個人再生 [公開日]

個人再生にFX口座の取引明細は必要か|手続き中の取引は可能?


FXにのめり込んだ結果、借金が膨らんでしまった人も少なくありません。

個人再生には、破産手続きの「免責不許可事由」に相当する規定がないため、FXで借金が膨らんだ場合でも、個人再生手続きを申し立て、再生計画の認可を受けることができます。

個人再生を申し立てる際に、FX取引口座の明細も提出が必要なのでしょうか。また、個人再生の手続き中にFX取引は可能でしょうか。

今回はこれらの疑問を解説します。

1.FX口座の残高は資産とみなされるのか

(1) 個人再生の申し立て時に提出する資料

個人再生手続きは「支払不能のおそれ」があることが手続き開始の条件です。そのため、支払不能のおそれがあるか否か、裁判所が審査できる資料が必要です。

つまり、借金がたくさんある、という借入状況だけではなく、以下のような財産状況が分かる資料も提出することになります。

①預金

過去2年分の通帳のコピーを提出します。原則として取引が印字されているページはすべてコピーが必要です。こまめに記帳しておかないと、数十件分の取引が一括記帳されることがあります。

このような場合は、銀行等に依頼して、この間の取引明細を発行してもらってください。

②保険

すべての保険がそうとは限りませんが、保険は解約すれば解約返戻金が戻ってきます。契約期間が長ければ、解約返戻金が数十万円、数百万円に及ぶことも珍しくありません。

解約返戻金の証明書は、保険会社に依頼すれば発行してもらえます。

③車

車も売却すれば現金化できる財産です。

初年度登録から一定年数(8年程度)を超えると、財産的な価値はないものとして取り扱われますが、そうでなければ査定書が必要になることもあります。

④退職金

退職金は退職しなければ支給されませんが、これも立派な財産です。

会社に頼めば、現時点での退職金証明書を発行してもらえますが、退職金証明など何に使うのか不審がられそうで、なかなか頼みづらいものです。

そこで、会社に退職金規定がある場合には、その規程と在職年数から退職金の額を算定した計算書で、退職金証明書に代えてくれる場合もあります。

⑤株など

証券会社に依頼すれば、残高証明を発行してもらうことができます。

(2) FX口座は財産か

さて、本題に入る前にFXの基本を確認しておきましょう。FXとは「Foreign Exchange」の略で、「外国為替証拠金取引」のことです。

外国通貨を売買して為替差益(利益)を得ることを目的とする投資の一種です。

ここがポイントで、FX取引では、自分が持っている通貨の価値が上がるか下がるかの2通りしかなく、丁半博打と同じ構造になるためか、ギャンブルと混同されがちですが、あくまでFXは投資」なのです。

投資といえば、一般的には「株式投資」が代表格です。株式投資で利益を得る方法としては、株式を長期保有して配当を得る「インカムゲイン」と、株価上昇のタイミングで売買して差益を得る「キャピタルゲイン」という2つの方法があります。

FXの儲け方は、後者のキャピタルゲインであり、この点でも、やはりFXは株式投資と同じカテゴリーにあると考えればよいでしょう。

(3) FXの取引明細書も提出する必要があるか

この流れでもうお分かりだと思いますが、個人再生を申し立てる際に株取引の明細書を提出する必要があるのと同じく、FXの取引明細も提出する必要があるでしょう。

なお、預金通帳の場合は過去2年分の取引履歴の提出が一般的ですが、同様にFXの取引明細についても1~2年分の提出が求められます。

裁判所によって運用が異なるので、どれくらいの明細が必要か裁判所に確認する必要があります。

取引明細は、FX取扱会社の取引画面を通じて発行可能な場合が多いようです。

2.個人再生の手続き中にFX取引は可能か

(1) 即アウトではない

結論からいえば、「個人再生の手続き中に投資行為をしてはならない」といった具体的な制約はありません。

したがって、個人再生の手続き中であってもFX取引をすること自体は可能だといえます。

しかし、FXはギャンブルと誤解されるほどハイリスクな取引ですから、いくら形式的には投資であるとはいえ、個人再生の手続き中にFXにお金をつぎ込むのは望ましい行為とはいえません。

そもそも、FXが確実に資産を増やせる投資方法であれば、日本中のほとんどの人がFXをやっていてもいいはずです。実際にそこまで広がらないのは、FXがハイリスク投資であると認知されているからです。

個人再生は、借金を大幅にカットする代わりに、裁判所の認可した返済計画に従い、債権者に返済していく手続きです。

そのような状況下にありながら、FXにお金をつぎ込んでいると、本当に計画どおりに返済できるか、疑問符がついてしまうのも当然といえるでしょう。

少々歯切れの悪い説明になりますが、「一発アウトではないが、不利益がないとはいえない」ということです。

(2) 個人再生手続きの各段階でのFX取引の評価

ここからは個人再生の一連の手続きを、①個人再生を申し立てるまで、②申立てから開始決定が出るまで、③開始決定が出て再生計画が認可されるまで、④再生計画に基づく返済開始以降の4つの時期に分け、それぞれの段階でFX取引がどのような評価を受け、どのような不利益があるか、具体的に考えてみましょう。

①個人再生を申し立てるまで

破産手続きの場合には、「免責不許可事由」といって、ある一定の事由があると免責許可がもられないという不利益を受けます。要するに、破産を申し立てても借金はゼロにはならない、ということです。

免責不許可事由の典型は、浪費や賭博(ギャンブル)です。

破産法252条1項4号
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」

先ほど、FXは投資であると説明しました。たしかに形式上は投資に分類されます。

しかし、仕事そっちのけでFXにのめり込み、借金してはFXにお金をつぎ込み、FXで損失を出してまた借金をする・・、これを繰り返した挙げ句に破産を申し立てて借金をチャラにしてくれ、というのは虫が良すぎるでしょう。

このように、破産手続きでは、度を超えた浪費やギャンブルがある場合には免責を認めない、というペナルティがあるのですが、個人再生ではこうした制度はありません

したがって、FXにのめり込んで借金が膨らんだ、という事情があったとしても、返済計画を実行できる見込みさえあれば、再生計画の認可を受けることができます。

②申立てから開始決定が出るまで

個人再生の申し立て後にFX取引をやっていると少し事情が変わってきます。

民事再生法は「再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき」には、「再生手続き開始の申し立てを棄却しなければならない」と規定しています(民事再生法25条3号)

裁判所に個人再生を申し立てた後も、相変わらず多額のお金をFXにつぎ込んでいるようだと「再生計画案を立てられる見込みがない」と判断され、そもそも開始決定が出ないというおそれもあるわけです。

もちろん、FXにつぎ込む金額にもよりますが、少なくとも裁判所に与える印象が悪化することは避けられないでしょう。

また、印象の悪化は後からジワジワと利いてくるのです。

③開始決定が出て再生計画が認可されるまで

晴れて開始決定が出ても、FX解禁というわけではありません。

民事再生法は、再生計画の認可の場面でも同じようなハードルを設けており、裁判所は「再生計画が遂行される見込みがないとき」は、再生計画不認可の決定ができるのです(民事再生法174条2項2号)。

また、裁判所に無断で、借金を繰り返したり、多額の財産を投資につぎ込んだりしていることが発覚した場合には、裁判所は、職権で再生手続きを廃止することもできます(民事再生法193条1項2号)。

再生計画の認可はいわば裁判所の「お墨付き」です。本当に返済していけるかどうか怪しい場合には、裁判所が再生計画を認可しない、あるいは強制的に手続きを終了させられる、ということがあり得ると考えておくべきでしょう。

④再生計画に基づく返済開始以降

裁判所から再生計画の認可を受ければ、あとは「認可を受けた計画どおりに返済していくだけ」です。この段階になると、裁判所から一方的に再生計画を取り消されることはありません。

しかし、やはりFX取引は慎重に考えるべきでしょう。なぜなら、再生計画どおりの返済ができなくなった場合の不利益が大きすぎるからです。

もし、FX取引に多額のお金をつぎ込んだせいで、計画どおりの返済ができなくなった場合にどうなるかをシミュレーションしてみましょう。

まず、債権者は再生計画の取消しを申し立てることができます(民事再生法189条1項2号)。
再生計画取消しの申立てが裁判所に認められた場合には、再生手続きの中で大幅にカットした債務はもとの金額に戻ってしまいます。

たとえば、500万円の借金のうち100万円を返済する、という再生計画を立てていた場合に、再生計画が取り消されると、借金は500万円に逆戻りしてしまうのです(再生計画で途中まで返済した金額は充当されます)。

地道に500万円を返済していく、という選択肢もありますが、返済が困難な場合には自己破産を申し立てることも考えられます。

しかし、自己破産を申し立てたとしても、先ほど説明したとおり、浪費や賭博その他の射幸行為は免責不許可となるおそれがあります。免責許可が出なければ借金は残ったままです。

個人再生に基づく返済期間中にもかかわらず、多額のお金をFX取引につぎ込み、返済計画が遂行できなくなった、という事情は、免責の判断においてかなり厳しい評価を受けることになるでしょう。

3.まとめ

個人再生手続き中のFX取引自体は禁じられていませんが、このように多くのリスクがあるのです。

もし、FX取引で借金を抱え、借金を返済できない状態になってしまったら、泉総合法律事務所にご相談ください。債務整理の専門家である弁護士が、責任をもって最後までサポートします。

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