個人再生 [公開日]2018年5月15日[更新日]2021年5月12日

任意整理から個人再生への切り替え方法とその違い

個人再生を選ぶべき場合とは?任意整理から個人再生への切り替え方法

任意整理後は順調に借金を返済していても、リストラや減給、倒産、病気、介護など、急に返済が滞る原因はいくつも考えられます。

任意整理後の返済が滞ったまま放置していると、債権者から一括請求をされてしまう・強制執行(財産の差し押さえ)に踏み切られてしまう可能性があるため、早めに何かしらの対応をする必要があります。

借金を減額するという意味では、「個人再生」も選択肢の一つです。
実は、任意整理後に個人再生に切り替えることも可能です。

今回は、任意整理と個人再生の違いを見た上で、任意整理から個人再生への切り替え方法と考えられる切り替えのデメリットについて解説をします。

1.任意整理と個人再生の違い|どちらを選ぶか

任意整理個人再生も、借金を減額できる手続きです。
では、これらは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

(1) 交渉の流れの違い

任意整理は、債権者(お金を貸した側)と債務者(お金を借りた側)が任意に交渉をして、利息のカットや返済スケジュールの見直しを行います。
私的な手続きですので柔軟な対応が可能な他、裁判所費用がかからず、またスピーディに解決することも可能でしょう。

しかし、債権者が交渉に応じない姿勢の場合は、借金を整理することができません。

一方の個人再生は、裁判所を通す手続きです。
手間や費用はかかりますが、債権者は個人再生を原則拒むことができません(※給与所得者等再生の場合。小規模個人再生の場合は、一定の割合の債権者の同意が要件となります)。

(2) 借金の減額率

次に、借金の減額率が異なります。

任意整理では、通常、利息はカットしてもらえても、元金のカットには応じてもらえないことが大半です。
したがって、現在の借金の元金を最大60回(5年分割)程度で返済する必要があります。

一方の個人再生では、債務の元本を大幅に圧縮してもらうことができます。圧縮した借金を、原則3年かけて分割で返済していきます。
減額後は債務額が10分の1になるというケースもあるので、多額の債務に悩んでいる方は個人再生がお勧めです。

「今ある元金を60回分割にしても到底返済できない」という場合には、任意整理ではなく、個人再生を考えた方がよいでしょう。

(3) 整理する借金を選択できるかどうか

家族・親戚や知人からの借入がある場合、債務整理をするとなると個々の対応について悩みもあるでしょう。

例えば、「返済条件の変更(リスケジュール)を頼みにくい」「家族に多重債務を知られたくない」という場合もあるでしょう。

また、借金を債務整理すると、その債務の保証人には一括で請求が行ってしまいます。
例えば、家族が保証人になっている借金を減額してもらうと、債権者は代わりに保証人へと支払いを請求します。

任意整理でしたら、各債権者との個別の交渉なので、特定の債権者を交渉から外すことも可能です。
例えば、知人からの借金や、家族が保証人になっている債務については従来通りに支払いを継続し、その他の債務のみを整理の対象とすることができるのです。

一方、個人再生の場合はすべての債権者に対して平等な扱いが必要となるため、身内や知人からの借入、保証人がついている借入であっても例外扱いは許されません

どうしても身内や知人には迷惑をかけられないという事情がある場合は、任意整理のメリットが大きいでしょう。

【個人再生による連帯保証人への具体的な影響】
個人再生はすべての債権者に対し、同一条件で元金をカットするため、連帯保証人付きの借入れの場合に厄介な問題が生じます。
たとえば、連帯保証人付きの300万円の借り入れがあるとします。個人再生で元金を5分の1に圧縮した場合、返済計画上は60万円の返済となるはずです。
ところが、個人再生による元金カットの効力は連帯保証人には及ばないため、連帯保証人は引き続き300万円全額の支払義務を負うのです(主債務者と保証人は同時に返済していき、返済額の合計がもともとの債権額に達した時に借金が完済したことになります)。
参考:自己破産・個人再生などをすると連帯保証人にどのような影響を与えるか?

2.任意整理から個人再生への切り替え方法

任意整理後に借金を返せなくなった場合でも、個人再生を行えば更なる減額が見込めるため、借金問題を解決できる可能性があります。

任意整理から個人再生への切り替えは簡単です。弁護士に依頼の上で、裁判所へ個人再生の申立てをすれば良いのです。
任意整理はそもそも私的な交渉のため、裁判所が任意整理をしたという過去を理由にして申立を却下することはありません。

ただし、任意整理と違い、個人再生にはクリアしなければならない認可の要件があります。
裁判所が介入するので、手続はより厳格になり、必要書類の収集も必要になってきます。

失敗しないよう、綿密な弁護士との打ち合わせが必要となるでしょう。

また、先述の通り全ての債権者を手続きに含めなければなりません。

3.個人再生への切り替えを検討すべきケース

次に、どんな場合に個人再生への切り替えを検討すべきなのかを解説します。

(1) 月々の支払いが厳しい

任意整理では、利息・遅延損害金のカットが可能ですが、基本的に元本が減ることはありません。

これに対して個人再生では、借金を5分の1〜10分の1程度まで減額することが可能なので、任意整理に比べ、借金の大幅な減額が可能であることが大きなメリットです。

もし、任意整理後に月々の返済が滞りそうなら、個人再生への切り替えを検討すべきでしょう。

(2) 和解契約が成立しない

任意整理はその名のごとく、任意で債権者と債務者が和解契約を結び、その契約に則って返済をしていく方法です。

そもそも債権者と和解交渉が成立しなければ、任意整理以外の方法で借金を整理するしかありません。

任意整理の交渉の最中であっても、任意整理では借金が減額できないとなったならば、個人再生に踏み切ることをお勧めします。

4.個人再生への切り替えによる費用のデメリット

前述した通り、個人再生は任意整理に比べて借金の減額が大きいことが一番のメリットです。
では、任意整理から個人再生へ切り替えを行うことにより、何かデメリットはあるのでしょうか?

二度も債務整理手続きを行わなければいけないという手間のデメリットの他には、追加費用の問題があります。
任意整理から個人再生への切り替えをすることによって、原則として任意整理にかかった費用にプラスして個人再生の費用が上乗せされてしまいます。

最初から個人再生を債務整理の方法として選択していれば少なくとも、任意整理の費用は節約できたはずです。
よって、債務整理の方法を最初に選択する段階で、ベストな方法を選ぶことがとても重要です。

また、認可の要件があり、クリアしないと認められないというところもあります。この判断には専門技術的な知識が必要です。

5.まとめ

任意整理から個人再生への切り替えは可能です。
しかしその前に、債務整理をする段階でベストの選択をすべきでしょう。

泉総合法律事務所では、詳しい事情をお聞きした上で、より適切な手続き方法をご提案いたします。
また、債務整理が終了するまでしっかりサポートしますので、安心してご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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