個人再生 [公開日]2018年2月5日[更新日]2019年10月25日

住宅ローンの巻き戻しとは?|滞納している場合の個人再生

個人再生は、自宅を残しながら借金を整理できる制度です。
しかし、すでに住宅ローンを滞納してしまっている場合、自宅はどうなるのでしょうか。

ローンを一定期間滞納すると、一括返済を求められます。そこで一括返済できなければ差し押さえになるのが一般的です。

しかし、個人再生で「住宅ローンの巻き戻し」を利用すれば、一括返済や差し押さえを心配する必要はありません。

住宅ローンの滞納分を保証会社が代位弁済したあとも、6ヶ月以内に個人再生の申立をすることによって、銀行に対する住宅ローンを復活させることができ、月々の住宅ローンの返済が再開できれば、自宅を手元に残すことができるのです。

今回は、この「住宅ローンの巻き戻し」について詳しく紹介します。

1.個人再生における「住宅ローンの巻き戻し」とは

何らかの事情で借金が増えたり、収入の道が途絶えたりすると、借金を返せなくなることがあります。
借金の支払いが滞ると、借主は「期限の利益」を喪失し、お金を貸している銀行やローン会社から、残債の返済を一括請求されます。

これは住宅ローンも同じです。

期限の利益とは、借金を約束の期日に返す代わりに分割払いができる権利のことで、支払いが滞るとその権利がなくなり、期限の利益を失った時点での残債を一括で債権者に支払わなくてはなりません

しかし、一括請求されても、債務者に支払能力がないことに変わりはなく、結局、請求されたお金は、保証会社が代わりに債権者へ支払うことになります。
これを「代位弁済」と言い、代位弁済の履行により債権者の立場が銀行から保証会社に移ります。

すると、今度は、保証会社が、求償権に基づき、代位弁済したお金を一括請求します。これも支払いができない場合は、担保物件である自宅の競売手続へと進み、自宅を失う可能性が高くなります。

けれども、競売で自宅が没収・売却されてしまうと、債務者の生活基盤は失われ、その後の生活の再建も大きな危機に陥ります。

そこで、個人再生をする場合、債務者の生活基盤の維持のため、この自宅没収を回避する方法として、「住宅ローンの巻き戻し」という制度があるのです。

2.個人再生における住宅ローン巻き戻しの条件

住宅ローンの巻き戻しをするには、個人再生の申立をすることが前提となります。

個人再生は債務整理の一種で、住宅ローンが残った自宅を手放すことなく借金を減額できる制度です。
個人再生には住宅資金特別条項(住宅ローン特則)があり、この特則を利用して個人再生手続をすることで、住宅ローンの巻き戻しが可能になります。

住宅ローン特則が利用できる期間や条件は以下のとおりです。

  • 債務者の住宅である
  • 住宅資金貸付債権である
  • 住宅ローン債権には住宅ローン会社以外の抵当権は設定されていない
  • 保証会社による住宅ローンの代位弁済がされている場合は、代位弁済から6か月以上経過していない

法律上、民事再生法240条1項で「個人再生が認可された場合には、保証会社による代位弁済もなかったこととみなす」と定められている通り、上記の条件に全て当てはまれば、借金は保証会社による代位弁済がされる前の状態に戻すことができます。
これを「住宅ローンの巻き戻し」と呼んでいるわけです。

保証会社による代位弁済がなかった状態まで権利関係が戻るので、保証会社の求償権は遡及的に消滅し、もとの貸主の住宅ローン債権が復活します(その代わり、保証会社の保証債務も復活します)。

その上で、債務者は、住宅資金特別条項の定めに従い毎月のローンを支払うことで、自宅に住み続けることができるのです。

3.個人再生後の住宅ローン支払方法

住宅資金特別条項付きの再生計画案が認可されると、一般債権については、決定された金額を原則3年以内(例外的に5年以内)で返済し、住宅ローンについては、住宅資金特別条項に基づき、別途支払いをしていくことになります。

住宅ローンの返済方法については、銀行と協議を重ねたうえで、以下の5つのパターンから決定することになります。

  • そのまま型
  • 期限の利益回復型
  • 期限延長型
  • 元本猶予期間併用型
  • 同意型

住宅ローン特則の5つのパターンを決定するには、事前に銀行と住宅ローンをどのように再開するか、延滞金をどのように清算するかなどについて、協議する必要があります。

個人再生後は、一般債権者に対する分割返済もあるので、住宅ローンの返済と併せても、自己の収入から無理なく返済できる金額に設定するのが鍵です。
そのため、銀行との協議は、トータルの返済額、利息を考慮しつつ、慎重に行うことが求められます。

以下、それぞれの内容を詳しく解説します。

(1) そのまま型

住宅ローンの約定を従来通りそのまま変更せずに返済していく方法です。

ただし、個人再生の認可までに住宅ローンの滞納がある(滞納が解消されていない)場合は、この方法を選択することができません。

(2) 期限の利益回復型

ローンの滞納があり、住宅ローンの期限の利益を喪失している場合に選択する返済方法です。

住宅ローンを一定期間延滞していると、期限の利益を喪失して一括弁済しなければならなくなりますが、個人再生手続との関係で、期限の利益を復活させて住宅ローンの分割返済が可能な状態に戻すのが、この期限の利益回復型です。

延滞している住宅ローンの元金や利息・損害金については、再生計画の履行期間内に返済します。

その間、①これまで通りの月々の住宅ローン、②再生計画の弁済金、③住宅ローンの延滞分(元本、利息、遅延損害金)という3つの返済が重なることになるため、支払いの負担が大きくなるのがネックです。

(3) 期限延長型

期限延長型は、住宅ローンの返済期限を延長できる制度で、最終弁済期限を最長10年間延長することができます。

返済期間が延びた分、月々の住宅ローンが減額できるので、返済は確実に楽になります。しかし、返済期間が延長されることで利息も多くなるため、総返済額は当初の予定よりも増えることになります。

期限の利益回復型と同様に、①これまで通りの月々の住宅ローン、②再生計画の弁済金、③住宅ローンの延滞分(元本、利息、遅延損害金)を返済していくことになります。

また最終弁済日は基本的に10年延長できますが、債務者が満70歳を超えるとそれ以上は延長できなくなるので、その点はご注意ください。

(4) 元本猶予期間併用型

一般的に再生計画で決定した3年(5年)は、弁済金の返済と住宅ローンの返済が重なるため、序盤の支払いが厳しくなりがちです。

そうした負担を防ぐために、元本猶予期間併用型では、個人再生決定後の弁済金の返済が重なる最初の3年(5年)については、住宅ローンの元本部分の返済を猶予します。

そうすることで、再生計画の返済と住宅ローンの返済を無理なく両立させることができるようになります。

イメージとしては、再生計画による支払いをまずは優先させ、再生計画の支払いが終了したあとに住宅ローンの返済を集中的に行うというものです。

ただし、元本が「免除」されるわけではなく、支払いが「猶予」されるだけです。

再生計画期間は、金利を支払い続けるだけで元本はほぼそのままなので、猶予期間が終了してしまうと、住宅ローンの返済額は必ず上がってしまいます。そのため、5年先、10年先といった長期のライフプランの検討が必要となります。

なおこの類型でも、(3)と同様、変更後の最終返済期限における債務者の年齢が70歳を超えないことが要件となります。

(5) 同意型

同意型は債権者の同意を得ることで実行できるタイプの返済方式です。住宅ローン特則は債権者の同意は必要ありませんが、同意を得ることで契約内容の変更や金利の見直しなど柔軟に対応をしてもらえるケースもあります。

たとえば、住宅金融公庫からの住宅ローンの融資では、返済できない場合に最長15年延長する措置があるので、同意型として15年の延長が可能です。

なお、この類型の条項を定める場合、ローン債権者による同意は、必ず代表権限のある者(代表取締役、登記された支配人など)が作成した書面で行なう必要があり、その同意書面の写しを、再生計画案と併せて提出することが求められます(作成者の権限の証明のため、資格証明書も添付が必要)。

 

以上、(1)ないし(5)のいずれの方式をとるにしても(そのまま型であったとしても)、個人再生の決定の際には、裁判所は債権者の意見を尊重するので、事前に債権者の同意を得ておくべきでしょう。
同意型であってもそうでなくても、あらかじめ債権者の同意を得ておくことは非常に大切です。

個人再生で住宅ローンの巻き戻しをする際には、事前に債権者とのコミュニケーションをしっかりとることをお勧めします。

【競売手続が始まっていたら?】
保証会社による代位弁済から6か月以内に個人再生の申立をしたが、他方で、既に保証会社の申立による競売手続が始まっているというケースについて説明します。
再生法上、保証会社が申し立てた競売手続が取下げ・取消しで終了するのは、住宅資金特別条項を定めた再生計画認可決定が確定した時点であり、再生申立てそれ自体には、既に開始している競売手続を止める力はありません。
したがって、このままだと、認可決定が確定する前に住宅が競落されてしまい、住宅資金特別条項を利用する余地がなくなってしまいます。
そのため、このようなケースでは、再生申立に加えて、競売手続の中止命令の申立も行なう必要があります。

4.個人再生・住宅ローンの巻き戻しなら泉総合法律事務所へ

住宅ローンを延滞し、代位弁済が履行されても、6か月以内であれば、住宅ローン特則を利用できます。この特則が適用されれば、住宅ローンの巻き戻しが可能となり、住宅ローンを代位弁済前の状態に戻すことができます。

巻き戻しによって、以前のように住宅ローンを毎月銀行に返済することができるようになりますので、自宅を手放すリスクから解放されます。

現在、借金や住宅ローンの支払いに行き詰っていて、かつ自宅を残したいと考えている人は、債務整理、個人再生の解決実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

支払い不能になってから一定の時間が経過すると、住宅ローン特則を利用できなくなるので、早めのご相談をおすすめします。

当事務所は東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に多数の拠点を設けておりますので、お近くの各拠点にてお気軽にご相談いただければと思います。

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