自己破産 [公開日]2018年6月4日[更新日]2019年10月28日

年金担保融資は自己破産しても免責されない?

「突然の病気やケガで高額な医療費や自宅の改装資金が必要となった…」

このように、定年退職で年金生活となった後にも、急な出費などで手元にお金がないということが起こり得ます。

しかし、年金生活者などの借金(借入)は、一般の方よりも難しい場合が少なくありません。
そのため、高齢者などがヤミ金や詐欺の被害に遭ってしまうことがあります。

そのような事態を防ぐために、高齢者向けの公的融資制度があります。独立行政法人福祉医療機構(WAM)が行っている「年金担保融資」もそのひとつです。

しかし、年金担保融資には、「毎回の年金手取額が減ってしまう」、「債務整理しても返済義務がなくならない」といった大きなリスクがあります。
実際にも年金担保融資を受けたことが理由で、逆に生活破綻・破産となった人も少なくありません。

そのため、日本弁護士連合会などの諸団体から制度廃止の声があがり、平成 22 年 12 月の閣議決定において、廃止することが既に決定されており、令和4年3月末の予定で申込受付を終了することも明らかになりました。
参考:独立行政法人福祉医療祉機構 年金担保貸付事業・労災年金担保貸付事業

今回は、年金担保融資のリスクについて解説します。

1.年金担保融資とは

まず原則の話として、年金などを担保にお金を借り入れることは、国民年金法や厚生年金保険法で禁止されています。
この唯一の例外が、独立行政法人福祉医療機構による「年金担保融資」です。

収入の少ない高齢者は、緊急の資金が必要となったときに金融機関から借り入れることが難しい場合が少なくありません。

そのため、高齢者が高利貸し(ヤミ金)被害に遭うことを予防する目的で1975年に設立されたのが、この年金担保融資制度です。

年金担保融資の返済は、債権者である「独立行政法人福祉医療機構」が、債務者の年金を年金支給機関から直接受け取り、返済額を天引きした残額を債務者の口座に振り込む方法で行われます。

つまり、年金担保融資を利用すると、受け取れる年金額が返済分だけ必ず減ってしまい、このことが後述のような問題を引き起こしています。

2.年金担保融資のリスク

年金担保融資は、制度を正しく理解せずに安易に融資を受けると、生活に大きな支障を来してしまいます。

(1) 年金担保融資が原因で破産する可能性

年金担保融資を行うときには、年金支給が減額されることで生活が破綻しないよう、信用状態の審査やカウンセリングなどの措置が講じられるべきですが、現在はそのような仕組みが不十分です(貸す方としても、年金が担保になっていれば回収リスク(貸し倒れリスク)が低いので、比較的融資条件が甘くなっていると言えます)。

実際に、年金担保融資が原因で生活保護を申請せざる得なくなった人が多数存在します。

たとえば、厚生労働省の報告によれば、年金担保融資の返済が「生活破綻」に至り、生活保護を申請して認められた人数は、2008年度4,908人、2009年度6,053人、2010年度は5,471人であるとされています。

公式調査はその後されていませんが、2013年に毎日新聞が各地方自治体に行った取材によれば、2011年度以降の年金担保融資によって生活破綻する人の水準は横ばい状態が続いているとのことです。

(2) 自己破産・個人再生でも免責されない

通常の借金は、どうしても返済できないときには自己破産などの債務整理によって解決することができます。

しかし、年金担保融資は、次のような理由により、自己破産や個人再生をしても事実上、返済の負担が減りません。

年金担保融資は、年金すなわち年金受給権を担保にしている借金です。
年金受給権は、自己破産・個人再生をしても失われることはなく、債務者には、破産・再生後も、継続的に年金が支給される権利があります。

そのため、債権者である福祉医療機構は、債務者の破産・再生後も、担保となっている年金から、「完済するまで」借金を回収することが出来るのです。

実は、年金担保融資は、債務整理との関係では、非常にデメリットの大きい融資制度なのです。

(3) 年金担保融資による他の問題点

年金担保融資には、年金支給の減額以外にも、次のような問題があります。

①借金の一括返済を利用目的として認めている

年金担保融資は、借金の一括返済を目的に利用することを認めています。
実際に、福祉医療機構のアンケート調査(平成28年度調査)によると、借金返済のために年金担保融資を受けた人全体の約18%にのぼります。

また、年金担保融資を受けた人の約50%は、銀行などからの借入金があります(福祉医療機構「年金担保貸付に関するアンケート調査(平成28年度)-調査報告書-」)。

これに対して、例えば生活保護は、受給金を借金の返済に充てることを禁止しています。

②無理な返済額設定などによる生活困窮

たしかに、年金担保融資の返済利率は、銀行や消費者金融に比べるとはるかに低いので、正しく上手に利用できれば、有効な借り換えとなる場合もあるでしょう。

しかし、高齢者の多くは、年金以外に収入がない場合も少なくありません。
年金担保融資の借入額が多額なときや、「借金を早く返そう」と無理な返済額を設定したときには、日々の生活費に困ることも十分あり得ます。

消費者金融や銀行の場合には延滞できますが、返済額が年金から強制天引きされる年金担保融資では、延滞することができません。

3.債務整理のほうが有利なケース

通常の借金であれば、債務整理によって、返済額を減らしたり、返済義務を減免したりしてもらうことが可能です。
実際、年金担保融資による借り換えよりも債務整理の方が有利というケースも少なくないでしょう。

そもそも、年金担保融資による借金の一括返済は、「年金は、生活の糧として保証すべきだから差押えを禁止する」とした法律の趣旨とも矛盾するといえます。

「消費者金融や銀行からの借金は返済」できても、年金担保融資の返済(天引き)のために「日々の生活が破綻」してしまえば、本末転倒ともいえます。

借金でお困りのときには、借金問題の実績の豊富な弁護士にまずご相談ください。

4.まとめ

近年では、借金で悩んでいる高齢者の方が増えています。

年金受給者の中には、「債務整理すると年金を差し押さえられる」、「自己破産すると年金の受給資格を失う」という誤解をもっている方も少なくありません(年金が口座に振り込まれた後の「預貯金」については差押の可能性はありますが、これは年金それ自体が差し押さえられているわけではありません)
しかし、自己破産などをしても、年金が差し押さえられることも、受給資格を失うこともありません。

借家住まいの方であれば自己破産してもほとんどデメリットがない場合も少なくありませんし、持ち家の方でも任意整理や個人再生で借金問題を解決できることがあります。

また、債務整理ができないという場合には、年金担保融資以外にも、例えば、社会福祉協議会の生活福祉資金といった公的貸付制度(無利息の貸付制度有)を利用して、一時的な出費に対応する方法もあります。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、それぞれの状況に応じた適切なアドバイスを差し上げることができるかと思いますので、まずは一度ご相談いただければと思います。

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