自己破産 [公開日]

自己破産後に会社を設立したい…。できないこと、困ることなどは?

自己破産後に会社を設立したい…。できないこと、困ることなどは?

借金の整理方法の最終手段の自己破産をすると、借金は全て免責されます。しかし、手続後は社会生活を送る上でさまざまな制約が課されます。

会社設立もその1つで、従来は破産後に復権していない人(免責許可決定を受けていない人)は、取締役の欠格事由に該当していたことから、新たに会社を設立することができませんでした。

しかし2006年の新会社法でその事項が削除され、現在では法規上、会社設立が可能になっています。

ただ、実際に設立するとなると注意すべき点もあります。ここでは、破産後の会社設立の際に生じる問題点とその対処法を解説します。

1.破産後の会社設立

(1) 破産後の会社設立は可能

自己破産すると、家も財産も全て没収され、その後は社会の片隅で細々と生きていく…。そんなイメージを持っている人も多いかと思います。

しかし、現在では自己破産後に再チャレンジしやすい環境が整っています。

中小企業経営者は、会社の負債の個人保証をしていることが多く、破産と同時に経営者個人も破産するケースが大半で、破産後は新たに会社を興すことができませんでした。

しかし、そうやって再チャレンジの機会が奪われると、市場からの撤退を余儀なくされます。

その積み重ねが市場のダイナミズムを奪い、日本経済の停滞を招き、ひいては国民生活に不利益をもたらします。また、日本の発展や景気回復においても決してプラスにはなりません。

そうした事情により、現在では破産後に加えて、破産手続中でも取締役への就任や会社の設立ができるようになりました。つまり、一度失敗してもリベンジの機会があるということです。

(2) 現職の取締役

しかし、自己破産前に会社の取締役である人は、民法の規定により、自己破産の際には一度退任をする必要があります。

民法635条では「委任契約の際は、委任者と受任者のどちらかが破産をしたら関係が終了する」と決められています。つまり、取締役などの役員は、会社との関係が委任契約であるため、どちらかが破産すれば取締役ではいられなくなるのです。

たとえば中小企業の社長さんが会社の負債が払えず破産したり、株式会社の役員が個人的な借金で自己破産した場合には、取締役から一度退かなくてはなりません。

しかし、破産手続中であっても、また新たに会社を興すことは可能です。また、株主総会で再び取締役に選んでもらうこともできます。

なぜなら、破産者が取締役でいられないのは、あくまで委任契約が終わったためであり、決して欠格事由が原因となっているわけではないからです。そのため、極端な話、退任後すぐ再任されることも可能です。

ただ、実際には破産手続への影響を回避するために、会社を設立するとしても免責決定後に設立するのが無難と言えるでしょう。

2.実際に会社を設立する場合の注意点

現実問題として、実際に会社を設立することが可能かどうかについて説明します。

自己破産手続をしてから取締役になることは、確かに法規上は可能です。しかし、実際にはさまざまな壁があるのもまた事実です。

予想される問題点としては、以下の内容が考えられます。

  • クレジットカードが作れない
  • 事業資金が借りられない
  • 事務設備のリース審査でさえも落とされる
  • 事務所や店舗を借りる際の保証会社の審査が通らない

自己破産後は信用情報機関に事故情報が登録されるため、5~10年ほどは新たな借入ができなくなります。

会社設立にはそれなりの資金が必要で、自力で資金調達できなくなることは大きなデメリットです。

事業資金はおろか、事務所や店舗も用意できない、事務用品のリースもできないとなると、会社を興すのは現実的に困難です。法律上は破産後でも会社設立は可能ですが、実際の道のりは決して容易ではないのです。

しかし、そうした状況でも、完全に道が閉ざされている訳ではありません。破産後に借金ができなくても会社を設立する方法があります。

3.自己破産後の会社設立方法

自己破産後は基本的に新たな借入ができなくなりますが、「そんな状況でも会社を設立したい!」という場合には以下の3つの方法があります。

(1) 十分に資金を蓄えたあとで起業する

自分で資金を蓄えて起業するのは、時間はかかりますが確実な方法です。

元手がそれほどかからない業種であれば、しばらく働きお金を貯めて再チャレンジすることも十分可能です。

(2) 親族を会社代表にする

会社代表を親族にするのも一案です。自己破産をすると信用情報機関に事故情報が残りますが、借入の審査に落とされるのはその影響による可能性が高いため、ブラックリストが抹消されるまでは会社代表を他の人に任せることで問題をクリアできます。

特に親族であれば安心です。お金を借りるにしても、自分が借入した場合とほぼ同じ状態で運用できる点でもメリットが大きいと言えます。

(3) 公的支援を利用する

自己破産をすると、原則借入はできなくなりますが、公的機関の融資制度であれば破産者でも利用できます。

こうした制度を利用することで、ダイナミックな再チャレンジが可能となります。

4.自己破産者に対する公的支援融資

自己破産者に対する公的融資はいくつかあります。それぞれの特徴を捉え、自分に一番合ったものを選ぶとよいでしょう。

(1) 再挑戦支援融資

日本政策金融公庫では、事業に失敗した人、自己破産をした人に向けて、再挑戦支援資金を融資しています。

この融資を受けるための条件は以下の3つです。

  • 過去に廃業経験がある(個人・法人)
  • 廃業した事業が、新規の事業に影響を与えない程度に整理されている
  • 廃業がやむを得ない事情によるものであること

これらの条件をクリアしていれば、以下の融資を受けることが可能です。

  • 設備資金(最高額7,200万円・返済期限20年以内)
  • 運転資金(最高額4,800万円・返済期限7年以内)

この融資上限を見ると、非常に高額な融資を受けられるように思ってしまいますが、実際には1社あたりの平均貸付金額は数百万円です。

借入に際しては、女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアの方は利率が優遇されています。また、特殊な技術・ノウハウを持っている人が開業する場合も、金利は優遇されます。

借入金額、返済期間、保証人の有無でも金利は変わります。

「担保や保証人は、利用者の希望を聞きながら相談の上で決定する」と定められているようなので、希望者はまずは窓口で相談をしてみましょう。

(2) 再挑戦支援制度

公的支援を行っているのは日本政策金融公庫だけではありません。「信用保証協会」や「商工組合中央金庫」も支援融資を行っています。

①信用保証協会

信用保証協会は、中小企業が公的な融資を受ける際に債務保証をする団体です。信用保証協会が保証をすることで借入を円滑化し、企業の健全な発展を支援します。

信用保証協会による再挑戦制度では、過去に廃業した人を対象に、1,000万円以内(両保証合算) の融資を行っています。

また、支援創業関連保証の適用を受けた場合は、融資上限が1,500万円まで引き上げられます。

返済は10年以内に行い、借入に際しては担保も不要です。再挑戦支援の形は地域によっても異なるため、希望する場合は最寄りの信用保証協会の窓口に問い合わせましょう。

②商工組合中央金庫

商工組合中央金庫でも再挑戦支援を行っています。平成19年から行っている事業で、「再チャレンジ支援貸付」という名称で融資を行っています。

融資を受ける条件は以下の通りです。

  • 新たに開業する人、または開業後5年以内であること
  • 過去に廃業歴がある個人・経営者の人
  • 自己破産、民事再生で負債の整理をしていること
  • 廃業がやむを得ない事情であったこと
  • 設備資金は15年以内、長期運転資金は7年以内、短期資金は1年以内で返済すること
  • 代表者の保証は必要、担保は応相談
  • 事業計画が合理的で実現性が高いこと

破産後の融資については、基本的には日本政策金融公庫と信用保証協会が2本柱となっていますが、こういった制度があることを覚えておくとよいでしょう。

いずれも破産後の借入先としては強い味方となりますが、希望すれば必ず借入ができる訳ではありません。

しかし、こうした制度を利用して、事業を再建している人も沢山いるのも事実です。

一度の失敗で人生が破滅するということはないので、支援制度があれば有効活用して次のチャンスに繋げていきましょう。

5.まとめ

このように、自己破産をしても、新たに会社を設立することはできます。しかし、いざ会社を設立するとなると、様々な難点があるのも現実です。破産後の会社設立は慎重に行いましょう。

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