特定調停のデメリット

特定調停は費用がかなり安く済み(一社あたり500円の手数料と予納郵券のみ)、裁判所のサポートを受けることで債権者と直接交渉をする必要もなく借金を整理できます。
一見すると簡単に借金返済の目処を立てられる便利な手続と思えますが、実はデメリットが多くあり、実務的にかなり利用しにくい手続なのです。

ここからは、特定調停のデメリットについて詳しく解説していきます。

(1) 成功率が低く、減額もあまり認められないおそれがある

実は特定調停を行って借金の減額をしようとしても、貸金業者が借金の減額に応じてくれないことが通常です。
令和3年度(2021年度)の司法統計によれば、特定調停の成功率は14.4%とされており、申し立てても約85%が失敗に終わってしまうのです。

特定調停は、あくまで裁判所という場を使った話し合いの手続ですので、強硬な債権者がいて話し合いがまとまらないような場合には、そもそも調停が成立しません。

例え交渉に応じてくれたとしても、総債務額があまり減らず、望むような支払いの内容(毎月の返済額)では合意できないおそれがあります。

このような場合には、特定調停によらず他の債務整理を選択しなければならず、結局二度手間になってしまいます。

(2) 平日の日中に裁判所へ赴く必要がある

特定調停では、双方の意見を出して借金について話し合いをしなければなりません。
特定調停は裁判所で行われる手続ですので、裁判所が業務をしている時間、つまり平日の日中に裁判所に行かなければいけないということになります。

任意整理との大きな違いはここで、任意整理でしたら依頼した弁護士が代理人となってくれるため、提出書類の作成も含めてほぼすべての手続をやってくれます。

しかし、特定調停は弁護士が代理人となることはなく、平日の昼間に本人が裁判所へ足を運ぶ必要があるのです。

(3) 必要書類が多く、申立てるまでは督促が続く

特定調停を行おうとした場合、債務の一覧や自分の資産についての資料を揃えて裁判所に提出しなければなりません。申立書もご自身で作成する必要があります。
これを自力で揃えようとすると意外と時間がかかってしまいますが、その間も督促は止みません。

特定調停では、簡易裁判所が申立書を受理すると、貸金業者は債務者への取り立てをストップしなければなりませんが、申立準備中における取り立てはストップしないのです。

一方、弁護士が介入して任意整理などの債務整理を行う場合には、正式に依頼を受けたことを証明する受任通知を債権者に送付した時点で督促が止まります。最短即日で督促・取り立てがストップすることもあるでしょう。
債権者からの督促に悩んでいるのであれば、弁護士へのご依頼をおすすめします。

(4) 約束を破るとすぐに差し押さえられるリスクがある

特定調停が成立した場合、調停調書という書類が裁判所によって作成されます。これには、一般の判決と同じ効力があります。
調停調書があると、調停で決まった内容の支払いができない場合には、債権者はすぐに強制執行ができることになります。

先述の通り、特定調停では望むような支払いの内容(毎月の返済額)では合意できないおそれがあり、無理な内容で調停調書が作成されてしまっては、これを守れずにすぐに強制執行(財産の差し押さえ)をされてしまうリスクがあります。

なお、既に給与などの差し押さえがなされている場合、特定調停が開始することで差し押さえが停止されることはあります(強制執行停止機能)。

(5) 家族に知られるリスクが残る

特定調停は裁判所を通して行う手続なので、裁判所から借主本人宛(自宅)に書類や通知が届きます
したがって、同居の家族に特定調停を申立てたことを知られてしまう危険性は充分にあります。

一方、弁護士や司法書士に依頼をするのであれば、依頼を受けた弁護士が代理人となって貸金業者とやり取りをしますので、借主本人に貸金業者からの連絡はありません。郵便物も弁護士の元に届くようになります。

なお、弁護士が借主と連絡を取る際も携帯電話に直接連絡をします。弁護士から書類を郵送する必要があっても、弁護士であることが分からないように個人名で郵便を出すといった配慮がなされているのが通常です。

3.債務整理をするなら泉総合法律事務所へのご相談を!

自分で進めようと思えば完遂できる可能性はあり、費用も安く済む特定調停ですが、実際にはかなりの時間や手間がかかり、督促が停止するまでのタイムラグも大きいです。
成功率がかなり低い、日中に裁判所に行かなければならないなどの大きなデメリットも存在するため、弁護士としてはあまり利用をおすすめできません

「特定調停をしようと考えていたが、弁護士に依頼をして債務整理手続をした方がよいの?」「自分にとって最適な借金の解決方法は何?」等でお悩みであれば、泉総合法律事務所の弁護士へご相談ください。
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