過払い金の引き直し計算は自分でできる?利息制限法の落とし穴
「過払い金が戻ってきたという話を聞いたことがあるけれど、過払い金ってどんな場合に発生するの?」
「自分にも過払い金が発生している可能性はある?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
ここでは、どのような場合に過払い金が発生するのかを調べるための「引き直し計算」の手順などについて解説していきます。
なお、ほとんどのケースでは2017年に過払い金返還請求の時効を迎えてしまいます。
現状、過払い金返還請求をできる方は少ないと思われますが、2007年以前から借入れ、その後も同じ業者から借入を繰り返している人であれば、まだ過払い金返還請求ができる可能性があります。
1.過払い金はどのような場合に発生する?
貸金業者が利用者にお金を貸す場合、元本に加えて利息の請求をするのが通常です。
この利息の利率には「利息制限法」という法律が適用され、貸金の利息(金利)の上限は以下のように定められています。
元本が10万円未満 | 年利20% |
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元本が10万円以上100万円未満 | 年利18% |
元本が100万円以上 | 年利15% |
ところが、利息制限法とは別に「出資法」という法律があり、2007年に改正案が出されるまでの出資法では、上限金利を29.2%と定めていました(現在では20%に引き下げられています)。
出資法では違反した場合に厳しい罰則を定めていましたが、利息制限法では(上限金利を超える金利は無効であるとされていたものの)違反した場合の罰則規定はありませんでした。
さらに、「貸金業法」という別の法律で、一定の条件のもとに利息制限法を超える利息を認める「みなし弁済」という規定を定めていました。
そのため、利息制限法の上限金利以上、かつ出資法の上限金利以内の金利については、違法(黒)とも合法(白)とも言えないとして、「グレーゾーン金利」と呼ばれ、多くの業者はこのグレーゾーン金利で貸し付けを行っていました。
しかし、その後の裁判例で、グレーゾーン金利が無効であるとの判断が下されました。
つまり、かつてグレーゾーン金利でお金を借りていた人は利息を払い過ぎていたことになるので、利息制限法の利率に引き直して計算することにより、借金の残額を減らすことができたり、過払い部分につき業者に対し返還を請求したりすることができるようになったのです。
2.利息の引き直し計算のやり方
過払いが発生するには、少なくともグレーゾーン金利以上の利率での借入期間があったことが前提になります。
2007年に出資法の改正が決まるより前、グレーゾーン金利時代に借入をしていた記憶があるのであれば、一度、過払い金が発生していないかを確認してみるのがよいでしょう。
(1) 過払い金返還請求に関する時効を確認
過払い金請求には時効があり、時効が過ぎると請求する権利がなくなるので注意が必要です。
過払い金返還請求の時効は10年です。
最高裁が過払い金返還請求について全面的に認めたのが2006年で、貸金業法の改正が決まったのが2007年です。
それ以降はほとんどの業者が利息制限法の範囲内の利息としているので、実質的に対象となるのは2007年以前にお金を借りていた人でしょう。
とは言え、過払い金返還請求権の時効の起算点は「完済時から」なので、2007年以前から借入れ、その後も同じ業者から借入を繰り返している人であれば、まだ過払い金返還請求ができる可能性があります。
たとえば、2005年から借りていた借金を完済したのが2015年であれば、(過払い金請求は完済時から10年なので)時効は2025年となります。
(2) 引き直し計算の手順
過払い金が発生している可能性がある場合、具体的な過払い金の額を知るためには「利息の引き直し計算」をする必要があります。
利息の引き直し計算とは、利息制限法の法定利率以上の利率で返済を行っていた取引について、法定利率で返済を行ったものとして再計算する(適法な金利を適用して借金額を計算し直す)ことです。
引き直し計算をするためには、まず、貸金業者から取引履歴を取得する必要があります。これを「取引履歴の開示請求」と言います。
取引の履歴を正確に把握しなければ、正確な引き直し計算ができないからです。
貸金業者は、債務者に求められれば取引履歴を開示する義務がありますので、取引履歴の開示請求を個人が行うこと自体はそう難しいものではありません。
取引履歴が開示されたら、実際に引き直し計算をします。引き直し計算自体は単純ですし、引き直し計算をするためのフリーソフトもネット上で複数公開されていますので、ご自身で引き直し計算をすることも可能です。
ただ、計算に自信のない方や、取引履歴が大量で作業量が多くなりそうな方、分割返済をしていて複雑な計算を要する方などは、弁護士に計算から依頼されることをおすすめします。
3.過払い金が発生していない場合は任意整理が可能
まだ借金が残っている状態で引き直し計算をした場合、借金の残高がマイナスになる(=完済できる上で余分に返済をしている)ことがあります。
つまり、貸金業者は、そのマイナス分につき不当に利益を得ていたことになります。
この部分につき返還請求をすることが、いわゆる「過払い金返還請求」です。
すでに完済している借金について引き直し計算をした場合に実際には払い過ぎていたというケースでも、過払い金返還請求をすることができます。
ですが、引き直し計算をした結果払いすぎた利息が判明し、それを残っている借金の元本の返済に充てても、まだ借金が残る場合(引き直し計算をして残高がマイナスにならない場合)もあります。
また、そもそも過払い金の時効が成立しており、返還請求ができないケースも多いでしょう。
この場合には、過払い金請求はできませんが、任意整理などの債務整理をすることは可能です。
4.過払い金返還請求のご相談は泉総合法律事務所へ
現実的には、2017年~2018年が過払い金請求ラッシュの最終局面となっていました。
しかし、長く借り入れを継続している場合は、現在でも過払い金の返還請求ができる可能性が0というわけではありません。
債権者からの取引履歴の取り寄せや引き直し計算はご自身で行うことも可能です。しかし、貸金業者に過払い金の返還請求をして、その後の交渉をご自身で行うのはなかなか容易ではありません。
これまでの借入・返済の状況により争点がある場合や、過払い金の金額などによっては、裁判を提起しないと納得のいく金額を返還してもらえないケースもあります。
ご自身に過払い金が発生しているかを知りたい方、過払い金の請求をしたいという方は、まずは一度泉総合法律事務所にご相談ください。ご相談は何度でも無料です。