個人再生 [公開日] [更新日]

小規模個人再生。給与所得者等再生との違い、メリット・デメリット

 

【この記事を読んでわかる事】

  • 個人再生手続の一種「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」との違い
  • 小規模個人再生を行うための要件
  • 小規模個人再生でどれくらい借金が減額されるのか

 

小規模個人再生をご存知でしょうか。「個人再生」とは裁判所を通して行う債務整理の一種であり、自己破産と任意整理の中間と言われています。実は、その個人再生には二種類あります。

その中の一つが小規模個人再生なのですが、小規模個人再生とは一体どういうものなのでしょうか。

その要件やメリット・デメリットも含め解説します。

1. 小規模個人再生とは

小規模個人再生は個人再生手続の一種で、借金を大幅に減額してもらえる制度です。

多額の借金を抱えている人で、自宅などの財産を手元に残したいときは、個人再生の道を探るのがベストです。

個人再生は自己破産のように借金を全額免除することはなく、あくまでも借金を減額する制度です。そのため、手続後には借金を返済していく必要があります。

そのため、個人再生(民事再生法第13章第1節に規定する特則の適用を受ける民事再生手続)をするには、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが前提となります。また、住宅ローンを除く再生債権額が5000万円を超えないことも条件です。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの手続がありますが、最初にその違いについて解説します。

2. 小規模個人再生と給与所得者等再生の違い

(1) 要件による違い

小規模個人再生と給与所得者等再生の要件の違いは「収入の安定」にあります。

給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも収入の安定性が求められます。

給与所得者等再生は給与または定期的な収入が継続的にあり、その収入額の変動幅が20%以内であることも条件です。

給与所得者等再生というと、給料をもらっている人はこちらを選択しなければならないように思いがちですが、サラリーマンであっても小規模個人再生を選択することはできます。

小規模個人再生は給与所得者等再生ほど収入の安定性が求められません。

基本的には小規模個人再生を選択するのが一般的で、その要件に満たないときに給与所得者等再生を利用します。

(2) 弁済金額による違い

小規模個人再生と給与所得者等再生は弁済金額にも差があります。

給与所得者等再生は最低弁済額、清算価値、可処分所得の2年分以上の金額の3つを比べて最も高い金額を基準に返済します。

小規模個人再生は最低弁済額、清算価値の2つを比べて高い方を基準に返済します。

給与所得者等再生は可処分所得に関する条件も入るので、所得の高い人は弁済金額も高くなります。

そのため、一般的には小規模個人再生の方が弁済金額は低めになります。

給与所得者等再生でも可処分所得2年分が最低弁済額や清算価値より低ければ、小規模個人再生より高い金額になることはありません。

小規模個人再生は給与所得のある人でも選択できるので、小規模を選んだ場合は可処分所得2年分が高額であっても、弁済額に影響を与えることもありません。

(3) 債権者の同意の要否による違い

個人再生では債権者の同意がいるときと、そうでないときがあります。

給与所得者等再生は再生計画案に対する債権者による決議がないので、債権者の意向によらず手続を行うことができます。

その分、要件は厳しく、弁済金額も高くなる可能性があります。

小規模個人再生は再生計画案に対する債権者による決議があるので、債権者の意向に従うことになります。

小規模個人再生は債権者の半数の同意がえられないとき、または不同意の債権者の債権総額が全体の2分の1を超える場合は、小規模個人再生を選ぶことはできません。

その場合は給与所得者等再生か、他の債務整理方法を選ぶことになります。

以前は債権者の同意が得られないケースは少なく、異議を唱えるのは政府系銀行など一部の債権者に限られていました。

しかし、最近では異議を出す債権者も多くなってきているので、今後は給与所得者等再生を選択するケースが増える可能性もあります。

3. 小規模個人再生の要件

小規模個人再生の要件は多岐にわたります。再生計画の認可を受けるには以下の内容を満たすことが必要です。

  • 再生手続開始原因があること(民事再生法21条1項)

再生手続開始原因とは、支払不能で破産を招きかねない状況であること、また事業に必要な財産を処分することなしに借金を返すことができない状態を指します。

個人再生はこうした要件がないと申立ができません。

  • 再生手続開始申立棄却事由がないこと(民事再生法25条)

再生手続開始申立棄却事由の例をあげると、予納金の納付がない、収入不足で認可される見込みがない、自己破産など他の方法の方が債権者の利益につながる、といったことがあります。

このような事由があると再生手続はできません。

  • 申立が適法であること

個人再生の申立が適法であることも大前提です。例えば、計画倒産など不法な申立は認められません。

  • 債務者が個人であること

個人再生は法人が利用することはできません。申立ができるのは個人だけです。

  • 債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること

個人再生が認可されたら、その後は原則3年(例外5年)で減額後の借金を返済する義務があるので、継続的な収入がなければ個人再生は認められません。

  • 負債総額が5000万円を超えていないこと

個人再生が認可されるのは負債総額(住宅ローンを除く)が5000万円を超えない場合のみで、それ以上の場合は対象外です。

  • 小規模個人再生を行うことを求める旨の申述をすること

小規模個人再生を行うには、その旨を申立書に申述して裁判所に提出する必要があります。

上記の中でも、継続的な収入があることと、負債総額が5000万円を超えないことは個人再生の成否を決める決定的な要件なので、申立の前に必ずチェックしておきましょう。

(1) 再生計画の認可要件

次は、再生計画の認可要件についてです。

個人再生が認められるには以下の要件をクリアする必要があります。

  •  再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
  •  再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと

個人再生は民事再生法に基づく裁判手続であることから、法律違反がある場合には認可されません。

  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある者であること(利用適格要件)

個人再生は債務の弁済が計画通り行われる見込みがある場合に認可されます。継続的な収入の有無は認可決定の重要なポイントです。

  • 再生計画の決議が不正の方法によって成立したものでないこと

個人再生は債権者の同意が必要となりますが、その同意が詐欺や恐喝、利益の供与など不正な方法でとりつけた場合は不認可となります。

  • 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと
  • 清算価値保障原則を充たしていること

再生債権者の一般の利益とは債権者全体の利益を指します。

利益に反するとは、個人再生による弁済が自己破産をした場合の配当率を下回るケースなどが該当します。

これは清算価値保障原則に反しているので、認められることはありません。

  • 再生債権総額が5000万円を超えていないこと

個人再生が認められるのは債権総額が5000万円までです。

  • 計画弁済総額が最低弁済額を下回っていないこと

個人再生後の返済総額が最低弁済額を下回っているときは不認可となります。

4. 小規模個人再生の効果

小規模個人再生が認可されると、借金を1/5から1/10まで減額することができます。

正確には債務額を最低弁済額、または破産した場合の配当予想額(清算価値)のいずれか高い方にまで減額することが可能です。

ただし、借金を100万円以下に圧縮することはできません。個人再生が認められたら、その後は3年(例外5年)かけて分割で借金を払います。

再生計画案では無理のない返済計画を立てるので、その後の返済は楽になります。

(1) 債務の減額

小規模個人再生では債務額が大きい方が減額幅は大きくなります。減額の基準は以下の通りです。

基準債権額 最低弁済額
100万円以下 基準債権額
100万円以上、500万円以下 100万円
500万円を超え、1500万円以下 基準債権額の1/5
1500万円を超え、3000万円以下 300万円
3000万円を超え、5000万円以下 総額の1/10

5. メリットとデメリット

小規模個人再生にはメリットとデメリットがあるので、その特徴を押さえておきましょう。

(1) メリット

①自宅が残せる

個人再生は自己破産と違って自宅を残すことができます。個人再生はマイホームを持っている人を保護するための制度でもあるので、自宅を手放したくない人にはおすすめです。

②免責不許可事由があっても借金を清算できる

自己破産の場合は免責不可事由があると認められませんが、個人再生であれば手続を行うことができます。

③ハードシップ免責がある

病気やリストラなど、やむを得ない理由で再生計画の変更をしなければならないとき、再生計画の3/4を弁済している場合は、ハードシップ免責によって残りの債務を免責してもらえる可能性があります。

返済計画が3年の場合は2年4ヶ月が経過していれば制度の対象となります。

ハードシップ免責について、要件など詳しくは「個人再生後に返済できなくなった…救済措置「ハードシップ免責」とは」をご覧ください。

④任意整理より大幅な借金の減額が可能

任意整理の減額は将来利息のカットが主ですが、個人再生ではより大幅な減額が可能です。

⑤任意整理より返済開始までの期間が長く、返済額が少ない

任意整理は和解までの期間が3ヶ月程度ですが、個人再生は申立から決定まで8ヶ月くらいの期間がかかります。

その分、返済開始までの期間が長くなる点もメリットです。また任意整理より借金の圧縮幅も大きいので返済額も少なくなります。

(2) デメリット

①官報に名前と住所が掲載される

個人再生が認められると官報に名前、住所が掲載されます。

官報を見ている人は少ないので、情報が洩れるケースは少ないですが、掲載される以上は第三者にバレる可能性もゼロではありません。

②信用情報機関に記録が残り、その間新たな借入不可能

個人再生に限らず、債務整理をすると信用情報機関に5~10年記録が残るので、その間は新たな借入やクレジットカードの発行などはできなくなります。

③連帯保証人がいる場合、免除分が連帯保証人にいく

連帯保証人がいる場合は、免除分の支払いは連帯保証人に請求がいきます。

もし連帯保証人に迷惑をかけたくない場合は、任意整理を選択して連帯保証のついている債権を外して手続をするのがベストです。

④破産に比べると、免除の対象に含まれない借金の種類が若干多い

個人再生で免責対象に含まれない債権は、破産手続の非免責債権と比べて若干多くなります。

また、税金や社会保険などは、自己破産で非免責債権とされていますが、個人再生の場合は一般優先債権となるので、再生手続とは関係なく弁済しなければなりません。

⑤失敗するリスクがある

個人再生は住宅を残して借金を大幅に減額できる制度なので、メリットが大きいのですが、認可の要件が多く、全ての要素をクリアするのが難しい点はデメリットです。

⑥個人で申立を行った場合、個人再生委員が負債内容をチェックする場合がある

個人で個人再生の申立を行った場合は、負債の内容を細かく調べられることもあります。個人再生は手続が非常に複雑で、内容に不備がある場合は失敗する可能性もあります。

(3) 小規模個人再生と給与所得者等再生どちらを選ぶべきか

小規模個人再生と給与所得者等再生であれば、小規模個人再生を選ぶ方が有利です。小規模個人再生のほうが、給与所得者等再生より返済金額が少額となるので、通常は小規模個人再生を最初に検討します。

ただし、小規模個人再生は債権者の同意を得られない場合は手続が廃止されてしまうので、予め同意を得るのが難しいことが分かっていれば、給与所得者等再生を検討することをおすすめします。

5.まとめ

個人再生は、個人でも行うことはできますが、債務整理のうちでも複雑な手続となっています。個人再生を含め、債務整理をお考えの場合には、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談してみてください。債務整理の実績豊富な弁護士が、個人再生の支払額(弁済額)につきましても丁寧にご説明いたします。

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