相続税対策であえて借金をする人もいる?借金と相続の関係とは

借金返済

相続税対策であえて借金をする人もいる?借金と相続の関係とは

相続税対策として「銀行からお金を借りる」という話をよく聞きます。
しかし、相続税対策として、銀行からの借入は本当に有効なのでしょうか。

今回は、なぜ借金が相続税対策になるのか、その基本的な仕組みを分かりやすく解説します。

1.相続税対策の意味

まず、人はなぜこれほどまでに「相続税対策」に熱心なのか、その理由から押さえておきましょう。

昔から「三代相続すると財産がなくなる」と言われるほど、日本の相続税率は高く設定されています。

現在、相続財産が6億円を超える場合がもっとも税率が高く、その税率は実に55%に達します。かつては最高税率70%という時代もありました。

相続税の速算表【平成27年1月1日以後】
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

一定の控除があるので、単純に相続財産の55%を納税するわけではありませんが、「先祖から受け継いだ財産をごっそり持っていかれる」と感じてしまうのも無理はありません。
さすがに三代の間に財産がゼロにはなってしまうことはありませんが、かなり目減りするのは事実と言えます。

一方で、相続税は「富の再分配」という目的もあります。富の再分配とは、要するに「資産があるところから多くの税金を徴収し、低所得者層に公共サービスとして分配する」ということです。

必ずしも高い相続税が「悪」とは言えないのです。

2.銀行からお金を借りる理由

それでは、銀行からお金を借りるとなぜ相続税が少なくなるのか、その原理を考えてみましょう。

(1) そもそも相続税とは?

相続税とは、「相続財産にかかる税金」です。
ここでいう相続財産とは「プラス」の相続財産に限られます。

あまりピンと来ないかもしれませんが、一口に相続財産といっても、プラスの相続財産とマイナスの相続財産があります。

たとえば、「親が借金を抱えて亡くなった」という場合、財産を相続するという感覚も薄れがちですが、借金もまた相続財産なのです。
(なお、借金など相続したくない、という方も多いでしょうから、その場合には「相続放棄」という制度があります。)

【参考】亡くなった親が借金を残していた!子供に相続する義務はあるのか?

先ほどの速算表で見たとおり、相続する財産の額が大きいほど税率も高くなります。
当たり前ですが、相続する財産が少なくなれば、その分だけ相続税も少なくなる、ということです。

しかし、相続財産を減らすために、生前に財産を使ってしまったり、誰かにあげたりしては意味がありません。そもそも、誰かにあげてしまうと贈与税がかかります。

そこで登場するのが「借金」という手法なのです。

(2) 借金と相続税対策

ただ単に借金をすれば相続財産がマイナスになるわけではありません。
たとえば、現在、1億円の財産を持っている人が、銀行から1億円を借りたとします。

手持ちの財産1億円-借金1億円=財産0円!

だから相続税は課税されないのだ、と考えるのは早計です。

銀行に1億円借りるということは、その分、現預金が1億円増えるということです。
つまり、手持ちの財産1億円と銀行から借りた1億円でプラスの財産は2億円になるだけです。

(手持ちの財産1億円+現預金1億円)-借金1億円=財産1億円

このように、1億円借金しただけでは、何の相続税対策にもなりません。

3.借金が相続税対策になる仕組み

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。 どうすれば、借金が相続税対策になるのでしょうか。

その答えは、「借金で財産を取得し、かつ、取得した財産の評価額が借金の額よりも低くなるようすること」です。

簡単な事例で説明してみましょう。

たとえば、Aさんが1億1000万円の銀行預金を保有しているとします。(キリの悪い数字を例題にした理由は後ほど分かります)
1億1000万円の銀行預金は、誰が評価しても「1億1000万円」であり、相続財産としての評価も「1億1000万円」です。
したがって、もしAさんが亡くなり、相続が発生すると、速算表の「2億円以下」に該当するため、「40%」の相続税が適用されます。

ところが、1億1000万円の借金で買った土地は、相続税を計算するうえでは1億1000万円とは評価されず、一般的に何割か低く評価されます。
たとえば、1億1000万円の借金で買った土地が、仮に20%低く「8800万円」と評価されれば、速算表の「1億円以下」に該当するため、適用される税率も「30%」に下がります。

(1) 具体的事例をもとに考える

それでは、次のような事例をもとに相続税対策の方法を解説します。

【事例】
銀行からの借入で土地(路線価がある市街地の土地)を購入し、その土地上にマイホームを新築する。

この事例の場合、「土地」と「建物」で別々に相続税の評価額を計算します。

①土地の評価額

土地の評価額は「路線価×面積」で算出されます。

「路線価」とは、相続税などの評価用に国税庁が公表しているもので、一般的には、市場で流通する土地価格の70~80%程度になると言われています。

現在、マイホーム用の敷地を購入する場合には、「小規模宅地等の負担軽減措置」という制度があり、この軽減措置が適用されると、土地の評価額は80%も低く評価されます。

つまり、1億円の借金で買った土地が、相続税を計算する際は2000万円で評価される、ということです。

なお、「小規模住宅等の……」というタイトルがついているとおり、この軽減措置が適用できるのは敷地の面積が330㎡までの場合に限定されます。

敷地が330㎡超ともなると、もはや「マイホーム」のレベルではない、ということなのでしょう。

②建物の評価額

建物の場合は、「固定資産税評価額」で算出されます。

「固定資産税評価額」とは、固定資産税を課税するために市町村が設定した評価額です。

こちらもやはり、不動産市場で流通した場合の概ね60~70%程度になると言われています。

つまり、借金をして1億円で新築したとしても、そのまま評価額が1億円となるのではなく、その60~70%程度で評価される、ということです。

4.まとめ

上記の具体例で明らかなとおり、借金で土地とマイホームを取得すると、土地は最大で80%、建物も30~40%ほど評価額が低くなります。
つまり、借金で財産を取得することで相続財産が低く評価され、その分だけ相続税も少なくなるのです。

しかし、こうした相続税対策は、専門的で緻密な計算が必要であり、難度の高い作業です。

したがって、専門家の助言をもとに進めないと、本来納めるべき相続税以上の金利を銀行に支払うことになる可能性もあります。

こうした事態にならないよう、借金を利用した相続税対策は、必ず専門家に相談されることをおすすめします。

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