個人再生の返済額はどれくらい?~具体的な減額金額を解説!
個人再生は、借金を大幅に減額することができる債務整理です。
しかし、減額されると言っても、借金の返済義務がなくなるわけではありません。
減額されて残った部分については、毎月少しずつ返済していく必要があります。
借金がどれくらい減るのかによって月々の支払額も変わってくるため、できるだけ減額したいと思うのが通常でしょう。
現実問題として、個人再生をするとどれくらい借金が減るのでしょうか?
ここでは、個人再生によってどれくらいの減額が期待できるのかを解説していきます。
最終的には弁護士に確認を取るのが一番ですが、大体どの程度の減額ができるのかを紹介していくので、ぜひご覧ください。
1.個人再生の減額率の決まり方
個人再生の減額率の計算方法は3種類あります。
- 負債総額に応じた法定の最低弁済基準
- 清算価値保障の原則
- 可処分所得額2年分
そして、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
小規模個人再生では、AとBを比べて高額な方が、最終的な返済額となります。
給与所得者等再生では、AとBとCのうち、最も高額なものが最終的な返済額になります。
それぞれどのように計算されるのか、実際に見ていきましょう。
(1) 負債総額に応じた最低弁済基準
まずは、負債総額に応じた最低弁済基準(法律で決まっている減額率)を紹介します。
再生債務者の債務総額によって、以下のように定められています。
負債総額 | 減額率 |
---|---|
100万円以下 | 減額されない |
100万円~500万円 | 債務総額が100万円になる |
500万円~1500万円 | 債務総額が5分の1になる(8割カット) |
1500万円~3000万円 | 債務総額が300万円になる |
3000万円~5000万円 | 債務総額が10分の1になる(9割カット) |
なお、「住宅ローン特則」を利用する場合、住宅ローンの残債務の額は債務総額から除きます。
(2) 清算価値保障の原則
清算価値保障の原則とは「債務者が持っている財産と同額分は支払いをしなければならない」というルールです。
つまり、個人再生する人は、現に自分が持っている財産の総額と同じ分までしか、債務を減額されません。
もし個人再生をしたときに債務者の財産より少ない額しか返済しなくて済むのであれば、債権者からすれば自己破産の場合よりも少ない額の弁済しか受けられないことになってしまいます。
その場合、債権者は「個人再生されるくらいなら、自己破産で財産を処分して、そのお金で弁済してもらった方がマシだ」と思うはずです。
債権者の感情もさることながら、自己破産よりも少ない額しか弁済を受けられないのでは、債権者の権利が大きく損なわれてしまいます。
できるだけ債権者の権利を守るために、清算価値保障の原則が設けられているのです。
財産の総額は、主に以下のものから計算されます。
- 現金や預貯金
- 生命保険の解約返戻金
- 不動産や自動車(査定額)
- 有価証券(時価)
- 退職金(実際の退職が先の場合は受取予定額の8分の1)
- 貸付金や売掛金
- 過払い金(過去に借金があった場合)
- 損害賠償請求権に関する債権
仮に財産総額が500万円の人が3000万円の債務を負って個人再生した場合、Aの基準からは債務総額が9割カットされて300万円になるはずです。
しかし清算価値保障原則によって、自己の財産額以上の額を支払うことになるため、500万円までしか減額を受けられません。
また、財産総額が500万円の人は、債務総額が500万円以下であれば、個人再生をしても借金を減額されないので、意味がないことになります。
(3) 可処分所得額2年分
給与所得者等再生のときにのみ関わってくる項目です。
可処分所得とは、手取り収入から最低限の生活費を引いたものです。
手取り収入は給与明細などを見ればすぐわかると思いますが、「最低限の生活費」はわかりにくいと思います。
最低限の生活費は、基本的に「生活保護費」を定めるときと同じ基準で計算されます。
生活保護費の定め方は自治体によって異なるため、個人再生をする地域の弁護士に相談して確認を取るといいでしょう。
2.できるだけ減額してもらう方法
減額してもらえればしてもらえるほど、個人再生後の月々の返済が楽になります。可能な限り減額を受けたいと思う人が大半でしょう。
ここからはその手段を考えていきます。
(1) 小規模個人再生を選択する
給与所得者等再生を選択すると、「可処分所得の2年分」が考慮され、減額率が下がる(最終的な返済額が上がる)可能性が高くなります。
より減額を受けたい場合は、給与所得者等再生ではなく小規模個人再生を選ぶべきです。
ただし、小規模個人再生の場合、「個人再生に反対する債権者の数が債権者の総数の半数以上」となるか、「反対する債権者の持つ債権額が総債権額の2分の1を超える」と、個人再生そのものができなくなります。
減額率を上げるためには、基本的には小規模個人再生を選択してください。
そのうえで、多くの反対があった場合には給与所得者等再生に切り替えるといった対応が必要です。
(2) 裁判所に事情を説明する
自営業者の方が個人再生をする場合、回収していない売掛金や貸付金があると、それらも財産に含めてカウントされるため、財産の額が上がって減額率が悪くなってしまいます。
しかしこういった債権は確実に回収できるとは限らず、相手が倒産しそう、または弁済能力がないなどの事情によっては、踏み倒されるおそれがあります。
裁判所に事情を説明し、回収の見込みが非常に低いと判断されれば、財産の評価額を下げてもらえるかもしれません。
ただし債務者が自分で裁判所に説明するのは非常に難しく、下手をすると財産隠しを疑われる可能性があります。
弁護士に依頼して、裁判所が納得できるようにきちんと説明してもらうのがおすすめです。
3.借金返済・個人再生のお悩みは弁護士へ相談を
個人再生の減額率は、債務総額や自分の財産総額、手取り収入などによって決まることがほとんどです。
少しでも減額率を高くしたい場合は、財産を目減りさせるなどの方法が考えられます。
しかし素人考えで財産を処分してしまうと、個人再生で禁止されている「財産隠し」に当たるとみなされて、個人再生の手続きに悪影響が発生するおそれがあります。
減額率を高くするためには、弁護士に依頼して最善策を考えてもらうのが安心かつ確実です。
そもそも個人再生の手続きは一般人が自力で行うこと自体難しく、自分で頑張ろうとしても失敗に終わる可能性があります。
個人再生の際は弁護士に相談して、適切にサポートしてもらうことをお勧めします。