自己破産 [公開日] [更新日]

自己破産に年齢制限はあるのか?|未成年、高齢者の場合


自己破産は、認められれば今ある借金がゼロになる、債務者にとっては大変有り難い救済措置です。

しかし、例えば年金以外に収入のない高齢者や、法律行為が認められていない未成年者などが借金に困った場合、自己破産できるのでしょうか。

ここでは、自己破産に年齢制限はあるのかどうか、未成年や高齢者の自己破産で気をつけるべき点について解説します。

1.自己破産に年齢は関係なし

(1) 自己破産申立の要件

自己破産は以下の要件を満たした場合に申立が可能です。

①支払不能

自己破産申立は支払不能の状態であることが前提です。

支払不能と判断されるには、以下の3つの条件をクリアしなければなりません。

債務者の財産、信用、労働から得られる収入のいずれをもってしても、弁済できる見込みがないと判断されること。

財産がなくても信用や労働で資金調達可能な場合は支払不能とは認められません

反対に、財産があっても換価できない場合は、弁済できないので支払不能と認められます。

債務を弁済できない状態が続いていること。

一時的な金欠で支払いができない場合は当てはまりません。また、将来的に支払える見込みがある場合も認められません。

支払不能である客観的な状況があること。

単に債務者が払えないと言っているだけの場合は認められません。

支払不能であるかどうかは、借金額の多寡は関係ありません。仮に借金が100万円でも、返済能力がない場合、自己破産申立は可能です。

反対に、借金が500万円あっても、財産を処分したり働いて返せる見込みがあったりする場合、申立はできません。

②債務超過(相続財産破産、法人破産のみ)

債務超過は負債総額が全財産の総額を上回っており、財産を処分しても完済できない状態を指します。

相続財産破産と法人破産に限り、債務超過が破産開始原因として認められています。

しかし、個人の場合は債務超過で破産申立することはできません。

③支払を停止したとき

支払停止は支払不能に似ていますが、異なる点は、前者が行為であるのに対し、後者が状態である点です。

支払不能は支払いができない客観的な状態を指し、支払停止はその状態を外部に示す行為です。

典型的な例は手形の不渡りです。不渡りは2回目で銀行取引は停止となるので、不渡り2回で支払停止事由とみなされます。

また、夜逃げや弁護士の受任通知の送付なども支払停止に該当します。

ただし、支払停止=自己破産原因なのではなく、支払停止から支払不能が推定されることから、破産原因があると認められます。

④破産障害事由がない

破産開始原因は以上ですが、破産申立をするには、さらに破産障害事由がないことも条件に入ります。

破産障害事由とは、破産を妨げる要件のことで、以下のことが該当します。

  • 予納金が納付されていない
  • 計画倒産など、破産を前提として借入をして利益を得た
  • 破産以外の倒産手続きが開始されている

個人が破産をする場合には、以上の要件を満たせば破産開始決定がなされます。

自己破産申立要件の中には特に年齢に制限はありません。未成年者・高齢者など年齢にかかわらず、上記条件で言えば、自己破産の申立をすることは可能です。

しかし、未成年者は制限行為能力者であり、民法上は単独、完全な法律行為を行うことができません。

本当に自己破産は年齢関係なくできるのでしょうか?また、できたとして、成人とは違う条件があるのでしょうか?

2.未成年者は自己破産できるのか?

自己破産に至るには、その前に借金をしていることが前提となりますが、基本的に未成年者が親に内緒で借金をすることはできません。

未成年者は、法定代理人の同意がなければ法律行為をすることができない(民法5条1項)

未成年者が借金をするには、必ず親(法定代理人)の同意が必要です。法律上、未成年者は単独で借入の契約をすることができません。

貸金業法でも保護者の同意なく貸し付けすることは禁じられているので、業者も基本的に未成年には貸付は行っておりません。

・同意のない場合、法定代理人は、契約解除可能

法定代理人の同意なく借金をした場合は、後から契約解除することが可能です。

その場合、そもそも契約はなかったことにできるので、手元に残っているお金、または、借りたお金で得た購入品など、現存する利益を限度に返済すれば、それ以上の返済を求められることはありません。

返還が必要な現存利益の考え方として、借入金を飲食などの浪費に使ってしまった場合は、何も残っていないので返済する必要はありません。

しかし、生活費などに使った場合は返済義務が生じます。なぜなら、生活費は借金の有無に関わらず必要なお金であり、借りたお金を使った場合は、相当の利益が残っている=現存利益があると考えられるためです。

3.未成年者の借金が有効になる場合

未成年の借金については以下に該当する場合は有効です。

(1) 法定代理人の同意がある場合

未成年者の借金は法定代理人の同意があれば有効です。その場合は契約に従って返済を行う義務があります。

また、契約後に法定代理人が借金を追認した場合も有効です。

もし、親が同意した借金を未成年者が支払えなくなった場合、支払い義務を負うのは本人です。

親は保証人になっていない限り、支払い義務を負うことはありません。もし、どうしても支払いができなくなったときは、自己破産をするのも本人であり、親ではありません。

(2) 結婚している場合

民法753条により、結婚をすると未成年者でも成年としてみなされます(成年擬制)。そのため、既婚の場合は、親の同意なく借金が可能でその契約も有効です。

結婚をすると住居を借り、仕事に就き、自立した経済活動を行わなければなりません。

もし未成年であることを理由に、その都度法定代理人の同意が必要となると、婚姻の独自性が保てなくなります。

そのため、未成年でも結婚後は成年擬制することで、各種契約を親の同意なく行えるようにしているのです。

ちなみに、未成年のうちに離婚をした場合も、成年扱いは変わりません。一度得た権利をなくすことは不利益が大きく、また、婚姻で社会的自覚が成熟したものとみなせるので、未成年に戻すべきではないと考えられているからです。

(3) 年齢をごまかして借金した場合

未成年者が年齢をごまかし、成年に見せかけるために詐術を使って借金をした場合は取消ができません。その場合の借金は有効となります。

詐術を使うとは、例えば身分証明書を偽造して生年月日を偽ったり、相手が成年であると誤信するような言動をとって契約したりした場合が該当します。

一般的に単に未成年であることを黙っていただけでは、詐術を用いたとはみなされません。

(4) 法定代理人の同意書を偽造した場合

借入の際に法定代理人の同意書などを偽造した場合も契約の取り消しは出来ません。その場合、親の同意がなくても借金は有効となります。

これらの場合でも、法定代理人は保証人でない限り返済義務はありません。あくまでも返済義務を負うのは未成年者本人です。

4.未成年者・認知症の高齢者の自己破産

行為能力が制限されているのは未成年者だけではありません。そのほか、認知症の高齢者なども含まれます。

該当者が自己破産するときは、どのようにしたら良いのでしょうか?

(1) 未成年者

未成年者が自己破産するときは以下のポイントを押さえておきましょう。

①自己破産は可能

未成年者が自己破産することは可能です。ただし、申立は法定代理人がしなければなりません。

未成年者は民事訴訟法31条により、訴訟能力も制限されているので裁判所に申立することができません。したがって、未成年者が親に内緒で自己破産する、ということはできないのです。

②弁護士に依頼する場合も、法定代理人の同意を要する

自己破産の申立に際し、未成年者が弁護士に依頼する場合も法定代理人の同意が必要です。

弁護士に依頼をすることも契約行為となるので、未成年者単独で行うことができません。

親の同意のない契約を弁護士が請け負うことはないので、自己破産するときには、やはり親に相談をしなければ始まりません。

未成年者が自分の身分証明書や法定代理人の同意書を偽造している場合、自己破産が認められない可能性あり

もし仮に、未成年者が身分証や同意書を偽造するなど、詐術を用いて借金の契約をした場合は、自己破産が認められないこともあります。

免責不許可事由には「詐術」(破産法252条1項5号)の規定があり、これに抵触した場合は自己破産が認められません。

ただし、この規定にある詐術の規定は、成年であると年齢をごまかすことを想定したものではありません。

到底支払えないのが分かっているのに、収入があるように見せかけ、支払えると嘘をついて借金をする場合などを指します。

よって、年齢を偽ることに加え、借り入れ状況や収入を偽って借金をした場合は、免責不可事由に該当する可能性があります。

(2) 認知症の高齢者の場合

認知症の高齢者が借金の支払いができなくなった場合は、家庭裁判所で成年後見人を選任し、成年後見人から自己破産申立が必要です。

成年後見は弁護士に依頼することが可能なので、自己破産の手続きと一緒に依頼すると簡単です。

認知症の高齢者が借金を抱えている場合、ご本人の財産が少なく、連帯保証人もいなければ自己破産をして借金をゼロにするのは合理的な選択です。

自己破産すると以後5~7年は新たな借入ができませんが、債務整理の有無に関わらず、今後はご本人が借金をするのは病状からして現実的ではありません。

そのため、ブラックリスト入りの心配も不要です。また、年金などが差し押さえられることもありません。

こうしたケースでは特に失うものもないので、自己破産のメリットの方が大きいでしょう。

特に自分の親の場合は、この先の介護費用も心配です。その上借金の肩代わりまですると親子共倒れの可能性もあります。

最悪の事態になる前に、弁護士に相談をして借金をクリアにすることをおすすめします。

5.まとめ

自己破産は年齢に関係なくすることができます。

しかし、未成年者が自己破産する場合は、その将来についてできるだけ配慮しなければなりません。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、債務整理の専門家が状況に適したベストな方法をご提案させていただきます。債務整理のご相談は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご連絡ください。

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