夜逃げをしても借金は消えない?!合理的に借金をなくす方法
【この記事を読んでわかる事】
- テレビドラマでよく見かける「夜逃げ」は本当に可能?
- 借金から逃れるために夜逃げをした場合、どのような障害がある?
- 夜逃げをしなくても借金がゼロになる債務整理の「自己破産」とは?
借金の取り立てから逃れる最終手段の「夜逃げ」。夜な夜な家財道具を積んで、一家で夜逃げをするのはテレビドラマの中だけの出来事ではありません。
現実に起こり得ることです。借金取りから逃れ、新天地で心機一転出直し…といきたいところですが、現実はそう甘くないようです。
果たして、本当に夜逃げで借金から解放されるのでしょうか?
1.夜逃げで借金から逃げられるか
借金の返済で首が回らない…そんなとき、いっそ夜逃げでもしようか?という考えが脳裏を過ったことがある人もいるのではないでしょうか。
しかし、残念ながら、夜逃げで返済から解放されるケースは少ないのが現実です。一時的に債権者から逃げたとしても、その場しのぎに過ぎず、最終的に借金をチャラにすることは難しいのです。
誰にもバレることなく逃げたにも拘わらず、なぜ借金を帳消しにできないのでしょうか?
2.夜逃げで借金が消えない理由
借金には時効があり、民法では個人間の貸借は10年、キャッシングやカードローンの場合は5年と定められています。
しかし、「時効の中断」をすることで、時効のカウントを振り出しに戻すことができるのです。夜逃げをしても借金が消えないのは、債権者が時効の中断の手続きをするためです。
時効の中断は、以下の3つの手続きで行うことができます。
- 請求(催告を含む)
- 差押え・仮差押え又は仮処分
- 債務の承認
(1) 夜逃げの時効対策は「請求」
夜逃げで借金の時効を狙っている場合、債権者は「請求」を行って時効の中断をします。
請求は債権者が裁判所に返済するように訴えることで、裁判所は夜逃げをした人に対して、その旨の訴状を送ります。
債務者が裁判所からの訴状を無視した場合は、債権者の訴えが全面的に認められ、判決がでた場合は時効が10年延長されます。
それを防ぐためには、債務者は答弁書を用意する必要があるのですが、夜逃げ中に裁判所からの求めに応じると、債権者に居所がバレてしまします。
もし、完璧に行方をくらましたとしても、裁判所は所在不明者に対して、裁判所の掲示板に張りだして訴状が届いたことにする「公示送達」の手続きをとることが可能です。
その場合は、訴状が届かないまま、知らないうちに判決が出て、時効を延長することができます。
(2) 催告でも時効は中断できる
時効を中断は裁判外の手続きでも可能です。これを「催告」と言い、催告から6ヶ月以内に支払い督促をすることで時効を中断させることができます。
催告は債権者に対して内容証明郵便を送るのが一般的です。相手の所在が分からない場合は、裁判所の公示送達を利用することができます。
また、差し押さえや、債務の承認でも時効の中断は可能です。
債務の承認とは、文字通り債務を認めることです。借金を一部でも返済すると、債務の存在を認めたことになるので、夜逃げ中に一度でも返済をすると、時効は中断されます。
(3) 夜逃げの時効は実質15年?
貸金業者からの借金の時効は5年ですが、上記の通り、借金返済の時効を中断する方法はいくつもあるので、実行された場合は時効を迎えるのに実質15年、公示送達を利用した場合はそれ以上になります。
15年以上もの期間、ずっと逃げるのは至難の業です。また、逃亡期間中も金利は膨らみ続けるので、逃げきれないときには莫大な額の返済を迫られます。
また、誰にも言わないで引っ越しても、居場所が突き止められる可能性は高いです。
3.夜逃げがバレるのはなぜ
準備万端で実行したはずの夜逃げがバレてしまうのは何故でしょうか?
(1) マイナンバーで足がつく
現在は、マイナンバーで住所、氏名、生年月日、納税、年金、銀行口座などの情報が一元管理されています。
近い将来は免許、保険証、各種身分証明書など、個人に関するあらゆる情報がマイナンバーに紐づけされることになる可能性は高いので、夜逃げをしても、その後の手続きで居場所が分かってしまいます。
今後は夜逃げだけでなく、あらゆる不正行為が難しくなっていると言われています。
(2) 住民票の移動でバレる
夜逃げをした際に、一番困るのは住民票の移動ができないことです。
住民票を移動すると、居場所を追跡されるので、逃げている期間は基本的に、住民票は以前の住所のままにする人が多いのです。
しかし、住民登録ができないと、国民年金、児童手当、生活保護などを受け取ることができません。また、引っ越し先で保険証の発行をしてもらうこともできません。
また、マイナンバーに記載される住所は住民登録のある場所なので、住民票を移動させると結局マイナンバーからも住所が判明することになります。
時効の中断も含めると、借金が消えるには15年はかかります。その間ずっと住民票を移動させないのはほぼ不可能で、何らかのタイミングでバレる可能性は高いです。
(3) 家族や友人から情報が洩れる
誰にもバレないように逃げたとしても、家族や近しい友人だけには行き先を告げることはあります。
その情報が何らかの拍子に第三者に漏れる可能性もあり、そこから新たな住所が突き止められることもあります。
4.夜逃げのデメリット
夜逃げは最終的にバレる以外にも、多くのデメリットを伴います。
(1) 住民登録の問題
先述した通り、住民票を移動すると夜逃げがバレる可能性が高く、移動しないと年金、保険などの各種手続きができません。
また、子供の転校については、義務教育であれば教育委員会に事情を説明することで便宜を図ってもらえますが、住民票がないことで様々な支障をきたすことは確実です。
(2) 精神的なプレッシャー
夜逃げをしても、住所を突き止められる可能性はあります。
住所が分かれば以前の様に取り立ては行われます。また、時効の中断をされた場合は、長期間逃げ続けなくてはなりません。
その間、息を潜めて暮らし、各種手続きもできずに暮らすのは本当に大変です。その精神的なプレッシャーは甚大で、割りに合うものではありません。
(3) 住み慣れた土地、知人・友人との絶縁
夜逃げをしたら、当然以前の土地での縁は断ち切らなければなりません。以前の縁を保ったままだと、夜逃げ先が債権者に分かってしまうからです。
(4) 結局借金の踏み倒しはできない
夜逃げをしても、プロの業者は時効の中断を心得ているため、最終的に踏み倒せないケースは多いです。
(5) 費用がかかる
夜逃げは意外に費用がかかります。引っ越し代と当面の生活費だけでも最低数十万はかかります。
また、夜逃げをサポートする業者を利用する場合は、10~15万ほどかかると言われているので、元手がない場合は夜逃げもままなりません。
(6) 家族を巻き込む
夜逃げは家族を巻き込むことになります。
子供は友達に別れを告げることなく学校を転向しなければなりません。子供の人生にも大きな影を落とすことは必至です。
(7) 一生ローンが組めない
夜逃げをすると、「滞納」という借金踏み倒しの事実がブラックリストにずっと残るので、以後は一生ローンを組めなくなります。
自己破産をしても、5~10年経過するとローンが組めるようになるので、夜逃げの代償は大きいと言えます。
5.夜逃げをする人は減っている
現在は、夜逃げをする人は減っていると言われています。
(1) 貸金業法改正で違法な取り立てが減少
以前は借金の滞納者に対する取り立ては非常に厳しいものがありました。嫌がらせや恫喝まがいのことが横行し、そうした行為から逃げるために夜逃げをする人が多かったのです。
しかし、平成22年に貸金業法が改正され、取り立てについても細かくルールが定められました。
現在、違法な取り立てをした場合は、営業停止など行政処分の他、刑事罰の対象となるため、基本的に業者は法律の範囲内で取り立てを行っています。
(2) ネットの普及で債務整理が周知されている
以前は、借金が返せなくなったときに対処法が分からず、滞納を放置した挙句に夜逃げをするケースが多くみられました。
しかし、現在はネットの普及もあり、債務整理の知識が浸透し、早期に適切に対処できる人が増えています。
(3) 以前より専門家に相談しやすい
以前は弁護士に相談をするのにも大きなハードルがありました。
弁護士が身近な存在でないことに加え、金銭的な事情で依頼ができず、その結果、夜逃げを選択せざるをえない人は少なくありませんでした。
しかし、現在はネットでの宣伝もあり、弁護士へのアクセスは容易です。また費用面も、法テラスや無料相談を利用することで、元手がなくても依頼は可能です。
こうした専門家に相談しやすい環境が整っていることも、夜逃げが減っている理由としてあげられます。
6.夜逃げをするなら自己破産を
もし、どうしても借金が返せないときは、夜逃げではなく「自己破産」することをおすすめします。
自己破産をすると借金を全て免除してもらうことができます。借金が返せないときに、法律的に借金を整理することを債務整理と言い、自己破産はその一種です。
他に任意整理、個人再生といった制度もありますが、借金を全額免除してもらえるのは自己破産だけです。
自己破産のデメリットは限定的
自己破産は借金を全て免除してもらう代わりに、自宅や車など、換価して20万円以上の財産は没収されます。
しかし、一般的に、夜逃げするほど追い込まれているケースで、自宅や車意外に20万円以上相当の財産を所有している人はあまりいません。
また、住宅の没収は確かにデメリットですが、夜逃げをした場合も、その住宅には住めなくなるので、自己破産をしたときと状況は変わりません。賃貸であればそのまま住み続けることも可能です。
また、自己破産をしても5~10年ほどすると信用情報機関の事故情報も消えます。その後は以前のように借入もできるようになるので、夜逃げをする位であれば、自己破産するほうが遙かに合理的と言えます。
7.まとめ
夜逃げをしても借金は消えることはなく、引っ越し先でも大きなデメリットを抱えて生活しなければなりません。また、皮肉なことに夜逃げは意外と費用もかかります。
もし、夜逃げをするほど困っていたら自己破産をおすすめします。申立が認められた場合は借金免除となり、厳しい取り立てからも解放されます。
泉総合法律事務所は、自己破産に強い弁護士がそろっております。また相談は無料で行っておりますので、お困りのことがあれば、ぜひご相談ください。
借金問題は専門家と一緒に解決をしていきましょう。