自己破産 [公開日][更新日]

配偶者の自己破産により実際に生じるデメリット

【この記事を読んでわかる事】

  • 配偶者が自己破産した場合、どのような問題が生じるか
  • 実際には心配いらない、誤解されやすい自己破産のデメリット
  • 自己破産直前の離婚は気をつけるべき理由とは

 

配偶者が自己破産する」のは、やはり不安です。自己破産ときくと、とても大きなデメリットが生じるのではないかと感じてしまうからです。

たしかに、配偶者が自己破産すれば、持ち家などの財産を失うことがあります。また、クレジットカードの新規発行やローンを組むことができないので、生活に不便を感じることもあるかもしれません。配偶者の自己破産が子どもの将来に悪影響を与えることを心配する人も少なくないでしょう。

そのため、配偶者の自己破産によるデメリットを少しでも軽くしようと離婚を考える人もいるかもしれません。

しかし、このような離婚は、偽装離婚を疑われるだけでなく、財産を守るという点でも意味がない場合も少なくありません。

慌てて間違えた対応をしてしまう前に、必ず弁護士から助言を受けることが大切です。

1.配偶者が自己破産した場合の問題点

実際に自己破産したときには、破産者に対して次のようなデメリットが生じることがあります。

  • 数年の間、銀行や消費者金融から借金することが難しくなる
  • 数年の間、新規にクレジットカードを作れない
  • 契約中のクレジットカードが更新できない、解約されることもある
  • 数年の間、他人の借金(ローン)の保証人になることができない
  • 自己破産したことが官報で公告される
  • マイホームを持っていれば処分しなければならない
  • 破産手続きが終わるまでは、転居や長期間の旅行には裁判所の許可が必要
  • 一部の職業には制限が生じ、収入に影響する場合もある
  • 家族が連帯保証人となっている債務があれば、家族に請求される

自己破産に限らず、債務整理をすれば、信用情報に事故情報が登録されます。そのため、5~10年間は、新規の借金やクレジットカード発行が難しくなります。

また、家族が名義人となるローン(住宅・自動車ローン)や子どもの奨学金の連帯保証人となることもできません。

さらに、自己破産は、財産と負債を強制的に清算するための手続きなので、保有する財産を換価し債権者に配当する必要があります。

そのため、破産者名義の持ち家があるときには、手放すほかありません。

また、銀行や保険会社などの金融機関、不動産業、旅行業、警備業といった仕事に就いている方の場合には、自己破産によって生じる資格・職業制限で、収入などに影響がでる場合もあります。

(1) 自己破産で生じるデメリットの誤解

自己破産は、ほとんどの人が過去に経験したことのない出来事です。そのため、一般の方には自己破産について誤解を持っている場合も少なくありません。

誤解による過剰な心配から「配偶者が自己破産するなら離婚しよう」と考えてしまうことも多いと思われます。

自己破産についてよく誤解されていることの例は次のとおりです。

  • 自己破産していない家族の信用情報には傷が付かない
  • 自己破産したことは戸籍や住民票に記載されない
  • 自己破産しても破産者のすべての財産を失うわけではない
  • 自己破産しても他人に知られないことは少なくない

自己破産した人の信用情報には事故情報が残りますが、自己破産していない家族の信用情報には一切影響を与えません。したがって、夫(妻)が自己破産したことで、妻(夫)や子のクレジットカードが解約されるといったことはありません。

また、自己破産したことは、戸籍や住民票に記載されません。自己破産したことは、本籍地の市区村長に備えられる破産者名簿に記載されることはありますが、免責不許可が確実な場合などの例外的なケースに限られます。

したがって、子どもの就職や結婚に親の自己破産が悪影響を与えることもありません。

さらに、自己破産をしても生活に必要な家財道具まで失うわけではありません。自己破産によって差し押さえられるのは、破産者名義の20万円を超える価値のある財産に限られます。

したがって、破産者名義ではないものまで差押えにあうことはありません

破産者名義の財産であっても、テレビや冷蔵庫、電子レンジ、エアコンといった家電、タンスやベッドなどの家具は、生活に必要な財産として処分されません。

現金や預貯金であっても一定額までは手元に残すことができます。

破産者が契約者となっている生命保険も、契約者貸付や介入権の行使などによって解約を回避できる場合もあります。

自己破産したことは、近所の方などに知られることも回避することができます。

自己破産すると官報公告があります。しかし、一般の方で官報を読んでいる方は、ほとんどいないといえるでしょう。

自己破産したことが近所の方に知られるのは競売の実施による場合が多いと思いますが、任意売却を実施して競売を回避できる場合もあります。

また、退職金についても、退職金見込み額の1/8を別途の方法で積み立てることができれば、退職する(もしくは破産管財人が会社に請求する)必要はありません。

自己破産すると、破産手続き開始決定後の収入はすべて自由に使うことができるため、退職金見込み額の1/8を積み立てることが不可能ではない場合も多いでしょう。

(2) 配偶者の自己破産で実際に生じるデメリット

配偶者の自己破産のよって実際に生じるデメリットは、次のとおりです。

  • 配偶者名義の持家に住んでいた場合には退去を余儀なくされる
  • 連帯保証人となっている債務の支払いは免れることができない
  • 日常家事債務の連帯責任が生じる

上でも解説したように、自己破産すると破産者名義の不動産は、処分を免れることができません。

住宅ローンが残っていれば「債権者による抵当権実行」によって、住宅ローンが残っていなければ、「破産管財人による競売」によって、処分されてしまいます。

そのため、自宅の名義人である配偶者が自己破産すれば、転居を回避することは難しいでしょう。

そのほかにも、破産者の借金のうちで連帯保証人となっているものがあれば、その債務を返済する必要があります。

連帯保証人の地位は離婚によって消滅することはありません。また、婚姻生活で生じた生活費の支出を原因とする債務(日常家事債務)の残額を支払う責任もあります。

民法では、日常家事債務は夫婦の連帯債務であるとしています。なお、日常家事債務も離婚によって消滅するものではありません。

(3) 自己破産は離婚理由になるのか?

配偶者の借金や自己破産をきっかけに離婚を考える人は少なくないと思います。

しかし、協議離婚が調わないときには、「借金があるだけ」では離婚できない場合があることに注意が必要です。

配偶者が協議離婚や調停離婚に応じないときには、裁判で離婚を求める必要があります。裁判離婚が認められるためには、民法が定める法定離婚事由を満たしていなければなりません。
一般的に「借金がある」という理由だけでは、裁判離婚は認められないというのが、現在の解釈です。

借金による離婚が認められるのは、借金の原因が浪費などにあり婚姻生活を継続することが難しいだけの重大な理由があると認められる場合に限られます。

なお、「借金を原因に(裁判)離婚できるか」という問題については、「借金が原因で離婚はできるのか?離婚の際に気をつけるべきこと」の記事の解説も参考にしてください。

2.自己破産直前の離婚は偽装離婚を疑われる

自己破産による財産の差押えは、「破産手続き開始決定の時点で破産者が保有している財産」に限られます。

そのため、自己破産によって財産を失うことを回避しようと、離婚を検討する夫婦もいるかもしれません。

しかし、自己破産直前の離婚による財産分与は、慎重に行わなければ後に問題となることがあるので注意が必要です。

(1) 自己破産前の財産分与には弁護士の助言が必須

自己破産する際には、過去2年以内の離婚・離縁による財産分与の内容を裁判所に申告しなければなりません。

ただし、正しく行われた財産分与が、配偶者の自己破産で問題となることはありません。

離婚による財産分与には、①婚姻中に築いた共同財産の清算・分配、②離婚後の相手方への扶養の意味があり、民法で定められた権利でもあるからです(民法768条)。

しかし、民法の趣旨を超えて不相当に過大な財産分与がなされたときには、「債権者を害する行為詐害行為)」として、法律上問題となる場合があります。詐害行為に対しては、債権者は取消権を行使することができます。

つまり、不相当に過大な財産分与がなされれば、事後に取り消される可能性があるということです。

配偶者が自己破産した場合には、債権者は個別に詐害行為取消権を行使することはできません。その代わりに、破産管財人が否認権を行使することで、過去の問題のある財産分与を取り消します。

この場合には、離婚した配偶者から財産分与を受けた側が、破産管財人より任意での財産の返還もしくは訴訟による返還請求を迫られることになります。

このような事態を回避するためにも、自己破産する配偶者から財産分与を受ける場合には、事前に弁護士に相談しておくことが望ましいといえます。

(2) 慰謝料代わりの財産分与も否認対象となることが

離婚原因に落ち度のある配偶者(有責配偶者)がいるときには、「慰謝料の代わり」として、「通常の分与よりも多額の財産」が他方の配偶者に分け与えられることがあります。

この場合にも、不相当に過大な財産分与と認められると、否認の対象となる場合があります。

たとえば、下級審の裁判例には、自己破産した夫が妻に住宅を2回にわたって贈与した事案において、夫が債務超過に陥っていることを妻が認識した後の贈与が取り消されたものがあります(浦和地判平5年11月24日金融商事判例945号34頁)。

不相当で過大な財産分与であるかどうかは、配偶者の負債総額と財産の価値の比較だけでなく、離婚原因、婚姻期間、家族構成、収入状況、分与前後の分与者の資力の状況、負債に対する受益者の関与の程度といった多くの要素を総合的に考慮して判断されます。

したがって、法律知識のない方が独断することは非常に危険です。

協議離婚が調うときには、弁護士の助言なしに財産分与を決めてしまうことも少なくありません。

しかし、「離婚後に自己破産する予定があることを知っている」、「配偶者に返済不能な負債があることを知っている」というケースでは慎重に対応する必要があります。

必ず弁護士の助言を受けた上で財産分与の内容を決めた方がよいでしょう。

(3) 悪質な財産隠匿行為は、犯罪や免責不許可事由に

配偶者の自己破産前の離婚が、「本当の離婚」ではなく、「財産隠しを目的」とした偽装離婚であるときには詐欺破産罪に問われることがあります。

詐欺破産罪は破産法265条が定めていて、次の行為が該当します。

  • 債務者の財産を隠匿する行為、または財産を損壊する行為
  • 債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為
  • 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
  • 債務者の財産を債権者の不利益に処分する行為、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

詐欺破産罪となれば、配偶者の「自己破産が認められない」、「財産分与が取り消される」だけでなく、刑罰も科されます。詐欺破産罪を犯したときには、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科となります。

また、詐欺破産とまではいかなくても、悪質な財産隠匿行為と認められれば、財産分与を破産管財人に否認された上で、配偶者は免責不許可となることもあるでしょう(破産法252条1項1号)。

3.まとめ

配偶者が自己破産することになればさまざまな不安がよぎります。

しかし、自己破産で生じるデメリットを回避する目的で離婚する必要はありません。そもそも、離婚によって回避できるデメリットはほとんどありません

また、借金を抱えた夫婦が離婚する際には、離婚後にさまざまな問題が生じることも少なくありません。

慰謝料や養育費代わりに別れた配偶者が住宅ローンを負担する場合には、自己破産で問題にされなかった場合でも、後にローンの不払いが問題となることも少なくありません。

借金が関係する離婚の際には、弁護士のアドバイスを受け、適切に対応することがとても大切です。

離婚や自己破産についてご不安な点があるときには、お気軽に泉総合法律事務所にご相談してください。それぞれのケースにあった最善の方法をご提案させていただきます。

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