自己破産 [公開日]2018年8月31日[更新日]2021年10月22日

夫婦で自己破産は可能?|片方だけ・同時の破産をまとめて解説

夫または妻のどちらかが多額の借金を抱えたとします。
あるいは、一方の配偶者だけではなく、夫婦ともに返済不能な額の借金を背負ってしまうこともあるでしょう。

どうしても借金を返済できそうにない場合、自己破産をして債務を0にできる可能性があります。

しかし、「生計を共にする夫婦の一方が自己破産をすると、もう一方にも何らかの影響が出ないのか?」「同時に自己破産をすると、夫婦揃って路頭に迷うのではないか?」と不安になる方もいらっしゃると思います。

夫婦の片方、あるいは夫婦が同時に自己破産はできるのでしょうか?

そして、自己破産が夫婦に及ぼす影響には、どのようなものがあるのでしょうか?

1.自己破産は夫婦同時にできるのか?

まずは「夫婦ともに自己破産はできるのか?」を考えていきます。

(1) 同時の自己破産は即決すべきではない

制度上、夫婦が同時に自己破産することは可能です。
しかし、借金の内容や保有している財産によっては、夫婦のどちらかあるいは両方が自己破産せずに乗り切れる可能性もあります。

債務整理には、以下3つの方法があります。

  • 自己破産…借金をゼロにする代わりに、高価な財産は処分される
  • 任意整理…将来の利息などをカットしてもらい、分割払いを続ける
  • 個人再生…借金を元本含め大幅にカットしてもらい、分割払いを続ける

例えば夫の借金が過大で、妻の借金がそれほどでもなければ、夫は自己破産・妻は任意整理という方法を採ることもできます。

しかし、夫が自宅や車、保険などの名義人なのであれば、自己破産をするとそれらを失ってしまう可能性があります。
この場合、夫は基本的に財産を失わずに済む個人再生をして、妻は自己破産をすることで家計の返済額を少なくするなどの方法も考えられます。

借金の額と保有資産、そして収入はどの程度なのか等を総合的に考えなければ、効果的な債務整理はできません。

組み合わせは無限にあり、ケースバイケースで最適な方法が変わってきますので、債務整理の専門家である弁護士に相談してアドバイスをもらうのが良いでしょう。

(2) 【参考】夫婦両方が自己破産するべきケース

あくまで参考ですが、夫婦の片方が過大な借金を背負っており、もう片方がその保証人になっている場合などは、夫婦同時に自己破産した方が良いかもしれません。

自己破産によって借金がゼロになる効果は、あくまで「自己破産をした本人」のみです。保証人(連帯保証人)の支払義務は継続します。
すなわち、債務者本人が自己破産しても、債権者はその保証人に支払いを請求できるのです。

保証人である配偶者が保証債務を支払えない場合、夫婦の片方のみが自己破産をしても事態が好転したとは言えません。

この場合、夫婦揃って自己破産した方が、根本的な解決になる可能性があります。

[参考記事]

自己破産をすると連帯保証人にどのような影響を与えるか?

なお、裁判所によっては、夫婦同時に自己破産すると破産にかかる費用を割り引いてもらえることがあります。

2.夫婦の片方だけ破産した場合の配偶者への影響

では、夫婦の片方のみが自己破産した場合、もう片方にどのような影響があるのでしょうか?

(1) 直接的な影響はない

前述の通り、自己破産の効果は「申立てをした本人」にのみ生じます。
そのため、配偶者が自己破産をしたとしても、自己破産をしていない方の財産は処分されません

[参考記事]

自由財産とは|自己破産しても財産が残せる!拡張は可能か?

また、自己破産するとブラックリストに登録されて借入やクレジットカードの作成などができなくなりますが、配偶者までブラックリストに登録されるわけではありません。

[参考記事]

ブラックリストとは|何年で消える?掲載のデメリットと確認方法

自己破産をしても、直接的には配偶者に影響はないのです。

(2) 間接的な影響は多い

直接的な影響がないと言え、現実的には色々と問題があります。

例えば家や車などの名義人が自己破産した場合、破産した方の高額な財産は処分されるため、住む場所や交通手段を失うことになるかもしれません。

また、自己破産の手続きが終わるまで、一定の仕事ができなくなるデメリットも存在します。該当する職業の人は収入がなくなるため、他の仕事をするか、配偶者に支えてもらう必要が出てきます。

[参考記事]

自己破産と仕事の関係|制限を受ける職業・資格一覧

さらに、夫婦の片方がもう片方の債務を保証している場合は、前述のように債権者からの督促が保証人へ来るようになります。

夫婦の共有財産がある場合は話がさらにややこしくなります。

例えば、不動産を共有している場合を考えてみます。

通常は破産管財人が破産者の持分を売却にしますが、実務上は共有者(今回は配偶者)に破産者の持ち分の買い取りを求めることが多いです。

買い取れなければ不動産が売却され、破産者でない方の持分に相当する額の現金が渡されるなどの措置が行われます。
この場合、現金は残るにせよ不動産は失ってしまいます。

生計をともにしている以上、影響が全くないというケースは少ないでしょう。

[参考記事]

配偶者の自己破産により実際に生じるデメリット

3.マイホームがある場合の注意点

自己破産を含む債務整理において、夫婦間で最も問題になりやすいのが「マイホーム」です。

住宅は高額な財産なので、自己破産をすると基本的に裁判所に処分されてしまいます。

住宅ローンの支払い中だと債権者が抵当権を行使してくるため、話は余計に難しくなります。

[参考記事]

自己破産をすると住宅ローンはどうなる?自宅を残す方法は?

夫だけ、または妻だけの収入で住宅ローンを組む場合、保証会社を使うことも多いです。
しかし、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組むときは、以下のいずれかのパターンになることが大半です。

  • 夫婦の片方が主たる債務者、もう片方が連帯保証人になる
  • 夫婦がそれぞれ債務者(連帯債務者)になる
  • 夫婦がそれぞれ単独でローンを組む(ペアローン)

ケースごとに考えていきましょう。

(1) 夫婦の片方が主たる債務者、もう片方が連帯保証人になる

この場合、住宅は主債務者の単独名義になります。

名義人が自己破産をすると、連帯保証人へ請求が行くのは既に述べた通りです。住宅ローンのような高額なものは、大抵の場合は連帯保証人も支払えないでしょうから、保証人もまた自己破産することになるケースが多いです。

住宅を守る方法としては、名義人が個人再生をして「住宅ローン特則」という制度を使うことが考えられます。成功すれば、住宅ローンを従来通り払い続けることを条件に、住宅ローン以外の借金を減額してもらうことができます。

[参考記事]

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の利用要件

ただし個人再生の効果は、自己破産のように「個人再生した本人」にしか生じません。債権者は連帯保証人に保証債務の支払いを請求できます。

連帯保証人である配偶者に支払能力がなければ、その人が何らかの債務整理をするしかありません。そのため夫婦の片方が自己破産に至るケースも多いようです。

(2) 夫婦がそれぞれ債務者(連帯債務者)になる

連帯債務は、夫婦のどちらかが主債務者、もう片方が連帯債務者になり、それぞれが同じ返済義務を持つものです。

両方が債務者なので、お金を借りるための「金銭消費貸借契約」が2つあることになります。連帯保証人の場合は「金銭消費貸借契約」と「連帯保証契約」という別の種類の契約が2つあるため、この点が大きく違います。

この場合、住宅は共同名義になります。
ただし、住宅ローンを組むときに加入する「団体信用生命保険(団信)」に入れるのは、夫婦のどちらかのみになるかもしれません。(ローンの内容によって変わります)

このケースで返済が苦しくなった場合、片方が自己破産をすると共倒れになって住宅を失う可能性があります。

住宅を維持するには主に以下の方法があります。

  • 債権者と交渉して支払いスケジュールを調整する
  • 夫婦それぞれが個人再生の住宅ローン特則を利用する

ケースによっては他にも方法がある可能性があるので、弁護士に相談して聞いてみてください。

(3) ペアローンの場合

ペアローンは、例えば3000万円のローンを組むときに、夫婦それぞれが1500万円ずつ借り、その債務をお互いに連帯保証する契約です。

この場合も住宅は共同名義になりますが、団信には夫婦ともに加入できます。

ペアローンでも、片方が自己破産してしまうと、もう1人も連鎖的に自己破産することになりかねません。

住宅を維持できる方法は、基本的に連帯債務の場合と同じです(支払時期の調整か住宅ローン特則込みの個人再生)。

やはりケースごとに対策が違うので、弁護士への相談をおすすめします。

4.夫婦ともに自己破産する前に弁護士へ相談を!

多額の借金を背負ってしまうと、正常な判断ができなくなることがあります。
冷静に判断して適切な債務整理をするには、弁護士に相談するのが最も良い方法です。

弁護士法人泉総合法律事務所は、これまで自己破産・個人再生・任意整理を含むあらゆる債務整理を行ってまいりました。ご夫婦お二方による債務整理なども経験しております。

慌てて破産を選ぶ前に、ぜひ当事務所までご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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