破産の債権者申立て|借金を放置し続けるのは危険!

借金返済

破産の申立てのほとんどは、債務者本人が申し立てる「自己破産」がほとんどです。しかし、破産法は、「債権者の申立て」による破産も認めています。

破産の債権者申立ては、メリットよりもデメリットの方が多いため、実際に利用されるケースは多くありません。

しかし、債権者に対してあまりにも不誠実な対応をした場合や、財産隠しを疑われている場合などには、債権者「損得抜き」に破産を申し立てることもあり得ます。

今回は、このような「破産の債権者申立て」について解説します。

1.破産手続きの債権者申し立てとは

破産手続きを開始するためには、当事者からの申立てが必要です(破産法15条)。

当事者の申立てもないのに裁判所が職権で誰かを破産させることはありません。多くの破産手続きは、債務者本人の申立てによってはじまります。

しかし、破産の申立ては「債権者」がすることも可能なのです。

破産法18条も「債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる」と定めています。

債務者自身による破産申立ての場合を「自己破産」と呼ぶのは、「債権者申立て」の場合と区別するためでもあります。

(1) 債権者申立てはデメリットが大きい

債権者申立ては、債務者にとっては「債務整理を始める時期を選べない」という意味で非常に不都合なものです。

しかし、債権者申立ては、債権者にとってもメリットよりもデメリットの方が大きい場合が少なくありません。

まず、債権者申立ての際には、債務者に破産原因があることを債権者が明らかにしなればなりません(破産法18条2項)。

債権者申立てでは、証明ではなく「疎明」で足りるとされています。「疎明」というのは「証明」と対比して用いられる裁判用語です。「疎明」は、「『一応そうである』といえる程度に明らかにすること」で「通常陣が疑わない程度まで明らかにする必要のある証明よりも緩やかな基準です。

それでも、「他人が抱えている借金を確実に返済できない状態にある」ことを明らかにすることは、手間の掛かる作業といえます。

さらに、債権者申立ては、費用面の負担も小さくありません。

破産手続きを申し立てる際には、申立手数料(1,000円)、予納郵券、官報掲載費用の他に「予納金」を納める必要があります。

債権者申立ての際の予納金額は、債務者が抱える負債額に応じて決められます(下の表を参照)。

負債総額 自然人(個人) 法人
5,000万円未満 50万円 70万円
5,000万円以上1億円未満 80万円 100万円
1億円以上5億円未満 150万円 200万円
5億円以上10億円未満 250万円 300万円
10億円以上50億円未満 400万円
50億円以上100億円未満 500万円
100億円以上 700万円

この予納金は、破産管財人の報酬に充てられるものです。

自己破産であれば、同時廃止事件なら予納金不要、いわゆる少額管財では「20万円から」の負担で済みます。自己破産では、申立ての段階で、代理人弁護士が破産管財人業務を前倒しして実施していることが多いため、破産管財人の招集を押さえることができるからです。

債権者申立てでは、破産申立て前に十分な債権調査・財産調査ができないため、破産管財人の報酬を抑えることができないというわけです。

なお、債権者が納めた予納金は、債務者の資産を換価できたときには優先的に返却されます。

(2) 債権者申立てはどれくらい行われているのか

下の表とグラフは、「個人破産における債権者申立ての件数」を最高裁判所が公表している司法統計に基づいてまとめたものです。

破産事件の総数にかかわらず、毎年200件前後の債権者申立てがあります(法人破産も同様に総数にかかわらず毎年200件前後で推移しています)。

年200件というと多いと感じる人もいるかもしれませんが、全体の破産事件に占める割合でいえば、1%にも満たない数です。しかし、「全くゼロ」ではないことは注意しておく必要があるでしょう。

(3) 実際に債権者が破産を申し立てたケース

~徳島市観光協会の例~

個人破産のケースではありませんが、最近、債権者による破産申立てで話題となったケースがあるので、参考のために紹介します。

2018年3月に、徳島市観光協会を債務者とする破産が「債権者である徳島市」によって申し立てられました。

徳島市観光協会は「阿波おどり」を運営する団体でもあり、「毎年多くの観光客を集めている阿波踊りの運営団体が多額の負債を抱えていたこと」だけでなく「今後の阿波おどりの実施への不安」などから大きな注目を集めました。

一連の報道などによれば、徳島市は観光協会に対し毎年補助金を支給しているほか、観光協会の負担する金融機関への借入を代位弁済する契約を結んでいたようです。

他方、徳島市観光協会は、雨天時のチケット払い戻し代の累積などが原因で4億円以上の借入金があったようです。

観光協会側は、「経営を合理化して借入金の返済をしながら阿波おどりの運営を続ける」旨の主張をしていたようですが、徳島市との話し合いがまとまらず、徳島市が金融機関から4億円弱の債権譲渡を受けて、破産申立てに踏み切る決断をしたようです。

観光協会と市との交渉が決裂した背景には、市の観光協会に対する不信が払拭できなかったことが指摘されていますが、このような背景事情は、個人に対して債権者申立てされる場合にも当てはまるといえるでしょう。

2.債権者が破産を申し立てる狙い

債権者にとってのメリット

負担とリスクの多いにも関わらず債権者が破産申立てに踏み切るのは、何かしらの狙いがあるからです。

債権者にとっての債権者申立ての狙い・メリットとして一般的に考えられることについて説明していきます。

(1) 債務者に財産があることが期待できるとき

自己破産は、「免責による返済義務の免除」を目的に申し立てられますが、厳密な意味での破産手続きは「破産者の財産とすべての負債との強制清算」のための手続きです。

したがって、債権者にとって「満額回収できないとしてもいくらかの配当を得る」ことが、現状(延滞状況)を続けることよりも望ましいときには、債権者申立てには大きな意味があります。

債権者申立ては、高額の予納金を債権者が納めなければなりませんが、この予納金は、債務者の財産を換価できれば、最優先で返還されます。

したがって、債務者に予納金を超える額の財産があれば、債権者の予納金負担はなくなります。

自己破産で差し押さえられる財産は、「破産手続き開始決定のときに債務者が所有している(20万円を超える価値のある)財産」です。

預貯金や退職金見込み額も差押えの対象となることがありますし、また破産管財人の調査により債権者が認知していない財産が換価されることも期待できます。

したがって、個人が債務者の場合であっても、破産手続きによって予納金を回収した上で、いくらかの配当金を得られるケースは決して少なくありません。

ところで、債権者が破産ではなく「個別に強制執行を申し立てる」には、訴訟や支払督促などの方法によって債務名義を作成しなければなりません。

また、強制執行は、債権者が対象となる財産を特定しなければなりません。個別執行には、時間も手間もけっこうかかるのです。

これに対し、破産手続きでは、債務者の財産を「包括的に差押える」ことが可能なので、個別の権利行使よりも債権者の負担の少ないことも珍しくないのです。

(2) 「見せしめ」としての債権者申立て

債権者と債務者との間の信頼関係が完全に失われたときには、「採算度外視」で債権者申立てをしてくる可能性も否定できません。

先に紹介した徳島市観光協会のケースも、観光協会の負債処理よりも「阿波おどりの運営を観光協会にこのままでは任せられない」という不信が払拭できなかったことの方が大きな要因ではないかと指摘されています。

金融機関は「悪しき前例」を作ることをとても嫌がります。いまでは、ネットでさまざまな情報が簡単に拡散するので、特に中小の消費者金融にとっては「この債権者は甘い」という評判が流れることは死活問題にもなりかねません。

したがって、個人の債務者の場合であっても、「借入時の経緯」や「延滞の状況」に大きな問題があるときには「見せしめ」として債権者申立に踏み切られてもおかしくはないといえます。

たとえば、債務者に予納金をまかなえるだけの財産があり、さらに免責不許可が見込まれるようなケースでは、債権者申立てのデメリットはほとんどありません。

(3) 債務者側の対応にしびれを切らして破産を申し立てる場合も

任意整理の交渉中や個人再生を申し立てる準備の間に債権者が破産申立てをする(申立てをちらつかせる)ケースもあります。

たとえば、債務者に多額の税金の滞納があるケースでは、受任通知送付後から個人再生申立てまで半年~1年ほどかかることもあり、債権者が「待ちきれない」と破産を申し立てることもあります。

3.万が一債権者に破産を申し立てられた場合

債務者にとって、債権者からの破産申立ては、明らかにデメリットの方が多いものです。

すでに自己破産の申立てを検討しているときには、「予納金を納めずに済む」メリットがありますが、デメリットの方が大きい場合の方が多いでしょう。

破産手続きを債権者に申し立てられるデメリットとしては、次のことが挙げられます。

  • 自己破産の場合よりも破産手続きの終結まで時間がかかる
  • 自己破産による口座凍結・携帯解約などのデメリットを回避する措置が講じられない
  • 任意整理で解決する余地がなくなる

破産手続きが開始されると、一部の資格・職業に制限が生じるほか、通信・転居にも制限が生じます。

債権者申立てのときには、代理人弁護士による債権調査・資産調査が行われませんので、自己破産の場合よりも破産手続きに時間がかかることが一般的です。

その分だけ、破産したことによる制限がかかる期間も長くなってしまいます。

また、債務者の予期しないタイミングで債権者申立てがなされたときには、口座凍結や携帯解約を回避するための措置(預金の引き出しや滞納している携帯・スマホ利用料の支払い)を講じることもできません。

破産申立てを知ってから、これらの措置を講じれば、破産管財人による否認権行使の対象となってしまうからです。

したがって、自己破産の場合よりも破産によって生じるデメリットが多くなります。

ところで、債権者申立てをされた場合でも、「必ず破産する」わけではありません。破産原因がない(支払不能ではない)ことを裁判所に主張できれば、債権者申立ては棄却されます。

また、支払不能の状態にあるときでも、債権者による破産申立ての後に個人再生を申し立てれば、破産手続きは開始されません。

しかし、債権者申立てがなされたときには、すでに任意整理によって借金問題を解決する余地がなくなっている場合が多いので、債務整理の選択肢が減ってしまうことは否めません。

4.まとめ

実際に債権者が破産を申し立てるケースは、ごく僅かな場合に過ぎません。しかし、債権者に破産を申し立てられれば、債務整理の時期や方法を自分で選択することができなくなってしまいます。

また、自己破産なら回避できたデメリットが回避できないこともあります。

借金問題は、早期に対応することが何よりも大切です。問題解決を先送りして、「自転車操業」・「まわし」を繰り返すことになれば、債権者から破産を申し立てられるリスクも高くなります。

他方で、債務整理は早期に着手すれば、デメリットを最小限に食い止めることも可能です。借金の返済に苦しいと感じたときには、1日も早く弁護士に相談することをお勧めします。

泉総合法律事務所では、借金の相談は無料でお受けいただくことができます。

借金でお困りの際には、お気軽に泉総合法律事務所までお問い合わせください。実績豊富な弁護士が、親身に対応させていただきます。

債務整理コラム一覧に戻る