借金返済 [公開日]2020年10月13日

自然災害による債務整理ガイドラインとは|コロナにも適用される?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、経営危機に見舞われている個人事業主、あるいは収入減少や解雇に見舞われている方などが急速に増加しています。

金融庁は、コロナ禍における経済危機の状況を受けて、債務に苦しむ事業主や個人の方を救済するため、「債務整理ガイドライン」をコロナ被害に対しても適用する方針を固めたことが報じられました。
(参考「債務減免の特例、12月から適用 差し押さえせず生活再建、金融庁」(東京新聞、2020年10月5日))

債務整理ガイドラインは、コロナ禍で経営危機に苦しむ方の救済に寄与することが期待される一方で、その利用可能性については未知数な部分があります。

この記事では、債務整理ガイドラインの概要や、コロナ禍で経営危機に陥った方が債務整理ガイドラインを利用できる可能性などについて解説します。

1.債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)とは?

債務整理ガイドラインは、その正式名称を「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」といいます。
(参考:「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会、平成27年12月))

まずは、債務整理ガイドラインとは何なのかについて、目的・適用対象・手順の観点から解説します。

(1) 自然災害被災者を救済するためのガイドライン

債務整理ガイドラインは、現段階では、東日本大震災などの自然災害を原因として、債務の弁済が困難となってしまった個人を救済するためのガイドラインと位置付けられています。

地震・暴風・豪雨などの自然災害によって、職を失ってしまったり、営んでいる事業の売り上げが極端に落ち込んでしまったりすると、資金繰りが途端に窮してしまいます。

特に個人の方が事業性ローンや住宅ローンを借りているケースでは、それまで行えていたローンの返済が滞ってしまうおそれも十分考えられます。

このような場合には、債務整理を検討しなければなりませんが、破産を中心とした法的倒産手続きを利用すると、財産が処分されてしまうなどのデメリットが生じます。

そこで、金融庁が各金融機関に根回しを行ったうえで、任意整理に関するガイドラインが定められました。

各金融機関が、原則として債務整理ガイドラインに従った任意整理に応じることにより、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援し、ひいては被災地の復興・再活性化を促すことが目指されています。

(2) 現状の債務整理ガイドラインの適用対象

債務整理ガイドラインに従った債務整理手続きを利用できるのは、現状の債務整理ガイドラインを前提にすると、以下の要件をすべて満たす個人に限られます。

  1. 生活基盤や事業基盤などが災害の影響を受けたことにより、住宅ローンや事業性ローンなどの債務を弁済することができなくなることが確実と見込まれること
  2. 弁済について誠実であり、自らの財産状況を債権者に対して適正に開示していること
  3. 災害が発生する以前に、債務について期限の利益喪失事由が発生していなかったこと(ただし、債権者の同意がある場合を除く)
  4. 債務整理ガイドラインに基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の債権を回収できる見込みがあるなど、債権者にとってもメリットがあること
  5. 債務者が事業者の場合は、その事業に価値があり、債権者の支援により再建の可能性があること
  6. 債務者が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと
  7. 破産法に規定する免責不許可事由がないこと

コロナ被害で債務が弁済できなくなった人に対して、債務整理ガイドラインが適用されるための要件については、現時点では公表されていません。

しかし基本的には、上記の自然災害に関する適用要件と同等の水準で適用要件が設定されることが予想されます。

2.債務整理ガイドラインに基づく債務整理の手順

債務整理ガイドラインが適用される場合に、実際に債務整理を進める手順を見ていきましょう。

(1) 債権者から債務整理ガイドライン適用への同意を得る

債務整理ガイドラインを利用した債務整理は、債務者に対する元金総額が最大の債権者に対して適用の申し出を行い、同意を得るところから始まります。

このとき債権者は、債務者が前述の債務整理ガイドラインの適用要件を満たさないことが明白である場合を除いて、債務者の申し出に対して同意しなければなりません。

(2) 登録支援専門家への委嘱依頼・他の債権者への申し出

最大の債権者から同意を得られた段階で、債務者は弁護士会などを通じて、債務整理を中立的な立場からサポートする「登録支援専門家」への委嘱を行います。

また、最大の債権者以外にも債権者がいる場合には、他の債権者に対しても一斉に、債務整理ガイドラインを利用した債務整理の申し出を行います。

このとき、他の債権者が原則として債務者の申し出を拒否できないことは、最大の債権者の場合と同様です。

(3) 資産の処分・弁済などの一時停止

全債権者への債務整理ガイドラインを利用した債務整理の申し出が行われた時点から、債務整理が終了する日までの間、債務者の資産の処分や、特定の債権者に対する弁済などが一時停止されます。

(4) 調停条項案の作成・提出

債務者は、全債権者への債務整理ガイドラインを利用した債務整理の申し出を行った日から原則として3か月以内に、調停条項案(債務整理案)を作成のうえ、登録支援専門家を通じて、全債権者に対して提出します。

この際、調停条項案の内容は、債務整理ガイドラインの内容に従って定める必要があります。

(5) 特定調停の手続きを通じて債務整理成立

すべての債権者から調停条項案への同意が得られる見込みが立った時点で、債務者は簡易裁判所に対して、特定調停の申立てを行います。

そして、特定調停の手続きに従い、調停条項案の内容について調停を成立させれば、債務整理は完了です。

3.コロナ被害について債務整理ガイドラインを適用できる可能性

今回見込まれている債務整理ガイドラインの改正により、新型コロナウイルスの影響による経済状況の悪化についても、債務整理ガイドラインに従った債務整理が可能となることが期待されています。

しかし、実際のところ、コロナ被害について債務整理ガイドラインを適用できる可能性はどの程度あるのでしょうか?

(1) 適用要件は現時点では未定

現時点では、債務整理ガイドラインがコロナ被害に対して適用されるための要件は公表されていません。

そのためコロナ被害に対して、債務整理ガイドラインがどこまで適用できるかについては未知数といえます。

ただし、今回のコロナ被害への債務整理ガイドラインの適用拡大は、あくまでも東日本大震災をはじめとする自然災害が原因で経済状況が悪化した人を救済するという問題意識の延長線上にあります。

したがって、コロナ被害への適用要件についても、自然災害への適用要件とほぼ同等の内容になることが予想されます。

現状のガイドラインでは、債務整理ガイドラインを適用するためには、多くの複雑な要件を満たすことが必要です。
特に、自然災害と同等の適用要件になることを前提とすると、

  • コロナ被害の前から債務を滞納していた場合
  • 浪費や賭博などによって借金を作った場合

などについては、債務整理ガイドラインを適用した債務整理を行うことはできないことになります。

このように、債務整理ガイドラインを適用した債務整理は、コロナ被害に悩んでいる人すべてが利用できるものではないということに注意が必要です。

(2) 東日本大震災以降の利用実績はそれほど多くない

実際に、債務整理ガイドラインを適用して債務整理を成立させた事例は、2020年6月末時点で498件にとどまっています。
(出典:「利用状況」(一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関))

また、債務整理ガイドライン以前に東日本大震災の被災者救済のために設けられた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」による債務整理の成立件数は、2020年9月末時点で1,372件です。
(出典:「個人版私的整理ガイドライン お問い合わせ件数等」(一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関))

両者を合わせても、ガイドラインによって債務整理が成立した件数は2,000件に届いておらず、震災などの被害者数と比較すると、ガイドラインが活発に利用されているとはいえない状況です。

このような状況となっている理由の一つとしては、債務整理ガイドラインの適用要件が厳しいという点が考えられます。

仮にコロナ被害への債務整理ガイドラインの適用要件が、自然災害の場合と同等になるのであれば、従前同様、あまり債務整理ガイドラインが活用されないという事態も懸念されるでしょう。

4.まとめ

債務整理ガイドラインがコロナ被害にも適用されるようになると、コロナにより経済的ダメージを負った方への救済手段が広がることが期待されます。

しかしながら、実際に債務整理ガイドラインの恩恵をどの程度の方が受けられるかについては、現時点では未知数・懐疑的な部分が大きいといえるでしょう。

今現在借金問題でお悩みの方は、まずはお早めに、債務整理に強い弁護士へ相談してみることをお勧めします。

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