借金返済 [公開日]2021年10月26日

「債権者」「債務者」とは?両者の違い・契約上の権利義務などを解説

他人にお金を貸した人は「債権者」、反対に他人から借金をした人は「債務者」と呼ばれます。
借金に関する法律関係を理解するには、まず「債権者」と「債務者」の概念を理解することが大前提です。

今回は、「債権者」と「債務者」の法律上の位置づけや、債権者・債務者間の契約関係、さらに債権者と債務者を規律する民法の規定などについて解説します。

1.「債権者」「債務者」の関係

「債権者」と「債務者」は、契約関係を理解するうえで基本となる概念です。
まずは、債権者・債務者とはどのような者を指すのかについて解説します。

(1) 債務者は債権者に対して契約上の義務を負う

「債権者」とは、債務者に対して、契約に基づく何らかの請求を行う権利を有する者を意味します。
これに対して「債務者」とは、債権者に対して、契約上の義務を履行する責任を負う者を意味します。

債務の内容は、契約の規定に応じてさまざまなパターンが想定されます(詳しくは後述します)。

また、契約当事者のうち、常にいずれか一方のみが債権者で、もう一方のみが債務者であるとは限りません。

同じ契約の中でも、当事者がお互いに相手方に対して何らかの義務を負うというケースがあるからです。

この場合、双方の当事者は債権者でもあり、債務者でもあるということになります。

(2) 債務者が契約上の義務を履行しなかったら「債務不履行」

債務者が債権者に対して、契約上の義務を履行しないことを「債務不履行」といいます。

債務不履行を発生させた債務者は、債権者から損害賠償請求を受けたり、契約を解除されたりするリスクを負うことになります。

場合によっては、強制執行手続きによって財産を失ってしまうことになりかねませんので、債務者の方は十分注意しましょう。

債務不履行については、以下のコラムで詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事]

債務不履行とは?借金を返済しない場合のリスク

2.債権・債務を発生させる契約の具体例

債権および債務を発生する手段として、もっとも頻繁に用いられるのが「契約」です。

あらゆる契約に債権・債務が伴いますが、以下では代表的な契約類型について、当事者にどのような債権・債務が発生するのかを解説します。

(1) 売買契約

不動産や商品などの売買契約は、個人・法人を問わず、さまざまな主体によって締結されています。

売買の目的物の引渡しについては、売主が買主に対して引渡し義務を負うため、買主が「債権者」、売主が「債務者」です。

反対に、売買代金の支払いについては、買主が売主に対して代金支払いの義務を負うため、売主が「債権者」、買主が「債務者」となります。

(2) 金銭消費貸借契約

お金の貸し借りは、金銭消費貸借契約に基づいて行われます。

金銭消費貸借契約の場合、貸し手は「お金を貸す債務(義務)」を負いますが、契約締結と同時か、または締結後短期間で貸付けが実行されるのが一般的です。

そのため基本的には、専ら借りたお金の返済に着目して、貸し手を「債権者」、借り手を「債務者」と呼ぶのが通例となっています。

(3) 雇用契約

正社員・パート・アルバイトなどとして働く方は、会社(使用者)との間で雇用契約を締結しています。

労働をすることについては、労働者が使用者のために労働を提供する義務を負うので、使用者が「債権者」、労働者が「債務者」です。

これに対して、賃金の支払いについては、使用者が労働者に対して賃金支払いの義務を負うため、労働者が「債権者」、使用者が「債務者」となります。

(4) 不動産賃貸借契約

住居・店舗・オフィスなどとして使用する物件を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結します。

賃料の支払いについては、賃借人が賃貸人に対して賃料支払いの義務を負うので、賃貸人が「債権者」、賃借人が「債務者」です。
これに対して、物件を貸すことについては賃借人が「債権者」、賃貸人が「債務者」となります。

なお賃貸人は、「貸す債務」を履行するために、物件の修繕等を行う義務も負っています。
したがって、修繕義務等との関係でも、賃借人が「債権者」、賃貸人が「債務者」です。

3.債権者・債務者の関係を規律する民法の主な規定

債権者・債務者間の関係性については、民法でさまざまなルールが定められています。
以下では、債権者・債務者の関係を規律する、民法上の主な規定を紹介します。

(1) 債務の消滅に関する規定

債務は、債務者が債権者に対して弁済した際に消滅します(民法473条)。

民法では、どのような場合に弁済が成立するのかなどについて、詳細な規定が置かれています(民法473条以下)。

また、代物弁済(民法482条)・供託(民法494条)・弁済による代位(民法500条以下)など、弁済に付随する事項の取り扱いについても、細かくルールが定められています。

さらに、相殺(民法505条以下)・更改(民法513条)・免除(民法519条)・混同(民法520条)と、弁済以外の債務を消滅させる手段についても、民法で詳細にルールが規定されています。

(2) 債権譲渡に関する規定

債権者は原則として、自らが有する債権を第三者に譲渡することが可能です。
これを「債権譲渡」といいます(民法466条以下)。

対抗要件具備の方法(民法467条)や債権譲渡後の抗弁の取り扱い(民法468条)など、債権譲渡に伴って発生し得る問題の処理手順が、民法上詳しく規定されています。

[参考記事]

「債権譲渡通知書」が届いたらどのように対処すれば良い?

(3) 債務不履行に関する規定

契約上の義務を履行しない「債務不履行」については、民法は以下の3つの類型を設け、それぞれ債務不履行責任を負担するものと定めています。

①履行遅滞(民法412条)

期日どおりに債務を履行しないことをいいます。
(例)借金の返済を滞納した場合

②履行不能(民法412条の2)

債務の発生原因や取引上の社会通念に照らして、債務の履行が不能であることをいいます。
(例)売買の目的とし、近日中に決済予定だった建物が、火事によって消滅した場合)

③不完全履行(民法415条)

履行遅滞・履行不能以外の債務不履行全般を指します。
(例)商品開発契約に従って商品を納品したが、契約上定められた数量に不足していた。

(4) 連帯債権・連帯債務に関する規定

債権者・債務者は、常に一人とは限らず、いずれも複数名存在することもあり得ます。

たとえば、共有状態にある不動産について賃貸借契約が締結された場合、共有者は賃貸借契約上、「連帯債権者」または「連帯債務者」となります。
また、夫婦がペア住宅ローンを組む場合には、夫婦が「連帯債務者」となります。

このように、債権者または債務者が複数の(連帯債権者または連帯債務者である)場合には、誰がどの程度の義務を負うのかなどについて、民法でルールが定められています(民法432条~445条)。

(5) 個別の契約に関する規定

民法では、贈与・売買・交換・消費貸借・使用貸借・賃貸借といった、さまざまな契約類型が用意されています。

各契約類型については、それぞれの契約内容に応じたルールが、民法上個別に定められています。

(6) 契約の解除に関する規定

債務者による債務不履行が発生した場合、債権者は契約を解除できる場合があります。
契約の解除に関するルールも、民法で詳しく定められています(民法540条以下)。

なお、民法上の契約の解除には、事前に債務を履行すべき旨を催告する「催告解除」(民法541条)と、事前の催告を行わない「無催告解除」(民法542条)の2つが存在します。

(7) 担保権に関する規定

債権者・債務者の関係性を理解するうえでは、担保権についての理解も欠かせません。

担保権とは、債務不履行が発生した場合、担保物を換価・処分することで、債権の弁済に充てられる権利をいいます。
民法では、留置権・先取特権・質権・抵当権の4つが、担保権として用意されています。

①留置権(民法295条)
物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、当該物を留置できる(引き渡す必要がなくなる)権利です。

②先取特権(民法306条以下)
債権と密接に関連する動産などについて、他の債権者よりも優先的に債権回収を図ることができる権利です。

③質権(民法342条以下)
担保物を債権者(質権者)に引き渡すことにより設定される担保権です。

④抵当権(民法373条以下)
不動産等について設定される担保権です。
住宅ローンを借り入れる際には必須となります。

債務不履行が発生した場合、債権者は担保権を実行して、担保物の価値から債権回収を図ることができます。

4.まとめ

「債権者」および「債務者」は、契約関係における基本的な概念ですが、その分民法上のルールも詳細にわたっています。

債務者としては、債務不履行を引き起こさずに、契約上の義務を着実に履行することが大切です。

しかし、収入の減少により借金を返すのが難しくなるなど、予期せぬ債務不履行が発生してしまうこともあり得ます。

もし債務不履行の危機に瀕している債務者の方がいらっしゃれば、早急に弁護士までご相談ください。
債務整理を含めて、状況に合わせた適切な対処法をアドバイスいたします。

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