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高額な医療費と介護費用で生活が苦しい場合の高齢者救済策とは

医療費が嵩んで生活が苦しい場合の高齢者救済策

【この記事を読んでわかる事】

  • 高齢者の経済状況の現状。老後破産は他人事ではない?
  • 高齢者にとって高額な医療費の対策制度はどんなものがあるか?
  • 社会制度、公的制度を受けても解決できない借金はどうするべきか?

 

近年では、高齢者の借金や貧困が、注目されるべき問題となっています。

高齢者が借金・貧困に陥る大きな原因として、医療費や介護費用の負担が挙げられます。

厚生労働省の調査によれば、65歳以上の高齢者の5割近くが「病気やケガの自覚症状がある」と認識しているようです。

これらの医療費・介護費用を貯金の切り崩しで賄っている人は少なくありません。

しかし、平均寿命が80歳を超えるいまの日本では、病気と付き合う期間(医療費・介護費用を負担する期間)も長くなります。

病状などによっては、潤沢だったはずの貯金が医療費でなくなってしまったということだってありえます。

そこで、今回は、高齢者が病気や医療費の負担を軽減するための手続きや、万が一医療費の工面に行き詰まってしまった場合の対応策について解説していきます。

1.健康に対する不安と医療費の増加

健康に対する不安は、年齢と共に高まっていきます。

また、実際にも年齢と共に身体の状態に変化が現れることも多く、負担する医療費は年齢と共に増加する傾向にあります。

下のグラフは、厚生労働省(保険局調査課)が公表している資料(「保健医療に関する基礎資料」、「医療給付実態調査」など)を基に1人あたりの医療費(国保加入者・後期高齢医療制度対象者)の違いをまとめたものです。

1.健康に対する不安と医療費の増加

また、これらの厚生労働省の調査では70歳代までは外来(入院外+調剤)の割合の方が高く、80歳代になると入院(入院+食事療養)の割合の方が高くなることが指摘されています。

いまでは平均寿命が男女ともに80歳を超えていますから、「今後の医療費負担が心配」と感じている人はとても多いと思われます。

2.高齢者世帯の経済状況

定年退職を迎える60代以降は、年齢と共に医療費が増えていくのに対して、収入は減少していくのが通常です。

内閣府が公表している「平成29年度高齢社会白書」によれば、高齢者世帯の平均所得は297万円で、全世帯から高齢者世帯と母子家庭世帯を除いた世帯の平均である644万円の半分以下とのことです。

(1) 年金は生活費に消えていく

定年退職後の高齢者世帯にとって一番の収入源は年金です。

年金を受給している高齢者世帯の2/3以上が、所得の8割以上を年金に頼っています。

たとえば、国民年金の支給額は、夫婦合計で月22万1,200円(平成30年度新規受給モデル)です。

生命保険文化センターという公益財団が公表している資料によれば、高齢者2人世帯の最低生活費は22万円とされています。

「年金で何とか暮らしていける」という状況にあるという人が多いといえるでしょう。

実際にも、上記で紹介した「高齢者白書」によれば、多くの高齢者が「家計に心配はしていないが、ゆとりがあるわけではない」と感じているようです。

「家計にゆとりがある」と感じている高齢者は全体の約2割弱に過ぎず、逆に「家計が心配である」と感じている人は3割弱存在しています。

納付期間不足のために、受給額がモデル額よりも少ない場合には、「年金だけでは生活できない」可能性もあり得ます。

(2) 突然の出費は貯金を切り崩して対応

上で解説したように、多くの高齢者世帯では、年金収入のほとんどが生活費に充てられています。

突然の手術や入院といった臨時の出費に対しては、「貯金を切り崩す」ことで対応しているという人が多いようです。

実際にも、内閣府の調査(「高齢者の経済・生活環境に関する調査(平成28年度)」)によれば、高齢者の約半数が、貯蓄の目的を「万一の備えのため」としています。

また、先の「高齢者白書」によれば、高齢者世帯の貯蓄額の中央値は、約1,600万円とのことです。

貯蓄額が4,000万円を超える構成者世帯が約18%にのぼる一方で、200万円未満の高齢者世帯も10%以上存在していて、現役世代同様に格差があります。

高齢者世帯にとって貯金は「限りのある資産」です。病気療養が長期化することで、貯金が底をついてしまったというケースも実際には少なくありません。

(3) いわゆる「老後破産」が増えている

貯蓄額に余裕がなく年金受給額も少ない老後世帯では、ちょっとしたことで生活苦に陥る危険があります。

たとえば、65歳以上の生活保護受給者の割合は、65歳未満の受給者割合よりも高く、受給者数自体も増加傾向にあります。

ところで、NHKの番組が「生活保護水準以下の収入しかないにもかかわらず、保護を受けていない」高齢者の状況を「老後破産」と名付け、大きな反響を呼んだことがありました。

生活が厳しいために支出を避けようとして、「検査も受けられない(検査を受ければ悪いところが見つかる)」、「交友関係が狭まる」ということになれば、老後生活に悪い循環が生じてしまいます。

近年は、高齢者の孤独死が話題になることが少なくありませんが、孤独死の背景に生活苦があることも珍しくありません。

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3.高額な医療費の対策

高額な医療費が必要となったときには、負担を軽減できる制度が用意されています。

(1) 医療費控除

一定額以上の医療費を支払ったときには、「確定申告」することで、所得控除を受けることができます。これを「医療費控除」といいます。

また、医療費控除を受けることができる医療費は、次のとおりです。

  • 納税者が、本人または本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のために実際に支払った医療費
  • その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費
  • クレジットやローンを利用して決済をした場合には、信販契約成立時の年において、元金のみが控除対象となる(手数料・利息は控除対象外)
  • 未払いの医療費については、翌年以降支払った年の控除対象となる
  • 死亡後に支払った医療費は相続人等(実際に支払った者)の医療費として取り扱われる

所得から控除される医療費の額は、「実際に支払った医療費の年間合計額」から「生命保険や医療保険で支給された金額」+「10万円(所得が200万円以下の場合は所得の5%)」を差し引いた金額となります。

つまり、持ち出しの医療費が年10万円(所得の5%)を超えたときには、医療費控除を受けることができます。

ただし、控除額の上限は200万円とされています(所得税法73条)。

(2) 高額療養費制度

高額療養費制度は、病院の窓口で支払う医療費を一定限度でとどめる(もしくは、窓口で支払った医療費が一定額を超えたときに還付される)制度です。

高額療養費制度を利用するためには、健康保険に加入する必要があります。

①高額療養費が適用される医療費

適用対象となる医療費は、健康保険が適用される費用と同じです。したがって、差額ベッド代や食事代などは、すべて自己負担となります。

また、高額療養費制度の適用判定は「月ごと」になされます。

たとえば、月末から翌月初めに入院した場合などは、それぞれの月ごとの医療費が基準額に達しない場合もあるので注意が必要です。

②自己負担額の上限

自己負担すべき医療費の上限は、年齢や収入に応じて決められています。

下の表は、70歳以上の場合の上限額です(平成29年8月分からの適用額)。さらに、長期の入院で上限額を超える月が通算で4ヶ月を超えたときには、「多数該当」としてさらに自己負担額が軽減されます。

年収 自己負担額の上限
外来のみ 入院などの場合
住民税非課税世帯でかつ世帯全員が収入ゼロの場合 8,000円 15,000円
住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
一般 14,000円
(年間上限144,000円)
57,600円
(多数該当44,400円)
現役並み(標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の方) 57,600円 80,100円+(医療費(健康保険負担分を合わせた総額)-267,000円)×1%
(多数該当44,400円)

なお、平成30年8月以降は、一般世帯の外来の負担額が18,000円に、現役並み世帯の負担額が収入に応じて引き上げられる(最大で252,600+(医療費-842,000)×1%)ことが決まっています。

③69歳以下でも事前申請すれば窓口負担を抑えられる

70歳以上の方の場合には、保険証と高齢者受給者証を保健医療機関に提示すれば、医療機関で支払う医療費は自己負担額までで打ち切りとなります。

69歳以下の方の場合には、原則として申請による事後還付になりますが、事前に限度額適用認定証申請をすることで、窓口負担を抑えることが可能です。

計画入院の場合には、事前申請を上手に利用するとよいでしょう。

(3) 高額医療・高額介護合算療養費制度

高齢者世帯にとっては、医療費だけでなく介護費への不安もあります。

要介護認定を受ける人は年々増加しています。介護支援法が施行された平成12年4月には約218万人だった要介護認定者は、平成24年には約530万人、平成29年9月現在では約640万人にもなっています。

たとえば、自身の医療費に加えて、配偶者の介護費の負担が重なるようなことになれば、家計への影響を無視できなくなります。

このような場合には、「高額医療・高額介護合算療養費制度」によって医療費・介護費の負担を軽減できます。

①「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは?

「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額が限度額を超えた場合に、その超過分を支給する仕組みです。

上で紹介した高額療養費制度が「月単位」での制度であるのに対し、「高額医療・高額介護合算療養費制度」は「年単位」で負担を軽減する仕組みである点で違いがあります。

②自己負担の限度額

高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額は、高額療養費制度と同様に、所得や年齢に応じて設定されます。

下記の表は、国民健康保険加入者に対して平成30年8月から適用される負担限度額です。

現行(平成29年8月1日~平成30年7月31日)の負担額は、年収370万円以上の世帯の負担額がすべて67万円で統一されていることを除けば、下の表と同じです。

収入 負担限度額
70歳以上 69歳未満
年収1160万円以上 212万円 212万円
年収770万円~1160万円未満 141万円 141万円
年収370万円~770万円未満 67万円 67万円
一般 56万円 60万円
住民税非課税世帯 31万円 34万円
住民税非課税世帯でかつ世帯全員が収入ゼロの場合 19万円
(介護サービス利用者が複数いる場合は31万円)

③高額医療・高額介護合算療養費制度を利用する際の注意点

高額医療・高額介護合算療養費制度の支給対象となるのは、健康保険が適用される医療費、介護保険が適用される介護費用に限られます。

したがって、入院時の食事負担や差額ベッド代は含まれません。また、高額療養費や高額介護サービス費から支給を受けた分も控除されます。

なお、費用合算は、加入している医療保険ごとになされます。

したがって、同一世帯であっても異なる医療保険に加入しているときには合算できないので注意が必要です。

4.自己負担分の支払いが難しい場合

高額な医療費を負担したときには、ここまで解説してきた制度で負担を軽減することができます。

しかし、ギリギリの生活をしていて貯金にも余裕がない高齢者の方には、医療費や介護費の自己負担分すら支払うことが難しいという人もいるでしょう。

また、現在は何とか自己負担分を支払えていても、今後も支払い続けていけるか心配に感じている人もいると思います。

(1) 公的融資を活用する

高齢者の方が医療費の自己負担ができないときには、公的機関の(緊急)融資を活用する方法があります。公的機関の融資には次のものがあります。

  • 生活福祉資金貸付制度
  • 年金担保融資

①生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯または高齢者世帯に対し、資金の貸付・相談支援によって、安定した生活と経済的自立を図るための制度です。

各都道府県の社会福祉協議会が実施主体となっていて、各市町村の社会福祉協議会が相談・申請の窓口になっています。

生活福祉資金貸付制度にはいくつかの種類がありますが、高齢者向けのものをまとめると次のようになります(厚生労働省ウェブサイトより一部抜粋)。

(クリックで拡大)

生活福祉資金貸付制度

(2018年5月現在)

上記のうち、医療費や介護費用のための融資としては、福祉資金や緊急小口融資を利用することが可能です。

また、総合支援金の貸付を債務整理の費用に充てることもできます。

なお、融資には審査があり、総合支援金と緊急小口融資の貸付は、自立相談支援事業を利用することが原則として必要です。

②年金担保融資

医療費などの負担によって生活が苦しくなったときには、年金を担保に公的金融機関から融資を受けることができます。

なお、年金担保融資は「債務の一括返済」を目的とした利用も可能です。

制度の概要を簡単にまとめると次の表のようになります。

取扱機関 福祉医療機構 日本政策金融公庫
対象となる年金 厚生年金、国民年金、船員保険年金、労災年金 恩給、災害補償年金、共済年金、共済組合が支給する厚生年金
融資限度額 次の3つの要件を満たした金額

  • 年金の0.8年分以内
  • 1回あたりの返済額の15倍以内
  • 200万円
年金の2年分以内で250万円まで
融資を生活費に充てる場合の限度額 80万円 100万円
利息 1.9% 1.76%

年金担保融資による借入金は、「年金から天引き」で返済します。30回の返済回数を設定されることが一般的ですが、入院などの事情で返済が難しくなったときには、毎月の返済額を減らす(返済期間を延長する)こともできます。

なお、年金担保融資を取り扱えるのは、「福祉医療機構(WAM)」と「日本政策金融公庫(JFC)」のみです。

それ以外の金融機関が年金を担保に融資することは法律で禁止されています。

最近では、年金担保融資を装った詐欺・ヤミ金業者も横行しているので注意が必要です。

(2) 債務整理も選択肢の1つ

医療費・介護費の負担が重たいときには、銀行カードローン等から借金をしてしまう高齢者も増えています。

そのため、下のグラフで示すように、日本弁護士連合会の調査(「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」)によれば、70歳以上の自己破産者の割合が増えています。

「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」

高齢者の自己破産・債務整理については、次のような誤解をもっている人が少なくありません。

  • 借金を債務整理しなくても死亡すれば借金はなくなる
  • 債務整理すると年金を差押えられる
  • 債務整理(自己破産)すると、年金の受給資格を失う
  • 債務整理すると生命保険や医療保険を解約しなければならない
  • 債務整理すると自宅を失う

金融機関からの借金のような金銭債務は相続の対象となります。したがって、借金を残したまま死亡すれば、借金は相続人である子などに引き継がれるのが原則です。

借金を相続しないためには、相続人が相続放棄の手続きをしなければなりませんが、その際には不動産などの積極資産の相続もあわせて放棄する必要があります。

積極資産の分だけ借金も相続する限定承認という選択肢もありますが、実際の相続の場面では相続放棄が選択されることの方が圧倒的に多いです。

また、債務整理をしても、年金の受給・受給資格には一切影響がありません。金銭債務の返済のために年金を差し押さえることは法律で禁止されています(国民年金法24条・厚生年金保険法41条)。

生命保険についても必ず解約をしなければならないというわけではありません。契約者貸付や介入権行使などによって、自己破産した場合でも生命保険を解約せずに済ませられる場合があります。

さらに、自宅についても、任意整理で解決できるときには、自宅を処分せずに銀行カードローンなどの借金を解決できます。

高齢者の方でも借金を債務整理で解決することは不可能ではありません。

万が一、借金でお困りの場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。

5.まとめ

高齢者の方にとって、現在・将来の医療費・介護費負担は、大きな不安材料です。

医療費や介護費の負担を軽減するための公的制度や、緊急の公的融資を上手に利用することは、非常に大切です。

しかしながら、限られた年金生活で入通院が長期にわたれば、家計が破綻をしてしまうケースも実際には少なくありません。

高齢者の方は、若い方よりも借金の問題を1人で抱え込んでしまうことも少なくありません。

万が一、借金でお困りのときには、できるだけ早く泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。ご相談者様一人ひとりに合った借金の解決方法をアドバイス致します。

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