法人破産 [公開日]2018年7月3日[更新日]2021年12月20日

債権者破産申立|借金滞納で債権者側が破産を申立てる?

破産の申立ては、債務者(お金を借りている側)本人が申立てるケースがほとんどです。

しかし、破産法は「債権者からの破産申立て(債権者破産申立)」も認めています

債権者(お金を貸している側)からの破産申立てが実際に利用されることはあまりありません。
しかし、特に債務者が法人であるケースにおいて、債権者に対して不誠実な対応をした場合や、財産隠しを疑われている場合などには、債権者が破産を申立てることもあり得ます。

今回は、この「債権者破産」について解説します。

1.債権者破産とは

破産法18条は「債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる」と定めています。
これは一般に、「債権者破産」や「第三者破産」と呼ばれています。

(※債務者自身による個人の破産申立を「自己破産」と呼ぶのは、「債権者破産」との区別をするためでもあります。
つまり、債権者破産と自己破産の大きな違いは、「誰が破産の申立てをするか」です。)

債務者の借金を免除することだけが破産の目的ではありません。
破産手続きでは、会社に残った財産を債権者に公平に分配することになります。

例えば、法人の債務者に多額の融資をしている債権者が、「もはや債務者の経営が立ち直る見込みはない。このまま今の社長に放漫経営を続けさせていては、1円も回収できなくなる。早目に破産手続を行えば、多少なりとも配当を受けられる可能性がある」と考えた場合には、債権者が破産を申立て、破産手続きによって債務者の財産から配当を受けるというケースが考えられます。

ここで、債権者破産の事例を見てみましょう

【徳島市観光協会の債権者破産の事例】

①市が観光協会を債権者破産の申し立て

2018年3月に、「徳島市観光協会」を債務者とする破産が「債権者である徳島市」(=債権者)によって申立てられました。

徳島市観光協会は「阿波おどり」を運営する団体でもあり、「毎年多くの観光客を集めている阿波踊りの運営団体が多額の負債を抱えていたこと」だけでなく「今後の阿波おどりの実施への不安」などから大きな注目を集めました。

②債権者破産の背景

一連の報道などによれば、徳島市は観光協会に対し毎年補助金を支給しているほか、観光協会の負担する金融機関への借入を代位弁済する契約を結んでいたようです。

他方、徳島市観光協会は、雨天時のチケット払い戻し代の累積などが原因で4億円以上の借入金があったようです。

観光協会側は、「経営を合理化して借入金の返済をしながら阿波おどりの運営を続ける」旨の主張をしていたようですが、徳島市との話し合いがまとまらず、徳島市が金融機関から4億円弱の債権譲渡を受けて、破産申立に踏み切る決断をしたようです。

観光協会と市との交渉が決裂した背景には、市の観光協会に対する不信が払拭できなかったことが指摘されています。

このように、実際に債権者が破産を申立てるケースは存在します。
とはいえ、司法統計に基づくと、債権者破産は全体の破産事件に占める割合でいえば1%にも満たない数です。

【債権者破産申立は「絶対」ではない】
債権者申立をされた場合でも、「必ず破産しなければならない」わけではありません。破産原因がない(支払不能ではない)ことを裁判所が認めてくれれば、債権者申立は棄却されます(債権者が破産申立てをする場合は「その有する債権の存在」と「破産手続開始の原因となる事実」を、債権者側が「疎明」する必要があります。疎明とは、厳密な証明がされているわけではないが、おそらく確かだろうと思われる状態を明らかにすることです)。
また、実際に支払不能の状態にあるときでも、債権者による破産申立の後に民事再生を申立てれば、破産手続きは開始されません。

2.債権者破産の申立てをするケース

債権者破産は、「破産申立後に債権の督促・回収ができなくなる」「申立てに手間と費用がかかる」など、債権者側にもデメリットが多いです。
それにも関わらず債権者が破産申立に踏み切るのは、何かしらの理由があるからです。

では、債権者が債権者破産の申立てに踏み切るケースには、どのようなものがあるのでしょうか?

(1) 債務者に財産があり配当が期待できる

債権者にとって「満額回収できないとしても、いくらかの配当を得る」ことが、現状(延滞状況)を続けることよりも望ましいときには、債権者破産に大きな意味があります。

債権者破産は、高額の予納金を債権者が裁判所へ納めなければなりません。この予納金は、債務者の財産を換価できれば最優先で返還されます。

したがって、債務者に予納金を超える額の財産があれば、債権者の予納金負担はなくなります。予納金を回収した上で、いくらかの配当金を得られるケースは決して少なくありません。

また、債権者が強制執行(財産の差し押さえなど)を申立てるには、訴訟や支払督促などの方法によって債務名義を取得しなければなりません。
しかも、債権者が強制執行の対象となる財産を特定しなければなりませんから、時間も手間もかなりかかります。

これに対し、破産手続きでは、債務者の財産を「包括的に差押える」ことが可能なので、個別の権利行使よりも債権者の負担の少ないことも珍しくないのです。

このように、延滞を続けられたり、強制執行を申立てたりするよりも、債権者破産の方が債権者の利益になることが少なからずある場合は、債権者破産申立てをすることが考えられます。

【債権を損金にすることもできる】
「債権」は、回収ができなくても売上に計上する必要があるため、法人税の対象となります。すなわち、未回収の債権をそのままにしておくと、債権者側の企業の税負担が増えてしまうのです。
債務者に破産してもらえば未回収の債権は損金に算入できるため、自社の税負担を減らすことができます。これを目的の一つとするケースもあるでしょう。

(2) 見せしめとして債権者破産申立に踏み切る

債権者と債務者との間の信頼関係が完全に失われたときには、「採算度外視」で債権者申立をしてくる可能性も否定できません。

先にご紹介した徳島市観光協会のケースも、観光協会の負債処理よりも「阿波おどりの運営を観光協会にこのままでは任せられない」という不信が払拭できなかったことの方が大きな要因ではないかと指摘されています。

また、金融機関は「悪しき前例」を作ることをとても嫌がります。今では、ネットでさまざまな情報が簡単に拡散するので、特に中小の消費者金融にとっては「この債権者は甘い」という評判が流れることは死活問題にもなりかねません。

したがって、個人の債務者の場合であっても、「借入時の経緯」や「延滞の状況」に大きな問題があるときには、見せしめとして債権者申立に踏み切られてもおかしくはないといえます。

(3) 債務者側の対応にしびれを切らせた

任意整理の交渉中や個人再生を申立てる準備の間に、債権者側が破産申立をするケースもあります。

たとえば、債務者に多額の税金の滞納があるケースでは、受任通知送付後から個人再生申立まで半年~1年ほどかかることもあり、債権者が「待ちきれない」と破産を申立てることもあるようです。

3.債務者にとっての債権者破産のデメリット

債権者破産は、仮に債務者も破産の申立てを検討していたタイミングならば、「債務者が予納金となる費用を納めずに済む」というメリットがあります。
しかし、債務者にとって、債権者破産のデメリットはメリットより大きいというのが現実です。

(1)破産手続き終結まで時間がかかる

債権者破産のときには、代理人弁護士による債権調査・資産調査が行われませんので、自己破産の場合よりも破産手続きに時間がかかることが一般的です。

それだけ借金問題の解決が遠のくだけでなく、一部の資格・職業の制限、通信・転居の制限期間も長くなってしまいます。

(2) デメリット回避措置を講じることができない

債務者の予期しないタイミングで債権者申立がなされたときには、口座凍結や携帯解約を回避するための措置(預金の引き出しや滞納している携帯・スマホ利用料の支払い)を講じることもできません。

破産申立を知ってからこれらの措置を講じれば、破産管財人による否認権行使の対象となってしまうからです。

4.借金問題でお困りならば早めに弁護士へ相談を

債権者からの破産申立てはごく僅かな数に過ぎません。
しかし、債権者に破産を申立てられれば、債務整理の時期や方法を自分で選択することができない他に、自己破産なら回避できた筈のデメリットも回避でき無くなります。

借金問題は、早期に対応することが何よりも大切です。問題解決を先送りして「自転車操業」を繰り返すことになれば、債権者側から破産を申立てられるリスクもそれだけ高くなります。

借金の返済に苦しいと感じたときには、1日も早く弁護士に相談することをお勧めします。

泉総合法律事務所では、借金に関する相談は何度でも無料で承っております。
借金でお困りの際には、お気軽に泉総合法律事務所までお問い合わせください。実績豊富な弁護士が、親身に対応させていただきます。

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