自己破産 [公開日]2018年5月15日[更新日]2023年4月12日

自己破産後、いつまで持ち家に住めるのか?

自己破産は、借金を原則ゼロにできる強力な債務整理方法ですが、その代わりにマイホームは手放さざるを得なくなります。

その際、いつ自宅から出ていかなくてはいけないのでしょうか?
また、住宅ローンが残っている場合、そのローンの残務はどうなるのでしょうか?

この記事では、自己破産をしたらその後のマイホームがどうなるのか、いつまで住めるのかを解説します。

1.自己破産すると持ち家はどうなる?

自己破産すると、今住んでいるマイホームは原則として手放すことになります。自己破産では、資産価値の高い財産は換価され、債権者に分配されてしまうのです。

自己破産をした後いつまで持ち家に住めるかという問題ですが、おおよそ半年~1年程度で出ていくことになると考えられます。

とは言え、住宅ローンを完済しているかどうかで、破産後の対応(どう売却され、いつ頃に退去するのか)は以下のように異なります。

住宅ローンが残っている場合 ⇒ ケース1.競売、ケース2.任意売却
住宅ローンを完済している場合 ⇒ ケース3.破産手続きの中で売却処分

2.住宅ローンが残っている場合

(1) ケース1.競売

「自己破産を申し立てた結果(場合によっては申し立て前に)、金融機関が不動産を競売にかけるため、マイホームを手放すことになる。」
これが1つ目のパターンです。

住宅ローンの返済期間は一般的に20~30年になります。今では30年を超える住宅ローンも珍しくありません。
しかし、住宅ローンを貸し付けた金融機関にしてみれば、30年先も変わらず住宅ローンを返済してもらえる保証はありません。

そのため、金融機関は住宅ローンを融資するときに、不動産に「抵当権」を設定しています。

抵当権とは、住宅ローンでお金を借りた人が返済できなくなってしまった場合に備えて、土地や建物を担保とする権利のことです。抵当権を実行して不動産を競売(競り)にかけることで、貸し付けたローンを回収できるのです。

さて、自己破産を申し立てると(弁護士に自己破産手続の依頼をした場合にはその時点で)、すべての返済がストップするため、金融機関は住宅ローンを回収できなくなります。
そこで、「抵当権」に基づいて不動産を競売にかけ、その売上金でローンを回収します。

債権者が競売を申し立て、裁判所が「競売開始決定」を出すところから競売手続きが始まります。競売開始決定の1~3ヶ月後に裁判所から執行官と評価人がやってきて「現況調査報告書」と「評価書」を作成します。
それを踏まえて裁判所が売却基準価額と入札スケジュールを決定するのは、競売開始決定の3~6ヶ月後です。

その後、一番高い買い値を付けた人が落札し、買い受け代金が納付されると、ようやく落札者のもとにマイホームの所有権が移ります。つまり、マイホームが人手にわたり、明け渡しの必要が出てきます。

競売開始決定からこの段階でたどり着くまでに、早くても6ヶ月程度はかかるでしょう。

このように、競売手続きはずいぶんと時間がかかりますが、裏を返せば、マイホームの明け渡しにはそれだけ時間の猶予があるということです。

なお、自己破産を申し立てる前でも、住宅ローンが支払えずに返済が滞っている場合には、競売にかけられてしまう可能性があります。

(2) ケース2.任意売却

不動産を競売で処分すると売却金額が低くなりがちです。
また、不動産競売は裁判所の手続きですので、裁判所に申し立てる手間がかかります。

そのため、実務上は、競売ではなく「自主的な不動産売却」を行うケースも多くみられます。これを「任意売却」といいます。

任意売却とは、要するに「不動産を中古市場で売却する」だけのことで、一般的な不動産の売却と大きな違いはありません。
ただし、売却代金は優先的に住宅ローンに充てられるので、実務上は、売却金額について債権者である金融機関の承諾が必要になります。

以下では、住宅金融支援機構の住宅ローン物件の事例を使って、任意売却の手順を解説します。

まず、機構に「任意売却に関する申出書」を提出します。申出書には「住宅ローンの支払いが困難なので自宅を売却し、売却代金は返済に充てます。」といった内容が書かれています。

次に、相場外れの安値で売却されないように、不動産業者の査定金額等の資料を機構が確認します。
「どうせ手放すなら、友人や身内に格安で売ってしまおう」と考えても、そういう事はできない仕組みになっているのです。

売り出し価格が決定したら、売却活動が始まり、購入希望者が現れた場合には、機構の承諾を得て、不動産の売買契約を締結します。

この段階でマイホームが他人の手にわたるため、明け渡しが必要になります。平均3~6ヶ月ほどが一般的な期間なので、こちらも半年程度は住んでいられる可能性が高いでしょう。

(3) 住宅の売却後にローン残務が残ったら?

競売でも任意売却でも、住宅の売却後にローン債務が残ってしまった場合は、自己破産手続き内で処理されます。

すなわち、自己破産で免責が得られれば、破産後に残務の支払い義務が残ることはありません

3.住宅ローンを完済している場合

(1) ケース3.破産手続きの中で売却処分

住宅ローンを完済すると抵当権は抹消されるため、競売にかけられるおそれはありません。
しかし、結論的には、住宅ローンを完済していても自己破産で不動産を手放すことになります。

破産手続きは、本来、破産者の財産を処分して(金銭に換えて)、債権者に平等に分配することを目的としています。
とはいえ、破産者の財産をすべて処分してしまうと、その後の生活が成り立たないため、一定レベルの財産(現在の東京地裁の運用では、現預金等を含めて合計99万円まで)については、保有が認められています。

しかし、残念ながら、マイホームは高額財産ですので、原則として保有は認められません
つまり、マイホームは売却処分の対象となるため、手放さざるを得ないのです。

自己破産手続きの中で適切に財産を処分して、債権者に平等に分配する役割を担うのが、裁判所に選任された「破産管財人」です。破産管財人は通常、弁護士の中から選ばれます。

[参考記事]

破産管財人とは?権限・報酬などをわかりやすく解説

不動産の売却処分は破産管財人が行い、不動産の売却代金も債権者への配当に充てられることになります。

しかし、破産管財人が売却処分する、といっても、何か特別な売却方法が用意されているわけではなく、破産管財人が地元の不動産業者に依頼して買主を探すのが一般的です。

したがって、売却処分する不動産が人気物件ならすぐに買い手が見つかり、不人気物件だとなかなか買い手が見つからない、という結果になるでしょう。

つまり、売却までのスピード次第で、マイホームを明け渡すタイミングも変わってくる、というわけです。

4.自己破産と持ち家に関するよくある質問

  • 自己破産をするといつまで持ち家に住めるの?

    住宅ローンを完済しているかどうかで、いつまでマイホームに住めるのか(いつ退去することになるのか)は異なります。

    住宅ローンが残っている場合は、競売や任意売却で家が売られることになりますので、手続きは終わるまでは住み続けることができます。
    競売では早くても6ヶ月程度、任意売却では3〜6ヶ月程度と見ておくと良いでしょう。

    一方、住宅ローンを完済している場合は破産手続きの中で売却処分が行われます。
    これについては「すぐに買い手が見つかるような人気が出るような物件かどうか」にもよりますので、売却までのスピード次第でマイホームを明け渡すタイミングも変わってきます。

  • 自己破産をする際、持ち家の名義変更をしてはいけない?

    「自分名義のマイホームでなければ持ち家は処分されないだろう」と思い、自己破産前に持ち家の名義変更をしようとする方がいらっしゃいます。
    しかし、これは絶対にしてはいけません。

    自分の財産が換価されることを嫌がり、破産管財人や裁判所に見つからないよう不正に財産を隠した場合、民事責任と刑事責任の両方が科せられる可能性があります。

    仮に財産を隠す行為をしてしまい、それが発覚したならば、その行為は「債権者を害する目的での破産者の財産を隠す行為」として免責不許可事由となり(破産法252条1項1号)、借金が免除されない可能性が高いです。

    また、財産を隠す悪質な行為は「詐欺破産罪」という犯罪として、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、あるいは、その両方に処せられる可能性があります(破産法265条1項1号)。

    このように財産の隠匿は、単に免責不許可の理由になるだけではなく、犯罪行為として厳しく処罰されることになる重大な違法行為でもあるのです。

5.まとめ

以上のように、自己破産した場合には、原則としてマイホームを手放すことになりますが、明け渡しまでの猶予はケースバイケースです。

住宅ローンが残っている場合は競売もしくは任意売却、住宅ローンを完済している場合は破産手続きの中で売却処分という形になります。

マイホームに長く住めればその分だけ家賃の負担が減りますし、慌てて条件の悪い賃貸に引っ越してしまうのはもったいないことです。
自己破産を依頼するときに、住まいについても弁護士に相談するとよいでしょう。

また、様々な制約はありますが、自己破産しながらでも持ち家に住み続けられる「リースバック」という方法もあります。

[参考記事]

任意売却とリースバックの違い

自己破産とマイホームの問題については、是非、債務整理の解決実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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