個人再生 [公開日]2018年6月26日[更新日]2019年11月6日

個人再生手続で債権者漏れがあったらどうなるのか?

個人再生では、原則としてすべての債務(借金)を対象に手続きが実施されます。

そのため、個人再生手続きにおいて、申立ての際に債務者が提出する債権者一覧表は、非常に重要な書類です。

しかし、現実には、消費者金融、銀行のカードローンや住宅ローンから、水道光熱費の支払い、生命保険や自動車保険料の支払い、携帯・スマホ料金の支払い、さらには離婚後の養育費や慰謝料までたくさんの債務を抱えていることが多く、「親類や知人からの借金の存在を忘れてしまった」というケースも珍しくありません。

ではもし、債権者一覧表に記載漏れがあったときには、どうなってしまうのでしょうか?

この点、法律(民事再生法)には、債権者一覧表の記載の訂正や再生債権者・再生債権の追加・削除に関する規定が存在しない(=提出後の債権者一覧表の訂正は法律上は想定外となっている)ことから、一度提出した債権者一覧表の記載の訂正の余地が全くないのかが問題となります。

1.個人再生で債権者漏れがあったときの原則

まず、個人再生の申立直後、再生手続開始決定が出る前に、債権者一覧表の記載不備に気がついたときには、実務上、債権者一覧表を修正・訂正することが出来ます。
(※前述のとおり、法律には、開始決定前の一覧表の訂正を正面から認めた規定は存在しませんから、あくまで実務上の運用=裁判所の裁量という扱いです。)

例えば、東京地方裁判所の場合(同裁判所の個人再生手続の通常スケジュール)であれば、個人再生の申立てから再生手続開始決定までには約1ヶ月間あるので、この間であれば、再生債務者からの申出によって、債権者一覧表の記載を訂正することが認められています。

しかし、裁判所によって再生手続開始決定が下された後は、提出された債権者一覧表を訂正することは出来ません。

すなわち、再生手続開始決定が出ると、各債権者に対して、開始決定通知書や債権者一覧表の写しを送付することになりますが、もし、開始決定後に債権者一覧表の訂正を許してしまうと、訂正の度に、新しい債権者一覧表を債権者へ送り直す必要が出てしまい、手続が極めて不安定になってしまいます。

また、法律上、債権者一覧表に記載された再生債権については、債権届出がない場合、みなし届出の効果が生じるものとされており、こうした手続への影響を鑑み、再生手続開始決定後の債権者一覧表の訂正は、実務上も一切認められていません。

逆に、前述のとおり、実務上、再生手続開始決定前の訂正が認められているのは、開始決定前の訂正であれば、再生手続ないし再生債権者への影響が比較的少ないためと言えます。

それでは、再生手続開始決定後に債権者漏れに気付いた場合には、その漏れていた債権者を再生手続に加える方法は、全く存在しないのでしょうか?

この点に関する具体的な対応は、次項にて説明します。

2.記載漏れがあった場合の対応策

(1) 債権届出

債権者に対応をお願いできるときには、再生債務者から債権者に連絡を取り、債権者の側から裁判所へ債権届出をして貰います。
ただし、この債権届出ができるのは、裁判所が定めた債権届出期限までです。

なお、債権者の責めに帰することができない事由によって、債権者が、裁判所の定める債権届出期間内に届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅してから1ヶ月以内に限り、「債権届出の追完」をすることができます(民事再生法95条1項)。

しかし、小規模個人再生手続において再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後(民事再生法95条4項)、や、給与所得者等再生手続において意見聴取決定がされた後(民事再生法240条3項)は、債権届出の追完は出来ません。

(2) 無届債権としての扱い

それでは、債権者一覧表にも記載されず、期限内に債権届出(追完)もされなかった債権の取扱の場合は、どうなるのでしょうか?

再生計画案を書面決議に付す決定がされた後に「債権者漏れ」に気がついたときには、その債権を届け出ることは出来ません。
このような「完全に漏れてしまった債権」は、「無届債権」として取り扱われます。

無届債権に関しては、無届が発生した帰責事由(落ち度)が債務者と債権者のいずれにあるかの違いによって、個人再生手続での取扱いが変わります。

債務者の落ち度の場合

債権者一覧表に記載することを忘れてしまい、債権届出もされなかった債権は、「債権認否」までに「自認債権」として取り扱うことで、再生債権者に加えることが可能です(民事再生法101条3項)。

これにより、自認債権も、再生計画で定められた返済条件・方法で返済することができます。

ただし、自認債権は、次の点で届出債権とは取扱いが異なることに注意が必要です。

  • 自認債権には、再生計画案に対する議決権がない
  • 自認債権は、再生計画における基準債権には含まれない(計画弁済総額の下限=最低弁済額の算定の基礎にカウントすることが出来ない)

特に、債務者にとっては、自認債権が基準債権に含まれないことで、返済総額で不利益を受けます(免除率低下による債務者への不利益)。

[参考記事]

個人再生の基準債権とは?借金の減額の決定方法を解説!

下の図は、債権総額250万円のケースで、「すべての債権が漏れることなく債権者一覧表に記載された場合」と、「債権者の落ち度によって50万円の債権が無届債権」となった場合を比較したものです。

個人再生で債権者一覧に記載漏れがあったら2

個人再生は、債権額が多いほど免除率が高くなるので、無届債権があると「債務の免除率」が下がってしまいます。

このケースでは、すべての債権を記載していれば、免除率は60%(返済総額100万円)であったのに対し、記載漏れがあったときには免除率が50%(返済総額125万円)まで下がってしまい、返済総額が25万円(毎月の返済額で約7,000円)も増えてしまいます。

このため、自認債権の額が多すぎるときには、再生計画の遂行可能性が疑われ、再生計画が不認可となることもあります。

このような事態を回避するためにも、債権者一覧表の作成は、債務者本人と代理人弁護士とか協力して、慎重に作成しなければなりません。

債権者の落ち度の場合

債権者の落ち度によって債権が無届けとなったものは、「債権の劣後化」という措置がとられます。債権の劣後化は、次の2つの内容をもっています。

  • 無届債権であっても、再生計画による権利の変更(免除)が生じる
  • 無届債権の返済は、再生計画終了後に、再生計画と同条件でなされる

つまり、劣後化された無届債権(期限後債権)の返済は、3年(~5年)の再生計画終了後に、再生計画と同じ条件(免除率・返済回数)で行えばよいということになります。
劣後化とは、債権者側から見ると、他の債権者よりも返済が後回しにされることを意味します。

4. 悪質な場合は再生計画の不認可・取消し

債務者が、うっかり債権者の存在を失念していたのではなく、最初から故意に特定の債権者を債権者一覧表に記載しなかったときには、手続上大きな問題となります。

実際に、「書面決議に反対しそうな債権者だから記載しなかった」、「親族からの借金だから記載しなかった」というケースがあり得ます。意図的に特定の債権を債権者一覧表から除外する行為は、手続の公平に反し許されない行為です。

悪質な「債権隠し」と評価できるようなときには、再生計画が不認可となります。また、再生計画認可後に「債権隠し」が発覚した場合には、認可された再生計画が取り消されてしまいます。

[参考記事]

個人再生ができる人、できない人|失敗する理由と対策

5.書類の不備を避けるためにも弁護士へご相談ください

個人再生における債権額の調査・確定における当事者の責任と役割は非常に大きいものです。
債権者一覧表の記載に不備があれば、返済額の増額や再生計画の不認可といった大きな不利益が生じる場合もあります。

個人再生を弁護士に依頼する際には、必ず債権者漏れがないように報告していただくことが大切です。特に、友人や親族の借金は明細書などがないことが多く失念しがちです。

また、わずかな借金であっても必ず記載しなければならず、自分で判断してはいけません。

個人再生は、膨大な資料を間違いなく正確に作成する必要があり、手続き開始後は裁判所が定めた提出期限も厳守しなければなりません。個人再生の経験豊富な弁護士事務所にご依頼することをお勧めします。

泉総合法律事務所にご依頼いただければ、個人再生はもとより債務整理の経験が豊富な弁護士が責任をもってサポートさせていただきます。借金でお悩みの方は、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

債務整理コラム一覧に戻る