個人再生 [公開日]2018年5月1日[更新日]2021年9月8日

個人再生をするタイミング|いつ・どんな時にすればいい?

個人再生は裁判所で行う債務整理の一種です。

その概要や手続きの流れなどを紹介するネット記事はいくつもありますが、実際問題として悩ましいのは「個人再生に踏み切るタイミング」ではないでしょうか?

いつ個人再生を検討していいのかわからないまま借金生活を続けてしまい、結果的に手遅れになってしまうというケースも有り得ます。

そのような事態を防ぐために、この記事では個人再生を検討すべき基準やタイミングについて言及していきます。

1.個人再生がおすすめのケース

個人再生は裁判所で行う債務整理手続きですが、自己破産のように借金が0になるわけではありません。

借金の額などによって異なりますが、個人再生に成功すると、借金の額を約1/10~1/5まで減額してもらえます。減額された後の借金は、原則3年程度の分割払いで返済します。
また、基本的に財産の処分がありません。

しかし、個人再生の手続きは非常に複雑で、裁判所に納める費用などが高額になることがあります。また、手続き後の返済が前提となるため、収入に関する要件があります。

では、個人再生を選ぶべきケースを具体的に紹介していきます。

(1) 収入があっても債務の支払いが難しい

収入はあるものの、毎月の借金を支払うと生活が非常に厳しくなるようなケースです。

個人再生は3年程度の分割払いが前提の制度であるため、返済が現実的に可能な定期的かつ継続的な収入があることが求められます。
(※正社員でなくとも、パートやアルバイトの方、自営業者、年金生活者でも場合によっては個人再生を利用できます。)

「借金を大きく減らしてもらえたら、自分の収入で無理なく返済ができるのに…」という方は、個人再生がおすすめです。

なお、単発のバイトを繰り返しているような人は「定期的な収入がある」とみなされないことが多いです。
また、今現在収入がない(無職である)という方は、自己破産一択となるでしょう。

(2) 住宅ローンの支払中で自宅を手放したくない

住宅ローンのある状態で債務整理をすると、ローンの債権者は「この債務者は支払能力に問題がある。債権を回収するために抵当権を実行しよう」と考えます。

住宅に設定された抵当権が実行されると、住宅が競売にかけられてしまい、持ち主は住む家を失ってしまいます。

しかし個人再生には「住宅資金特別条項」、通称「住宅ローン特則」という制度があります。

この制度を利用すると、住宅ローンについては個人再生による減額を受けることができなくなりますが、その代わりに抵当権が実行されるのを防いで、従来の持ち家に住み続けられるようになります。

「クレジットカードなど他の理由で作った借金を減額してもらえれば住宅ローンは払える」という方は、住宅ローン特則を利用して個人再生を行いましょう。

住宅ローン以外の借金を大幅に減額することができるので、家計の立て直しを実現できます。

[参考記事]

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の利用要件

(3) 免責不許可事由がある

自己破産には「免責不許可事由」というものがあります。簡単に言えば「自己破産しても借金を帳消しにしてもらえない事情」です。

例えば以下のことが免責不許可事由に該当します。

  • 借金の理由が浪費やギャンブル
  • クレジットカードで買った商品を現金化するために安く売った(ショッピング枠の現金化)
  • 複数の債権者がいる場合、特定の債権者にだけえこひいきになるような返済をした

実際にはこれらの事情があっても裁判官が独自の裁量で借金をゼロにする「裁量免責」を受けている人が多いですが、その程度が重い場合には、裁量免責を確実に受けられる保証はありません。

多額のギャンブルなど、免責不許可事由が問題になりそうな人は、個人再生を選んだ方が安心です。

[参考記事]

免責不許可事由とは?該当しても裁量免責で自己破産ができる!

(4) 資格制限を避けたい

自己破産をすると、破産手続中は弁護士や司法書士、生命保険募集人や警備員など、一定期間、一部の仕事に就くことができなくなります。これを「資格制限」と言います。

資格制限の期間は破産手続の内容によって異なります。破産手続開始決定と同時に破産手続が終わる場合は、資格制限の期間が実質的に存在しません。

しかし借金の多い人や、権利関係や契約関係が複雑な人、ギャンブルや換金行為等、借金の理由に問題があるような人は、管財事件となり、数ヶ月間は資格制限を受けてしまうでしょう。

個人再生には資格制限がないため、今の仕事を継続したい人は個人再生を選ぶと良いでしょう。

[参考記事]

自己破産と仕事の関係|制限を受ける職業・資格一覧

2.個人再生のタイミング

「ひょっとしたら事態が好転するかもしれない」と思ってズルズルと借金生活を続けると、利息が重なって事態が悪化の一途を辿ります。

個人再生を含む債務整理の決断は早めにすることが大切です。
最後に、個人再生を決断すべきタイミングや、その目安を解説します。

(1) 借金が100万円以上かつ5,000万円以内

5,000万円(住宅ローン条項付き個人再生の場合は住宅ローンの金額を除く)を超える借金を抱えている人は個人再生を利用できません。
また、借金総額が100万円未満の人は、個人再生をしても減額を受けることができません。

そのため個人再生をするのであれば、借金総額が100万円を超えた後かつ5,000万円を超える前にする必要があります。

なお、借金総額による減額率は以下のようになっています。
(実際の減額率は、借金総額以外にも幾つかの事情を考慮した上で決定されます。)

借金額 弁済額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 借金額の5分の1
1500万円以上3000万円未満 300万円
3000万円以上5000万円以下 借金額の10分の1

[参考記事]

個人再生の最低弁済額|月々の支払いはいくらになるの?

借金総額が100万円以下の人は任意整理、5,000万円を超えている人は自己破産を検討することになりますが、あなたに最適な債務整理方法については一度弁護士にご相談ください。

(2) 自力での返済が不可能と判断したとき

前項の条件を踏まえたうえで、「自分の収入や資産では借金の返済ができない」または「約定通り返済すると生活ができない」と判断したときが、個人再生すべきタイミングです。

個人の判断に委ねられる部分が大きいのですが、例えば以下の場合は個人再生のことを真剣に検討するべきです。

  • 既に返済を滞納しており、それを解消できる見込みがない
  • 次の返済日に約定通りの返済ができない状態であり、今後もそれが続く見込み

一旦このような状態になってしまうと、何らかの収入がない限り解決が極めて困難です。

中にはお金を手に入れようとギャンブルに手を出したり、クレジットカードのショッピング枠を現金化したりする方もいるようですが、却って泥沼化するだけなので絶対にやめてください。
余計な借金が増えるうえに、元の借金の利息や遅延損害金が増えてしまいます。

まとめると、「借金総額が100万円以上と比較的大きいとき」に「これ以上返済をしても完済できない」と判断したら、そのタイミングですぐに個人再生のことを弁護士に相談するべきと言えます。

3.個人再生のことなら弁護士へ

個人再生の手続きは難しく、個人で裁判所に問い合わせても、窓口の人が弁護士に依頼するように勧めてくるほどです。
自力でやろうとしても時間と手間がかかったうえに失敗してしまう可能性が高いですし、準備段階から弁護士に相談して、手続きを代行してもらうことを強くおすすめします。

特に、再生委員が原則として付かない地域でも、弁護士が申し立てない場合、再生委員という専門家がついて、結局費用がかかってしまうこともあります。

個人再生には注意点がいくつもありますが、弁護士なら個々のケースに応じた注意点をしっかりと説明してくれるので安心です。

泉総合法律事務所は、個人再生を含めた債務整理全般に対応しています。借金でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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