銀行の定期預金・株式投資・投資信託…退職金運用の失敗と債務整理

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銀行の定期預金・株式投資・投資信託…退職金運用の失敗と債務整理

安心して老後の生活を送れるよう、退職金を運用して少しでも増やしたいと考えるのは当然です。しかし、退職金の運用にかぎらず、投資にはリスクがつきものです。

そこで、退職金の運用方法にはどのような種類があるか、運用の失敗にはどういうケースがあるのか、さらに、退職金の運用に失敗して、生活が苦しくなった場合の対応策について、以下で解説します。

1.日本の退職金制度

日本では、同じ企業に永年勤続することを奨励する文化があり、定年まで勤め上げると退職金を支給する企業が多く存在します。

そのため、「会社を定年退職すると退職金がもらえる」というのが一般的なイメージですが、実は、退職金は法律上定められた制度ではないのです。したがって、退職金制度がなくても違法ではありません。

また、近年では終身雇用制も崩れつつあり、退職金制度を廃止して、その分を月々の給与に上乗せして支給する企業も増えています。

(1) 退職金の支給実態

退職金は法律上の制度ではないとはいえ、やはり一定規模以上の企業では多く採用されています。

たとえば、中央労働委員会(厚生労働省の外局)が資本金5億円以上、従業員1000人以上の企業を対象に調査したところ、回答のあった企業のうち、実に90%以上の企業に退職金制度がありました。

また、この調査によると、大卒男性が定年まで勤続した場合の退職金は平均2303万9000円とのことです。

一方で、東京都が従業員300人未満の中小企業を対象にした調査では、退職金制度のある企業は全体の70%、大卒の退職金は平均1138万9000円との結果でした。

中小企業では退職金制度がない企業も多く、退職金制度がある企業でも、退職金の支給額はもっと少ないのが実情でしょう。

(2) 老後破産の時代

現代の日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えます。 つまり、60歳で定年しても、その後20年も老後の人生が続くのです。

仮に2000万円の退職金が支給された場合でも、そこから取り崩せるお金は1年あたり100万円、1000万円の退職金が受給された場合には、1年あたり50万円ということになります。

こうして考えると、退職金をもとに「悠々自適の老後を送る」というライフプランは現実的ではないといえるでしょう。

そして、近年では「老後破産」という言葉も聞かれるようになりました。
これは、実際に破産手続を申立てる、という意味ではなく、老後の収入が少なく、実質的に「破産」状態で生活せざるを得ない高齢者の実態を指しています。

【参考】
他人事ではない!悲惨な老後破産の現実と現状・今からできる対策
老後資金はいくら必要?3000万~5000万円、老後破産の不安の解消法

2.退職金の運用方法

退職金を切り詰めて使うにも限度があるので、通常は退職金を運用して殖やすことを考えます。

退職金の運用方法には多くの種類がありますが、ここでは定番といえる「定期預金」、「株式投資」、「投資信託」、「銀行の退職金運用プラン」について、簡単に解説しておきましょう。

(1) 銀行の定期預金

まとまったお金の運用先と言えば、やはり定期預金が定番でしょう。
かつては定期預金の金利が7%ほどあり、複利計算で10年預けると資産を約2倍に増やすことができました。

ところが、現在の超低金利(年利0.03%とした場合)のもとでは、預けた資産を2倍に増やすには1000年かかると言われています。
さすがに2倍とまではいかなくても、現在の金利では、定期預金で退職金を増やすことは難しいでしょう。

運用先として安全度は高いですが、運用実績はほとんど期待できません

(2) 株式投資

証券会社で口座を開き、自分で株式の売り買いをする運用方法です。
これも定番の運用方法と言えます。

元本保証はありませんが、売買するのは上場企業の株式ですので、よほど業績が悪くて株価の低迷が続くような企業の株式でもないかぎり、投資した資金をすべて失ってしまうリスクは低いでしょう。

なお、株式投資には主に2つのタイプの運用方法があります。

①キャピタルゲイン

買った株式が高くなったら売却して利益を得る、という運用方法です。

企業が業績を伸ばし、株価が購入時の何倍にも高騰するようなケースもあります。しかし、国内には3500社以上の上場企業があるので、まだ誰にも注目されていない有望企業を探し出すのはそう簡単ではありません。

また、あまり短期的な転売利益を追いかけると、ギャンブル性が高くなるのがデメリットです。

②インカムゲイン

株式を長期的に保有し続けて配当金を得る、という運用方法です。
ただし、業績のよい企業は総じて株価も高いので、配当利回りに換算すると、それほど高い運用実績は期待できません。

また、企業の業績が悪くなると無配当になるリスクがあります。

(3) 投資信託

投資信託とは、次のような仕組みの金融商品です。

  • 投資者から集めたお金をひとつの大きな資金(ファンド)としてまとめる
  • 投資の専門家が、ファンドを株式や債券などに投資して運用する
  • その運用成果を投資額に応じて分配する。

要するに、資金を自分で運用するのではなく、投資の専門家に預けて運用してもらう、と考えればいいでしょう。

しかし、投資の専門家に任せておけば安心というわけではありません。

いくら投資の専門家でも、ハイリターンの投資先がハイリスクであることは変わりません。したがって、運用がうまくいかなければ元本割れすることもあります。

(4) 銀行の退職金運用プラン

昨今では、都市銀行や地方銀行がこぞって退職金運用プランを提案しています。ごく簡単に説明するならば、定期預金と投資信託の組合せた商品だと考えればよいでしょう。

ネットで「退職金運用プラン」を検索すると、驚くような高金利の定期預金が販売されています。

ただし、よく見るとこの高金利が適用されるのは預け入れから数ヶ月だけです。基本的に銀行預金で5%や6%の金利がつくことなどあり得ないと心得ておきましょう。

3.退職金の運用で失敗する2つのタイプ

退職金の運用で失敗する2つのタイプ

運用で失敗する人は、基本的にこの2つのタイプのいずれか、または両方に該当すると言ってよいでしょう。

(1) 「ハイリスク・ハイリターン」の大原則

先ほどの運用方法でも説明したとおり、「元本保証かつ高利回り」の運用方法は、少なくとも現在の日本には存在しません。

ハイリスク・ハイリターン」、「ローリスク・ローリターン」という言葉を聞いたことがあるはずです。

リターン(利益)の高い投資先はその分だけリスクも高く、リスクが小さく安全な投資先はその分だけリターンも小さくなります。

投資を勧める側は都合よく説明しますが、ハイリターンの運用先は、ほぼ確実にハイリスクです。この大原則を心得ておきましょう。

もし、本当に「ローリスク・ハイリターン」の商品があったら、その商品を取り扱っている金融機関が1人勝ちしているはずです。そして、日本中の誰もがその金融機関で運用しているはずです。

しかし、そんな話は聞いたことがありません。 なぜなら、そんな金融商品はこの世にないからです。

(2) リスクを考慮しない、軽視している

失敗して大損すると分かっていれば誰も運用などしないでしょうから、基本的には、運用して「増やす」ことを前提に投資します。

本来、ポジティブ思考はよいことです。
しかし、運用によるリターンばかりに目が行き、リスクを軽視している、またはリスクをほとんど考慮していないタイプの人は運用に失敗します。

ときにはネガティブ思考で、「もし金利が下がったら…」、「もし株価が下がったら…」と悪いパターンを想定しておくことも必要です。

また、ポジティブ思考の人は、いったん運用で失敗しても、それを取り戻せるイメージが先行するので、ますます深みにはまってしまいます。

もし、損失が出たら、潔く損切りすることが望ましい場面もあります。

もちろん、粘って運用を続けることで、損失を回復する可能性もゼロではありませんが、失礼ながら、働いて挽回できる世代ではありません。「増やす」ことよりも「減らさない」ことを優先する決断も必要なのです。

4.退職金の運用で破綻したら

退職金の運用で失敗して、生活が破綻するケースには、いくつかの段階があります。

その段階に応じて対応策が変わるので、現在、自分がどの段階にあるか確認して対策を考えましょう。

(1) 運用失敗で生活が困窮している

生活は苦しいものの、借入で生活費を補填するまでには至っていない状態を指します。この段階にある場合は、早急に親族の支援や生活保護の受給などを検討しましょう。

金融会社からの借入金で生活費を補ってはいけません。

(2) 生活費を借入金で補填している

すでに金融会社からの借入金がある場合には、これ以上、借入金を増やしてはいけません。

(3) 運用失敗で借金を抱えてしまった

商品先物取引やFXなどでは、自分の手持ち以上のお金を投資することができるため、運用に失敗すると資金がゼロになるばかりか、さらに借金を抱えてしまうこともあります。

これ以上、運用を続けると取り返しがつかなくなるおそれがあるので、運用の失敗を運用で取り戻そうと考えてはいけません。

生活費が足りなくなっても、借入金で補填することは避けてください。また、すでに借入金がある場合には、返済のために借入金を増やしてはいけません

(4) 返済を続けるべきか迷ったら

退職金世代の生活が破綻した場合、わずかな収入(年金や退職金)の中から返済を続けていくことになるため、ますます生活の困窮に拍車をかけてしまいます。

もちろん、借りたお金を返済していくこと自体は尊いことです。

しかし、自分や家族の生活がままならない状況に追い込んでまで返済を続ける必要があるでしょうか。

もし、退職金の運用に失敗して生活が破たんし、借入金の返済が難しい状態になった場合には、弁護士に依頼して債務整理を検討してください。

年金で生活している高齢者の人でも、一定額の返済原資が確保できれば、債務整理が可能な場合もあります。

【参考】老後破産の不安…個人再生、任意整理は年金受給者でも可能?

5.まとめ

退職金は大切な老後の生活資金ですから、誰しも、退職金を運用して少しでも殖やしたいと考えるでしょう。

しかし、退職金は高額であり、運用の失敗に伴うリスクも大きくなるので、慎重かつ計画的な運用を心がける必要があります。

実際、泉総合法律事務所では、退職金に関する借金問題も多数解決しております。
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ご相談は何度でも無料ですので、お気軽にご連絡いただけたらと思います。

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