自己破産した場合、いつから借金の返済をしなくていいの?

自己破産

自己破産した場合、いつから借金の返済をしなくていいの?
自己破産をすると、借金返済が免除されます。そこで最も気になるのは、「いつから借金の返済をしなくていいのか」ということではないでしょうか。

今回は、自己破産した場合にいつから借金返済をしなくていいかについて解説します。
返済停止に伴う注意点もまとめているので、注意点もあわせてご一読ください。

1.督促が止まれば借金返済をしなくていいの?

(1) 受任通知が債権者に届いた時点で取立は止まる

自己破産をするときに、弁護士など専門家に依頼をすると、弁護士から債権者に対して受任通知が送付されます。

受任通知には、債務者の氏名、住所、自己破産の手続に入る旨、また、以降は直接の取り立てをしないように依頼する内容が記載されています。

この通知が届いた時点で、債権者や債権回収業者は取り立てを停止しなければなりません。

受任通知送付による取り立て停止により、実質的には返済を止めることが可能となり、債務者が返済しなくても督促はこなくなります。

(2) 口座引き落としの場合は要注意

口座引き落としの場合は、債権者が引き落としの停止手続をしなければなりません。

受任通知が届くと督促はできないのですが、相手がすぐに引き落としの停止をするとは限りません。実際に、受任通知送付から3週間後にようやく引き落とし停止の手続きを行うようなケースもあります。

債務者側で、予め預金を引き上げるといった対策をとる必要があります。

(3) 口座の凍結にも注意

また、借入のある銀行に口座を所有している場合、受任通知が送られると口座が凍結され、口座の預金残高は債務と相殺されます。

この場合も、予め預金を引き上げることで、預金の差し押さえを免れることができます。

給与振り込みに使っている場合は、振り込み口座を他行に変えることも必要です。

電気、水道などの公共料金の引き落としで利用している場合も、凍結後は引き落としができなくなり、ライフラインが止まる危険が生じます。

この場合も、予め引き落とし口座を変更しておきましょう。

また、預金残高が20万円を超えていると、自己破産手続で債権者に配当されるため、その点でも事前に残高を引き上げておくことをおすすめします。

2.「偏頗弁済」に注意

自己破産の受任通知が債権者に送られると、取り立ては停止し、自己破産が免責許可決定になれば借金返済の義務はなくなります。

しかし、自己破産は申立をすれば誰でも認められる訳ではなく、免責不可事由があると自己破産が認められないので注意が必要です。

免責不可事由は全部で11項目ありますが、特に重要なのは返済に関わる項目である「偏頗弁済(へんぱべんさい)」です。

偏頗弁済とは、一部の債権者だけ優遇して先に返済してしまうことです。自己破産手続き中に偏頗弁済をすると、免責が受けられない可能性があります。

偏頗弁済で注意したいのは、親戚や友人などに借金があるケースです。

お世話になった人には迷惑をかけたくないという思いから、特定の人に先に返したいと考えることは、多くの人にとって共感できるものです。
しかし、自己破産における重要な考え方として「債権者平等の原則」があるので、そうした行為は禁じられています。

免責不許可事由がなければ晴れて免責許可決定となり、その後は返済の義務はなくなります。

しかし、中には免責されない債務もあるので注意が必要です。

3.借金が免責されるタイミングと免責されない債務

(1) 借金が免責されるタイミングは?

自己破産で借金が免責されるのは、裁判所が免責許可決定をしたときです。
取り立ては弁護士の受任通知送付のタイミングで停止しますが、その段階ではまだ借金は免責されていません。

自己破産の申立から免責許可決定までの期間は、同時廃止事件の場合は最短で67日、少額管財事件の場合は最短で72日です(通知が届くのはそれぞれ+2~3日程度かかります)。

免責許可決定の約2週間後に官報への掲載があり、そこから2週間以内に債権者からの不服申し立てがなければ免責許可決定が確定します。

よって、実際に免責の効力が生じるのは免責許可決定から約1ヶ月後となります。

(2) 免責されない債務

自己破産をして免責許可決定を受けても、全ての債務が免責される訳ではありません。
自己破産には非免責債権があり、該当する場合は免責許可決定後も支払い義務を負います。

自己破産における非免責債権は以下の通りです。

① 税金、保険料(租税債権)

税金、保険料などの租税債権は非免責債権なので、滞納があれば自己破産後も支払いをしなければなりません。
非免責債権に当たるのは国税(所得税、相続税など)、地方税(住民税、固定資産税など)、健康保険、国民年金も該当します。

こうした公租公課が非免責債権とされているのは、納税者の公平性によるもので、自己破産をすることで免責されるのは不公平という理由です。

公租公課の支払をしない場合は最終的には滞納処分となり、財産を差し押さえられます。

しかし、自己破産をした段階で差押え対象となる財産はなくなっているはずなので、その場合は滞納処分の停止措置がとられます。

その後3年間困窮した状況が変わらなければ納税義務は消滅します。しかし、所得が回復したら支払いの義務が生じるので、自己破産後に経済的な再建を果たした場合は逃げ切ることは難しいでしょう。

税金、保険料の支払いがどうしてもできない場合は、市役所や税務署に相談をすると分納や猶予などの措置をとってもらえることもあるので、早めに相談することをおすすめします。

② 下水道料金、保育料(強制徴収権があるもの)

公共料金の中でも、電気、ガス、上水道の滞納分は自己破産で免責されますが、下水道料金については市町村が強制的に徴収できる権利を持つので、非免責債権に該当します。

また、保育園の保育料については、児童福祉法によって市町村による強制徴収が認められているので非免責債権に該当します。
一方、幼稚園や認可外の保育園については、行政が強制徴収できる権利を有していないので、非免責債権には該当しません。

③ 意図的に相手に損害を与えたときの損害賠償金

損害賠償金については、非免責債権になるケースとそうでないケースがあります。

非免責債権になる場合の一つは、意図的に(悪意で)相手に損害を与えたときの損害賠償金です。

例えば、詐欺などで相手をだましてお金を得た場合は、明らかに相手を害する意図があるので、この場合の損害賠償金は非免責債権となります。
自己破産をすることを前提にお金を借りるケースなども該当します。

また、DV被害などで離婚に至った場合の慰謝料も、相手に危害を加える意図があることから非免責債権になるでしょう。

一方、浮気が原因で離婚に至った場合の慰謝料は、配偶者に直接の危害を加えるものではないので、免責の対象となります。

④ 故意または著しい不注意で人の命を奪う、または身体を害したときの損害賠償金

非免責債権になる場合の二つ目は、故意または著しい不注意で人の命を奪う、または身体を害したときの損害賠償金です。

この場合の典型例は、交通事故です。

交通事故でも一般的な過失の場合は免責されますが、故意または著しい不注意により事故が発生した場合で、かつ人身事故に発展した場合の損害賠償金が該当します。過失があっても物損だけの場合は著しい不注意があっても免責される可能性は高いです。

⑤ 従業員の給料の支払い

従業員に対する未払い給与も非免責債権となります。

給与は自己破産の債権の中でも一般優先債権とされているので、配当に関わらず優先的に支払いを求めることができますが、相手に財産がなかった場合は支払いを受けることができません。

しかし、給与は非免責債権なので、自己破産後も請求することは可能です。

⑥ 養育費、婚姻費用の支払い

未払い分の養育費や婚姻費用も非免責債権に該当するので、自己破産前の滞納分、申立後の支払い分ともに請求することが可能です。

破産手続き中の費用については、手続外の債権となるので、破産手続き中も請求することが可能です。自己破産前の滞納分については、非免責債権でも破産債権に該当するので、請求できるのは免責決定後になります。

⑦ 破産者が知りながら債権者名簿に載せなかった債務

自己破産の申し立て時に、破産者が知りながら債権者名簿に載せなかった債務は非免責債権となります。

例えば、車のローンが残っているが、ここで債権者名簿に記載をすると引き上げられてしまうかも…と思ってわざと債権者名簿に載せなかったとします。
その場合は非免責債権となり、場合によってはそのことが免責不許可事由に当たり、全債務が免責されない可能性もあります。

また、友達からお金を借りている場合なども、踏み倒すのは申し訳ないからと弁護士に言わないケースもあります。
しかし、このような債権者隠しは非常にリスクが高いので、絶対にしないようにして下さい。

⑧ 罰金

刑事罰による罰金、科料、追徴金等も非免責債権になるので、自己破産をしても支払義務は残ります。

(3) 非免責債権の請求はいつ?

自己破産で受任通知が送られると、それ以降は返済をせずにすみますが、非免責債権については自己破産の影響を受けないので、それぞれの債権で定められている期日に支払いをしなければなりません。

もし、どうしても支払いができない場合は、公租公課に関連したものは市役所、税務署に相談に行くことをおすすめします。

(4) 非免責債権と免責不許可事由の違い

情報量が多く混乱しやすいので、非免責債権と免責不許可事由の違いを少しだけ整理しましょう。

非免責債権(給与債権など)は該当する債権は免責しないというもので、その該当する一部の債権だけが対象となります。
一方、免責不許可事由(偏頗弁済など)は、該当するものがある場合、全ての債権が免責されなくなります。

4.借金返済が免れないケース

自己破産では免責許可決定が下りないと、借金の免除は得られません。
免責不許可事由に抵触しても、大抵は裁判所の裁量免責を受けられるので、免責不許可事由があっても最終的には免責を受けられるケースがほとんどです。

しかし、中には免責不許可となる場合もあるので、その場合、手続きは振り出しに戻り、借金の返済義務が発生します。

対処法は以下の2つです。

(1) 個人再生を検討

免責不許可事由に抵触して自己破産に失敗した場合は、個人再生に切り替えるのが現実的です。
個人再生には免責不許可事由はないので、安定的な収入があれば認可される可能性があります。

(2) 何もせずに時効を待つ

自己破産に失敗して、個人再生を希望しても要件を満たすことができない場合は不認可となります。個人再生の見込みもない場合は何もせずに時効を待つのも一案です。

業者からの借金の時効は5年、個人間での借入の時効は10年です。

通常であれば時効を待つのは現実的ではありませんが、自己破産の場合は申立が行われた段階で貸し倒れ処理をしている債権者が多く、免責不許可でもそのまま取り立てがこないこともあります。

というのも、実際に免責許可の結果については債権者に連絡がいかないので、相手が調べない限り自己破産の成否は分からないのです。

しかし、絶対に督促がこないという保証はなく、請求されたら支払う必要があります。
自己破産が失敗した時点で、今後どうするかを弁護士とよく相談をすることをおすすめします。

5.最後に

現実には、弁護士に依頼後、免責まで返済をすることなく自己破産の手続は終了します。

督促が止まるだけでも相当楽になったという方も多いので、なるべく早く弁護士に相談すべきでしょう。

泉総合法律事務所にご相談いただければ、債務整理に強い弁護士が責任もって最後までサポートさせていただきます。
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