自己破産 [公開日]2020年2月12日[更新日]2021年5月12日

破産後の新設会社は融資を受けることが出来るのか?

一度は法人破産や自己破産を経験したものの、その失敗を活かして再度起業したいと考える方もいることでしょう。

しかし、起業にあたって問題となるのが資金の調達です。
法人破産や自己破産の後は、自己の財産がそれほど多くないというケースが大半でしょう。

そういった場合、起業にあたり銀行などから融資を受けるという選択肢がありますが、自己破産した直後は果たして融資を受けられるのでしょうか?
それとも、自己破産経験者は融資を受けられずに、100%自己資金で事業を始めなければならないのでしょうか?

ここでは、「法人破産や自己破産後でも融資を受けて会社を新規に作ることができるのか?」について解説します。

1.破産後の起業は可能

結論から言うと、破産経験者が会社を設立することも、取締役等に就任することも、法律上の問題はありません。
例え破産手続中であっても、取締役等に就任することは可能です(会社役員の人が破産手続開始決定を受けた場合、その時点で一旦は役員を退任する必要が生じますが、その後に、株主総会で同じ人を改めて役員に選任することは法律上認められています)。

ただし、一部の業種では、代表者が破産手続中などの一定期間は、営業に必要な許認可を得られないことになっています。
例えば建設業、警備業、貸金業、旅行業などです。

そういった業種に関する会社を設立する場合には、各業法などを守らなければなりません。

[参考記事]

自己破産後に会社を設立・起業できる?

2.破産直後は原則融資を受けられない

法的に起業は可能でも、問題は起業資金や運転資金の調達です。これがなければ、再び破産・倒産という憂き目に遭いかねません。

本来なら銀行などから融資を受けて資金を確保したいところですが、残念ながら、破産した人は5~10年程度の間、基本的に借り入れをしたり融資を受けたりすることができません。

自己破産をすると、そのときの債権者が「信用情報機関」という組織に「この人が破産しました」という情報(事故情報)を伝えます。いわゆる「ブラックリスト」です。
信用情報機関にはそういった情報が蓄積されており、銀行や貸金業者などの間で情報共有が行なわれます。

融資を申し込んだ場合、申し込まれた側は信用情報機関に照会を行い、そこで自己破産の過去が判明した時点で「自己破産した人=返済能力に問題あり」と考えて、融資しないという判断に至ります(いわゆる「審査落ち」です)。

つまり、自己破産後は銀行や消費者金融からの借入・クレジットカードの作成などが原則的に出来なくなってしまうのです。

起業をすれば会社が銀行などから融資を受けるわけですが、代表者に対して個人保証を求めます。その時に代表者の個人保証として「審査落ち」、保証人がなければ会社にも融資ができない、ということになるわけです。

なお、自己破産以外の債務整理(個人再生や任意整理)の情報も、信用情報機関に登録されます。事故情報は5~10年で削除されます。

[参考記事]

自己破産後の借金(借り入れ)・キャッシングは可能?

3.銀行以外からの公的融資

融資をしてくれるのは銀行だけではありません。
新たな起業を目指す方へのおすすめは「公的融資」です。

(1) 再挑戦支援融資

これは、日本政策金融公庫が行なっている融資です。
「過去に廃業歴がある人」を対象としており、まさに再挑戦をバックアップしてくれる融資といえます。これから開業する人や、開業して7年以内の人が利用出来ます。

融資して貰ったお金は新事業の設備資金や運転資金として使えるため、使い勝手も抜群です。

ただし、「過去の廃業の事情がやむを得ないものであること」「廃業時の負債が新事業に影響を与えない(整理済みか整理の見込みがある)」などの条件があります。
このため、借金を放置して夜逃げ同然で廃業した場合や、廃業の理由が違法行為などによるものだった場合は、この制度を利用出来ない可能性が高いです。

貸してもらえる金額は、自己資金の2~3倍程度までと考えてください(上限額あり)。

自己破産者が起業することを考えた場合、かなり現実的な制度と言えるので、窓口などで相談してみることをお勧めします。

なお、担保や保証人については、基本的にどちらか一方は必要になるようです。
自己破産直後ならば保証人を入れるのが現実的な選択肢になるかと思われますが、誰かに保証人になることを依頼する際は、予め丁寧な事情説明をしておかないと後々トラブルになる危険性もあるため注意が必要です。

(2) 信用保証協会付融資

個人事業主や中小企業がお金を借りやすくなるように、公的な保証機関が保証を行い、その保証に基づいて地方公共団体が融資を行なう制度です。

地域によって制度が大きく異なるため、お住まいの地域の信用保証協会に問い合わせるか、地域で起業支援などを行っている弁護士に相談するなどしてください。

【全国労働金庫協会(ろうきん)は有効か?】
ろうきんは、営利を目的としない非営利の金融機関です。組合員などから出資を募って労働者を支援することが目的です。
「ろうきんなら助けてくれるかも?」と期待する人はいるかもしれませんし、過去にはろうきんが自己破産者向けの融資を検討する方針を固めたという情報もありました。
しかし、その後の情報は特に見当たらず、「ごく一部のろうきんのみが組合員向けに自己破産者向け融資を行っているに留まる」という話がある程度です。
ろうきんもまた、信用情報機関の情報を見ることが出来る組織なので、過度な期待はせずに「ダメ元」という気持ちでいた方がいいでしょう。

4.融資がない場合の対策

最後に、残念ながらどこからも融資をして貰えなかった場合の対応策についてです。

そういった場合は、地道に自己資金を貯めるのが王道の方法ですが、それ以外に方法はないのでしょうか?

(1) 代表者に他の人を据える

まず、債務整理の過去がなく、ある程度の自己資金もある人を代表者にして、自分は平の役員などに留まるという方法があります。

例えば、親族などに表向きの代表を務めてもらって、自分は実質的な代表者として事業を進め、信用情報機関から情報が抹消される5~10年後に正式に代表になるという計画も有り得るでしょう。

もっとも、この方法を取るには、当然ですが代表になってくれる人との信頼関係が必要です。

表向きの代表で会っても代表者として名を連ねている以上、その責任は避けれれません。特に会社で融資を受ける際には代表者の個人保証を求められることが多く、その結果、代表になってくれる人に保証債務という借金を背負わせることになることも考えれば、事前の丁寧な説明は必要不可欠でしょう。

(2) 個人から融資を受ける

親族や友人から融資を受けて事業を始めるという方法もあります。

しかし、事業に失敗した場合には人間関係が崩れ去る可能性が高いです。借りた後の資金繰りには十分注意をしましょう。

5.自己破産・法人破産は弁護士に相談を!

自己破産後であっても、会社を作ること自体に法的な問題はありません。
また、自己破産後の融資に関しては、再挑戦支援融資や自治体の制度融資を活用すれば乗り切れることもあります。

ただし、そもそも破産時に会社の債務をしっかり整理していないと、こういった融資は受けられません。会社をたたむときにも弁護士などの専門家のサポートを受けながら法人破産(倒産)すると安心です。

法人の破産・倒産でお悩みの方は、どうぞ泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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