うつ病で働けず休職・失業…借金が嵩んだら債務整理はできる?

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うつ病で働けず休職・失業…借金が嵩んだら債務整理はできる?

【この記事を読んでわかる事】

  • うつ病で失業してしまった場合の救済策や制度はどんなものがある?
  • うつ病で休職、退職をし、生活費が足りず借金をしたらどうすればいい?
  • 仕事がない場合、どのような債務整理方法を選択できる?

 

病気な上に、借金が嵩み生活が苦しくなったら、今後の生活をどうするか途方に暮れてしまうのは当然のことです。

厚生労働省の調査によると、平成26年に医療機関を受療したうつ病・躁うつ病の総患者数は112万人に昇るそうです。

うつ病に至る要因はさまざまですが、健康問題、家族問題、経済生活問題、雇用・労働問題などの問題が背景にあると考えられています。

また、うつ病で思ったように働けず、借金を重ねてしまい、そこから生活が破たんして、さらに症状が悪化するケースも少なくありません。

今回はうつ病で働けなくなったときの対処法と、債務整理について解説します。

1. うつ病患者による休職者・退職者

近年、うつ病による休職者が増加し続けています。

ひと昔前は、精神疾患で会社を休むというのは限られたケースでしたが、今やメンタルヘルスの問題で職場を去る人は珍しくありません。

実際に「2012年職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」によると、1 年間に1ヶ月以上休職、退職した労働者がいる事業所は25.8%にのぼり、4社に1社はそうした社員を抱えていることが分かっています。

(1) うつ病による休職者数

現代ではうつ病で会社を休む人は多く、「2004年7月厚生労働省の調査」の統計によると、うつ病を理由とした休職者が全国で20万人を超えています。

また、ある研究者の試算では47万人が休職しているとされ、実に多くの人がうつ病で会社を休んでいることが分かります。

休職中の社員に対しては、給与に関しての法的な決まりは特にありません。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、メンタルヘルスを理由に休職する場合、給与を支給しない企業が75%、支給する企業が約18%とのことです。

支給する企業の中でも100%満額支給する企業は7.5%で、その他は減額支給です。

勿論、その場合でも傷病手当金はあるので、全くの無収入になるということはありませんが、傷病手当で支払われるのは給与の約3分の2の金額です。

こうした状況を考えると、うつ病による休職が長期に及んだ場合、経済的に厳しい状況に置かれることは想像に難くありません。

(2) 休職中でも支払いが必要なもの

うつ病で休職をして給料の支払いがない場合でも、以下の2つについては支払いをする必要があります。

①社会保険料

社会保険料は労使折半で納付しているので、休職中で給料が支払われない場合でも、社会保険に加入している以上は保険料の支払いは発生します。

休職中は会社が一時立て替えで支払うケースが多く、復職後に返済するパターンもあります。

しかし、休職期間が長くなり、金額が大きくなる場合は、毎月現金で支払いを要求されることもあります。

②税金

会社を休職しても税金が免除されることはありません。

給与が支払われる場合はそこから天引きされますが、支払われない場合は会社が一時立て替えをします。

また、住民税の徴収方法を変更して、本人が直接納めるという形にもできます。

いずれにせよ、病気で会社を休んでも税金は発生するので、休職中の負担は決して軽くありません。

(3) 休職中、支給されるもの

①傷病手当金

傷病手当金は健康保険加入者が病気療養中に支給される手当で、会社から十分な給与の支給がないときに、被保険者とその家族の生活保障をする制度です。

傷病手当は、病気が理由で連続して3日休み、4日以上仕事に従事できず、かつ十分な給与の支払いがないときに支給されます。

傷病手当の給付期間は最大で1年6ヶ月。例えばうつ病で会社を休み、1年6ヶ月以内に復職したものの、再びうつ病が悪化して休職した場合には、復職期間も1年6ヶ月に組み込まれます。

傷病手当の金額は給与の約3分の2であることをお伝えしましたが、正確な支給金額は以下の式で算出します。

傷病手当(1日当たりの金額)=(支給開始日以前の12ヶ月の報酬月額の平均額)÷30×3分の2

仮に月の給与が30万円の場合、上記の式に当てはめると

30÷30×3分の2=6,666円

となります。休職しても日額で6,666円の手当があるのとないのは大違いなので、健康保険加入者にとっては有り難い制度です。

ちなみに、労災で休業補償を受けている場合は受給対象外です。傷病手当はあくまでも業務に関わりのない病気やケガによる休職が対象となります。

(4) 退職した場合

うつ病が原因で退職せざるを得なくなった場合は、以下の3つの手当てを受給できる可能性があります。

①失業保険は受給可能

失業保険は、雇用保険から行われる給付で、過去2年間に雇用保険の加入期間が1年以上ある場合、受給が可能です。

受給金額は年齢と給与額によって決定されます。支給額は給与の50~80%で、給与が低いほど給付率は高くなります。

失業保険の計算式は以下の通りです。

基本手当日額=6ヶ月の賃金÷180×(50~80%)
失業手当月額=基本手当日額×28

たとえば40才の人で6ヶ月の賃金が210万円の場合、給付率は50%です。その場合は

基本手当日額:210万円÷180×50%=5,833円
失業手当月額:5,833円×28=163,324円

上記の額を受給することが可能です。失業保険は最短で90日、最長で360日分支給されます。

②障害年金の受給

障害年金は病気やケガで日常生活が困難になったり、働けなくなったときに受給できる年金です。

厚生年金、国民年金ともに受給可能な年金で、うつ病も対象に入ります。

障害年金は借金があっても受給できるので、うつ病で働けず、失業保険もなく、借金で困っている人には有り難い制度です。

しかし、うつ病は骨折などのようにレントゲン検査で証明できるものではないので、受給ハードルが高いとも言われています。

障害認定にあたっては、外来・入院状況、治療期間、家族の支援、就労状況、要支援などの要件を総合的に考慮されます。

障害年金の受給については、厚生年金の人は年金事務所か共済事務局に、国民年金の人は市町村の年金係で相談してください。

障害年金を受給するほどではなく、身の回りのことはできるけれど、就労は不可能で生活が苦しいという場合は生活保護の受給も視野に入れましょう。

③生活保護の受給

うつ病で退職してお金に困っている場合は、生活保護を受給することも可能です。生活保護は借金があっても受給することができます。

しかし、原則生活保護費を借金返済に充てることはできません。

生活保護費は税金から払われ、あくまでも生活費を支給するものであり、借金返済に使われるのは趣旨に反するからです。

ただし、借金が少額であれば自己破産ができないので、生活保護費を返済に充当することも可能です。この辺りはケースワーカーに相談しましょう。

また、生活保護受給後は新たに借金をすることや、その借金の返済に充てるのもNGです。受給中はあくまでも支給された金額の範囲で生活をすることになります。

2. 借金がある場合

借金がある場合

うつ病で休職・退職をしたときには、ここまで紹介したように色んな手当てがあります。まずはそうした制度を利用して生活費を得ることをおすすめします。

しかし、それでも借金があって生活費が足りない、返済が出来ずに困っているときは、債務整理を検討してみましょう。

債務整理というと自己破産=全財産を失う、というイメージがあると思いますが、財産を残しつつ借金を減額することも可能です。

また自己破産であっても少しの財産は手元に残すことはできます。

もともと債務整理は借金に困っている人の救済制度なので、うつ病で仕事ができず苦しんでいるのであれば、精神的な負担を軽くするためにも、債務整理に踏み切るのは決して悪い話ではありません。

債務整理は生活保護や障害年金を受給していても可能ですが、生活保護の場合は一部制限がつくので注意が必要です。

(1) 生活保護受給者の場合

債務整理には主に任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。任意整理と個人再生は借金を減額する制度で、自己破産は借金が全額免除される制度です。

生活保護受給者は任意整理と個人再生は選択できません。というのもこの2つの手続は、手続後に減額後の支払いが残ります。そうすると生活保護費を借金返済に充当しなければならないので不可とされています。

一方、自己破産をすることは可能です。自己破産は借金が全額免除されるので、生活保護費が借金返済に充てられることもないため、手続が認められています。

(2) 生活保護受給者でない場合

生活保護を受給しない場合は、任意整理、個人再生、共に可能です。

もし、うつ病で退職しても、借金が減額されれば自力で生活できる、という場合には任意整理か個人再生を選びましょう。

任意整理や個人再生はマイホームを手放さずにすむので、自宅や車などの財産を手元に残したい人には適しています。

(3) 障害年金受給者

障害年金受給者の場合は任意整理・個人再生・自己破産、いずれも可能です。障害年金はあくまでも「年金」なので、そのお金の使い道は自由です。

生活保護のような制限は一切つかないので、公的な支援をもらいながら任意整理・個人再生を目指す場合は、障害年金を受給するのがベストです。

繰り返しになりますが、うつ病での障害年金受給は基本的にハードルが高いので、誰でもできる訳ではありません。

しかし日常生活に大きな支障がある場合は受給できる可能性もあるので、もし希望する場合は年金窓口や病院のケースワーカーに相談してみましょう。

(4) まとめ

うつ病で休職・退職に至るまでには、人それぞれ色んな原因があると思います。そこに借金が重なれば心の負担は余りにも大きいでしょう。

借金はうつを引き起こす大きな要因と言われているので、借金が減るだけでも楽になります。

うつ病のときは大きな判断をするのは避けたほうが良いと言われます。そのため、もし債務整理をするにしても慌てて一人で決断するのは得策ではありません。

しかし、借金問題は出来るだけ早く解決するのがベストです。問題が長引くほど状況は不利になり、健康にも悪い影響を与えます。

そのために大事なのは専門家と一緒に解決をすることです。

いずれにしても、今の借金がどれくらいあるのか、どのくらい減らせるのかを専門家に相談しましょう。

債務整理するべきかどうかもそこで分かります。そして最も良い方法を探していきましょう。

今、最も優先すべきはうつ病を治療することです。そのためには一刻も早く借金による心の負担を軽くする必要があります。

是非、一度、泉総合法律事務所の弁護士に相談してみてください。

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