自己破産すると賃貸アパートは借りられない?賃貸保証会社の注意点
自己破産をお考えの方は、相談時によく「自己破産したら賃貸は追い出されますか?更新はできますか?」「自己破産後は、アパートやマンションなどの賃貸契約の審査は通るのでしょうか?」「住む場所がなくなったら困ります」等と弁護士に尋ねます。
確かに、自己破産すると信用情報機関に載り、以後5~10年間はローン・借入の審査に通らなくなったり、クレジットカードを作れなくなったりします(いわゆるブラックリスト入り)。
しかし、自己破産が賃貸契約にも影響するかと言えば、必ずしもそうではありません。
ここでは、自己破産手続が与える賃貸への影響を解説します。
1.自己破産で賃貸を追い出されるか?
結論から言うと、借主が自己破産をしても、アパート・マンションなどの賃貸物件から出ていく必要はありませんし、更新を断られることもありません。
住宅は生活に必要な基盤であることから、家賃をきちんと払っている限り、例え自己破産をしたとしても借主が出ていく必要はないのです。
とは言え、家賃滞納は別の問題です。家賃の滞納が続くと、債務不履行により賃貸契約を解除される可能性があります。
また、家賃の支払いを延滞したまま自己破産すると、今まで支払っていなかった家賃の支払義務も免除されてしまうので、家賃を踏み倒された貸主(賃貸人・家主)は賃貸契約を解除して、賃貸住宅の明け渡しを求めてくるでしょう。
もし、今の賃貸を出て行きたくない場合は、自己破産の申立前に延滞を解消する必要があります。
しかし、この行為は偏頗弁済(へんぱべんさい)になる恐れがあります。
偏頗弁済とは、一部の債権者だけを特別扱いして借金を返してしまう事で、自己破産における免責不許可事由(借金の免除を認めないとするいくつかの事由)となります。
[参考記事]
免責不許可事由とは?該当しても裁量免責で自己破産ができる!
生活に必要な家賃の場合、少額であれば偏頗弁済をしても問題行為とされないことがほとんどですが、自己判断は危険なため一度弁護士に相談してから動く方が良いでしょう。
支払えないほど家賃を滞納してしまっている場合は、滞納分の家賃は支払わずに自己破産し、別の住宅に引っ越すこと等を考える必要もあります。
2.自己破産後の賃貸契約の審査
自己破産手続き中はもちろん、自己破産後も借りられる賃貸は多く存在します。
一方で、自己破産の事実がアパートを借りる際の審査に影響を及ぼす可能性は0ではありません。
賃貸契約の審査には以下の2つがありますので、自己破産との関係について順番に見ていきましょう。
(1) オーナー(大家)による審査
アパートを借りるには、まず、オーナー(大家)による入居審査が必要です。
オーナーによる審査では、自己破産をしているような人でも、現状一定の収入があり家賃を支払うことができそうだと判断してもらえれば、ほとんどの場合で審査に通るようです(もちろん、審査はオーナー個人の裁量なので、例外もあります)。
なお、わざわざオーナーに自己破産した事実を言う必要はないので、黙っていても大丈夫です。
(2) 賃貸保証会社による審査
最近は、保証人(連帯保証人)を必要とする物件でなく、賃貸保証会社の利用を義務づける物件が多くなっています。
そうすると、賃貸保証会社の審査も受ける必要があります。
自己破産してしまうと、この賃貸保証会社の審査が通らなくなる可能性があります。
①賃貸保証会社とは
賃貸保証会社とは、賃貸住宅の契約時に必要になる賃借人の保証人を代行してくれる会社のことです。
賃借人の委託によって、家賃支払いに関わる債務を保証することを会社の業務として行っています。利用者は、家賃保証会社に対し、保証料を支払うことで、保証サービスを受けることができます。
昔は、両親や兄弟、親戚などが保証人になることが多かったのですが、最近では家族関係が希薄になり、保証人になってくれる人を見つけることが難しく、このように代替する会社が現れるようになってきました。
実際、国土交通省の平成28年の資料によると、賃貸借契約の約97%が家賃などに対する保証をしなければならず、そのうちの約6割のケースで保証会社が利用されているという統計も出ています。
②保証会社には2種類ある
賃貸保証会社は、大きく分けると「信販系の賃貸保証会社」と「その他の民間系の保証会社」の2種類があります。
信販系の賃貸保証会社は、審査がとても厳しいと言われています。
それは、信用情報機関から情報を参照して、それを入居審査に採用しているためと言われています。
自己破産に限らず、借金問題について任意整理や個人再生などの債務整理手続きをとったり、借金の返済を長期にわたって滞納したりした場合、信用情報機関という所に個人の金融事故情報が登録されてしまいます。
いわゆる「ブラックリストに載る」のいうものです。
自己破産をするとこのブラックリストに載ってしまうので、信販系の賃貸保証会社の審査には原則として通りません。
したがって、自己破産してしまうと、オリエントコーポレーション、アプラス、ジャックスなどの信販会社が保証会社に設定されている賃貸物件を借りることは原則としてできないのです。
[参考記事]
ブラックリストとは|何年で消える?掲載のデメリットと確認方法
3.自己破産後にアパート契約を結ぶ際の注意点
では、自己破産後の賃貸契約審査で落ちないようにするためには、どのような点に注意するべきなのでしょうか。
(1) 民間系保証会社の物件を探す
上記の通り、信販系の賃貸保証会社は信用情報機関の事故情報を見て審査を通すか否かを判断します。
つまり、自己破産後、信販系の賃貸保証会社の審査にはまず通らないと考えるべきでしょう。
そこで、民間系の賃貸保証会社を選んでいる物件を狙うべきです。
民間系の保証会社は、信用情報機関に加盟していないので、あなたの自己破産情報について知る可能性は低いでしょう。
具体的には、日本セーフティー、全保連、賃貸保証サービス、アルファー、カーサ、フォーシーズ、リクルートなどがあります。
これ以外にもあるため、物件探しの際に保証会社の名前を必ず聞いて調べるようにしてください。
(2) 自己破産後5~10年待つ
「ブラックリスト」は、登録される信用情報機関にもよりますが、5~10年の間情報を保存しています。
逆に言うと、5~10年のその期間を過ぎてしまえば、自己破産した情報は消えるのです。
他に何か審査にひっかかる要因がなければ、5~10年で信販系の保証会社の審査にも通るようになる可能性があるでしょう。
そこで、自己破産後に退去を余儀なくされた場合には、ブラックリストの削除まで実家に戻るなどの対処をした後、再び賃貸アパートを探すという方法もあります。
自分の事故情報が削除されているかどうかは、信用情報の開示手続にて自分で確認することができるので、以下のページを参考に確認してみてください。
[参考記事]
信用情報の開示方法と見方
4.まとめ
このように、自己破産をした場合でも、民間系保証会社の審査なら通る可能性があります。
物件を探す際は、不動産業者に賃貸保証会社について詳しく聞くと良いでしょう。
また、物件のオーナーなどには自己破産した事実を言う必要はありませんが、不動産会社にはそれを打ち明け、相談してみるのも一つの手です。
物件にどの保証会社がついているかは、実際に物件の情報を確認してからでないと分かりません。いざ契約しようとしたら、信販系保証会社が賃貸保証会社として指定されていて審査に落ちてしまった、ということも十分ありえます。
自己破産後に部屋を借りる際は、不動産会社に賃貸保証会社について詳しく確認することが大切です。きっと、親身になって相談にのってくれるはずです。
5.自己破産の相談は弁護士へ
「自己破産したら賃貸は借りられない」など、自己破産における誤解は非常に多いです。
また、アパートに住み続けようとして自己破産の直前に滞納していた家賃を払ってしまった場合、偏頗弁済になる可能性もあります。
自己破産を滞りなく行うためには、専門的な知識が必要不可欠です。
自己破産に関する正しい知識を得るためにも、自己破産をお考えの際は、一度弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所は、自己破産をはじめとした債務整理の実績が豊富な弁護士事務所です。個々のケースに合わせて最適な借金問題解決方法をアドバイスいたしますので、どうぞ安心してご相談ください。