個人再生 [公開日]2018年6月18日[更新日]2019年10月15日

個人再生をすると学資保険は解約になる?

個人再生は、借金の一部を免除してもらえるため、多額な借金を解決することのできる手続きです。

また、自己破産の場合と違い、原則として財産の処分がいらない点も大きなメリットです。

しかし、学資保険を積み立てている人が個人再生すると、学資保険を解約せざる得ない場合もあります。
これは、個人再生が清算価値保障の原則というルールを採用していることに関係しています。

今回は、個人再生における清算価値保障の原則と、学資保険との関係について解説します。

1.個人再生で学資保険を解約しなければならないケース

(1) 学資保険で個人再生の清算価値が高くなりすぎる

個人再生は、原則として保有財産の処分を必要としない債務整理です。
しかし、実際には、個人再生したことで学資保険を解約せざる得ない場合もあります。

それは、「学資保険によって清算価値が高くなりすぎた場合」です。

ただし、清算価値が高くなっても「3年(最長5年)で十分に返済できる資力がある」ときには、個人再生しても学資保険を解約する必要はありません。

では、清算価値とはどのようなものなのでしょうか?

2.学資保険と個人再生の清算価値保障の関係

(1) 清算価値保障の原則とは

個人再生では、再生債務者(申立人)自らが、「再生計画」と呼ばれる返済計画(返済回数・返済総額)案を作成・提出します。

再生計画に基づく返済総額(計画返済総額)は、次のすべての基準額を超える金額でなければなりません。

  • 民事再生法が定める最低弁済基準額
  • 清算価値を超える金額
  • 法定可処分所得の2年分の額(給与所得者等再生の場合に限る)

このうち「清算価値」とは、「再生債務者の財産を全部お金に換えて清算した場合の価値」を意味し、具体的には、「自己破産したとすれば、債権者に配当されることが見込まれる金額」になります。

清算価値保障の原則とは,言い換えれば、個人再生では、少なくとも自己破産したときの配当金までは弁済しなければいけないということです。

自己破産をした場合には債務者の財産を換価・処分して債権者に配当することになるので、個人再生で弁済を受ける金額がそれよりも低いのであれば、債権者としては個人再生ではなく自己破産してくれた方がよいということになってしまいます。

そこで、債権者の理解を得て個人再生手続に協力してもらうために、清算価値以上の金額を返済しなければならないとしているのです。

(2) 解約返戻金は清算価値に計上される

清算価値は、「自己破産したときに換価・処分の対象となる財産の総額」で決まります。
生命保険や学資保険の解約返戻金も自己破産の際に処分対象となるので、清算価値に含まれることになります。

特に学資保険は、返戻率が高い商品が多いため、個人再生では、「解約返戻金」がネックとなることが少なくありません。

なお、清算価値に計上すべき財産は、再生債務者本人のものに限られます。学資保険の契約者が配偶者であるような場合には、清算価値に計上する必要はありません。

(3) 個人再生の返済額を具体例で考える

では、借金の総額が300万円の場合を例に、この問題を整理しておきましょう。

ちなみに、再生手続きとは別に返済される住宅ローンの残債務などは含まれません。

①最低弁済額基準の場合

上の図で示したように、借金の総額が300万円の場合に民事再生法が定める最低弁済基準額は、100万円となっています。

この時、清算価値が100万円以下であれば、計画返済総額は100万円であれば良いことになります。

②解約返戻金がある清算価値基準の場合

しかし、上のケースのように、預金50万円、退職金見込額(1/8)50万円、学資保険解約返戻金150万円の財産があるときには、清算価値が250万円となります。
この場合、計画返済総額も250万円以上でなければなりません。

計画返済総額が250万円の場合、3年で完済するための毎月の返済額は約7万円となります。

毎月約7万円の返済が可能なら学資保険を解約する必要はありませんが、これでは個人再生前の返済額と大きな違いが出ないので、個人再生をする意味があまりありません

【個人再生では学資保険の契約者貸付に注意】
学資保険でも生命保険と同様に「契約者貸付」という制度があります。契約者が、解約返戻金の範囲内で、一定の金額を借りることができる制度です。
契約者貸付は、「解約返戻金の前払い」と位置づけられます。したがって、「貸付」という名称はついていますが、借金(債務)ではありません。
そこで、個人再生をする前にすでに契約者貸付を受けている場合には、解約返戻金の額から契約者貸付の金額を引いた額を清算価値に計上します

3.まとめ

個人再生は多額な借金を抱えたときでも財産を処分せずに解決できる便利な制度ですが、清算価値がネックとなる場合も少なくありません。
同様の問題は、アンダーローンの不動産、ローン完済済みの不動産を保有している場合にも生じます。

また、清算価値についての判断は、専門的知識が必要なため、一般の方が独自で判断すると大きな不利益を受ける場合もあります。

債務整理は、借金や財産の状況に応じて最善の対応をとることがとても大切です。借金問題でお困りのときには、できるだけ早く泉総合法律事務所までご相談ください。

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