クレジットカードのショッピング枠の現金化の違法性について
街中で、「クレジット枠の現金化」「カードでお金」と書かれた看板をご覧になったことはありますか?
これは、クレジットカードのショッピング枠を使って現金を得ることができる、いわゆる『ショッピング枠の現金化』を受け付ける業者の看板になります。
ここでは、ショッピング枠の現金化が違法なのか、どういう仕組みで現金化されるのか、ショッピング枠の現金化をした人は自己破産できるのかなどを解説していきます。
1.ショッピング枠の現金化とは
クレジットカードには、現金を借りることができるキャッシング枠と、買物などで利用できるショッピング枠があり、それぞれ利用限度額が決まっています。
ショッピング枠の現金化とは、簡単に言うと、クレジットカードのショッピング枠を使って商品を購入し、購入した商品を売却して現金を得るという一連の「換金行為」のことです。
「なんでそんな面倒くさいことをするの?」「だったらキャッシングすればいいのに」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
なぜわざわざこのように手間がかかることをするのかと言うと、ショッピング枠の現金化をする人は、そもそもキャッシングの限度額がいっぱいとなり、これ以上他のクレジットカードでもキャッシングをすることができなくなった人がほとんどだからです。
2.ショッピング枠の現金化の方法
ショッピング枠の現金化の方法は、大きく分けて3つあります。
(1) 自分で現金化
デパートなどで商品券をクレジットカードで購入し、換金ショップなどで現金化する方法です。
(2) 業者に頼んで現金化
「クレジット枠の現金化」の看板を掲げている業者や、口コミで知った業者に電話し、業者の指示でクレジットカードを使って商品を購入し、購入した商品を業者に持ち込んで現金を得る方法です。
(3) 悪質な業者(闇金)に頼んで現金化
主にインターネットで「クレジット枠の現金化」などの広告を出している業者に電話し、業者へクレジットカードの暗証番号、氏名、住所、生年月日などの個人情報を伝え、ショッピング枠を現金化する方法です。
一連の流れは、以下の通りです。
これは、実際に購入した価値がある商品が存在しないことから、「空クレジット」とも呼ばれています。
なぜ上記のようなケースが悪質かと言いますと、ショッピング枠の現金化は、現金を貸付ける行為と同じですので、貸金業として登録をしていないといけません。
上記のような方法を取る多くの業者は貸金業として登録をしていないどころか、闇金業者であることがほとんどです。
この方法ですと、クレジットカードの暗証番号などの重要な個人情報が闇金業者に流れてしまうことになりますので、絶対にしてはいけません。
3.ショッピング枠の現金化の違法性
まず初めに言っておきますと、ショッピング枠を現金化した人が逮捕されたという話はあまり耳にしません。
ですが、ショッピング枠の現金化には、以下の点で犯罪の可能性・違法性があると考えられています。
(1) 詐欺
ショッピング枠とは、あくまで商品の買物のために決められたものであるため、ショッピング枠を現金化してしまうとカード会社を騙したことになります。
(2) 横領
一般的に、クレジットカードで購入した商品については、その支払いが終わるまで商品の所有者はカード会社になります。
支払いが終わる前に売却する行為は、カード会社の所有物を勝手に売ってしまうことになりますので、横領行為と言えます。
(3) カード規約違反
前述(1)(2)の通り、カード会社にとってはデメリットしかありませんので、そもそもショッピング枠の現金化は規約違反であると定められています。
もっとも、ワラにもすがる行為と言えるショッピング枠の現金化に手を出してしまう利用者は、貸倒れ(利用者が自己破産するなど)リスクが非常に高いため、規約違反と規定されてしまうのは無理もありません。
4.メルカリでの現金化問題
ところで、「メルカリ」というものをご存知でしょうか?
メルカリとは、スマートフォンで行えるフリーマーケットアプリの名前で、不要になった物に値段を付けて出品し、購入したい人がその値段以下で購入することができるサービスです。
購入する人は、クレジットカードを利用することができます。
(1) メルカリで現金が出品
このメルカリで、つい先日まで現金が出品されていました。
もうお気付きかもしれませんが、メルカリで出品されている現金をクレジットカードで購入した場合、それはショッピング枠の現金化に当たります。
(2) 現在は現金での出品は禁止
メルカリは多くのカード会社と提携していますので、カード会社にとってデメリットしかないショッピング枠の現金化の疑いが強い現金の販売は、すぐに禁止されました。
しかし、現在は現金がチャージされているSuicaや貴重であるとされた札束が出品されるようになったため、メルカリ側も監視を強化するなど、ショッピング枠の現金化の疑いが強い商品の出品を全て排除すべく動いているようです。
5.ショッピング枠の現金化と債務整理
ショッピング枠の現金化などが原因で多重債務に陥ってしまい、債務整理を弁護士にお願いする人は少なくありません。
任意整理や個人再生を選択した場合はそれほど問題にはならないのですが、自己破産を選択した場合は別です。
(1) ショッピング枠の現金化は「免責不許可事由」
破産の法律には借金の免除を認めないと定めた事情がいくつか明示されており、これらを免責不許可事由と言います。
この免責不許可事由は、「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」と定められており、後半に記載のある「商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」、この行為がまさにショッピング枠の現金化を指しているのです。
(2) 裁量免責
自己破産手続の一番の目的は、「借金を免除し、人生の再スタートをすること」とされています。
たとえ借金の事情の中にショッピング枠の現金化があった場合でも、この目的に沿って借金が免除されるよう、しっかりと自己破産の法律で定められています。
これを、「裁量免責」と言います。
(3) 裁量免責の判断ポイント
ただし、裁量免責という制度があるからと言って、ショッピング枠を現金化したことを開き直ってはいけません。
ショッピング枠の現金化行為が悪質であったかどうか裁判所が判断するポイントは、以下の2点になります。
①破産手続の開始を遅延させる目的
ショッピング枠を現金化するほとんどの人は、自己破産することを先延ばしにする目的は持っていなかったと主張します。
そもそもショッピング枠の現金化が免責不許可事由に該当することを知らなかった人の方が多いことでしょう。
しかし、ショッピング枠の現金化をする人の多くは、すでに債務超過状態であるため、「自身が自己破産することなど全く考えていませんでした」という主張はなかなか通らないものです。
②著しく不利益な条件で処分したこと
ここで重要なのが、「換金率」です。
たとえば、新幹線チケットを100、000円分購入し、96、000円で売却した場合、換金率は96、000円÷100、000円=96%となります。
一概には言えませんが、換金率が90%以上であれば、「著しく不利益な条件だとは言えない」と理解を示してくれる裁判所が多く、換金率が95%を超えればほとんどの裁判所が著しく不利益な条件ではないとみなしてくれます。
【参考】免責不許可事由とは?該当しても裁量免責で自己破産ができる!
6.ショッピング枠の現金化をした方も泉総合法律事務所へ
ショッピング枠の現金化をした方のほとんどが債務超過状態であるため、最終的に選択した債務整理手続の方法が自己破産であるケースが多いです。
最近ではこのショッピング枠の現金化の問題性について取り沙汰されることが多くなったため、近いうちにショッピング枠の現金化を禁止する法律ができるかもしれません。
泉総合法律事務所では、ショッピング枠の現金化をした方から借金問題に関する多数の相談をいただいており、それらのお悩みを自己破産によって解決した実績が豊富にございます。
【事例 51】換金行為をして作った借金も自己破産で免除に
借金問題でお困りの方は、是非とも泉総合法律事務所にご相談ください。債務整理のご相談は何回でも無料です。お気軽にご連絡いただけたらと思います。