個人再生 [公開日][更新日]

個人再生をすると学資保険は解約になる?

【この記事を読んでわかる事】

  • 個人再生手続の仕組みと借金の返済方法
  • 個人再生において重要な「清算価値保障の原則」について
  • 個人再生で学資保険を解約せざる得ない場合とは?

 

個人再生は、借金の一部を免除してもらえるため、多額な借金を解決することのできる手続きです。

また、自己破産の場合と違い、原則として財産の処分がいらない点も大きなメリットです。

しかし、学資保険を積み立てている人が個人再生すると学資保険を解約せざる得ない場合もあります。これは、個人再生が清算価値保障の原則というルールを採用していることに関係しています。

今回は、個人再生における清算価値保障の原則と学資保険との関係について解説します。

1.個人再生での借金返済方法

まずは個人再生での借金の返済方法について確認しておきましょう。

個人再生では、裁判所に認可された「再生計画」に基づいて、借金を分割で返済します。分割の期間は原則3年です。

再生計画は、個人再生を申し立てた者が作成・提出し、債権者の同意(消極的同意)を得た上で、裁判所の認可を仰ぎます(小規模個人再生の場合)。

再生計画が認可されると、再生計画に従い借金(の一部)を分割弁済します。計画がすべて実行されたときに残った借金は返済義務を免除されます。

(1) 個人再生では財産の処分は不要

個人再生では、再生計画の認可後3年の分割で返済するため、「認可後の収入」を原資に借金(の一部)を返済していきます。

そのため、小規模個人再生を利用するためには、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」のあることが必要です(民事再生法221条1項)。

また、給与所得者等再生を利用するときには、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さい」ことが要件となります。

将来の収入によって借金の一部を返済する個人再生では、原則として「保有財産の処分は不要」です。

この点が、清算型の債務整理である自己破産と最も大きく異なる点です。

(2) 清算価値保障の原則

返済条件を定める「再生計画」は個人再生で最も重要なものです。

再生計画は、再生債務者(申立人)が、自ら返済条件(返済回数返済総額)の案を作成・提出します。

特に、再生計画による返済総額は、債務者にとっても債権者にとっても最大の関心事です。

再生計画に基づく返済総額(計画返済総額)は、次のすべての基準額を超える金額でなければなりません。

  •  民事再生法条が定める最低弁済基準額
  • ・清算価値を超える金額
  • ・法定可処分所得の2年分の額(給与所得者等再生の場合に限る)

上記のうち「清算価値」とは、「個人再生のときに自己破産したとすれば、債権者に配当されることが見込まれる金額」のことです。

個人再生において債権者は、「債権が減額される」だけでなく、「3年間の分割返済」も強いられることになります。

したがって、計画返済総額が清算価値を下回るときときに再生計画を認可することは、債権者との関係であまりにも不公平で許されないとされています(民事再生法174条2項4号)。

2.学資保険を解約しなければならない場合

個人再生は、原則として保有財産の処分を必要としない債務整理です。

しかし、実際には、個人再生したことで学資保険を解約せざる得ない場合もあります。

この点について結論を先にいえば、「学資保険によって清算価値が高くなりすぎたときには、学資保険を解約した方がよい場合がある」ということになります。

「清算価値が高くならない場合」や、清算価値が高くなって「3年で十分に返済できる資力がある」ときには、個人再生しても学資保険を解約する必要はありません。

(1) 清算価値と学資保険との関係

清算価値は、「自己破産したときに差押え(処分)の対象となる財産の総額」で決まります。

自己破産した際に差し押さえられる財産の具体例は下記のとおりです。

  • 現金
  • 預貯金
  • 解約返戻金
  • 退職金見込み額
  • 高価な貴金属や装飾品など
  • 自動車

貯蓄型の保険である学資保険には「解約返戻金」があります。特に学資保険は、返戻率が高い商品が多いため、個人再生ではネックとなることが少なくありません。

なお、清算価値に計上すべき財産は、再生債務者本人のものに限られます。学資保険の契約者が配偶者であるような場合には、清算価値に計上する必要はありません。

(2) 具体例

再生債権が300万円の場合を例に、この問題を整理しておきましょう。

再生債権というのは、再生計画によって返済される債権(債務)のことです。

再生手続きとは別に返済される住宅ローンの残債務などは、再生債権には含まれません。
上の図で示したように、再生債権が300万円の場合の最低弁済基準額は100万円と定められています。清算価値が100万円以下であれば、計画返済総額は100万円以上であれば良いことになります。

仮に、100万円を3年の毎月払い(36回)で返済すれば、毎月の返済額は27、777円となります。

この300万円の借金が、消費者金融や銀行カードローンからのものであれば、毎月の返済額は半分以下になる可能性があります。

しかし、上のケースのように、貯金50万円、退職金見込額(1/8)50万円、学資保険解約返戻金150万円の財産があるときには、清算価値が250万円となるため、計画返済総額も250万円以上でなければなりません。

同じく3年の毎月払いにすれば、毎月の返済額は、69,444円となります。

結論としては、毎月69,444円の返済が可能なら学資保険を解約する必要はありません。

しかし、このケースでは、毎月7万円の返済では、個人再生前の返済額と大きな違いがなく「実際に返済するのは難しい」という場合が多いと思われます。

(3) 契約者貸付があるときの注意点

解約返戻金のある保険には「契約者貸付」という制度があります。借金で困っている方の場合には、すでに契約者貸付を受けている方も少なくありません。

契約者貸付は個人再生でどのように取り扱われるか確認しておきましょう。

①契約者貸付を受けている場合の解約返戻金

契約者貸付は、「解約返戻金の前払い」と位置づけられます。

したがって、「貸付」という名称はついていますが、借金(債務)ではありません。

すでに契約者貸付を受けている場合には、解約返戻金の額から契約者貸付の金額を引いた額を清算価値に計上(財産目録に記載)します。

②契約者貸付で解約返戻金を目減りさせることは有効か?

債務整理について一定の知識がある人であれば、個人再生の前に契約者貸付を受けて、解約返戻金を目減りさせようと考える人もいるかもしれません。

たしかに、自己破産のときには、生命保険などの解約(解約返戻金の差押え)を回避する手段として、「契約者貸付」が利用されることがあります。

しかし、個人再生では、このような手段は必ずしも有効とはいえない場合が少なくありません。

たとえば、契約者貸付を受けた金銭を現金や貯金としてそのまま保有していれば、清算価値に計上されるため、契約者貸付を受ける意味がありません。

また、契約者貸付を受けた金銭で特定の債権者にだけ返済したときには、偏頗弁済となるおそれが生じます。

さらに、生活費として支出した場合には、裁判所に再生計画の遂行能力を疑われる(再生計画が不認可となる)こともあるでしょう。

個人再生の場合の契約者貸付は、「手続き費用を工面するため」といった限られたケースでしか有効でない場合が多いことに注意が必要といえます。

また、生命保険の場合には、契約者貸付を受けてでも解約を回避する意味がある場合があります。

高齢者や既往症といった理由で再加入が難しい人にとっては、「生命保険を残す」ことが将来のために重要だからです。

しかし、学資保険は契約者貸付を受けると、本来の意義を失ってしまう場合が少なくありません。

どうしても学資保険を解約できない事情があるときには、任意整理での解決を模索することになります。

3.まとめ

個人再生は多額な借金を抱えたときでも財産を処分せずに解決できる便利な制度ですが、清算価値がネックとなる場合も少なくありません。

同様の問題は、アンダーローンの不動産、ローン完済済みの不動産を保有している場合にも生じます。

また、清算価値についての判断は、専門的知識が必要なため、一般の方が独自で判断すると大きな不利益を受ける場合もあります。

債務整理は、借金や財産の状況に応じて最善の対応をとることがとても大切です。借金問題でお困りのときには、できるだけ早く泉総合法律事務所までご相談ください。

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