自己破産 [公開日]2018年5月15日[更新日]2022年2月4日

返済できない奨学金|自己破産をするとどうなる?

最近、多くの方が貸付型の奨学金が返済できずに自己破産をする現状が問題となっています。
しかし、自己破産への誤解やマイナスなイメージばかりが先行しており、破産をすることに二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。

実際、自己破産は「債務者の生活を再建するための制度」であり、破産により今後の生活に希望がもてなくなるということはありません。

奨学金の返済ができない状況なら、自己破産した場合にはどのようなことが起こり得るかを理解した上で、冷静に対応を考え行動することが重要です。

ここでは、自己破産したら奨学金はどうなるのか・今後の生活にどのような影響が出るのかを解説していきます。

1.奨学金を返済できない場合の流れと影響

まず、貸付型の奨学金を返済できない場合の一般的な流れと、滞納を続けた場合の影響を簡単に見ていきます。

(1) 滞納3か月

奨学金の返済を滞納すると、まず、日本学生支援機構(JASSO)から、本人に対して文書や電話で返済の督促がきます。

また、滞納3か月以降になると、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に事故情報が登録されるでしょう。

ブラックリストに登録されている間は、住宅ローンや車のローンを組むことができず、新規のクレジットカードを作ることもできなくなります。

[参考記事]

ブラックリストとは|何年で消える?掲載のデメリットと確認方法

(2) 滞納4か月

多くの場合、滞納が続けば民間の債権回収会社(サービサー)が日本学生支援機構から債権を委託され、滞納している奨学金の取り立てなどを行うことになります。

債務者にとっては、支払先が日本学生支援機構から債権回収会社(アルファ債権回収会社など)に変わるだけで、当然ながら全額の支払い義務が残ります。
この頃になると、残務の一括払いを求められてしまうでしょう。

[参考記事]

「アルファ債権回収株式会社」から連絡が来たら弁護士へご相談を

(3) 滞納6か月以降

裁判所に訴訟や支払督促の申し立てが行われ、これも無視していると、給料の差し押さえなどの法的措置が行われます。

[参考記事]

奨学金滞納で債権回収会社から連絡!差し押さえを受ける?

2.自己破産すると滞納中の奨学金はどうなる?

前述のように、奨学金を返済できない場合には最終的に差し押さえなどの法的措置が取られてしまう可能性があります。

そのような現状を打破できる可能性がある債務整理方法として「自己破産」があります。

自己破産とは、「債権者への財産の清算」と「債務者の経済的な再生の機会の確保を図ること」を目的としています。
裁判所を介して、債務者の原則としてすべての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです(一部の債務のみ整理の対象から外すことはできませんので、家族や親戚から借りたお金も手続きに含まれます)。

奨学金による借金は自己破産できないということはありませんので、ご安心ください。

つまり、裁判所に自己破産が認められれば、債務者本人については奨学金などの借金の支払い義務がなくなることです。

また、弁護士に自己破産手続き依頼することにより、これまで苦しんでいた督促や取り立てがストップするため、精神的にも安心できることでしょう。

なお、自己破産に抵抗がある方や、マイホームをお持ちの方は、「個人再生」も検討できます。
個人再生は、借金を大幅に圧縮した上で、残務を原則3年かけて返済していく債務整理方法です。よって、継続的な収入がない無職の方などは利用できません。

奨学金の個人再生については、以下のコラムで詳しく解説しています。

[参考記事]

個人再生で奨学金滞納を解決|保証人への影響は?

※日本学生支援機構は基本的に任意整理には応じていません。

3.自己破産した場合のデメリット

自己破産をすることによるデメリットも確かに存在します。
どのようなデメリットがあるのか、以下で確認をしておきましょう。

(1) 保有している財産が一部処分される

破産者が所有している家や車などの価値が大きな財産は処分され、換価して債権者に分配されることになります。

平たく言えば、自己破産は「手持ちの財産を処分してできる限り返済を行えば、残りの借金については支払いを免除してもらえる」制度ということです。

しかし、生活に必要な家具家財の他、99万円以下の現金などの一定の財産については、手元に残すことが認められています。
目ぼしい財産を所有していない人ならば、特に何も処分せずに自己破産手続きを行える可能性があります。

(2) 職場への影響

勤務先の貸付金制度を利用していた場合など、勤務先に借金があるときには、債権者である勤務先に自己破産の通知が送付されるので、自己破産が知られます。

また、奨学金の延滞で給与を差し押さえられていた場合には、自己破産手続き開始により差し押さえが中止(解除)されることになるので、勤務先に自己破産を推測されてしまうでしょう。

ただし、自己破産を理由とした解雇は、不当解雇にあたり禁止されています。
自己破産したことを職場に知られたからといって、仕事を失うというわけではありませんのでご安心ください。

(3) 手続き中に一定の制限を受ける

自己破産の手続きが裁判所によって開始され、進行している間、弁護士・税理士などの士業や、生命保険募集人、警備業などの一部の業種は、職務を停止される制限(資格制限)を受けます。

[参考記事]

自己破産と仕事の関係|制限を受ける職業・資格一覧

また、引っ越しや旅行をする場合には、裁判所の許可が必要になるなどの一定の制限を受けます。

とは言え、転勤で引っ越さなければならないなどの正当な理由があれば裁判所の許可が得られるのが通常です。

[参考記事]

自己破産後に引っ越しができないという噂は本当?

しかし、免責許可決定が確定した場合(自己破産の手続きが終了して借金を免除された場合)には、これらの制限はなくなります。

自己破産後も特定の職業に一生就けないとか、自己破産後は旅行ができない、パスポートが使えなくなるといったことはないのでご安心ください。

(4) ブラックリストに登録される

軽く先述しましたが、自己破産すると、「ブラックリスト」に登録されることになります。

しかし、そもそも奨学金を3か月滞納するとブラックリストに載るので、自己破産をしなくても遅かれ早かれ載ってしまうでしょう。
(稀に「奨学金を滞納していたが住宅ローンに通った」という話を聞くかもしれませんが、これは滞納期間がそれほど長くなかったことが考えられます。)

自己破産によりブラックリストに登録されることで、最大10年程度クレジットカードを作ることやローンを組むことができなくなる可能性があります。

[参考記事]

自己破産をするといつまでブラックリスト(信用情報)に載る?

なお、自己破産すると「住民票や戸籍に載る」などのデメリットも生じると誤解を受けることも多いものですが、そのようなことはありません。

国の機関誌である「官報」には掲載されていますが、読んでいる人はほとんどいないものですので、官報に掲載されたからといって周囲に自己破産を知られることはほとんどないといえます。

(5) 奨学金の連帯保証人や保証人への影響

奨学金を借りる際には、親などが奨学金の連帯保証人・保証人となる人的保証をしているケースが多いです。
(保証機関が代位弁済する機関保証も最近では増えています。)

奨学金を借りている本人が自己破産した場合、自己破産で支払い義務が免除されるのは債務者本人のみです。

連帯保証人や保証人は、本人の自己破産によって奨学金の返済義務を免れることはできません(原則一括での返済を要求されますが、話し合いにより分割払いとすることもできるでしょう)。

このため、自己破産をする場合は、連帯保証人になっている親などとも話し合い、一緒に最善の方法を探っていく必要があります。

[参考記事]

奨学金滞納で連帯保証人や家族にどういう影響があるか

【機関保証の奨学生が滞納をした場合】
保証機関から保証を受けている奨学生が延滞をした場合、まずは保証会社が日本学生支援機構に代位弁済します。その後、請求権は日本学生支援機構から保証会社に移行し、支払がない場合は保証会社が裁判手続きに踏み切ります。
よって債務者である奨学生は、保証会社を債権者として自己破産などの手続きを進めていくことになります。
参考:代位弁済をされたら弁護士に相談を!借金返済が不可能になる前に

4.奨学金が原因の債務整理も弁護士へ相談を

奨学金の返済ができない場合には、奨学金の返済猶予や返済月額の減額申請を行うことも大切です。

[参考記事]

奨学金の返還期限猶予が満了しても払えない場合の対処法

しかし、こういった制度が利用できない状況の場合や、利用しても払いきれそうにない場合は、弁護士に相談することが最善といえます。

奨学金などの借金を返済できない状況で、自分一人で背負い込んでしまうことは、事態をより深刻なものに悪化させてしまうことにつながります。
ですから、専門的な知識や経験を持つ第三者である弁護士に相談して、今後の生活を見据えたアドバイスを受けることが重要になるといえるでしょう。

泉総合法律事務所は、奨学金に関わる債務整理の実績も豊富で、それぞれの状況に合わせてベストの解決方法を提案させて頂くことができます。

[解決事例]

奨学金含めた借金400万円以上が自己破産で全て免除

借金問題は誰にとっても非常に苦しいことです。一人で悩まずに、専門家と一緒に解決していきましょう。
借金に関するご相談は何度でも無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

相談は何度でも無料です。借金の悩みや不安についてお気軽に弁護士へご相談ください。
電話番号

受付時間: 平日9:3021:00/土日祝9:3018:30

債務整理コラム一覧に戻る