個人再生 [公開日] [更新日]

個人再生において、遅延損害金は払わなくていいのか?

消費者金融や銀行から借金する際には、「延滞したら遅延損害金を支払う」契約になっています。個人再生を利用する方は、多額の借金を抱えているだけでなく「借金に延滞がある」ことも少なくありません。

「遅延損害金はペナルティ」というイメージが強いため、債務整理しても遅延損害金は免除されないと勘違いしている人も少なくないようです。また、遅延損害金それ自体に対する誤解も多く見受けられます。

そこで、今回は、個人再生した場合に遅延損害金がどのように取り扱われるのかということについて解説します。

1.遅延損害金とは

最初に、遅延損害金について確認しておきましょう。

よく耳にする言葉ですが、細かなところでは勘違いしている人も少なくないようです。

①遅延損害金の法的性質

遅延損害金は、「延滞利息」を呼ばれることもあります。

たしかに、遅延損害金は時間の経過で蓄積される負担である点で利息と共通しています。

しかし、遅延損害金と利息は、法的には全く異なるものです。

利息は、貸し借りの「対価」として支払う負担で、貸し主と借り主との契約によって発生します。

これに対して、遅延損害金は、契約不履行(履行遅滞)を原因に発生する損害賠償金なので、「利息の上乗せ」という仕組みではありません。

損害賠償なのに「年○%」という表現がとられるのは、民法の規定に依拠しています、民法419条が、金銭を支払う約束の不履行に対する損害賠償は法定利率もしくは約定利率によると定めているからです。

本来であれば、損害賠償は、「発生した損害の額」でなければなりません。しかし、「返済が遅れたことで実際に発生した損害額」を明らかにすることは決して簡単ではありません。

そこで、民法ではこの場合には、「法定(約定)利率による遅延損害金で一律に算出する」と決めているのです。

したがって、債権者は、損害額を証明する必要はなく、お金の貸し借りの存在と延滞のあった事実を証明すれば良いことになります(民法419条2項)。

また、通常の損害賠償は、加害者に過失がある場合にのみ問題とされるのが原則です(過失責任主義)。

しかし、遅延損害金の支払いは「不可抗力で延滞したこと」を理由に免除されることはありません(民法419条3項)。

②遅延損害金の利率

遅延損害金の額は、法定利率(年5%もしくは年6%)によって算出されるのが基本ですが、これよりも高い利率を当事者の合意で定めることができます。

金銭消費貸借契約の遅延損害金を契約で定める際には、利息制限法の上限利率に従う必要があります。

この上限利率は下の表のとおりです。

借金の額 利息の利率 消費貸借の場合の遅延損害金 営業的消費貸借の場合の遅延損害金
10万円未満 年20% 年29.20% 年20%
10万円以上100万円未満 年18% 年26.28%
100万円以上 年15% 年21.90%

知人間の貸し借りのような場合では、利息の1.46倍までの遅延損害金が認められます(遅速制限法4条)。

しかし、貸金業者や銀行からの借金のような「営業的消費貸借」の場合には、年20%が遅延損害金の上限となります(利息制限法7条)。

実際に、消費者金融や銀行カードローンを利用したときの遅延損害金のほとんどは、年20%に設定されています。

遅延損害金はいつからいつまで発生するのか

遅延損害金は「損害賠償金」なので、「実際に延滞している日数分」しか発生しません。

したがって、支払うべき遅延損害金は、約定返済日の翌日から実際に返済をした日までの日割りで算出されます。

また、遅延損害金と利息は重複しないということです。

借金の返済を延滞すると「利息と遅延損害金の両方を支払う」と勘違いしている人が少なくありませんが、両者が同時に発生することはありません。

利息は「約定返済日」までしか発生せず、遅延損害金は「延滞している日数分」しか発生しないからです。

「約定返済日までは利息」、「返済日以後は遅延損害金」と覚えておくと良いでしょう。

2.個人再生で減免される負債の種類

個人再生は、任意整理や特定調停とは異なり、債務者が抱えるすべての負債を同時に対象に手続きを行わなければなりません。

生活をしていると、消費者金融や銀行からの借金以外にも様々な債務を負っていることがありますが、そのすべてを対象にする必要があります。

個人再生では、借金の一部を減免してもらえることがあります。しかし、債務者が抱える債務の中には、借金の減免になじまないものも存在します。

そこで、実際の個人再生では、債務の性質に応じた取扱いがなされます。

下の表は、債権の種類ごとの取扱いの違いを簡単にまとめたものです。

債権の種類 減免の有無 返済時期・返済方法など
共益債権 減免されない 再生計画の期間中でも随時弁済を受けることができる
一般優先債権 減免されない
非減免債権 減免されない 再生計画期間中は再生計画にしたがって返済し、残額を再生計画終了後に一括弁済
再生債権 届出有債権・自認債権 減免される 再生計画に従って返済
届出無債権 減免される 再生計画終了後に、再生計画の内容に従って返済
開始後債権 減免されない 再生計画終了後に返済

個人再生しても減免されない負債には、「別除権」、「共益債権」、「一般優先債権」、「非減免債権」、「開始後債権」があります。

それぞれの内容については、下の表に簡単にまとめたとおりです。

債権の種類 説明
別除権
(民事再生法53条)
個人再生の影響を受けずに権利行使できる債権 自動車ローンのような担保を提供した借金など
共益債権
(民事再生法119条)
個人再生手続きを実施・再生計画を遂行するために必要な費用負担など
  • 個人再生手続き実施に必要な裁判費用
  • 再生債務者の業務や生活にかかせない費用 など
一般優先債権
(民事再生法122条)
他の債権よりも優先的な地位が認められている債権
  • 税金や国民健康保険料
  • 従業員がいる場合の未払い賃金
  • 光熱費などの過去6ヶ月の延滞分 など
非減免債権
(民事再生法229条)
個人再生で減免すべきではない債権
  • 養育費
  • 悪意で加えた不法行為に対する損害賠償
  • 故意や重過失による生命・身体への不法行為に対する損害賠償 など
開始後債権
(民事再生法123)
再生手続き開始後の原因によって生じた債権 個人再生開始後に裁判所の許可を得ないでした借金で許可を得ていないことを債権者が知っているもの など

以上のうちで実際の個人再生で問題となることが多いのは、一般優先債権です。

一般優先債権は、再生計画で減免されないだけでなく、随時支払う必要があるからです。

そのため、税金や国民健康保険料、従業員の未払い賃金が多いときには、再生計画の認可が難しいことが少なくありません。

また、非減免債権は、次のように取り扱われます。

  • 債権額が確定したもの:再生計画遂行中は、他の債権と同様に一部を分割で支払い、再生計画中終了後に残額を一括で支払う
  • 債権額が確定しないもの:再生計画終了後に一括で支払う

したがって、非減免債権があるときには、再生計画中に残余金の支払いのための積み立てをするか、再生計画終了後の返済方法について債権者と協議しておく必要があります。

3.個人再生における遅延損害金の取扱い

消費者金融や銀行カードローンの遅延損害金は、上で紹介した「個人再生しても減免されない債権」に該当することは、原則としてありません。したがって、借金の延滞によって生じた遅延損害金は、個人再生で減免してもらえます。

借金の遅延損害金は、損害賠償ですが、「重過失や故意で加えた生命・身体損害ではありません」。また、通常の延滞は「悪意で行われた」といえるものでもないからです。

しかし、「最初から返すつもりのなかった借金」は、詐欺に問われる場合があります。この場合の遅延損害金は非減免債権となる可能性があるので注意が必要です。

たとえば、重度の自転車操業(借金のために借金する状態)に陥ったときのように、「全く返済できていない借金」を抱えてしまったときには、債権者との関係で難しい交渉を迫られることも少なくありません。

自転車操業は状況を悪化させるだけの危険な行為です。「借金返済のために借金しなければ」と感じたときには、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

4.まとめ

個人再生を利用すれば、今後の利息が免除されるだけでなく、多額の借金も過去の遅延損害金を含めて最大で1/5まで減額される可能性があります。

多額の借金を抱えた場合や、長期間の延滞となったときでも、諦める必要はありません。

借金問題は、借金の額、保有財産、収入状況に応じて様々な手続きで解決することができます。

「借金を延滞して困っている」、「多額の遅延損害金を請求されて困っている」というときには、できるだけ早く、当事務所までご相談ください。

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