奨学金で破産する前にできる事がある!救済・減額制度の種類は?

自己破産

奨学金で破産する前にできる事がある!救済・減額制度の種類は?

最近、奨学金を返せない人が増えていることが社会問題になっています。

実は、日本学生支援機構の奨学金には、返還できない人が利用できる「救済制度」や「減額制度」があります。
このような制度を上手に利用すると、自己破産せずに済む可能性があります。

今回は、どうしても奨学金の返済が苦しい場合の救済制度や減額制度について、弁護士が解説します。

1.奨学金を返せないとどうなるのか?

奨学金にはいろいろなものがありますが、この記事では、日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金についての説明をします。

さて、奨学金を利用していた場合、学校を卒業すると、返済が始まります。
生活が苦しいからと言って奨学金を返済しないでいると、どのようなことが起こるのでしょうか?

(1) 延滞金が加算される

まず、延滞金が加算されます。延滞金とは、借金返済をしていないことによって発生する損害賠償金です。

日本学生支援機構の奨学金の場合、延滞金は年率5%です。奨学金の支払をしていない間、年率5%の延滞金がかかり続けるので、支払をしない期間が長くなればなるほど借金(残った奨学金)の金額が膨れあがってしまいます。

また、延滞していると、この記事で紹介する減額などの制度を利用できないことがあります。

(2) 保証人に請求がいく

奨学金を利用するときには、親に連帯保証人になってもらっていることが多いです。

連帯保証人は、主債務者が借金の支払いをすることができなくなったときに、代わりに返済をしなければならない立場の人です。

そこで、借りた本人が返済をしなければ、日本学生支援機構は、親に奨学金の支払い請求をします。

このとき、親に対して残債務の一括払い請求が行われることが普通です。滞納期間が長引いているので、分割払いをすることができなくなってしまっているからです。

こうなると、親に奨学金滞納の事実を知られてしまうことになりますし、迷惑をかけることにもなります。

(3) 訴訟を起こされる

奨学金の返済を滞納すると、日本学生支援機構は「支払督促」という手続を実行してきます。

支払督促とは、裁判所を利用した手続で、債務者が特に異議を申立てなければ、債権者が債務者の財産をいきなり差し押さえることができるというものです。

支払督促申立書が届いているにもかかわらず無視していると、預貯金や給料などを差し押さえられてしまいます。異議を申立てたとしても、裁判に移行してしまうので、最終的には差し押さえられる可能性が高くなります。

(4) 個人信用情報に事故情報が登録される

奨学金の返済を遅延していると、「個人信用情報」に「延滞情報」が登録されます。
日本学生支援機構も、信用情報機関に加盟しているからです。

すると、その後、どのようなローンもクレジットカードも利用できなくなってしまいます。
いわゆる、ブラックリスト状態になるということです。

いったん個人信用情報に延滞情報が登録されると、延滞状態を解消しないかぎり再びローンやクレジットを利用することはできません。延滞状態を解消しても、その後5年程度はローンやクレジットカードを利用できないので、非常に大きな不利益を受けることになります。

2.奨学金を返せない場合の制度

奨学金を返せない場合の制度
奨学金をどうしても返済できない場合、減額や猶予、免除の各制度により、救済を受けられるケースがあります。
以下で、それぞれの制度について、解説します。

(1) 減額返還制度

①減額返還制度とは

奨学金の減額返還制度は、月々の返済額を半額または3分の1にすることができるものです。
ただ、奨学金の返済総額は減らず、返済期間が延びるだけですから、勘違いしないようにしましょう。

減額返還制度を申請すると、1年間、減額返還を続けることができます。最大10回まで、最長15年間、減額を受けることができます。

また、減額を受けたら支払期間が延びますが、その期間中の利息は国庫が負担するので、支払い総額自体が増えることもありません。

②減額返還制度を利用できる人

減額返還制度を利用できる人は、以下のような人に限られます。

  • 災害やケガ、病気その他経済的理由によって、奨学金の返済が困難
  • 延滞金が発生していない

経済的理由によって奨学金返済が困難と認められるのは、以下のケースです。

  • 会社員の場合、給与所得が325万円以下
  • 自営業の場合、所得が225万円以下

被扶養者がいるときには、1人について38万円が、上記の所得基準から控除されます。

②減額返還制度の利用方法

減額返還制度を利用したいときには、以下の書類を揃えて日本学生支援機構に提出しましょう。

  • 奨学金減額返還願、チェックシート(日本学生支援機構のウェブサイトでダウンロードできます)
  • 収入の証明書
  • 個人情報取扱についての同意書
  • 口座引き落とし申込書の控え

提出書類につきまして、詳しくは「日本学生支援機構 減額返還手続方法」をご覧ください。

(2) 返還期限猶予制度

次に、返還期限猶予の制度をご紹介します。これは、奨学金の返済期間を延ばしてもらえるという救済措置です。

猶予期間中には、返済が一切不要になりますが、その分将来の返済期間が延びます。利息や元本が減額されることはありません。

猶予期間は最長10年ですが、一定のケースでは、無期限に猶予してもらえることもあります。

一般猶予と、所得連動返還型無利子奨学金の2種類の制度があります。

①一般猶予

一般猶予とは、有利子タイプの人でも無利子タイプの人でも利用できる、返済猶予制度です。
1回申請をすると1年間、猶予してもらうことができます。猶予期間は、原則として最大10年間となっています。ただし、一定の場合、無期限に猶予を受けることができます。

猶予制度を利用できるのは、以下のようなケースです。

  • 産休、育児休暇が必要な状態
  • 入学準備中、在学中
  • 病気やケガをした
  • 生活保護を受給している
  • 海外派遣中、海外で研究中
  • 災害に遭った
  • 失業している
  • 経済的に困難である

経済的に困難と認められる基準は、以下の通りです。

  • 会社員などの場合、給与所得が300万円以下
  • 自営業の場合、所得が200万円以下

②所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予

所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予制度は、無利子奨学金(第一種奨学金)を利用する人に適用されるものです。2012年から新たに始まっています。

利用するためには、所得について、以下の基準を満たす必要があります。

  • 給与所得者の場合、所得が300万円以下
  • 自営業者の場合、所得が200万円以下
  • 以下の条件を満たす被扶養者
  1. 乳幼児がおり、他に保育する人がいない
  2. 障害者や療養者などの介護を要する人がいて、他に介護する人がいない
  3. 妊娠中
  4. 身体障害などがあって、仕事ができない

③返還猶予制度を利用する方法

返還猶予制度を利用したいときには、以下の書類を揃えて、日本学生支援機構に提出し、制度の適用を申し出ます。

  • 返還猶予制度願
  • チェックシート
  • 返済できないことを証明するための書類

返済できないことを証明する書類として認められるものは、ケースによって異なります。
日本学生支援機構のウェブサイトでチェックするか、問い合わせるとよいでしょう。

(3) 返還免除制度

①返還免除制度とは

日本学生支援機構には、返還免除制度もあります。
これは、一定の事由が発生したときに、奨学金の一部や全部が免除される制度です。

本人が死亡したり、身体障害や精神障害になったりして奨学金の返還が困難になった場合に利用できます。

利用できるケースは、以下の通りです。

  • 奨学金を借入れた本人が死亡したケース
  • 借入れた本人が、精神や身体の障害により、仕事ができなくなったケース

②返還免除制度の利用方法

以下の手順で、返還免除の申請を行います。

・死亡した場合

以下の書類を用意して、日本学生支援機構に郵送します。

  1. 奨学金返還免除願(相続人と連帯保証人が連署します。機関保証制度を利用している場合には、相続人のみが署名します。)
  2. 本人死亡の記載がある戸籍抄本、個人事項証明書や住民票などの証明書(原本)
・精神若しくは身体の障害による免除のとき
  1. 奨学金返還免除願
  2. 返還ができなくなった理由を証明する書類(収入証明書類や、障害などの返還できない状況を証明する書類です。)
  3. 医師、歯科医師による診断書(日本学生支援機構所定に指定の書式があります)

このように、償還が難しい状況になったときには、月々返済額の減額や償還の猶予、免除を受けることができる可能性があります。
減額制度が一番利用しやすいですから、返済が難しくなったら、まずは減額制度の適用ができないか、チェックしてみると良いでしょう。

要件が当てはまる場合には、猶予や免除の制度も検討しましょう。

3.各制度が利用できない場合の債務整理

奨学金の減額や猶予、免除などの制度を利用できない場合には、放っておくと日本学生支援機構から督促を受けることになるので、対処方法を検討しなければなりません。

このようなときには、早めに債務整理することをおすすめします。

(1) 債務整理とは

債務整理とは、借金を法的に整理する方法の総称です。借金の利息をカットしたり、元本を減額したり、免除してもらったりすることができるので、状況を改善することができます。

債務整理をすれば、日本学生支援機構が納得しなくても、強制的に借金を減らしたり、なくしたりすることができて、借金問題を解決することができます。

代表的な債務整理の方法は、任意整理、個人再生、自己破産の3種類です。

①任意整理

任意整理とは、債権者と直接交渉をして、利息をカットしてもらい、返済条件を変更することにより、毎月の借金返済の負担を軽くする方法です。

ただ、日本学生支援機構の場合、任意整理の話合いには応じないことが多く、また、元々の利息が安いので任意整理の対象とするメリットはないと言ってよいでしょう。奨学金以外にも借金がある場合には有効です。

②個人再生

個人再生は、裁判所に申立をして、借金を元本ごと大きく減額することができる手続です。

たとえば、1000万円の借金でも200万円にまで減額することができるので、高額な奨学金がある場合にも有効な対処方法となります。

一定以上の収入がある場合にのみ、利用することができます。

③自己破産

自己破産は、借金返済義務を免除してもらえる手続です。奨学金にも自己破産の適用はあるので、自己破産をすると、返済が一切不要になります。

自己破産をすると利息も元本もすべてなくなるので、日本学生支援機構から支払督促を受けたり裁判をされたりして、大切な財産や給料などを差し押さえられる心配もなくなります。

その方の状況に応じた方法で債務整理をすると、ほとんどの借金問題は解決することができます。

奨学金を滞納したまま放っておくと、大変な不利益を受けるので、早めに債務整理で解決しましょう。

4.奨学金返済でお困りでも弁護士にご相談ください

奨学金問題を含めた借金問題は、必ず解決することができます。奨学金以外に、カードローンやサラ金の借入があっても大丈夫です。

自己破産したくない場合、他の方法によって解決できるケースもあります。自分ではどの債務整理手続を利用してよいか分からないという場合にも、弁護士が的確にアドバイスいたします。

奨学金返済ができずにお困りの場合には、お早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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