過払い金が発生していた会社が倒産したら過払い金はもらえるの?

過払い金返還請求

過払い金が発生していた会社が倒産したら過払い金はもらえるの?

2010年頃までの間に消費者金融やクレジットカードを利用されていた方は、相手業者に対して「過払い金請求」をすることができる可能性があります。

しかし、ときには消費者金融などの業者が業績不振となり、倒産してしまうケースがあります。そんなとき、過払い金は戻ってくるものでしょうか?

今回は、消費者金融やカード会社が倒産したときに、どのくらい過払い金が返ってくるのか、また倒産してしまったらどうすればよいのかについて、弁護士が解説します。

1.過払い金とは

そもそも、過払い金はどういったものなのか、発生する仕組みについて、簡単におさらいしておきましょう。

(1) 過払い金は、支払い過ぎの利息

過払い金は、利息制限法を超過した利率で支払い過ぎた利息のことです。

利息制限法というのは、お金の貸し借りをするときの利率について定めた法律です。利息制限法によると、消費者金融などの貸金業者がお金を貸し付けるときの利率は、以下の限度まで制限されています。

・借金額が10万円未満…年率20%
・借金額が10万円以上100万円未満…年率18%
・借金額が100万円以上…年率15%

ところが、過去には、一定の要件を満たすと、上記の上限を超えた利率も有効になるという法規定がありました。

一方、利率については出資法という法律もあり、一定利率を超えると、罰則が適用されることになります。出資法の上限は、利息制限法の定める上限より高く(1.46倍)設定されていました。

そのため、過去には、多くの消費者金融やクレジットカード会社は、利息制限法以上出資法未満の利率(この利率のことを、「グレーゾーン金利」と言います)で、貸付をしていたのです。

その後、最高裁判所が、「利息制限法を超過する利率による利息の支払いは、一切不要である」という趣旨の判断を行いました(最判平成18年1月13日)。
このことにより、利息制限法を超過して支払った利息は、基本的にすべて取り戻せるようになりました。これが、過払い金の正体です。

2010年6月には法改正も行われて、利息制限法を超過する利率による支払いが有効になるという規定は撤廃されましたし、出資法の限度額も減額されて、グレーゾーン金利もなくなりました。

(2) 過払い金が発生する時期は2010年頃まで

今、消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用しても、過払い金は発生しません。

なぜなら、過払い金が発生する可能性があるのは、2010年頃までに消費者金融やカード会社のキャッシングを利用していた場合に限定されるためです。

(3) 過払い金が発生しているなら請求すべき

過払い金が発生している場合、計算してみると、ときには100万円を超える金額になっていることもあります。
本来支払わなくてよかったお金ですから、取り戻さないと損になります。

また、借金を完済している業者に対して過払い金請求をしても、特にデメリットはありません。
過払い金が発生しているなら、是非とも早めに請求すべきです。

2.会社の倒産とは

それでは、過払い金請求をする相手の業者が倒産してしまったら、過払い金は返ってこなくなるのでしょうか?

会社の「倒産」と言うときには、いくつかの手続の種類があります。どの手続が利用されるかによって、過払い金の取扱いも変わってきます。
倒産手続には、主に民事再生と会社更生、破産があります。

(1) 民事再生、会社更生

①会社が再生するための手続

民事再生や会社更生の手続は、会社がなくならずに存続するタイプの倒産手続です。民事再生や会社更生が成功すると、会社は消滅せずに、会社を残すことができます。

民事再生の場合には、会社の旧経営陣がそのまま残って再生手続を進めますが、会社更生の場合には、裁判所が選任した更生管財人が主導して、再生手続を進めます。

②民事再生と会社更生の違い

民事再生は、個人や株式会社以外の法人でも利用することができますが、会社更生は、株式会社しか利用することができません。
また、会社更生には莫大な費用がかかるので、民事再生よりも、会社更生の方が、大規模な会社のケースで選択されます。

民事再生をするときには、旧経営陣が自分で債務の支払い計画を立てて、債権者の決議をとります。過半数による反対がなければ、裁判所で再生計画が認可されて、それに従った支払いを継続していくことになります。

会社更生の場合には、更生管財人が、債権調査を行い、債権者の人数や債権額を明らかにします。そして、会社が支払える範囲で債務を支払う計画を立てて、裁判所に認可の申請をします。

計画が認可されると、債権者に対し、計画通りに支払いが行われます。

③民事再生・会社更生の結果

民事再生でも会社更生でも、計画に従った支払いを完済すると、それ以外の債務の支払い義務がなくなり、会社は存続したまま再生していくことができます。

(2) 破産

破産は、会社が債務超過となり支払い不能の状態に陥ったときに、会社の財産を清算し、債権者に対して配当をすることにより、会社を消滅させる手続です。
破産をすると、会社は存続できず、消滅することになります。

破産の手続は、裁判所が選任した「破産管財人」という人が主体となって進めていきます。旧経営陣は、破産の手続に関与しません。

企業が破産するときは、企業が「支払い不能」の状態になっているときです。債務超過でも、努力次第で何とか債務の返済を継続していける、という状態では、破産はできません。

企業が破産申立をすると、裁判所は要件を審査して「破産手続開始決定」を出します。
これと同時に破産管財人が会社の財産を管理するようになり、どんどん現金化していきます。
それと同時に、債権調査を行います。債権調査とは、どのような債権者がいて、どのくらいの債権があるかを明らかにする手続です。

最終的に、会社の資産を売って集めた財産を調査して、明らかになった債権者に対して平等に配当することにより、破産手続を終了します。そして、会社は消滅します。

(3) 過払い金の請求権者は「債権者」

以上のように、民事再生でも会社更生でも破産でも、「債権者」に対する債務の支払いが行われます。過払い金の請求権を持っている場合、請求権者は、会社に対する「債権者」となります。

そこで、各種の手続(民事再生や会社更生、破産)によって定められた配当率により、配当を受けることになります。

当然、配当率は、満額にはなりません。
満額の支払いができるくらいならば、きっと倒産などしていないことでしょう。

3.どのくらいの返済を受けられるのか

(1) 消費者金融が倒産した場合の配当率

それでは、過払い金が発生していた場合に、相手の消費者金融が倒産してしまった場合、どのくらいの過払い金が返ってくるのでしょうか?

ケースによっても異なりますが、配当率はあまり高くならないことが普通です。傾向として、民事再生や会社更生のケースより、破産の方が、返ってくる金額がより小さくなります。

今まで破産や民事再生を行ったケースで、どのくらいの配当があったのか、具体例をご紹介します。

①武富士

武富士は、日本でも最大手の消費者金融会社でしたが、2010年9月に、倒産手続を開始しました。選択されたのは「会社更生」です。
結果として、過払い金請求権者を始めとした債権者への配当率は、わずか3.3%でした。

②クラヴィス

クラヴィスは、大手の消費者金融会社でしたが、2012年7月に「破産」手続を行っています。過払い金請求権者を含めた債権者への配当率は、わずか1.7%でした。

③アエル

アエルは、2008年3月に、「民事再生」を申立てました。配当率は、6.8%程度でした。

このように、消費者金融が倒産すると、どのような手続が選択されたとしても、配当率(支払額)が非常に低くなってしまうことが多いです。

(2) 過払い金請求権者への配当率が低くなる理由

破産手続を例に出して説明しますが、過払い金の請求権は、「一般債権」という扱いです。
一般債権とは、特に支払いを優先されることもなく、かといって劣後することもない、通常の債権ということです。

破産するときの債権には、財団債権や優先債権という債権もあり、そういったものへの弁済が優先されるので、一般債権者は、さほど多くの支払いを受けられないことが多いです。

また、過払い金請求権者は、特に相手会社に対して担保権を持っているわけでもありません。担保権とは、債務の支払いが行われないときに備えて、担保するためのものです。たとえば抵当権や保証人などが、担保となります。

もし、担保権を持っていたら、業者が倒産しても、担保権を行使することによって債権を優先的に回収することもできますが、過払い金請求者にはそういった権利もないため、相手からの配当を待つしかない状態になってしまいます。

さらに、倒産する企業は、当然資金繰りが苦しく、資産もたくさんないことが多いです。資産があったとしても、抵当権などの担保がたくさんついていて、換価価値が低いものです。なぜなら、そもそも優良資産がたくさんあれば、倒産せずに自力で再生をすることができるからです。
したがって、管財人が換価を進めて配当しようとしても、配当する原資がないので配当金が少なくなります。

このような理由により、一般の過払い金請求権者への配当率は、どうしても低くなってしまいます。

上記でも紹介した通り、多くのケースにおいて、配当率は10%以下になるため、返ってくる金額は、もともとの過払い金の金額の10%以下になってしまいます。

4.貸金業者が倒産した場合にするべきこと

貸金業者が倒産した場合にするべきこと

それでは、貸金業者に対して過払い金の請求権を持っているとき、なるべく高額な過払い金を取り戻す方法はないのでしょうか?

(1) 債権調査票を提出する

この場合、民事再生や会社更生、破産などの各種の裁判手続に従って、決まった金額の配当を受ける必要があります。

裁判所の倒産手続に入ってしまった以上、債権者(過払い金請求権者)は優先的に支払いを受けることができず、支払いを受けられるのは配当金だけだからです。

そして、配当を受けとるためには、裁判所に対する「債権届出」が必要です。
債権届出書が提出されないと、管財人や裁判所は、その債権者が「いないもの」として取り扱うため、配当の対象になりません。

(2) 債権調査票を提出する方法

通常は、倒産した会社に、顧客リストがあるため、その顧客リストに従って、債権者のもとに「債権調査票」という書類が送られてきます。

会社が選択した手続が民事再生であれば、会社名で送られてきますし、会社更生であれば、更生管財人から、破産の場合には破産管財人から書類が送られてきます。

中身を開けると、「会社が破産(民事再生・会社更生)することになりましたので、債権調査にご協力ください。同封してある「債権調査票」に必要事項を記入して、返送してください」と書いてある書類が入っています。そして、返送用の「債権調査票」が同封されています。
ですので、債権調査票に、氏名や借金をしていた時期、過払い金の金額など、必要事項を書き込んで、必ず期限内に返送しましょう。

このとき、債権調査票を無視してしまったり、郵便に気づかなかったりすると、債権者として認めてもらえず、過払い金が1円も返ってこなくなる可能性があるので、注意が必要です。

(3) 倒産情報にも注意が必要

また、ときには、顧客リストから漏れているなどの事情で、過払い金請求権者であるにもかかわらず、債権調査票が送られてこないことがあります。

この場合でも、やはり、債権調査票を裁判所に送らないと、配当を受けることができません。
後になって「自宅に債権調査票が届かなかったから、提出しなかった」と主張しても、通用しにくいのです。

したがって、過去に消費者金融などを利用していた場合には、その会社が倒産手続に入っていないかどうか、注意しておく必要があります。

消費者金融業者やカード会社が倒産すると、通常は新聞やニュースなどで報道されることになるので、そういった情報を見逃さないことが重要です。そのとき「民事再生」「会社更生」「破産」など、手続名や申立の裁判所名も書いてあることが多いので、チェックして債権届の用意をしておきましょう。
もし、しばらく経っても自宅に債権調査票が届かない場合には、裁判所や対象会社、管財人(判明している場合)に確認の連絡を入れるとよいです。

(4) 私的整理の場合

なお、会社の倒産手続には「私的整理」という種類のものもあります。
私的整理とは、裁判所を使った法的な倒産手続とは異なり、債権者と個別に交渉をして、債務を圧縮したり支払期間を延長したりする手続です。

たとえば、過去に、アイフルが2009年において、私的整理を行っています。アイフルも、テレビCMなどで大々的に広告を行っていた大手消費者金融でしたので、このときのことを覚えている方も多いでしょう。

私的整理の場合には、裁判所を利用することがありませんし、すべての債権者を対象にすることもありません。
そこで、銀行などの金融機関の間でのみ交渉を行い、債務を圧縮することが多いです。その場合、過払い金請求権者に影響はありません。

また、私的整理の場合、過払い金請求権者には「債権届」が求められないことがあります。アイフルのときにも、個別の過払い金請求権者は手続の対象にならなかったので、過払い金請求権者は債権届をしていませんし、過払い金が一律に減額されることもありませんでした。

このように、対象企業が私的整理を選択した場合には、いつまで待っても債権調査票が届かないことがあります。
したがって、消費者金融会社が倒産したというニュースを読むときには、どの手続が選択されたのか、きちんと把握することが重要です。

5.過払い金請求は早めに取り組むこと

(1) 倒産手続前の請求で満額回収可能

過払い金が発生している場合、100万円や200万円を超える高額なお金を取り戻せることもあります。しかし、取り戻す前に業者が倒産してしまったら、取り返せるお金は10分の1以下になってしまうことが多いです。

倒産によるリスクを避けるための一番の方法は、「倒産する前に過払い金の返金を受けること」です。
現に、武富士やクラヴィス、アエルなどの件でも、倒産手続前に過払い金請求をした人は、満額やそれに近い返金を受けている例がたくさんあります。

したがって、過去に消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用していた場合には、なるべく早く、過払い金請求の手続に着手すべきです。

(2) 倒産した場合にも早急に対応

また、実際に相手企業が倒産してしまった場合にも、やはり早急に対処する必要があります。

まずは、どのような手続が行われているのかを把握した上で、適切な方法で債権届を提出しなければならないからです。
債権届出には期限が設けられていることも多いので、確実に期限内に返送しなければなりません。

6.弁護士に相談して早めの過払い金回収を

もし、過去(2010年頃より前)に消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用していたけれども、過払い金の計算をしたことがない、という場合は、今すぐに調べてみるべきです。

泉総合法律事務所の弁護士にご相談いただきましたら、どのくらいの過払い金が発生しているのかをお調べします。
また、過払い金請求の相手の会社が倒産してしまった場合や、倒産したかもしれないと心配な場合にも、弁護士にご相談いただきましたら、状況を正確にお調べして、適切なサポートをいたします。

過払い金請求をするときや、できるかどうか調べたいとき、または業者が倒産して困っている場合などには、是非ともお早めに泉総合法律事務所へご相談ください。

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