老後破産の不安…個人再生、任意整理は年金受給者でも可能?

個人再生

老後破産の不安…個人再生、任意整理は年金受給者でも可能?

近年、高齢化社会が進んで高齢者の人口が増えると同時に、経済的に苦しい高齢者世帯が増加しています。年金を受給していても、その年金がほんのわずかしかないので、借金に頼らざるを得ず、借入を重ねてしまうこともあるでしょう。

老後破産」という言葉もささやかれていますが「自己破産は避けたい」というご希望の方も多いです。実は、高齢の年金受給者であっても、「個人再生」や「任意整理」によって、借金問題を解決できる可能性があります。

今回は、高齢の年金受給者が個人再生や任意整理によって借金問題を解決する方法について、弁護士が解説いたします。

1.年金を差し押さえられる可能性はあるのか?

年金受給者が借金を滞納すると、年金を差し押さえられることがあるのでしょうか?

年金受給者の方は、「年金を止められると、生活ができなくなる」ことが多いので、もし差し押さえられるとしたら、死活問題です。

借金を滞納すると、預貯金や生命保険、不動産など、いろいろな財産を差し押さえられます。サラリーマンの場合、給料を差し押さえられることも知られています。

しかし、実は、借金を滞納しても、年金は差し押さえられることがありません。年金は、法律上「差押禁止債権」となっています。年金は、受給者の生活にとって必須のものとなっているので、差し押さえることが認められないのです。

つまり、借金を滞納して裁判をされても、年金を差し押さえることはできません。

ただし、年金が振り込まれて預貯金などに形が変わったら、差し押さえられる可能性があります。不動産や生命保険などの財産も差し押さえの対象になります。

そうなると、やはり生活が苦しくなりますから、借金を返済できないなら、早めに解決する必要があるのです。

借金問題解決の方法は「債務整理」です。これは、借金を整理するための法的な手続のことです。

2.任意整理・個人再生・自己破産

債務整理と言えば、「自己破産」と思い浮かべる方が多いかもしれません。そして、借金をしていても、「自己破産をしたくない」という方がたくさんいます。

実は、借金を整理するために利用できる「債務整理」には、自己破産以外にもいくつかの方法があります。それらの別の手続を利用すると、自己破産に伴うリスクを避けられます。自己破産以外の債務整理には「任意整理」と「個人再生」があります。

3.老後破産について

ここでみなさまに知っていただきたいのは、年金生活者が借金を重ねたとき「老後破産」しなければならないケースが増えているということです。

そもそも、一昔前までは「老後破産」などという言葉はありませんでした。このような言葉がささやかれるようになったこと自体、「高齢者の破産が増えている」ことを意味します。

老後破産とは、高齢になったときに借金がかさんで返済できなくなってしまい、破産することです。多くのケースでは、退職して年金生活になったあと、借金を重ねてしまい、あるいはもともとあった借金が重しになり、年金から借金返済することができないので、破産を余儀なくされます。

老後破産するのは、低所得者の人だけではありません。現役時代には高額な収入があった人でも、年金生活に入って老後破産してしまう人がいます。
老後破産する場合、以下のようなパターンが多いです。

  • 金銭感覚が現役時代と変わらない
  • 医療費がかかった
  • 子どもが面倒を見てくれなくなった
  • 年金生活になったのに、住宅ローンが残っている
  • 介護が必要になった
  • 思ったより退職金が少なかった

現役時代に多く稼いでいた人でも、年金生活になったら収入が減るので、一気に生活が苦しくなって、破産せざるを得なくなるのです。
今、借金がない人でも老後いきなり生活が苦しくなることはありますし、今すでに生活が苦しい方は、相当な危険信号と言えます。

そして、このようにして年金生活者が借金してしまったときに「老後破産」を避ける方法が、任意整理や個人再生による解決方法です。

4.年金受給者でも任意整理できるか

年金受給者でも任意整理できるか

それでは、実際に、年金生活者でも任意整理や個人再生することができるのでしょうか?

まずは、任意整理から検討してみましょう。
任意整理は、基本的にどのような人でも利用することができます。年金受給者でも、条件を満たせば利用することができます。

ただし、最低限の支払い能力は必要です。任意整理をすると、債権者との合意後、3年~5年程度、返済が続くからです。

(1) 任意整理できるかどうかの判断基

任意整理では、元本はそのまま残ることが多いです。
そこで、借金の元本を5年(60ヶ月)で割り算して、その支払いを5年間継続していけるなら、任意整理できる状況だと言えます。

たとえば、借金額が200万円程度の場合、5年で返済すると、毎月3.3万円あまりの支払いが必要になってきます。その支払いを継続していけるなら、任意整理で解決できる可能性があります。

任意整理では、借金の元本がそのまま残るので、多額の借金があるときには解決が難しくなります。多くの年金生活者の場合、200万円程度がぎりぎりでしょう。300万円になると、月々の返済が5万円になってしまうので、かなり支払いが苦しくなってしまいます。

(2) 5年よりも返済期間を延ばせる可能性

なお、任意整理をするとき、話し合いによっては、手続後の支払期間を延ばしてもらうことも可能です。若い人なら、7年や10年にできることもあります。(本当に稀なケースではありますが。)

ただ、高齢者の場合、合意後10年間の支払い約束にすると、その間に亡くなってしまうリスクなどもあるので、債権者は躊躇するでしょう。

任意整理で解決するときには、やはり基本的に5年以内で返済する予定で考えておくことが必要です。

5.年金受給者でも個人再生できるか

次に、年金受給者が個人再生することができるのか、検討してみましょう。

個人再生の場合、借金を元本ごと大きく減額することができます。
そこで、任意整理では解決できないくらい大きな借金があっても、個人再生なら解決できる可能性があります。

たとえば、個人再生の場合、借金額が500万円以下であれば、最大100万円にまで減額してもらうことができます。減額してもらったお金は、原則3年の間に返済していけば足ります。すると、月々の返済額は28000円程度です。そのくらいなら返済していける、という方も多いのではないでしょうか?

そして、年金生活者でも、個人再生を利用することができます。年金は、かなり安定した収入ですから、金額さえ足りていれば、裁判所は年金生活者の再生計画案を認可します。

個人再生には、小規模個人再生という方法と、給与所得者等再生という方法の2種類があります。給与所得者等再生は、会社員や公務員などの特に安定した収入がある人だけが利用できる個人再生の方法ですが、年金生活者の場合には、給与所得者等再生も利用できる可能性があります。

(1) 収入の金額が足りない場合

ただ、個人再生を成功させるには、十分な金額の収入が必要です。

いくら安定していても、収入の「金額」が足りないと、個人再生の手続を開始してもらうこともできませんし、手続の途中で収入が足りないと判断されたら、個人再生手続を廃止されてしまいます。

また、何とか裁判所に個人再生を認めてもらっても、その後3年間は支払いが続きます。途中で返済ができなくなってしまったら、債権者から督促をされたり、再生計画認可決定(借金を減額してもらうための決定)を取り消されたりして、個人再生での借金減額が「なかったこと」になってしまいます。

すると、借金が「全額復活」するので、元の債権者から督促が来る状態に戻ってしまいます。

(2) 収入が足りない場合の対処

そこで、年金生活者が個人再生できるかどうかについては、収入の金額によって大きく変わってきます。年金だけでは足りない場合、アルバイトをしたり、妻にパートに出てもらって助けてもらったりすることで、個人再生が認められるケースもあります。

(3) 住宅資金特別条項で家を守れる可能性

また、個人再生には、住宅資金特別条項という特則があります。これは、住宅ローンを抱えているときに、住宅ローンだけはそのまま支払いを続けて、家を守る方法です。

年金生活で住宅ローンが残っているとかなり支払いが厳しくなるので、ついつい借金してしまうことがありますが、場合によっては個人再生によって、家を守ることも可能となるのです。

6.まとめ

以上のように、年金生活者であっても、任意整理や個人再生をすることができます
ただ、どの債務整理手続が向いているかは、ケースによって異なります。また、借金があって困っている場合、放っておくと支払いができなくなって、債権者から次々に督促が来て、大変なことになってしまいます。

早いうちなら「老後破産」を避ける方法もあるので、借金返済が苦しいと感じているなら、できるだけお早めに、泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。ご相談は何度もでも無料です。

債務整理コラム一覧に戻る