債務整理 [公開日] [更新日]

債務整理と生命保険の関係-解約返戻金や再加入はどうなるのか


生命保険は、家族が万一の事態に陥った場合に備えて入っておくものです。

債務整理を行う場合に、生命保険で一番心配なのは解約返戻金のことではないでしょうか。

今回は、債務整理と生命保険との関係について解説します。

1.債務整理の原則的考え方

債務整理をすると、借金は減額、または全額免除してもらうことができます。

しかし、財産があるのにも関わらず借金を帳消しにするのは筋が通りません。債務整理が認められるのは、基本的にどうしても借金が払えない場合に限ります。

そのため、原則として、財産が残っている場合はまずその財産を借金返済に充てるべきで、その上で、必要に応じて借金の減免措置をとることになっています。

ただし、債務整理の制度によっては、財産処分の義務があるものとそうでないものがあり、保険の解約返戻金も取り扱いが異なるので注意が必要です。

(1) 任意整理

任意整理は借金を減額する制度で、将来利息をカットして、残債を原則3年で返済します。

任意整理は債権者と2者間の話し合いで行い、裁判所を介する必要がありません。

任意整理は借金の減額幅こそ少ないものの、裁判所により財産の調査もなく、自分で債権者を選んで債務を整理することが可能で、財産を処分する必要もありません。

もちろん、生命保険の解約もする必要がないので、積立式の生命保険に加入しており、解約返戻金が多い場合は、任意整理をおすすめします。

(2) 個人再生

個人再生は借金を大幅に減額できる制度で、借金をおよそ1/5まで圧縮することが可能です。

個人再生は任意整理同様に、基本的に財産を処分する必要はないので、生命保険を解約する義務はありません。

ただし、仮に財産(保険の解約返戻金含む)を処分したときの金額が、個人再生で定められた最低弁済額を上回る場合は、財産額に相当する弁済を行わなければなりません。

なぜなら、個人再生する場合は、自己破産で財産を清算したとき以上の弁済をすることが義務付けられているためです。これを「清算価値保証の原則」といいます。

このルールにより、債権者は自己破産されるより最終的に多くの金額を受け取れるので、個人再生に同意しやすくなるのです。

そのため、もし、生命保険に加入をしていて、高額の解約返戻金がある場合は、再生計画の弁済額が大幅に増大する可能性もあります。

個人再生では保険の解約義務はないものの、弁済時に資金繰りの問題で解約しなければならない可能性があることは想定しておきましょう。

(3) 自己破産

自己破産は財産を全額免除する制度です。その代わりに、家や車などの財産を残すことは認められず、財産は換価され債権者に平等に配当されます。

基本的に自己破産の際に手元に残せるのは、99万円以内の現金と、生活に必要な最低限の財産のみです。

それ以外の預貯金、財産は原則債務返済に充当しなければなりません。

生命保険も例外ではなく、解約返戻金がある場合は、裁判所から解約を請求される場合があります。

もしくは、その前に弁護士から解約するように言われる可能性が高いでしょう。

(4) 対策

自己破産をすると、解約返戻金がある場合には生命保険の解約をしなければなりません。

しかし、以下のときには解約を免れる可能性があります。

①自由財産の拡張

自己破産では全ての財産を処分しなければいけない、ということはありません。上述したように、99万円以下の現金、および身の回りの生活必需品は手元に残すことが可能です。

こうした財産は「自由財産」と呼ばれます。自由財産は手元に残すのは、破産者から何もかも奪うと、その後の生活が立ち行かなくなるからです。

そもそも、債務整理は債権者の経済的な再建をはかるための制度であり、自己破産によって生きられなくなる事態になるのは主旨に反しています。

生命保険の解約返戻金は自由財産にはなりませんが、20万円以下の場合は「自由財産の拡張」として、手元に残せる可能性があります。

自由財産の拡張とは、本来自由財産でない財産を、裁判所が認めることで自由財産として扱うことができる制度のことです。

自由財産の拡張が認められるのは、自由財産だけではその後の生活が立ち行かなくなる恐れがあるからです。対象となるのは資産価値が20万円までの財産で、生命保険の解約についても例外ではありません。

②契約者貸付を利用する

生命保険には契約者貸付制度があります。

これは、解約返戻金の一部を契約者に貸す制度で、貸付を受けることで、解約返戻金を20万円以下にすることが可能です。

これにより、自己破産の際に生命保険を強制解約は免れることができますが、借りたお金の使い道については自己破産申請の際に調査が入ります。

自己破産することが分かっていて契約者貸付を行った場合、お金の使い道によっては免責不許可事由に抵触する恐れもあります。

この点について心配な場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。

③保険法の介入権制度を利用

自己破産で生命保険の解約を免れるには、保険法の介入権を利用する方法もあります。

介入権とは、保険金の受取人が保険契約者と同意の上で、解約返戻金に相当する額を代わりに支払うことで、保険解約を阻止することができる制度です。

保険金受取人で介入権を行使できるのは以下の続柄の人です。

  • 保険契約者および被保険者の親族
  • 被保険者本人

保険金受取人でも例えば内縁関係の場合は、介入権を行使することはできません。

2.債務整理後の加入

自己破産等で保険を解約せざるをえない場合、債務整理後に保険に再度加入するのは難しいのでは?と思いがちですが、生命保険の加入に関して債務整理による影響はありません。

しかし、債務整理する前に保険料を滞納、遅延した場合はどうなのでしょうか?

(1) 保険料の滞納

債務整理前に保険料を滞納していた場合は、保険が失効になるだけです。

支払を滞納しても保険会社は特に損害はないので、契約を解消するだけで事が足りるからです。そのため、生命保険の滞納で葉信用情報に傷がつくこともありません。

(2) 保険料支払遅延

保険料の支払いが遅れた場合、2カ月以上滞納すると解約返戻金から自動振替されます。解約返戻金がなく自動振替するお金がない場合は失効します。

しかし、生命保険は失効後3年以内であれば、滞納した保険料を追納すれば契約復活が可能です。

(3) 大手生命保険会社は、信用情報機関に加盟

基本的に債務整理をしても、生命保険に加入をすることは可能です。

しかし、大手の生命保険会社は信用情報機関に加盟しています。

よって、過去の金融事故情報が筒抜けなのでは?と思いますが、生命保険の契約に関してはブラックリスト情報を照会することはできません。

信用情報の照会ができるのは、あくまでも返済能力を調査するときのみ。保険料の支払は、借金の返済ではないので、契約に際して信用情報を照会することはできないのです。

そのため、債務整理後でも生命保険に加入することは可能です。ただし、高齢であったり、病気を抱えていたりする場合は再加入が難しいこともあります。

生命保険に再加入できるかどうかは、契約内容や健康状態、年齢などが関わるので、債務整理に踏み切る前に、専門家とよく相談をして最善の方法を選択することをおすすめします。

3.まとめ

任意整理や個人再生であれば、加入している生命保険を解約しなければならないということはありませんし、債務整理後加入できないということもありません。

もし、債務整理で躊躇していることがあったら、泉総合法律事務所にご相談してみてください。状況に応じたベストな解決策を、債務整理に詳しい弁護士がご提案します。

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