借金返済 [公開日] [更新日]

借金が原因で離婚はできるのか?離婚の際に気をつけるべきこと

【この記事を読んでわかる事】

  • 借金を理由に離婚をすることができるのか?できないパターンとは?
  • 借金が原因で離婚をする場合、配偶者の借金はどうなるのか?
  • 住宅ローンがある場合の離婚を特に注意すべきなのは何故?

 

自分の知らないところで配偶者が多額の借金を抱えていたということは、実際にもよくあるケースです。

「何の相談もなく借金されたこと」などといったお金に対する価値観は、夫婦関係に大きな影響を与えることも少なくありません。

実際、借金が原因で離婚を考える夫婦も数多く存在します。

しかし、「借金を抱えたまま離婚したら、相手の借金も負担しなければならないのか」、「そもそも借金を原因に離婚することはできるのか」という不安を感じている人もいるかと思います。

実は、借金の内容によっては離婚が認められないケースや、離婚後も借金を双方で負担しなければならないものがあります。

今回は、借金と離婚との関係について解説します。

1.借金は離婚の理由になるのか?

「配偶者の借金を理由に離婚できるか?」ということについて、結論を述べると「離婚の方法』と『借金の原因』による」ということになります。

そこで、配偶者に借金があるという事情が「離婚の方法」、「借金の原因」によって離婚の可否にどのように影響するかについて確認しておきましょう。

(1) 離婚の方法

離婚する方法は、「夫婦の合意よって離婚する方法」と「裁判所の手続きによって離婚する方法」に大きく分けることができます。

裁判所の手続きによる離婚は、さらに、「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚」に分けられます。

このうち、審判離婚は、次のような場合に用いられるもので、「借金を原因に離婚できるかどうか」が夫婦で争われているときに用いられることはほとんどありません。

  • 夫婦が離婚することには合意しているが離婚条件で折り合いがつかない場合
  • 夫婦の片方が離婚調停に出席せず話し合いができない場合
  • 夫婦に離婚についての合意が成立していなくても、調停の内容をふまえれば夫婦を離婚させた方が良いと裁判所が判断した場合

①協議離婚

協議離婚は、夫婦が離婚に合意して市区村長に離婚届を提出して離婚する最も一般的な方法です。

協議離婚の場合には、離婚の理由は問われません。婚姻関係の継続は夫婦の意思が尊重されるからです。

②調停離婚

夫婦の片方が離婚に反対しているにもかかわらず離婚したいときには、裁判所の手続きを用いて離婚することになります。

この場合には、まず「離婚調停」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

離婚に関する法手続は必ず「調停」を最初に経る必要があります。これを「調停前置主義」といいます。

離婚調停では、調停委員(離婚調停の場合には、男女1名ずつの調停委員が選任される)の仲介によって夫婦間での話し合いがもたれます。

この離婚調停で離婚の合意が得られるのであれば、離婚の理由は問題となりません。

③裁判離婚を認めてもらうためには「借金の理由」が重要

離婚調停が不調に終わった場合でも引き続き離婚を望むときには、家庭裁判所に「離婚訴訟」を提起する必要があります。

訴訟による離婚(裁判離婚)を認めてもらうためには、民法が定める「法定離婚事由」が存在することを主張・立証する必要があります。

法定離婚事由は、民法770条が次のように定めています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 配偶者が強度の精神病患者で回復の見込み無し
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

「配偶者に借金があるだけ」では、上記の離婚事由に該当しないというのが現在の解釈です。

しかし、離婚訴訟となったときでも、借金の理由と程度によっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとして、裁判離婚が認められる場合があります。

たとえば、ギャンブルや風俗通い、収入の程度に不釣り合いな嗜好品や趣味への浪費が原因で多額の借金を抱えたようなときには、裁判離婚が認められる可能性があります。

このような借金は、夫婦の共同生活とは無関係な本人だけの利益や満足を目的とした借金だからです。

他方で、借金の理由が、生活費、子ども教育費、家族で使用する自動車の購入費であるようなときには、借金が多額であっても裁判離婚が認められる可能性は低いといえます。

実際の裁判例にも、「600万円の借金が原因で十分な生活費を渡してもらえない」ことを理由に専業主婦である妻からの離婚の求めに対して、借金の理由が子どもの教育費などの「生活のための費用に限られる」こと、「夫婦が共働きすれば返済できる借金であること」などを理由に、妻の離婚請求を棄却ものがあります。

2.離婚時の財産分与における負債の取扱い

離婚をすれば夫婦で築き上げてきた財産(共有財産)を分与しなければなりません。財産分与は積極財産だけでなく消極財産である負債も対象となります。

そのため、多額の負債を抱えた夫婦が離婚すると、離婚後も難しい問題を抱える場合が少なくありません。

(1) 財産分与の対象とならない負債

婚姻前から負担している負債で完済できていないものは、財産分与の対象とはなりません。このように婚姻前から保有している財産のことを「特有財産」と呼びます。

そのほかには、ギャンブルや風俗、浪費による負債も、婚姻生活に関係のないものなので、財産分与の対象とはなりません。

また、婚姻生活が破綻した後に抱えた負債は生活のための負債であっても特有財産とされる場合があります。

しかし、婚姻生活とは無関係の負債であっても連帯保証人・保証人となっている負債があれば、離婚後も連帯保証人・保証人としての義務は残ります。

(2) 財産分与の対象となる債務

財産分与の対象となる債務

夫婦が婚姻生活のなかで共同に築いた財産は、プラスのものもマイナスのものも財産分与の対象となります。

財産分与の対象となる主な負債としては、「日常家事債務」と「住宅ローン」があります。

①日常家事債務

婚姻生活において日常的に必要な事項のために負担した債務(日常家事債務)については、夫婦が連帯して返済義務を負います。

さらに、判例(最高裁昭和44年12月18日民集23巻12号2476頁)は日常家事債務の文脈では、夫婦は互いに他方を代理する権限があるとしています。

日常家事債務とされるものとしては、衣食住の費用、光熱費、医療費、家電製品・生活に必要な自動車にかかる費用、生活水準に見合った家電や家具などの購入費用や家族レジャーの費用・交際費、教育費などにかかる費用が挙げられます。

実際の判断は、「夫婦の収入や社会的地位や職業」、「実際に行われた法律行為の内容(自分で契約したのか配偶者を代理して行ったのかなど)」の要素によって判断されます。

配偶者がした「消費者金融からの借金」が日常家事債務に当たるかどうかは、その借金事情により判断されることになります。

消費者金融や銀行カードローンの目的が、生活費や子どもの教育費のためであることが明らかであれば、日常家事債務として取り扱われます。

しかし、実際のケースでは、消費者金融からの借金した理由が「日常生活の支出のため」であるかどうかはっきりしない場合が少なくありません。

このときには、借金の名義人が返済義務を負担することになります(離婚の際に双方で負担するという合意をすることは可能です)。

なお、日常家事債務は、夫婦の共同生活のための支出を対象とします。したがって、離婚前であっても既に別居している場合のように、共同生活が破綻しているケースでは、日常家事債務は発生しないと解されています。

②住宅ローンを残しての離婚は大変

住宅ローンを抱えた状態で離婚する際には、特に注意が必要です。

住宅ローンは、日常家事債務とは別に考えられるのが通常ですが、離婚の際には、ローンの名義人を誰であるかを問わず、ローンの残額を夫婦それぞれが分けて負担するのが原則です。

離婚時点でのマイホームの評価額が住宅ローンの残額よりも高いときには、処分後の残余金の分与をすれば良いので大きな問題にはなりません。

これとは逆に、住宅ローンの残額がマイホームの評価額よりも高いとき(いわゆるオーバーローン)には、マイホームの処分は簡単ではありません。いわゆる担保割れでの売却は、ローン債権者(抵当権者)の承諾を得ることができないからです。

ところで、マイホームを売却せずにローンの支払いを続けるときには、次の点に注意が必要です。

  • 離婚によって連帯保証人をやめることは難しいことが多い
  • 離婚すると生活費の負担が増えることが多い(相対的にローンの負担が増す)
  • 離婚後は夫婦間の連絡が希薄になることが多い

現在の住宅ローンには、連帯保証人を必要としないものが多くあります。

しかし、夫婦合算でローンを組んだ場合や、収入額に対して高額のローンを組んだ場合などには連帯保証人を求められることがあります。

また、最近では夫婦のペアローンで住宅を購入する人も増えています。

ペアローンの場合には、相互に連帯保証人となることが一般的です。このような場合では、離婚をきっかけに「連帯保証人から抜けたい」と考える人は少なくないと思いますが、実際には難しい場合がほとんどです。

債権者にとって連帯保証人は重要な担保なので、離婚という債務者側の事情で不利益を被ることを嫌がるからです。

また、離婚となれば、家計の負担が婚姻時よりも重たくなることが一般的です。

そのため、離婚後もローンの支払いを続けるときには、離婚前よりもローンの負担も重たくなることが一般的といえます。

さらに、離婚後はどうしても相互の連絡が希薄になります。特に、慰謝料や養育費に代わって退去した側が離婚後も住宅ローンを支払い続けているときには注意が必要でしょう。

実際にも、債権者から差押え通知が届くまで、相手方がローンを延滞していたことを知らなかったというケースもあるようです。

以上のように、住宅ローンを残したまま離婚をしたケースでは、後日に住宅ローンの延滞をめぐってトラブルになることも少なくありません。

そのため、最近では、オーバーローンの物件の場合でも、離婚前に任意売却することで住宅ローンを精算する人が増えています。

【参考】離婚の際にマイホームを任意売却することが多いのはなぜ?

3.借金を原因とする離婚の場合の養育費・慰謝料について

離婚する際には、財産分与だけでなく、養育費慰謝料についても定めておくことがあります。

多額の負債があるケースでは養育費や慰謝料の設定にも問題が生じる場合があります。

(1) 養育費

離婚する夫婦に子どもがいる場合には、夫婦のいずれかを親権者と定めます。親権者とならなかった親は親権者に養育費を支払うことで離婚後の扶養義務を果たします。

しかし、借金を原因に離婚したケースでは、そうでないケースよりも養育費の支払いをめぐって後日トラブルになるリスクが高いので注意が必要です。

離婚の際には、養育費の額や支払い方法をめぐってトラブルが生じないようにしっかり対処しておくべきでしょう。

場合によっては、離婚条件を強制執行可能な公正証書にしておくことも必要です。

なお、養育費の支払い義務は、自己破産や個人再生といった債務整理を行っても減免されません

養育費の支払いが難しくなったときには、任意の交渉で相手方の同意を得るか、養育費減額調停を家庭裁判所に申し立てることになります。

借金と養育費については「離婚した相手が借金まみれでも養育費を受け取るにはどうすればいい?」「自己破産しても養育費は免除されない!滞納したらどうなるのか?」をご覧ください。

(2) 慰謝料

借金をした配偶者に対して慰謝料の支払いを求めることはできるのでしょうか。

たしかに、浮気や悪意の遺棄、DVなどのように離婚の原因をつくりだした配偶者に対しては慰謝料の支払いを求めることができます。

しかし、借金は、不貞行為や家庭内暴力と異なり「違法な行為」といえるものではありません。

相手方が任意に慰謝料の支払いに同意している場合を除いては、裁判などで慰謝料の支払いを求めることはかなり難しいといえます。

また、慰謝料が認められたとしても、慰謝料額の算定は負債を抱えている状況が加味されるので、希望額よりも相当低くなると思われます。

4.離婚後の借金を整理する方法

離婚後に残った借金の返済が難しくなったときには、債務整理で解決することができます。

債務整理には、「任意整理」、「個人再生」、「自己破産」の方法があります。借金が膨らみきる前の段階で着手できれば、自己破産せずに、財産を失うことなく借金問題を解決することも可能です。

また、個人再生(住宅ローン特則付き)を利用すれば、住宅ローンの残ったマイホームを手放すことなく、消費者金融などの借金を解決することもできます。

離婚すると、これまでよりも様々な出費が増えることも少なくありません。そのため婚姻中は返済できていた借金が返済できなくなることもあります。

借金の問題は、早期に対応することが何よりも大切です。返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

5.まとめ

「借金と離婚」の問題には、数多くの難しい問題が付随して発生することが少なくありません。

離婚の可否だけでなく、慰謝料・養育費、借金の返済といったすべての問題を広く捉えて正しく対応することが大切です。

離婚を考える方の多くは、「とにかく早く離婚したい」と考えている方が多いように感じます。しかし、離婚を急いだことで、離婚後にトラブルが生じるケースも少なくありません。

特に借金の問題があるときには、「債務整理してから離婚した方が良い」ケースもあるでしょう。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、いろいろな対処法をアドバイスさせていただきます。

債務整理に関するご相談は無料となっておりますので、是非一度弁護士にご相談ください。

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