法人破産 [公開日]2018年1月31日[更新日]2022年2月8日

会社が倒産しそう?予兆やタイミングは事前に分かる?

東京商工リサーチによると、2021年(令和3年)の全国企業倒産件数は6,030件でした。
コロナ禍の各種支援策に支えられることで件数自体は前年を下回っていますが、日割り計算をすると一日に約21件以上の会社が倒産していることになります。

日本の就労人口のうち、実に9割近くが会社勤めですから、まさに今、自分の働いている会社が倒産するかもと不安を感じているという方も少なくないでしょう。

今回は、会社が倒産する間際によくみられる予兆やその対策について解説します。

1.会社倒産までの予兆(前兆)

会社の倒産はある日突然やってきますが、内部で働いている従業員であればその兆候が分かることもあります。

まずは、会社が倒産するまでにありがちな前兆を確認しておきましょう。

(1) 給与の遅配

倒産する直前の会社では、給与の遅配(本来の支給日より遅れて給与が支払われる)がよく起こります。

会社の資金繰りが苦しくなると、経営者は、うるさく催促されない税金などの支払いを後回しにします。
それから、取引先などや金融機関と交渉して、支払日や支払額の条件を変更してもらえるよう試行錯誤します。

しかし、従業員が辞めては元も子もないので、どんなに資金繰りが苦しくても、従業員の給与だけは約束どおり支払おうとするものです。

もし、給与の遅配がこれまでに複数回あった場合や、給与の未払いが複数月に及んでいる場合であれば、経営状態はかなり深刻と言えるでしょう。

もっとも、経営者の中には、取引先への支払や銀行への返済を優先し、「とりあえず従業員に我慢してもらおう」という人もいますので、ケースバイケースと言えます。

(2) 支払期限前の売掛金回収

支払期限というのは、裏を返せば「その期限までは支払わなくてもよい」という合意です。
取引先に前倒しで支払いをお願いすると信用不安につながるため、通常は前倒しで売掛金を回収するようなことはしません。

支払期限前に売掛金を回収しようとするなど、なりふり構わずお金を集めるのは、資金繰りに窮し、倒産が近い会社の前兆と言えます。

(3) 採算ライン割れの仕事の受注

業界によって標準的な利益率は異なりますが、どんな会社でも「このくらいの利益率は確保しておかないと事業が立ち行かない」という水準(採算ライン)があります。

しかし、資金繰りに行き詰まると、とにかく支払いに充てるお金が必要になるため、以前なら絶対に受注しなかった利益率の低い仕事や、ひどい場合には赤字になる仕事でも受注するようになります。これは会社倒産の予兆といえます。

(4) 突然の経費・維持費の節約

無駄な経費を節減すること自体は悪くありませんが、経費節減も度を超えるとかえって業務の妨げになったり、従業員の士気にも悪い影響を及ぼしたりします。

たとえば、「長距離の出張でも高速バスや在来線を使うため、時間のロスが大きい」「旧式のパソコンを使っているので、業務に時間がかかる」などが業務妨げの例と言えます。

また、「会社が急にみすぼらしい雑居ビルに移転する」などは、従業員の士気が低下する例と言えるでしょう。

目先の支出を抑えることに執着し、業務効率や従業員の士気にまで気が回らなくなるのも倒産の前兆と言えそうです。

(5) 給与制度や人事制度の頻繁な変更

経営が苦しくなると、露骨に人件費の抑制を図ろうとする経営者もいます。

たとえば、営業社員の歩合給を予告もなく引き下げたり、給与を「残業代込み」にしたり、年間の休日数を減らしたりするような場合がこれに当たります。

目先の資金繰りに追われ、経営者のコンプライアンス感覚が鈍くなるのも倒産の予兆と言えます。

(6) 経営幹部や経理部長などの辞職

有能な人材であれば、わざわざ先行きの暗い会社にしがみつく必要がありません。
経営幹部や経理部長などのように、会社の経営実態を知る従業員が退職し始めるのは、会社の経営が怪しくなったときの前兆です。

また、これらの人材がひっそりと退職し、社内にほとんど告知されない、という状況も会社倒産の予兆と言えるかもしれません。

2.自分でできる前兆の調査

先ほど挙げた6つ前兆のうち、複数に該当する場合は、会社の経営は厳しい状況にある可能性があります。

しかし、本当に会社の経営が危ないのか、一人で悶々としても仕方ないので、自力で調査する方法がないか考えてみましょう。

(1) 客観的なデータ収集

上場企業であれば、決算情報などが公表されているので、会社の財政状況はある程度把握することができます。

一方、非上場の会社や中小企業であっても、会社の経営情報を入手することは一応可能です。
たとえば、「帝国データバンク」「東京商工リサーチ」という会社名を聞いたことはないでしょうか。

これらの会社は、企業の信用情報を独自に調査し、調査報告書を有料で販売しています。
調査報告書には、企業の売上や資産などのほか、評価点も付けられているので、企業間の取引では、事前に相手の会社の調査報告書を入手してチェックするのが一般的です。

ただし、調査報告書は高額ですので、自分の勤め先の信用情報を調べるために会員登録して入手するのは現実的ではないかもしれません。

(2) 他の従業員との情報交換

一番手っ取り早くて費用がかからない方法は、社内での情報収集でしょう。

たとえば、経理部にいる従業員であれば、会社の売上げや負債など、会社の経営実態を把握しているでしょう。また、人事部なら直近の社員の退職状況(優秀な営業マンが辞めた、退職者が続出している、など)を知ることができます。

経理や人事の従業員が会社の現状をどう評価しているのか、生の声を聴いてみるのは有効です。

3.従業員が準備すべきこと

さて、自分で独自に調べた結果、「倒産の兆候が強く出始めている」と判断しても、すぐに退職届を出してしまうのは賢明ではありません。
退職にはいくつかのデメリットやリスクが伴うので、慎重に判断する必要があります。

あなたが「うちの会社は倒産するかも」と判断して退職したとしても、現実には会社が存続しているので、手続上、あなたの退職は「自己都合」となります。

自己都合による退職の場合、失業保険が給付されるのは会社都合による退職に対して退職から3ヶ月経過後となり、その間の収入が途絶してしまいます。

「早く仕事を見つけなければ」という焦りが出てくると、以前の会社とほとんど経営状況が変わらない会社や、雇用条件の悪い会社で妥協してしまう、という失敗も起こりがちです。

また、失業期間が長くなると、「どこの会社も採用しない人」というレッテルを貼られる可能性があり、ますます転職活動が不利になります。

こうしたデメリットを考えると、基本的には仕事を辞めてから転職先を探すのではなく、役員の口から倒産が告げられるまで在職しながら転職先を探す方がリスクも少ないでしょう。

会社倒産の予兆・前兆があっても、慌てずに水面下で転職の準備をすることが大切です。

4.会社が倒産しそうでも慎重に行動を

このように、会社が倒産しそうだからといって、すぐに転職しようとするのは危険です。
計画性のない退職によって収入が途切れ、かえって生活が危うくなってしまう可能性があります。

一方で、倒産まで働き続けた結果、せっかく働いたのに給料を受け取れなくなってしまうリスクもあります。
給与の遅配があるなどして借金をしていたり、退職しても職が見つからずに生活が困窮して借金をしてしまったりすることもあるため、借金問題にお困りながら早めに専門家に相談することが望ましいです。

泉総合法律事務所には、収入減少や突然の解雇、もしくは勤務先の倒産などにより借金を抱えてしまったという方からのご相談がたくさん寄せられます。
そのため、そのような借入理由による借金問題の解決実績が豊富にあります。

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