個人再生の債権者一覧に記載漏れがあったらどうなるのか?

個人再生


個人再生では、債務者が抱える債務の一部を減額・免除してもらうことができます。

そのため、任意整理では対応しきれない多額な借金を抱えてしまったときでも、自己破産せずに借金問題を解決することができます。

ところで、個人再生では、任意整理のように「返せない借金だけを整理する」ということができません。自己破産の場合と同様に、原則としてすべての債務(借金)を対象に手続きが実施されます。

そのため、申立ての際に債権者が提出する債権者一覧表は、個人再生手続きにおいては非常に重要な書類です。

しかし、実際のケースでも、消費者金融や銀行のカードローンや住宅ローンだけでなく、水道光熱費の支払い、生命保険や自動車保険料の支払い、携帯・スマホ料金の支払い、さらには離婚した場合の養育費や慰謝料などたくさんの債務を抱えていることが少なくありません。

たとえば、業者の借金の対応に追われたために、「親類や知人からの借金の存在を忘れてしまった」というケースも珍しくありません。

このように、債権者一覧表に記載漏れがあったときには、どうなってしまうのでしょうか?

1.再生債権が確定するまでの流れ

最初に、個人再生によって返済すべき「債権の種類」と「債権が確定するまでの流れ」を確認しておきましょう。

個人再生における再生債権確定の流れは、当事者のイニシアティブによって進められるのが原則です。

(1) 再生債権とは

個人再生において債務者が抱える債務(債権)は、次の5つに分類されます。

  • 再生債権
  • 共益債権
  • 一般優先債権
  • 非減免債権
  • 開始後債権

このうち、裁判所に認可された再生計画によって債務が減額・免除されるのは、再生債権だけです。

再生債権は、個人再生の開始前に抱えていた借金などの負債から、共益債権・一般優先債権・非減免債権・別除権を行使される債権(住宅ローン・自動車ローンなど)を除いたものです。

たとえば、「滞納している税金や「水道代」、「個人再生開始後の家賃」といったものは共益債権、一般優先債権として免除の対象から除外されます。

(2) 再生債権が確定するまでの流れ


上のフロー図は、個人再生において債権が確定するまでの流れを示したものです。

個人再生を申し立てるときには、申立書と共に、申立債務者が作成した「債権者一覧表」を提出しなければなりません。

債権者一覧表には、債務者から得た情報や債権者より取り寄せた取引履歴などを計算した結果に基づいて、「債権者の氏名または名称・住所・電話番号」、「申立日現在の債権額(元本・利息・遅延損害金の合計)」、「債権の発生原因(契約年月日・契約種別・元金額など)」、「異議を保留するか否かの意思表示」などを記入します。

裁判所は再生手続き開始決定を下すと、債務者が申告した債権者に債権者一覧表を送付します。

債権者は、債権者一覧表の記載内容に異議のあるときには、「債権届出書」を裁判所に提出します。

債権者一覧表に記載された内容に異議がないときには、債権者からの届出は不要です。

債権者一覧表に記載された債権は、債権者から届出があったものとみなされるからです。(みなし届出(民事再生法225条・244条))。

債権届出のあった債権の内容は、債務者(代理人弁護士)に通知されます。債務者は、この届出に対して認否を示さなければなりません。

債務者は、債権者からの届出内容に異議があるときには、裁判所に対して「債権届出に対する異議」を申し出ます。これを「一般異議の申述」といいます。

なお、一般異議の申述をするためには、債権者一覧表提出の段階で「異議を保留」しておくことが必要です。

また、債務者と債権者との間に債権額について認識が違うときには、まずは当事者間の協議で解決が図られます。

多くの場合は、代理人弁護士が債権者と直接交渉して債権額について合意を得てから異議を述べます。

当事者間で債権額の合意が獲得できなかったときには、債務者が裁判所に対し「債権評価」を申し立てます。

債権評価の申し立てがあると、裁判所は個人再生委員に、債権の調査と評価を命じ、個人再生の評価によって再生債権が確定します。

個人再生では、迅速に手続きを進めるために、簡易迅速な方法で債権額を確定させるために、訴訟ではなく「個人再生委員の調査・評価」で債権額を確定させることになります。

2.債権者一覧表に記載漏れがあったとき

個人再生では多くの債権を同時に対象としなければなりません。

あってはいけないことですが、申立ての際に提出した「債権者一覧表」に「一部の債権者を記載すること忘れていた」、あるいは、「個人再生を申し立てた後にある債権者の存在に気がついた」ということがあるかもしれません。

そのような場合の取扱いはどうなるのでしょうか。

(1) 原則

個人再生の申立て直後に、債権者一覧表の記載不備に気がついたときには、債権者一覧表を修正・訂正することができます。

たとえば、東京地方裁判所の場合であれば、個人再生の申立てから再生手続き開始決定までは約1ヶ月あるので、この間であれば、債権者からの申出によって、債権者一覧表の記載に誤りを直すことができます。

しかし、裁判所によって再生手続き開始決定が下された後は、提出された債権者一覧表を訂正することはできません。
債権者一覧表の記載に不備があるときには、下で説明するような不利益を受ける場合があります

個人再生を申し立てる際には、債権者の情報を代理人弁護士に漏れなく伝えることがとても大切です。

また、個人再生の手続きは非常に煩雑です。申立てに際して行わなければならない作業・作成すべき書類がたくさんあります。

そのため、個人再生に不慣れな弁護士事務所では、対応や書類に不備があることも珍しくないようです。

個人再生の依頼は、個人再生の経験豊富な弁護士事務所に依頼することをおすすめします。

(2) 債権者に対応してもらえる場合

債権届出と追完

債権者に対応をお願いできるときには、債権者から債権届出をしてもらって対応します。債権届出ができるのは、裁判所が定めた債権届出期限までです。

なお、債権者の責めに帰することができない事由によって債権届出期間内に届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅してから1ヶ月以内に限って、「債権届出の追完」をすることができます(民事再生法95条1項)。

しかし、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、届出の追完はできません(民事再生法95条4項)。

(3) 無届債権

債権者一覧表にも記載されず債権届出(追完)もされなかった債権の取扱い

再生計画案を書面決議に付す決定がされた後に「債権者漏れ」に気がついたときには、その債権を手続きに届け出ることはできません。

このような「完全に漏れてしまった債権」は、「無届債権」として取り扱われます。

無届債権は、発生した責めが債務者と債権者のいずれにあるかの違いによって、個人再生での取扱いが変わります。

①債務者の落ち度で無届けとなった場合

債権者一覧表に記載することを忘れてしまい、債権届出もされなかった債権は、「債権認否」までに自認債権として取り扱うことで、再生債権者に加えることが可能です。

これにより、自認債権も、再生計画で定められた返済条件・方法で返済することができます。

ただし、自認債権は、次の点で届出債権とは取扱いが異なることに注意が必要です。

  • 自認債権には、再生計画案に対する議決権がない
  • 自認債権は、再生計画における基準債権には含まれない

特に、債務者にとっては、自認債権が基準債権に含まれないことで、返済総額の面で不利益をうけます。

上の図は、債権総額250万円のケースで、「すべての債権が漏れることなく債権者一覧表に記載された場合」と、「債権者の落ち度によって50万円の債権が無届債権」となった場合を比較したものです。

個人再生は債権額が多いほど免除率が高くなるので、無届債権があると「債務の免除率」が下がってしまうことに注意する必要があります。

この図のケースでは、すべての債権を記載していれば、免除率は60%(返済総額100万円)であったのに対し、記載漏れがあったときには免除率が50%(返済

総額125万円)まで下がってしまい、返済総額が25万円(毎月の返済額で約7,000円)も増えてしまいます。

このため、自認債権の額が多すぎるときには、再生計画の遂行可能性が疑われ、再生計画が不認可となることもあります。

このような事態を回避するためにも、債権者一覧表の作成は、債務者本人と代理人弁護士とか協力して、慎重に作成しなければなりません。

②債権者の落ち度で無届債権が生じた場合

債権の劣後化

債権者の落ち度によって債権が無届けとなったものは、「債権の劣後化」という措置がとられます。債権の劣後化は、次の2つの内容をもっています。

  • 無届債権であっても、再生計画による権利の変更(免除)が生じる
  • 無届債権の返済は、再生計画終了後に、再生計画と同条件でなされる

つまり、劣後化された無届債権(期限後債権)の返済は、3年(~5年)の再生計画終了後に、再生計画と同じ条件(免除率・返済回数)で行えばよいということになります。

(4) 悪質な場合には、再生計画の不認可・取消し

債務者が故意に特定の債権を債権者一覧表に記載しなかったときには、手続き上大きな問題となります。

実際には、「書面決議に反対しそうな債権者だから記載しなかった」、「業者ではなく親族からの借金だから記載しなかった」というケースがあり得ます。意図的に特定の債権を債権者一覧表から除外する行為は、手続きの公平に反し許されない行為です。

債権隠し」と評価できるようなとき、再生計画が不認可となります。また、再生計画認可後に発覚した場合には、再生計画が取り消されます。

3.まとめ

個人再生における債権額の調査・確定における当事者の責任と役割は非常に大きいものです。

債権者一覧表の記載に不備があれば、返済額の増額や再生計画の不認可といった大きな不利益が生じる場合もあります。

弁護士に依頼する際には、必ず債権者の漏れがないように報告していただくことが大切です。特に、業者以外の借金の存在は明細書などがないために失念しがちです。

また、わずかな借金であっても必ず記載しなければいけません。自分で判断してはいけません。

個人再生は、膨大な資料を間違いなく正確に作成しなければなりません。手続き開始後は裁判所が定めた提出期限も厳守しなければなりません。個人再生に不慣れな事務所に依頼したときには、弁護士のミスで依頼人が不利益を受けるおそれもあります。

泉総合法律事務所にご依頼いただければ、個人再生はもとより債務整理の経験が豊富な弁護士が責任をもってサポートさせていただきます。借金でお悩みの方は、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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