仮想通貨で自己破産?!深刻な借金を背負うリスクを解説
【この記事を読んでわかる事】
- 仮想通貨の仕組みとは?お金、電子マネーと何が違う?
- 投資やショッピングなど、仮想通貨で借金をしてしまう理由。
- 仮想通貨はギャンブルと同じ?免責不許可事由に当てはまるのか。
新しい通貨として世界中の注目を集めている仮想通貨。少ない投資で億単位の利益をあげる個人投資家を指す「億り人」という言葉も生まれ、多くの人が短期間に多額の利益を手にしたことがメディアやSNSでも話題になりました。
しかし、2018年に入ってから仮想通貨の代表格であるビットコインが大暴落。破産の危機に直面する投資家が続出し、大きな社会問題となっています。
仮想通貨は本物のお金ではないのに、なぜ多額の借金を背負うことになったのでしょうか?また、投資で作った借金で自己破産はできるのでしょうか?
1.仮想通貨の仕組み
仮想通貨とは、暗号化技術を使用した決済システムです。
最初にナカモトサトシという正体不明の経済学者による論文でその形が示され、仮想通貨「ビットコイン」が生まれました。
この人物は個人なのか複数なのか、何者なのかいまだに分かっていません。
(1) お金との違い
仮想通貨とお金との違いは、公的機関による発行、価値保証の有無です。
例えば日本円は中央銀行である日本銀行が発行し、政府が価値の保障をしています。
しかし、仮想通貨にはそうした発行主体や管理者が存在しません。
仮想通貨の取引は1対1で行い、そのやり取りはみんなで監視するシステムなので、特定の団体に対する信頼が必要ないのです。
日本のように盤石の通貨制度がある国ではピンときませんが、国の信用が低い発展途上国では、一夜にして通貨の価値がなくなり、国家が破たんすることも珍しくありません。
その点、仮想通貨の取引は特定の管理者がおらず、ネットワーク上の仮想空間に記録されるシステムのため、特定の団体より却って信頼できると考える人は多いのです。
実際に、キプロスやベネズエラなど、自国通貨が信頼されていない国では盛んに取引が行われています。
(2) 電子マネーとの違いは?
仮想通貨は電子情報となったお金という点で、一見電子マネーに似ていますが、この2つは根本的に異なります。
なぜなら、電子マネーも法定通貨と同様に管理団体への信頼で成り立っているシステムだからです。
一例をあげると、電子マネーのSuicaはJRが管理しており、私たちはJRがデータを書き換えないことを前提として使用をしています。
もし、チャージした金額が勝手に書き換えられ、ある日突然チャージ額が減らされていたら、誰も利用しようとは思いません。
しかし、そうしたことはあり得ないし、実際に行われることもありません。それが分かっているから安心して使えるのです。
しかし、仮想通貨はそうした管理団体が存在していないので、お金と同様にその点が根本的に違うのです。
また、電子マネーは一度チャージしたら換金はできませんが、仮想通貨は法定通貨に変えることが可能です。その点も電子マネーとは異なります。
さらに、電子マネーは1000円チャージした場合は1000円分の利用しかできませんが、仮想通貨は1000円で交換したものが、2000円の価値になることもあります。その点も大きな違いです。
2.仮想通貨のメリットとデメリット
通貨制度のしっかりしている日本で仮想通貨が人気なのは、法定通貨にないメリットがあるからです。
(1) 仮想通貨のメリット
①多額の利益を得られる
仮想通貨は投機的な側面があり、上手くいけば多額の利益を得ることができます。
例えば、ビットコインは2010年から2017年までにその価値が30万倍になっているので、10000BTC(2010年時点で2500円)を購入していれば、2017年時点で計算上は9億円です。
これだけ大きな利益を得られるのは法定通貨にはない特徴です。通貨と名がついていますが、むしろ株やFXの方が近いイメージです。
②分散投資に適している
仮想通貨は分散投資にも適しています。仮想通貨は埋蔵量が決まっているので、法定通貨のようにインフレの心配はありません。
また、仮想通貨そのものに価値があるという点で、貨幣よりはむしろ「金」に近いと言えます。
その点で、保有資産としても高い価値があり、株式や外国通貨、金と並ぶ投資先として注目を集めています。
③手数料が安い
普通の通貨も仮想通貨も、銀行で送金をする際には基本的に手数料が必要です。仮想通貨は、送金手数料が非常に安いです。
海外への送金手数料も格安なのは、グローバルビジネスを展開する上でも魅力的です。
(2) 仮想通貨のデメリット
仮想通貨は多額の利益を得られる反面、デメリットも抱えています。
①変動リスク
仮想通貨は変動リスクが大きく、変動率はFXの10倍とも言われます。
それだけ大きな利益を得られることもありますが、反対に値下がりすることもあります。
投機的な面が強いことは否めず、場合によっては大損することもあるので、その点は十分認識してから始める必要があります。
②システム変更の可能性
仮想通貨は新しい仕組みのため、様々な問題点に対処するために、今後もシステムが変更される可能性があります。
例えば、システムのアップデートにより市場が混乱し、価値が大暴落する危険もゼロではありません。
また、取引所のシステムがハッカーの標的になるリスクもあります。現に国内でも仮想通貨取引所大手のコインチェック社が不正アクセスの被害にあい、580億ものお金が外部に流出したことは記憶に新しいところです。
海外でもハッキング被害により取引所が破たんした例もあり、現状システム面では大きな課題を抱えています。
③課税対象になる
仮想通貨で利益を得た場合は、雑所得として確定申告をする必要があります。雑所得は総合課税の対象で、他の収入と合算で税率が決定します。
仮想通貨で収入を得ると、その額に比例した税金を課せられるので、利益によっては税金の支払いが大きな負担になるケースも少なくありません。
3. 仮想通貨が抱えるリスク
仮想通貨はメリットも大きいですが、潜在的に借金を抱えてしまうリスクを孕んでいます。
仮想通貨の取引自体で借金が発生することはありませんが、以下の要因で借金をしてしまいます。
(1) 投資のために借金をしてしまう
仮想通貨で大きな損失を出し、その分を取り戻そうと、借金をしてでも投資をする人が既に続出しています。
将来の値上がりを期待してつぎ込んだものの、そのまま損失が膨らんで借金だけが残ることもあるので、非常にリスクが高い行為と言えます。
(2) 預けたお金以上の取引をしてしまう
仮想通貨は取引所によっては預けたお金以上の取引が可能です。
これを「信用取引」と言いますが、例えば預けたお金の5倍の取引が可能であれば、100万円預けた場合は500万円の仮想通貨を購入できます。
しかし、その後、仮想通貨が大暴落して価値が0になってしまったときは、500万円−100万円=400万円の損失となり、預貯金がなければ借金で損失を賄わなければなりません。
(3) 仮想通貨で買い物をしすぎてしまう
仮想通貨はレストランや車、アクセサリーの支払いに使うこともできます。現金ではないので使いすぎてしまい、あとで支払いができなくなることもあり、支払いのために借金を重ねるケースもあります。
クレジットカードで金銭感覚がなくなり、ショッピングをしすぎてしまう構造と同じです。
(4) 利益がでても税金が払えない
仮想通貨で利益をあげた場合は、税金を払わなければなりません。所得税は4000万円以上は税率45%なので、仮に仮想通貨で4000万円の利益を上げた場合の所得税は1800万円です。
しかし、翌年に入ってすぐに3000万円の損失を出した場合、3000−(4000−1800)=800万円の赤字になります。
仮想通貨は変動が激しいので、こうしたパターンは珍しくなく、多額の利益をあげても翌年の税金の支払いができずに破産危機に直面している人は少なくありません。
4. 仮想通貨で借金を背負ったときの対処法
仮想通貨の取引で借金を背負った場合はどうしたら良いのでしょうか?
頑張れば支払ができるのであれば完済を目指すのに越したことはありませんが、到底支払ができない…というときは債務整理を検討しましょう。
仮想通貨はお金ではないので、債務整理できるのはお金の請求が来た時点です。
債務整理には主に任意整理、個人再生、自己破産の3つがありますが、どの方法がよいかは以下の通りです。
(1) 借金額が少ないときは任意整理
借金額が少ない場合は、任意整理がおすすめです。
任意整理は将来利息をカットして元本を返済する制度で、減額幅は少ないですが、裁判所を介さないので、周囲にも内緒で手続きすることが可能です。
また、債権者を選ぶことができるので、連帯保証人に迷惑をかけずに債務整理することも可能です。債務整理の中では最も多く選ばれています。
(2) 借金額は多いが、減額すれば返せるときは個人再生
借金額が多いが、それなりに収入があり、減額すれば返済可能な場合は個人再生手続きを検討しましょう。
個人再生は借金をおよそ5分の1程度まで圧縮でき、住宅などの財産を手放すことなく手続きすることができます。
ただし、減額後の借金は計画通り返済する義務があるので、継続的で安定的な収入があることが前提となります。
(3) 返済のめどがたたないときは自己破産
借金返済のめどが全くたたない場合は自己破産一択となります。自己破産が認められた場合は、借金は全額免除されます。
その代わり、住宅や車などの財産は没収・換価されて債権者に配当されますが、手続き後は借金返済のプレッシャーから解放されるので、まとまった財産がない場合はメリットの方が大きくなります。
ただし、自己破産が認められるには一定の要件があり、免責を受けられない事由がある場合は基本的に認可されません。
仮想通貨が原因で自己破産をする場合はその点が気がかりです。実際のところはどうなのでしょうか。
5. 仮想通貨で自己破産はできる?
(1) 仮想通過の借金は免責不可事由に該当する?
自己破産には免責不可事由があり、抵触すると免責許可を受けられないことがあります。
その中には「浪費・ギャンブルによる借金」があり、パチンコや競馬で作った借金では自己破産は基本的には認められないということです。
仮想通貨は投機的な面が強いので、見方によってはギャンブルとみなすこともできるので、不可事由に該当する可能性があります。
しかし、自己破産が初回であれば、大抵は裁判所の判断による裁量免責を受けられるので、仮想通貨による借金でも自己破産は可能です。
ただし、2回目以降の判断は厳しくなるので注意が必要です。
(2) 仮想通貨は自己破産で没収対象の財産となる?
自己破産をすると財産を没収されますが、現状、仮想通貨は自己破産における没収対象の財産には含まれていません。
仮想通貨は現行法では差押え対象にはできないので、自己破産前に財産を仮想通貨に変えてしまえば、債権者は財産を回収することができません。
このことは、日本のみならず欧米でも問題視され、法整備を早急に進めるべきであるという声があがっています。
6.まとめ
このように仮想通貨の取引で多額の借金を抱えてしまうことがあります。
しかし、自己破産で免責を受けられれば借金はなくなるので、今現在、仮想通貨の取引でお困りの方は一度泉総合法律事務所にご相談ください。債務整理に強い専門家がベストの対処法を提案させて頂きます。
借金問題は一人で悩まずに専門家と一緒に解決をしていきましょう。