自己破産をしたあとも電気・水道・ガスは利用できる?免責は?

自己破産

自己破産をしたあとも電気・水道・ガスは利用できる?免責は?

自己破産すると、借金は基本的にすべて免責されますが、電気代、ガス代、水道代を滞納していたときにはこういった債務も免責の対象になるのでしょうか?
また、こうしたライフラインを止められることがないのか心配だという声もよく聞きます。

今回は、自己破産と電気ガス水道などの公共料金の関係について、債務整理に詳しい弁護士が解説します。

1.自己破産するときの債権の種類

自己破産が必要な状態に陥っている方は、電気ガス水道などの料金も滞納していることがよくあります。その場合、滞納している公共料金も免責されるのでしょうか?

自己破産するときに、どこまでの範囲で免責が認められるのかが問題です。

自己破産するときには、債権をいくつかの種類に分類します。どれに分類されるかによって取扱いが異なってくるので、まずは自己破産するときの債権の種類を確認しましょう。

(1) 財団債権と破産債権

自己破産するときの債権について、まずは、「財団債権」と「破産債権」に分けます。

財団債権とは、破産手続によらなくても、破産財団(破産者の財産)から随時に支払いを受けることができる債権です(破産法2条7項)。財団債権は、免責の対象になりませんから、破産手続とは無関係に支払をしなければなりません。

これに対し、破産債権は、破産手続開始決定前の原因によって発生する債権で、財団債権に該当しないものです(破産法2条5号)。破産債権については、基本的に免責の対象になるので、免責許可が下りると支払いの必要はなくなります。

(2) 破産債権の種類

次に、破産債権は、一般の破産債権と優先的破産債権、劣後的破産債権に分類されます。

一般の破産債権は、通常一般の債権です。たとえば貸金業者からの借入や未払の家賃、買掛金などはすべて一般の破産債権に分類されます。

優先的破産債権とは、一般の破産債権に優先して配当を受けることができる債権です。たとえば、共益費用の請求権や雇用者に対する請求権(未払給料など)が優先的破産債権となります。

劣後的破産債権とは、一般の破産債権に劣後して配当を受ける債権です。

たとえば、破産手続開始後に発生した利息や遅延損害金、延滞税や破産手続開始後の原因による税金、加算税、罰金などが劣後的破産債権となります。

(3) 支払いの優先順位

財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権のうち、もっとも優遇されるのは財団債権です。

財団債権は自己破産による影響を受けないので、いつでも全額の支払いを受けることができます。破産手続開始決定前でも破産手続開始決定後でも破産手続終了後でも、支払いを請求することが認められますし、債務者は請求に応じる義務があります。

次に優先されるのは、優先的破産債権です。これは、破産財団から配当が行われるとき、もっとも優先して弁済を受けることができるものです。

その次が、一般の破産債権です。優先的破産債権への配当を終えて、余りがあれば一般の破産債権者へ平等に配当されます。

もっとも弁済を受けにくいのは劣後的破産債権です。劣後的破産債権は、一般の破産債権への弁済をして、余りがないかぎりは弁済を受けられないので、支払いを受けられる可能性がかなり低くなってしまいます。

2.滞納している公共料金の取扱いについて

それでは、自己破産において、公共料金はどのような取扱いになるのでしょうか?

公共料金は、下水道料金とそれ以外の公共料金とで、取扱いが異なります。下水道料金については、次の項目で詳しく説明しますが、税金に準じて取り扱われるので免責の対象となりません。
それ以外の電気ガス、上水道の料金については、発生した時期によって債権の分類が異なります。

まず、自己破産した日の直近1ヶ月分については、「財団債権」となります。そこで、免責の対象とはならず、随時支払う必要があります。

それ以外のものについては、優先的破産債権となる部分と一般の破産債権となる部分があります。申立前半年以内のものは優先的破産債権となり、それ以前のものは一般の破産債権となります。

ただ、優先的破産債権であっても一般の破産債権であっても免責の対象になりますから、自己破産をすると支払い義務がなくなります。

つまり、自己破産をすると、下水道料金を除いては、申立前1ヶ月分の光熱費の支払いさえすれば、その他の部分は免責してもらうことができるのです。

3.下水道料金は免責されない

自己破産をするとき、下水道料金の滞納がある場合には注意が必要です。

自己破産には、先に紹介した債権の種類の他、「非免責債権」という種類の債権があります。これは、自己破産で免責決定を受けてもなお、支払い義務が残る債権のことです。

たとえば、税金や罰金、悪意にもとづく不法行為の損害賠償債権、養育費などの扶養にもとづく請求権などが非免責債権となっています。

そして、下水道料金については、税金に準じた取扱いがなされています。下水道料金は、地方税法231条の3により、国税と同様に強制徴収(差押えによる強制的な回収など)が認められているからです。

そこで、下水道料金については、自己破産で免責決定を受けても免責されることがありません
支払いを怠ると、利用を止められる可能性があります。

4.破産前に水道光熱費を支払ってしまった場合

(1) 自己破産と偏頗弁済(へんぱべんさい)

次に、自己破産前に水道光熱費を支払うことに問題はないのか、検討しましょう。

自己破産では「偏頗弁済(へんぱえんさい)」が禁じられています。偏頗弁済とは、特定の債権者のみを優遇して支払いをすることです。

自己破産では、すべての債権者を平等に取り扱わなければならないという決まり(債権者平等の原則)があるので、特定の債権者だけを特別扱いすることが許されません。

偏頗弁済は免責不許可事由となっているので、偏頗弁済をすると自己破産をしても免責を受けられない可能性があります。

(2) 水道光熱費と偏頗弁済

それでは、自己破産前に光熱費の支払いをすることが、偏頗弁済に該当するのでしょうか?これについては、どの範囲の支払いをしたかによります。

まず、財団債権については、自己破産手続によらず随時支払いを受けることができます。

そこで、光熱費の中でも財団債権となる部分については、支払をしても偏頗弁済になりません。そこで、破産申立日前1ヶ月分については、支払っても問題ありません。また、下水道料金も非免責債権ですから、支払っても問題になりません。

これに対し、それ以外の水道光熱費については、自己破産前に支払いをすると、偏頗弁済になる可能性があります。優先的破産債権であっても、それは「優先的に配当を受けることができる」という意味であり、破産手続によらずに支払いを受けてもよいという意味ではないからです。

ただ、公共料金について、月々の支払いをすることはもちろん偏頗弁済ではありませんので、滞納がないかぎり、支払いを続けていても問題はありません。
これに対し、数ヶ月分滞納していたものをまとめて支払った場合などには、偏頗弁済と評価されてしまうおそれがあるので、注意が必要です。

(3) 裁量免責について

水道光熱費の支払が偏頗弁済となっても、免責を受けられる可能性はあります。自己破産には裁量免責という制度があるからです。裁量免責とは、たとえ免責不許可事由があっても、裁判官の裁量によって免責を認めることができる、という制度です。

少々の問題があっても、裁量免責が認められることが多いので、自己破産前にまとめて水道光熱費を支払ったとしても、自己破産できないということにはなりません。

やむを得ないものとして裁量免責してもらえる可能性が高いので、あきらめずにご相談ください。

5.自己破産で免責されたあと

自己破産を自己破産で免責されたら、電気水道ガスは止められないかしたあとも電気・水道・ガスは利用できる?免責は?

(1) 破産手続開始決定後に支払いを止められることはない

自己破産をすると、財団債権や非免責債権以外の水道光熱費は免責の対象になりますから、支払をしなくてよくなります。

しかし、通常、水道高熱費を支払わないと、電気ガス水道などのライフラインの供給を止められてしまいます。そこで、「自己破産によって水道光熱費が免責されると、電気ガス水道を止められることがないのか」と心配される方も多いです。

この点、破産法では、自己破産免責の効果によって破産者が水道光熱費などの支払をしなくなったとしても、そのことを理由として供給を止めることはできないとされています(破産法55条)。

この条文では、「継続的な双務契約」の場合、自己破産申立前の滞納を理由として、破産手続開始決定後にサービスの供給を止めることができない、と規定されています。

・双務契約とは

双務契約」というのは、お互いに義務を負う契約という意味ですが、具体的には、利用者が料金を支払って、業者が継続的なサービスを提供する契約です。たとえば、電気ガス水道を始めとして、携帯電話代やインターネット通信料などもこれに含まれます。

そして、継続的な双務契約の場合、自己破産前に滞納していたとしても、破産手続開始決定後は、サービスを止めることができないわけですから、破産手続開始決定さえあれば、その後は何があっても支払いを止められることがありません。(ただし、破産手続開始決定後に新たに滞納すると、差押えの可能性があります)

きちんと免責を受けたら法的に支払い義務がなくなるのですから、それによってサービス供給を止めることができないことは、明らかです。

また、自己破産免責を受けたことにより、電気ガス水道などの契約を解除されることもありません。

こういった取扱いは、携帯電話やネット通信の契約でも同じです。

このように、自己破産しても、基本的に従前のまま公共サービスを利用することができます。これは、自己破産によってライフラインを利用できなくなると、自己破産しても生活ができず、破産者の経済的再生という目的を達成することができなくなるからです。

(2) 破産手続開始前に供給を止められる可能性

ただ、上記の条文によって「供給を止めてはいけない」ことになっているのは、「破産手続開始決定後」のみです。これを裏返して解釈すると、破産手続開始決定前は、料金滞納によってライフラインを止められてしまうおそれがあるということです。
ライフラインを止められることを防止するには、結局料金を支払うしかない、ということになります。

その場合、上記で説明したような偏頗弁済の問題がありますが、金額が少なければそれほど問題になりませんし、偏頗弁済と評価されても裁量免責を受けられることが多いので、心配しすぎる必要はありません。

6.自己破産後に新たに水道光熱費の契約ができるか

最後に、自己破産をしたら、その後、新たに水道光熱費の契約ができるのかについても確認しておきましょう。

そもそも、自己破産をしてもライフラインの契約を解除されることはありませんが、滞納が続くと解除されてしまうこともありますし、引っ越しや、電力自由化による新電力の選択などで新たな契約をすることもあるでしょう。

一般的に、自己破産をすると、ローンやクレジットカードの審査に通らなくなるので、これらの契約ができなくなります(いわゆるブラックリスト状態)。そこで、その他の契約についても影響がおよび、新たな契約ができなくなることを心配される方がいます。

しかし、そのようなことはありません。

自己破産後にできなくなる契約は、ローンやキャッシング、クレジットカードの発行、ショッピングの分割払いなどです。
水道光熱費の契約や賃貸借契約、生命保険の契約などに対しては、何の影響もおよびません。そこで、自己破産手続中でも自己破産手続後でも、自由に水道光熱費の契約をすることができます。

このことは、携帯電話などの別の双務契約でも同じことです。携帯電話の場合、料金滞納があると、携帯電話会社間で滞納情報が共有されてどこの携帯会社でも契約ができなくなりますが(いわゆる携帯ブラック状態)、自己破産によって免責を受けると法的に支払い義務がなくなりますから、滞納したままでも(料金を支払わなくても)契約ができるようになります。

以上のように、自己破産をしても、水道や電気などを止められることもありませんし、新たに契約をすることも自由にできますから、ライフラインの問題で心配することはありません

7.まとめ

水道光熱費を滞納している場合に自己破産をすると、直近1ヶ月分と下水道料金をのぞき、全て免責されるため、支払いをする必要がなくなります。また、免責を受けたことによってライフラインを止められる心配もありません。

もし、滞納している場合にまとめて支払いをしても、裁量免責によって免責を受けられる可能性が非常に高いです。

このように、自己破産をしても、その後の生活に心配は不要です。泉総合法律事務所には、借金問題の解決実績が豊富にあります。もし、借金に悩んでいらっしゃるのであれば、お一人で抱え込まず、お早めにご相談ください。きっと解決策が見つかるはずです。

どうぞお気軽にご連絡ください。

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