自己破産 [公開日]2018年8月31日[更新日]2021年1月26日

自己破産をすると取り立てはいつ止まる?

自己破産をお考えの方にとって切実な問題のひとつに、「債権者からの取り立ては、いつストップするのか?」という点があります。

債権者からの取り立て行為には、①電話・手紙・訪問などの事実上の取り立て行為と、②強制執行という裁判所を介した取り立て行為がありますから、この両面について基本的な知識を備えておくことが大切です。

今回は、「自己破産をすると取り立てはいつ止まるのか?」解説します。

1.電話・手紙・訪問などの取り立てはいつ止まる?

まずは、債務者が最も心配しているであろう、貸金業者による電話・手紙・訪問などによる事実上の取り立て行為について説明します。

自己破産申し立てにより、貸金業者によるこれらの取り立てはいつ止まるのか?
その答えは、次のとおりです。

  • 弁護士に申し立てを依頼した場合:弁護士の受任通知が郵送により貸金業者に届いた時点(受任から1日~3日後)。
  • 債務者が自分で申し立てをした場合:裁判所が破産申立の内容を審査し、破産手続の開始を決定した旨の裁判所からの通知書を貸金業者が受け取った時点(申し立てから1週間~数週間)

なお、最短を希望する場合は、弁護士が受任した当日(弁護士がFAXした受任通知が貸金業者に届いた時点)や、自分で申し立てをした当日(本人が裁判所の「受付票」を貸金業者にFAXし、それが届いた時点。裁判所窓口で申し立てをすれば受付票は即日発行されるので申立て当日にFAX可能)となることもあります。

(1) 弁護士に依頼する場合

貸金業者の取り立て行為は、法律で次の通り規制されています(貸金業法21条1項9号、第2条5項)。

(ア)債務者や保証人が、自己破産を含む債務整理を弁護士に依頼し、依頼を受けたことを弁護士から書面で通知された場合
(イ)債務者や保証人が(弁護士に依頼せず、自分で)、裁判所に自己破産の手続をとり、手続を受け付けたことを裁判所から書面で通知された場合

以上の(ア)(イ)の場合に、貸金業者が正当な理由なく電話・電報・FAX・訪問により返済を要求し、債務者や保証人が直接の要求を拒否したにもかかわらず、更にこれらの方法で弁済を要求することは禁止されます。

違反すると2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられるか、またはこれが併科されます。

弁護士は、自己破産の事件を受任すると、各債権者に「受任通知書」を送付します。

受任通知には、依頼者の債務をめぐる問題については、今後、その弁護士が代理人として対応すること、債務者本人に対する取り立てをしないよう求めることが明記されます。

貸金業者が通知書を受け取った後に直接の取立行為をすると、上記の法規制違反として摘発されたり、行政指導や登録取消を受けたりするリスクがあるので、自己破産手続中に取り立てをすることはなくなります。

【弁護士が受任通知をFAXすることで即日に取り立てが止まる】
受任通知が郵便で届くには、1日から2日程度かかりますから、その間に直接の取り立てを受けることが心配だという方もいます。
このような心配がある場合や、特に取り立てのしつこい業者がいる場合は、その旨を弁護士に伝えてください。
受任したその日のうちに、弁護士から直接に業者に電話をして取り立てをやめるよう要請すると同時に、受任通知書をFAX送信してくれるでしょう。これによって当日のうちに取り立ては止まります。

(2) 自分で申立をする場合

弁護士に依頼せず、債務者や保証人自身で裁判所に自己破産を申し立てた場合でも、前述(イ)のとおり、裁判所からの通知書面が貸金業者に届いた以後は取り立て行為は同様に禁止されます。

ただ、裁判所から貸金業者に通知が発送されるのは、裁判所が自己破産の申し立てを受け付けた時点ではありません。

裁判所は自己破産の申し立てを受け付けると、その申立内容を審査し、破産手続を開始するか否かを決定します。
破産手続を開始する決定がなされて、はじめて裁判所から債権者への破産手続開始の通知書が送られます。

弁護士を代理人としない自己破産申し立ての場合、申し立てから破産手続開始決定まで、短くとも数週間程度かかることが通常です。
裁判所が通知書を発送してくれるのを待っていては、取り立てが止まるまで日数がかかってしまいます。

そこで、この場合、債務者自身で貸金業者に対して、裁判所の「受付票」をFAXする必要があります。

裁判所の受付票とは、自己破産に限らず、裁判所が手続の申し立てを受け付けた場合に交付する票で、受付年月日、担当部署、事件番号、連絡先などが記載されています。

貸金業者は受付票さえ見れば、自己破産の申し立てが行われたことが分かりますので、裁判所からの通知が来る前の段階であっても取り立てをやめることが通常です。

なお、裁判所への自己破産申し立ては郵送でも可能ですが、郵送の場合は裁判所から受付票が債務者のもとに郵送で届くまで1週間〜10日程度かかってしまいます。
これに対し、裁判所の窓口に直接赴いて自己破産の申し立てをすれば、受付票はその場で発行してもらえます。

(3) 早く取り立てを止めたいときは弁護士に依頼

以上のように、債務者本人による自己破産申し立てであっても貸金業者の取り立てを止めることはできますが、それは最短でも申し立て当日になります。

したがって、取り立てに怯えながら自己破産申し立ての準備をしなくてはなりません。

弁護士に依頼すれば、最短の場合、正式に受任した当日に取り立てを止めることが可能です。
取り立ての不安を無くしてから、弁護士の指示に従って、落ち着いて自己破産の準備をすることが可能となるのです。

【貸金業者以外の債権者の取り立ても受任通知で止まる】
貸金業者以外の債権者については、取り立てを規制する法律はありません。例えば、お金を借りた友人や知人、商品の売掛代金債権をもつ卸業者、建築工事をお願いした工事業者など、貸金業者以外の債権者は少なくありません。
ただ、自己破産を弁護士に依頼すれば、弁護士は貸金業者以外の債権者に対しても受任通知を送付しますから、一般の債権者も直接の取り立て行為は控えてくれることがほとんどです。

2.給与の差し押えなど強制執行について

さて、債権者からの取り立ては、電話や手紙ばかりではなく、給与の差し押えなど裁判所を利用した強制執行手続で行われることもあります。

このような、いわば法的な取立行為は、自己破産によって止めることができるのでしょうか?

破産には、管財事件と同時廃止事件がありますので、分けてご説明します。

[参考記事]

自己破産で管財事件になったら|流れ・期間・注意点を解説

[参考記事]

自己破産で同時廃止となるケース|同時廃止の流れ・期間・費用は?

(1) 管財事件の場合

裁判所が破産手続を開始する決定をすると、その時点での債務者の財産は、今後、債権者に配当されるべき「破産財団」(破産法2条14項)になります。

債権者は、配当など破産手続を通じて返済を受けることになるので、破産手続とは別個に権利を行使することは許されません。
このため、債権者が「破産財団」に属する財産に対して、新たに強制執行を行うことは禁止されます(破産法42条1項)。

同様に、破産開始決定前に既になされていた給与の差し押さえは効力を失います(破産法42条2項本文)。

既に差し押さえがなされていたときは、破産手続開始決定書等の必要書類を差し押さえ担当した裁判所に提出すれば、差し押さえは取り消されます(民事執行法39条1項6号、40条1項)。

なお、債務者が破産開始決定後に得た給与などの収入は「新得財産」と呼ばれ、債務者の生活のために使うことが許されます(債権者は新たな給与を差し押さえることはできません)。

(2) 同時廃止事件の場合

同時廃止事件では、同時廃止決定がなされると、免責許可の裁判が確定するまでの間、強制執行は「中止」となります(破産法249条1項)。

「中止」は取消ではありませんから、いわば棚上げ状態で強制執行手続がストップすることになります。

支払を止められている勤務先会社としては、差し押さえられた給与の支払を止めたままプールしておくことになります。

そして最終的に免責許可が確定したときには、債務の返済責任がなくなる結果、強制執行は「失効」します(破産法249条2項)。

その後、免責許可決定書を差し押さえを行った裁判所に提出することで差し押さえが取り消されます(民事執行法39条1項6号、40条1項)。

こうして勤務先から給与を受け取ることができるようになるのです。

なお、同時廃止事件でも、新たな給与に対する差し押さえを行うことはできません。

3.免責決定後に取り立てを受けたら?

最後に、免責決定を得た後の債権者の取り立てについて説明します。

「自己破産したのに請求がきた」という場合はどうすれば良いのでしょうか?

(1) 免責決定後の取り立てへの対応策

免責が確定したということは、法的な返済義務は消滅していますから、支払う必要はありません。債権者に免責決定書をFAXするか、コピーを郵送すれば諦めることが通常です。

ただし、免責が確定したにもかかわらず、これを無視して強制執行手続をとる債権者もいないわけではありません。
強制執行を担当する裁判所は免責確定の事実を知りませんから、免責確定後に差し押さえがなされる場合もあるのです。

この場合は、免責決定書を強制執行を担当する裁判所に提出しても、強制執行を止めることはできず、別途、「請求異議の訴え」(民事執行法35条)という裁判を起こしたうえで執行停止手続(同法36条)をとってもらう必要があるとする裁判例があります(※)。

この裁判例は、せっかく免責を得た債務者に過度の負担を課すとして批判も強いのですが、これに従う限りは、弁護士に依頼して裁判手続をとってもらうしか対応策がありません。

※大阪高裁平成6年7月18日決定(金融法務事情1399号31頁)

(2) 執拗な取り立て行為には刑事告訴を検討

免責決定後にもかかわらず、例えば「お前が破産したことを近所に話してやる」などと言って、執拗な取り立て行為を行う債権者もいます。

このような行為は、脅迫によって人に義務のないことを行わせる強要罪となり、3年以下の懲役刑に処せられます(刑法223条)。

債権者には「取り立てを止めなければ刑事告訴をする」と伝えましょう。

(3) 免責決定後の取り立てで払ってしまったら

免責確定後に債権者の取り立てに応じて支払ってしまった場合に、そのお金を取り戻すことはできるのでしょうか?

残念ながら、これは取り戻すことはできません。

免責の効果は、債務そのものを消滅させるのではなく、債務は存在するが支払う「責任」がなくなるだけと理解されています。

債務それ自体は消滅していない以上は、債権者が受け取った弁済金は不当利得ではありませんから、その取り戻しを請求することはできないことになります。

よって、免責確定後に取り立てをされても決して支払わず、一度弁護士に相談することをお勧めします。

【破産手続中・申請中の任意の支払いも避けるべき】
裁判所に自己破産を申し立てた後に、債権者から取り立てられた場合、債務者が返済しても良いのでしょうか?
結論を言うと、これも絶対にやめてください。
自己破産は、破産者の経済的な更生を図るだけでなく、債権者の平等を実現することも制度の目的としています。
支払い不能状態となった以後に、特定の債権者にだけ弁済をすると債権者の平等を害する偏頗行為(へんぱこうい)とされます。この場合、管財事件となってしまい、支払わなくてはならない予納金が高額となってしまう危険があります。それだけでなく、不当な偏頗行為として免責不許可事由にあたると判断されてしまう危険もあります(破産法252条1項3号)。そうなると免責は認められず、自己破産の手続は失敗したということになってしまいます。

4.まとめ

自己破産で債権者の取り立てはいつ止まるか?
この一見単純な問題でも、以上のような様々な局面があり、それに応じた対応を講じなくてはなりません。

弁護士に自己破産の申し立てを依頼しておけば、最も早く取り立てを止めることができるだけでなく、不当な取り立ての継続や強制執行に即応することが可能です。

自己破産をお考えの方は是非、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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