個人再生 [公開日]2021年4月2日

個人再生の非減免債権(非免責債権)の扱い

多額の借金を抱えて返済が不可能な場合は、「個人再生」をすることで借金問題を解決できる可能性があります。

個人再生が認められれば、借金が5分の1〜10分の1程度に減額されます。
減額してもらった後の借金は、原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していくことになります。

借金が一気に8割程度も減り、分割返済が可能になれば、経済状況が一気に改善されるでしょう。

しかし、全ての借金が個人再生で減額されるわけではありません。中には減額されない種類の借金もあります。

個人再生をしても減額されない借金を「非減免債権」と言います。
これは、自己破産で言う「非免責債権」と同じような扱いです。

では、一体どういったものが非減免債権に該当するのでしょうか?
そして、非減免債権の滞納を解決するにはどうすれば良いのでしょうか?

1.非減免債権とは

世の中には「減額すると債権者へのダメージが大きすぎる債権」があります。

例えば、あなたが誰かに危害を加えられて、その治療に100万円かかったとします。この場合、あなたは加害者に損害賠償を請求する権利が発生します。

しかし、損害賠償請求を行った後で加害者が個人再生をして、賠償額が5分の1(20万円)に減額されたとします。
こうなると、あなたは80万円を自腹で払わなければならなくなりません。

このように、仮に加害者の減額が許されるのであれば、一部の人が「気に入らない相手を襲っても、後で個人再生すれば賠償額が少なくて済む」と考えて、実際に加害行為に及ぶ危険性があります。

そのような考えや行動を防ぐために、個人再生をしても減額されない「非減免債権」が予め設定されているのです。

2.非減免債権の種類

具体的には、以下のものが非減免債権に分類されています。

(1) 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

ここで言う「悪意」とは「積極的に相手に害を与えよう」という意思のことです。

積極的に加害する意思をもって相手に損害を与えた場合、加害者はその損害を賠償しなければなりません。

つまり、加害者は損害を賠償するという「債務」を負い、被害者は損害の賠償を受けるという「債権」を得ることになります。

この債権債務は個人再生によって減額されません。

(2) 故意または重過失によって加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

たとえ積極的な加害意思がなくても、「わざと」または「重大な過失」によって他人の生命や身体を害した場合は、損害を賠償する責任を負います。

注意すべきは「重過失」と「人の生命又は身体を害する」という文言です。

「重過失」とは?

例えば交通事故の場合、飲酒運転居眠り運転が重過失に当たります。30キロ以上のスピード違反や無免許運転なども重過失です。

一方、前方不注意やわき見運転、運転操作ミのスなどは「重過失」に分類されていません。すなわち、これらが原因の交通事故で他人を傷つけた場合の損害賠償の金額は、個人再生をすれば減額されます。

ここでは交通事故の場合を例示しましたが、何が重過失とされているかはケースごとに異なります。弁護士に相談して個別に判断してもらうことをおすすめします。

「人の生命又は身体を害する」とは?

交通事故であれば「物損事故ではない事故」、すなわち「人身事故」が当てはまります。

つまり、物損事故の賠償金は個人再生で減額されることになります。
これに対して、他人の生命や身体を傷つけた場合は治療費が必要であり、被害者がそれを支払えなければ生命を失ったり重度な障害が残ったりするかもしれません。

加害者に全額賠償をさせて被害者を保護するという目的を達成するために、人身事故の損害賠償については非減免債権とされています。

(3) 夫婦や扶養家族の生活費、子の養育費などの請求権

夫婦には「扶助義務」というものがあり、お互いが同じレベルの生活ができるように相互に助け合う義務を負っています。

また、家族を持つと「扶養義務」というものが発生します。経済的に自立できない人をサポートする義務です。

さらに、子供がいる状態で離婚した場合は、別居した子供に「養育費」を支払う義務を負うことが多いです。

このように、近親者の生活に必要な費用については、支援を受ける側に請求権が存在します。

もし、生活費や養育費を個人再生によって減額できてしまうと、支援を受ける側の生活費や養育費が少なくなってしまい、健康な日常生活や子供の健全な発達に支障が出るおそれがあります。

支援を受ける側を保護するために、生活費や養育費などは非減免債権とされています。

[参考記事]

個人再生をしても養育費は減額されない(非減免債権)

(4) 一部の慰謝料

慰謝料は「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に含まれることが多いです。

また、ドメスティックバイオレンス等が離婚の理由であれば「故意や重過失で生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」の対象にもなります。

したがって、慰謝料も非減免債権と判断されるケースが多いのが実情です。

しかし、単に性格が合わないなど、不法行為が原因でない理由で離婚するケースもあります。
この場合、仮に慰謝料が発生しているとしても、それが不法行為に端を発したものでなければ非減免債権として扱われません(=個人再生による減額の対象となりえます)。

慰謝料の扱いは慰謝料が発生した事情によって異なるため、弁護士に相談する際に質問してみることをおすすめします。

【非減免債権ではないが減額されないもの】
非減免債権以外に、以下のものも個人再生では減額されません。
・滞納中の税金や社会保険料
・未払い給与等の人を雇うことで生じた債務
・罰金等
こういった債権を「一般優先債権」と言います。一般優先債権は個人再生のカバー範囲外となるため、非減免債権以前の問題として、減額の対象となっていないのです。
非減免債権に関しては後で述べるように再生期間中の支払額が減るなどしますが、一般優先債権は再生期間中でも支払額が減ることがありません。随時支払いをしていくことになります。

3.非減免債権が払えない場合

このように、非減免債権は個人再生をしても減額されませんが、他にも借金がある場合には非減免債権があっても個人再生をする意義は大きいです。

(1) 当面の支払い額が変わる

個人再生をすると借金が減額され、減額後の借金を原則3年程度で分割払いすることになります。
この「原則3年程度の支払期間」のことを「再生期間」と呼びます。

仮に借金が1000万円だとして、個人再生によって5分の1になった場合、再生期間中の支払額は200万円です。

ただし、元々の借金に80万円分の非減免債権があったとします。80万円の5分の1は16万円です。

この場合、非減免債権の16万円+他の借金184万円の計200万円が再生期間中の総支払額となります。
非減免債権の残りの64万円に関しては、再生期間が終わった後で一括払いを求められます。

再生期間中に限った話ではありますが、非減免債権であっても毎月の支払額が一応は減額されることになります。

少なくとも再生期間中に一括払いを求められることはないため、その間に対策を練ることもできるでしょう。

(2) 他債務の圧縮により非減免債権を支払える可能性

極端な例ですが、毎月の支払額が10万円であり、個人再生によって5分の1の2万円で済むようになったとします。
差額となった8万円のうち、5万円を3年間貯めれば合計180万円になります。

このお金で、(1)に書いた再生期間後の一括払いに備えることができます。

個人再生で債務総額を圧縮して毎月の返済額を減らすことができれば、貯蓄のための余裕が生まれやすくなります。それだけでも個人再生の意味は非常に大きいと言えます。

(3) 再生期間後の分割返済は交渉可能

どうしても再生期間後の一括払いができない場合は、債権者と交渉してみましょう。分割返済に応じてもらえるかもしれません。

必ず交渉に応じてくれるとは限りませんが、交渉に慣れた弁護士を代理人とすれば、交渉が成功する可能性が高くなります。

4.非減免債権がある個人再生は弁護士に相談を

個人再生をしても、非減免債権は減額されません。しかし、毎月の支払額が減り、支払いスケジュールも変わるなどの利点があります。

何よりも大きなメリットは、個人再生によって非減免債権以外の債務を大きく減額できることです。支払総額が減れば貯蓄に回せるお金も生まれるでしょう。

生活を楽にしつつ、無理のない返済をするために、個人再生は非常に効果的な制度です。

しかし、個人再生は手続きの難易度が高いため、一般人が自力で行うことはほとんど不可能です。また、原則として再生委員が就かない地域でも、弁護士申立てでないと再生委員が選任されることもあります。

個人再生は、どうぞ弁護士にお任せください。弁護士に依頼すれば個人再生手続きの代行だけでなく、再生期間後の支払いなどについても対策を練ることができます。借金生活から根本的に抜け出せる可能性が極めて高くなるはずです。

個人再生を含め、借金のお悩みがある方は、ぜひ泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
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