借金返済 [公開日]2020年2月12日[更新日]2020年8月11日

2020年の民法改正による消滅時効の変更点とは?

借金には「消滅時効」というものがあります。
消滅という名の通り、時効が成立した場合、借金の支払義務が消えて無くなってしまうのが「消滅時効」です。

その消滅時効に関するルールを定めた法律である民法の債権法分野が、このたび抜本的に改正され、2020年4月より改正法が施行されます。

「時効完成までの期間が伸びるの?」「自分は具体的にいつが時効になるの?」など、皆様にとって心配な面もあるかもしれません。

そういった方々のために、ここでは民法改正に伴う消滅時効の注意点を紹介していきます。

現在借金がある人や、これからお金を借りる予定がある人は、ぜひお読み頂ければと思います。

1.消滅時効までの期間の変更

2020年4月の民法改正では、以下のように消滅時効までの期間が変わります。

  • 改正前:客観的起算点から10年
  • 改正後:主観的起算点から5年または客観的起算点から10年

「主観的起算点から5年」という部分が追加されたのですが、「主観的起算点」「客観的起算点」とはどういう意味なのでしょうか?

(1) 主観的起算点

主観的起算点は、2020年4月の民法改正で新しく加わった概念です。
これは「債権者が債務者や権利の発生、履行期の到来などを認識した時点(権利を行使することができることを知った時点)」という意味です。

例えば、お金を貸すという契約をして、返済日を5月1日に設定したとします。
この場合、債権者は「お金を貸す契約をしたこと」や「お金を返してもらう時期」などを知っているのが普通です。

そのため債権者は「5月1日になったから、お金を返してもらう権利が発生したな」「履行期が到来したな」ということも知っていて当然ということになります。

他方、民法には「初日不算入」という原則があり、日・週・月・年で時効期間を定めた場合、その期間の最初の日はカウントしないことになっています。

このため、上記の例では「初日である5月1日」をカウントしないで、5月2日から消滅時効のカウントが始まることになります。

(2) 客観的起算点

「客観的起算点」とは、「債権者が法律上の障害なく権利行使できる状態となった時点(権利を行使することができる時点)」という意味です。

例えば5月1日にお金を返してもらう契約をしていた場合、債権者は5月1日が来るまでは債務者に「お金を返して欲しい」と請求できません。
返済期限が来てもお金を返してもらえなかったときにようやく、「法律上の障害なく、お金を返してほしいという権利を行使できる状態」になるのです。

この場合の消滅時効の起算点も初日不算入の原則が入り、5月2日からカウントが始まることになります。

 

結論から言えば、主観的起算点と客観的起算点は一致することが多く、消滅時効は実質的に10年から5年へと短縮されるケースが多くなると考えられます。

債務者にとっては有利になるかもしれませんが、債権者の方でも債権管理を改めるきっかけになるので、消滅時効の成立を防ぐために様々な対策が行われる可能性があります。

2.職業別の短期時効の廃止

改正前の民法では、原則的に10年の消滅時効が定められていますが、債権の種類によっては短縮されることがあります。

例えば、以下の職業の人の債権は、原則である10年よりも、かなり短い消滅時効期間となっています。

  • 医師、薬剤師、助産婦、工事の設計や施工を業とする者など:3年
  • 弁護士、卸売商人、小売商人、一部の教育関係者:2年
  • 飲食店、旅館など:1年

改正民法では、これらの職業別の短期消滅時効期間は全て廃止され、上記の債権に関しても、「主観的起算点から5年または客観的起算点から10年」の規定が適用されることになります。

例えば、飲食店の「ツケ払い」の場合、改正前であれば、1年で消滅時効の援用によって支払義務がなくなりました。
これは契約書を結ぶことが極端に少ない飲食店にとって、大変不利な決まりごとです。

しかし、2020年の改正によって、ツケ払いのお金についても、少なくとも5年へと時効期間が延長されることになります。その分、ツケをためている債務者側にとっては不利になります。

3.商事消滅時効の廃止

商事取引、簡単に言えばビジネスで行った取引については、民法の特別法である「商法」が適用され、改正前の民法より短い5年という消滅時効が定められています。

「ビジネスでやっていることだから、消滅時効に敏感でいましょうね」というイメージでそのようになったと考えてください。

しかし、民法改正後は、こうした商事債権についても、先述の「主観的起算点から5年または客観的起算点から10年」が適用されます。

前述の通り、殆どの場合、主観的起算点と客観的起算点は一致するので(特に、商事取引の場面において、主観的起算点が遅れる(権利が行使できる状態にあることに債権者が気づかない)という事態は、まず考えにくいでしょう)、結局、時効期間は従来通りの5年ではあるのですが、念のため覚えておきましょう。

4.不法行為による損害賠償請求権

不法に誰かの物を壊してしまった、あるいは誰かの生命や身体を傷つけてしまった場合は、それによって生じた損害を賠償しなければなりません。
こうした損害賠償請求権にも消滅時効に関するルールがあり、これは、従来、「主観的起算点から3年、客観的起算点から20年」とされてきました。

後半の20年の方は「除斥期間」と言われており、時効の援用をしなくても成立し、時効のリセットなどもされない絶対的な期間として扱われてきました。

しかし改正後は、「主観的起算点から3年、客観的起算点から20年(時効)」とされて、除斥期間が撤廃されます。

また、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、人の生命や身体の侵害によって生じた損害賠償請求権は「主観的起算点から5年、客観的起算点から20年(時効)」となり、主観的起算点が3年から5年に伸びることになります。
生命・身体に損害を蒙った不法行為の被害者のケアが少し厚くなった形です。

 

以上ご説明した他にも、今回の民法改正では、定期金債権(年金など)の消滅時効期間の変更、時効完成の障害事由の整備・追加、時効の援用権者の範囲の明文化等といった、時効のルールに関する重要な改正がいくつも行なわれました。

ただ、一般の方が、これらの改正後のルールを全て正確に理解するのはなかなか難しいでしょうから、ご不明な点は専門家に相談するのが安心かと思います。

[参考記事]

時効の援用を自分でやろうとして失敗してしまったら…

5.改正前の借金については改正前の法律が適用される

なお、法律の改正によって全てを変えてしまうと混乱が予想されるため、「経過措置」というものが設けられています。

この経過措置により、改正後の法律が実際に適用される対象は、改正後(改正法の施行後)に行なった法律行為に基づく債権債務となります。
したがって、改正民法の施行前(2020年3月31日まで)にした借金については、改正前の民法のルール(職業別の短期消滅時効期間など今回の改正で廃止されるルールも含めて)が適用されます。

例えば、改正前にお金を借りるなどの契約をして、お金を返す時期(弁済期)が改正後になるような場合は、改正前の決まりが適用されます。
弁済期がいつなのかではなく、債権債務が発生する原因となった契約が改正の前なのか後なのかが基準なのです。

改正前に借金をしている人の場合は、改正法が施行された後も、改正前の法律が適用されることを覚えておきましょう。

6.時効の確認は改正前後も変わらず弁護士へ相談を

時効の起算点に「主観的起算点」の概念が加わったことによって、殆どの消滅時効は(債権者が権利を行使することを知った時から)5年になると考えてください。
(本記事で説明したものの中では、一般的な不法行為による損害賠償請求権の「3年」が例外でしょう。)

なお、民法改正では時効について様々な変更点がありますが、変更後のルールの適用対象は、全て改正後の法律行為によって生じたものに留まります。

改正前の借金を消滅時効で解決しようとしている人は、改正後ではなく改正前の規定が適用されることを覚えておいてください。

泉総合法律事務所では、「時効の援用」に関するご相談も多く承っております。
「自分の借金は時効が成立をしているのではないか?」という方は、一度弁護士にご相談頂ければと思います。

[参考記事]

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