強制執行に必要な債務名義とは?取得されてしまった場合の対処法
たとえば、AさんがBさんに100万円を貸したけれども、約束の期限になっても、Bさんがお金を返そうとしなかったとします。Aさんは、Bさんがお金を返してくれないので、無理矢理返してもらうほかありません。
しかし、だからといって、Aさんは、Bさんを脅すなどして、無理矢理お金を返してもらうことはできません。
Aさんが100万円を手に入れるためには、強制執行(きょうせいしっこう)という手続が必要です。この強制執行をするために必要なものが、債務名義(典型的な例としては、勝訴判決など。)です。
今回は、この「債務名義」について、弁護士が詳しく説明します。
1.債務名義について
債務名義とは、私法上の請求権の存在と範囲を表示した公的な文書で、法律により執行力が認められたものを言います。
(1) 訴訟手続
冒頭のケースですと、AさんはBさんに正攻法でお金を返してもらうしかありません。
その正攻法というのが、民事訴訟、簡単にいいますと、裁判なのです。
・判例
ちなみに、AさんがBさんを脅してお金を返してもらうことはできないということに関しては、以下のような判例があります。
「権利を持っている人が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり、かつ、その方法が社会通念上認容すべきものと認められる範囲を超えないかぎり、違法ではないですが、その範囲程度を逸脱してしまうと恐喝罪(刑法249条)が成立し得る(最判昭和30年10月14日)。」
(2) 強制執行
強制執行とは、債権者(お金を貸している人)の権利を、国が強制的に実現する手続のことを言います。
AさんがBさんに対して強制執行を行うために、まずAさんは、「Bさんは、Aさんに対して、100万円を支払いなさい。」と書かれた債務名義、つまり、勝訴判決を手に入れる必要があります。
つまり、Aさんは、Bさんを脅して100万円を返してもらうのではなく、裁判を起こして、裁判に勝って、勝訴判決という債務名義を手に入れて、それをもとにBさんに強制執行するという流れです。
このように、債務名義というのは、強制執行するために必要な裁判所のお墨付きのようなものなのです。
2.債務名義の取得方法
次に、債務名義の取得方法について解説いたします。
(1) 債務名義の種類
民事執行法という法律には、強制執行のやり方が書かれていて、民事執行法第22条では、債務名義の種類が書かれています。
債務名義は、誰が作るかによって3種類に分かれます。
①裁判所が作る債務名義
確定判決、和解調書、調停調書などがあります。
確定判決というのは、最初に見た例のように、Bさんは、Aさんに100万円を払えと書かれた勝訴判決であって、しかも、上級審、たとえば、第一審裁判所が地方裁判所なら、高等裁判所に不服申立をできない状態になったものです。
和解調書というのは、裁判になっても、判決までは出されず、裁判の途中で和解したときに作られる書面です。
つまり、意外に思われるかもしれませんが、和解で終わっても、強制執行できるのです。
調停調書というのは、典型的には、離婚調停で、話合いの結果がまとめられた書面です。
つまり、これも意外に思われるかもしれませんが、調停で終わっても、強制執行できるのです。
②裁判所書記官が作る債務名義
裁判所には、裁判官だけではなく、裁判所書記官という人もいます。
この裁判所書記官が作る支払督促なども、債務名義のひとつです。
③公証人が作る債務名義
公証人というのは、公証役場という法務局所属の公務員で、裁判官や検察官を定年退職した人がなることが多いようです。
この公証人が作る執行証書というものも、債務名義です。
公正証書という言葉を耳にされたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、その公正証書に執行に関する言葉が書かれている書面も、債務名義になります。
つまり、執行証書があれば、裁判を起こして、裁判に勝たなくても、強制執行ができることになります。
3.借金のお悩みは泉総合法律事務所へ
以上、債務名義について解説してきました。
債務名義は、実は裁判以外で手に入れる方法もあるということがお分かりいただけたかと思います。
債務名義を取得されてしまった場合(たとえば、裁判所から判決が届いてしまった場合など)には、まずは泉総合法律事務所にご連絡ください。
泉総合法律事務所では、「裁判所から訴状が届いてしまい困っている」「債務名義を取られ、差押えをされそうなので何とかして欲しい」といった内容のご相談がたくさん寄せられます。
そういったケースの対応には長けておりますので、どうぞ安心してご相談いただければと思います。