自己破産 [公開日]2017年12月6日[更新日]2021年9月28日

自由財産とは|自己破産しても財産が残せる!拡張は可能か?

自己破産に成功すると、どれほど多額の借金であっても原則として支払い義務が免除されます。

その一方で、「自己破産をすると財産を取り上げられる」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。
財産の処分を嫌って自己破産に二の足を踏んでいる人もいるはずです。

実際のところは、自己破産をしても一定の財産は処分を免れるため、手元に残すことができます。
自己破産によって全財産を失い、路頭に迷うようなことはないのです。

では、どのくらいの財産を手元に残すことができるのでしょうか?

ここでは、自己破産後の財産について不安を抱える人のために、手元に残せる財産「自由財産」について解説していきます。

1.自由財産とは

まずは「自由財産」の概要を説明します。

自由財産を知るためには自己破産の流れを知っておいた方が良いので、合わせてお読みください。

(1) 自己破産のおおまかな流れ

自己破産をすると、自己破産手続の開始決定時に破産申立人が持っていた財産はすべて「破産財団」というものに組み込まれます。

財団と言うと、何か団体のような印象がありますが、ここでは「財産の団体」「財産の集まり」くらいのイメージで捉えてください。

破産財団に属する財産は、裁判所から選任された「破産管財人」という人が管理します。
破産管財人は破産財団となった財産を処分してお金に換え、債権者へ配当します。

言い換えれば、債権者は破産財団から最低限の弁済を受けることになります。

しかし、破産財団がゼロになっても、まだ返しきれない借金が存在するケースが多くあります。

その場合は裁判所が「免責」というものの許可を出し、破産申立人の返済義務を免除します。

これによって借金がゼロになるというのが、自己破産のおおまかな流れです。

(2) 自由財産は「自分で自由にできる財産」

以上のように、自己破産をすると自分の財産が処分されてしまいますが、実際には破産財団に組み込まれず処分を免れる財産があります。

そのような財産のことを「自由財産」と言います。
自分で自由にできる財産なので「自由財産」と呼ばれるのです。

2.自由財産の一覧

法律で定められた自由財産を「本来的自由財産」と呼びます。

どういったものがあるのかを具体的に見ていきましょう。

(1) 新得財産

破産手続開始決定後に取得した財産です。

破産財団に組み込まれるのは破産手続開始決定があった時点の財産であり、その後に得た財産は破産財団の対象になりません。

例えば、破産手続開始決定後に行った労働に対する報酬(給料)などは、新得財産に含まれます。

なお、退職金は「給料の後払い」としての性質をもっており、破産手続き開始決定の時点で「将来受け取れることが既に決まっている債権」といえます。
このような退職金の場合、「新得財産」とはされず、その一部が自己破産の際に換価・処分の対象となってしまいます。

退職金の扱いについては以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

自己破産をしたら退職金も差し押さえ・没収される?

(2) 差し押さえが禁止されているもの

法律上差し押さえが禁止されているものは、自己破産をしても処分されません。

基本的には、生活に必要なものや、衣食住に欠くことができないものがメインとなっています。

  • 衣類・家具家電類・寝具・調理器具・台所用品などの日用品
  • 畳などの建具
  • 1ヶ月分の生活に必要な食料や燃料
  • 生計に必要なもの(農家の農具、漁師の漁具等)
  • 退職金の4分の3相当額

(3) 破産財団から放棄されたもの

処分しようにも買い手が現れそうにないものや、処分費用が過大にかかってしまうようなものです。

こういったものの判断は破産管財人が行います。破産管財人が裁判所から許可を得て破産財団から外し、結果として処分を免れます。

(4) 99万円までの現金

法律上、現金は99万円を上限として手元に残すことができます。

 

この他にも、自由財産の拡張が認められた財産は手元に残せます。
こちらについては次の章で解説していきます。

3.自由財産の拡張とは

自由財産の内容は法律で決められていますが、杓子定規に適用すると破産申立人の今後の生活に悪影響が発生するおそれがあります。

例えば、車がなければ移動が困難な人や、仕事上車が必要な人がいるはずです。
そういった個別の事情に応じて「これは自由財産とする」と裁判所が認めることがあります。

これを「自由財産の拡張」と言って、裁判官の職権または破産する人からの申立てによって行われることになっています。

(1) 自由財産の拡張で認められる財産

自由財産の拡張が認められる基準は裁判所によって異なり、それぞれが独自の基準で判断を行っています。

例えば、東京地裁では自由財産の拡張について、以下のような基準が設けられています。

  • 残高20万円以下の預貯金口座(全口座の合算額)
  • 解約返戻金が20万円以下の生命保険
  • 評価額20万円以下の自動車
  • 見込額が160万円以下の退職金債権
  • 見込額が160万円を超える退職金債権の8分の7相当額
  • 賃貸住宅などの敷金
  • 電話加入権
  • その他家財道具

これらの財産は自由財産として認められる可能性が高いです。

また、一般的に自由財産の総額が99万円を超える場合は、自由財産の拡張を認めてもらうのは難しいようです。

(2) 自由財産拡張の申立て方法

自由財産の拡張は、基本的に破産申立人からの申立てによって行われます。

一部の裁判所では所定の財産目録にチェック欄があり、枠にチェックしておけば別途申立書を作らなくて済む運用が行われています。

便利に見える方法ですが、これには「財産目録に記載のない財産は自由財産の拡張が基本的にできない」というデメリットもあります。

不安な場合は弁護士に依頼をして、確認を取りながら財産目録を作ってください。

[参考記事]

自己破産において必要な財産目録とは?

一方、東京地裁などでは申立てに先立って、まず破産管財人と協議を行い、その後に申立書や上申書を提出する運用が行われています。
やや手間がかかりますが、柔軟な対応ができる、拡張が認められる見込みを察しやすいなどのメリットがあります。

(3) 自由財産拡張の申立て期限

自由財産拡張の申立ては「破産手続開始決定の確定日から1ヶ月」です。

この期間は裁判所の裁量で延長できるため、事情があれば伸ばしてもらえる可能性があります。

ただし、あまりに遅く申立てを行うと、自己破産手続きが遅延するなどの悪影響が発生するかもしれません。

早い段階で破産管財人や自分の弁護士と協議を行い、対応を決めるべきです。

【ローンのある車は注意!】
ローンのある車に対しては、自由財産の拡張を申し立てても大抵は徒労となってしまいます。ローンの終わっていない車の所有権を持っているのは、多くの場合ローンの債権者だからです。自己破産によって満足な弁済を受けられないと知った債権者は、自己の所有権に基づいて車を引き上げ、それを売却するなどして少しでも債権を回収しようとします。
かといって、所有権を自分に移すために車のローンを前もって全額返済すると、自己破産で禁止されている「偏頗(へんぱ)弁済」に該当する可能性がでてきます。偏頗弁済は、債権者同士の公平を保つ観点から禁止されています。
うっかり禁止行為をしないためにも、予め弁護士に相談して注意点を聞いておきましょう。

4.自由財産の詳細を知りたいなら弁護士相談を

自己破産をしても、意外と多くの財産が自由財産として手元に残せます。
また「どうしてもこれは必要」というものは、自由財産拡張の申立てをすることで処分を免れるかもしれません。

しかし、自由財産拡張の基準は裁判所毎に違いますし、申立ての方法もまちまちです。

どのように申立てをすればよいのか、自分が手元に残したい財産は自由財産の拡張で守れるのか、少しでも不安な方は弁護士に相談しましょう。

弁護士は裁判所の基準や手続きに精通したプロです。
自己破産のときは弁護士に相談することで、自分の財産を少しでも多く守ることができるでしょう。

お悩みの方は、ぜひ一度泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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