特定調停があまり行われない理由〜メリットとデメリット~
特定調停とは、特定調停法(特定債務などの調整の促進のための特定調停に関する法律)に定められた手続で、借金の返済が滞りそうな場合に、裁判所に借主と貸主との話し合いを仲介してもらい、返済条件の軽減などの合意をするなどして経済的な立ち直りを支援する手続です。
裁判所の力を借りて債務を返済していけるようにするという点でメリットがありますが、デメリットも多く、利用しにくい手続となっています。
弁護士が介入して債務整理を行う場合、通常、特定調停は使わず、任意整理や他の債務整理の方法を取っています。
そこで、なぜ弁護士は特定調停を使っていないのか、以下では特定調停の内容やデメリットについて解説していきます。
1.特定調停の内容
(1) 利用条件
特定調停の利用条件は、大まかにいえば①債務があること、②将来的に債務の支払いが困難になりそうであることの2点です。
このような状態にあれば、裁判所に「特定調停手続により調停を行うことを求める申述」を行うことで、特定調停が開始されることになります。
申述の際(やむを得ない場合には申立後、遅滞なく)には、財産の状況や債務の状況などについて記載した資料・一覧表の提出が必要となります。
(2) どこの裁判所で行われるのか
基本的に、相手方(貸主=債権者)の住所などを管轄する裁判所です。
もっとも、運用上は申立人の選択を尊重してもらえるようですので、まずは最寄りの裁判所への申立をしてよいと考えられます。
(3) 誰を相手にするのか
相手方は、債権者のすべてとしなければならないわけではなく、特定の債権者を相手方とすることができます。これは任意整理と同じです。
また、複数の債権者について別々に申立てたとしても、基本的には併合して一つの手続の中で進行していきます。
(4) 強制執行停止機能
給与などの差し押さえがなされている場合、差し押さえの執行が停止されることがあります。
(5) 取引履歴の開示
特定調停の手続の中で、債権者は取引履歴の開示をする必要があります。
2.特定調停のデメリット
一見すると借金の返済のめどを立てられる便利な手続と思える特定調停ですが、実はデメリットが多くあり、利用しにくい手続なのです。
ここからは、そのような特定調停のデメリットについて詳しく解説していきます。
(1) 平日の日中に行われ、時間もかかる
特定調停は裁判所で行われる手続ですので、裁判所が業務をしている時間、つまり平日の日中に裁判所に行かなければいけない、ということになります。
また、通常の裁判であれば、提出書類を提出すればその回の期日は終わり、という流れになりますが、特定調停の場合、双方の意見を出して話し合いをしなければなりません。
つまり、特定調停を行う場合には、平日の昼間に仕事を休んで長時間裁判所に居なければいけない、ということになります。
任意整理との大きな違いはここで、任意整理でしたら依頼した弁護士が提出書類の作成も含めてほぼすべての手続をやってくれるため、平日の昼間に時間をかけて裁判所へ足を運ぶ必要がないのです。
(2) 申立てるまでは督促が続く
特定調停を自分で行おうとした場合、債務の一覧や自分の資産についての資料を揃えて裁判所に提出しなければなりません。これを揃えようとすると意外と時間がかかってしまい、その間の督促は止みません。
一方、弁護士が介入して任意整理を行う場合には、弁護士が受任通知を債権者に送付した時点で督促が止まりますので、債権者からの督促に悩んでいるのであれば、弁護士へのご依頼をおすすめします。
(3) あまり減額が認められないおそれがある
特定調停を行って借金の減額をしようとしても、過払金が発生している場合でないかぎり、貸金業者が借金の減額に応じてくれないことが通常です。
総債務額があまり減らない結果、望むような支払いの内容(毎月の返済額)にできないおそれがあります。
(4) 他の債務整理を選択する必要がある
特定調停は、あくまで裁判所の場を使った話し合いの手続ですので、強硬な債権者がいて話し合いがまとまらないような場合には、そもそも調停が成立しません。
このような場合には、特定調停によらず、他の債務整理を選択しなければなりません。
(5) すぐに差し押さえられるリスクがある
調停が成立した場合、調停調書という書類が裁判所によって作成されます。これがあると、調停で決まった内容の支払いができない場合には、債権者はすぐに強制執行ができることになります。
債権者のこのような権利を、「債務名義」と言います。
(6) 信用情報機関への登録
特定調停を自分で行ったとしても、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録されることになります。
ブラックリストに登録されると、新しい借入ができなくなる、クレジットカードの作成ができなくなるといったデメリットがあります。
弁護士を介入させて借金問題を解決しようとしてもブラックリストに登録されることにはなりますが、ご自身で特定調停を行うよりも弁護士に依頼して手続を進めてもらう方が効果は大きいと言えます。
(7) 生活保護受給者は事実上利用できない
生活保護からの支給金を使っての返済は、法律上は禁止されていません。
ただ、調停の話し合いの場の中で、調停委員が生活保護からの支給金を使って返済することを問題視した場合には、特定調停自体を取り下げなければならない可能性があります。
これは、生活保護受給者には最低限度の生活のためのお金が支給されているわけで、その受給金から借金の返済をすることは、そもそも想定されていないためです。
3.債務整理をするなら泉総合法律事務所へのご相談を!
自分で進めようと思えばできてしまい費用も安く済む特定調停ですが、時間や手間がかかり、督促が停止するまでのタイムラグがかなりあるといったデメリットもあるため、あまりおすすめできません。
「自身での特定調停、もしくは弁護士を介した債務整理手続、どちらがよいのか?」とお悩みであれば、まずは泉総合法律事務所の弁護士へご相談ください。債務整理に精通した弁護士が、あなたにとって最善の債務整理の方法をご提案いたします。