取締役が逃げた!音信不通!法人破産における準自己破産とは?

法人破産

取締役が逃げた!音信不通!法人破産における準自己破産とは?

株式会社などの法人が多額の負債を負って支払い不能状態になってしまったら、破産手続によって会社を清算する必要があります。

会社が自己破産するときには、基本的には会社の取締役会による決議が必要ですが、さまざまな理由でそのようなことができないケースもあります。その場合、会社の理事や取締役個人などによる「準自己破産」という手続が認められています。

準自己破産は、通常の自己破産とどのような違いがあるのか、また、どのようなケースで準自己破産をすることになるのでしょうか?
今回は、法人や会社が破産を申立てるときの「準自己破産」の手続について、弁護士が解説します。

1.準自己破産

(1) 準自己破産とは

準自己破産とは、会社や法人の理事、取締役などが申立人となって、会社の破産を申立てることです。

  • 一般社団法人または一般財団法人の場合には理事
  • 株式会社または相互会社の場合には、取締役
  • 合名会社、合資会社または合同会社の場合には、業務を執行する社員

が、準自己破産の申立権者となります。

(2) 自己破産と債権者破産

破産をするときには「誰が申立をするのか」が問題となります。
破産法においては、基本的に「自己破産」と「債権者破産」の方法が認められています。

「自己破産」は、破産者本人が自ら申立てる破産の方法です。
これに対し「債権者破産」は、債権者が申立てる破産の方法です。

会社側が破産をしたいときには、自己破産する必要があります。

(3) 会社が破産するために

①基本的には取締役会決議が必要

会社が破産するためには、「取締役会決議」によって議決する必要があります。

自己破産するかどうかは、会社にとって重要な事項であり、取締役会の決議事項だからです。取締役会がない会社の場合には、過半数の取締役による同意が必要です。

会社が自己破産をするときには、原則として、代表取締役の名前で申立を行い、自己破産を可決した「取締役会議事録」や、過半数の取締役による「同意書」を添付しなければなりません。

②準自己破産なら取締役1人で申立可能

ところが、実際には取締役会を開催すること自体が難しいケースが少なくありません。取締役が逃げてしまっていることもありますし、決議を開いても、反対する者が多く、可決できないこともあります。

このような場合、他の取締役を探したり説得したりしなければ自己破産できない、というのは不合理です。
そのためそういった事態に備えて、破産法では「準自己破産」という制度を認めています。

準自己破産では、取締役が単独でも会社の破産を申立てることができます。代表取締役が逃げているケースや他の取締役が反対しているケースにおいても、会社の破産を申立てることが可能です。

(4) 準債務者とは

準債務者というのは、準自己破産を申立てる人のことです。
つまり、一般社団法人などの場合には法人の理事、株式会社などの場合には取締役が準債務者となります。

債務者は、破産する本人ですが、準債務者は、債務者に準ずるものとして、本人の破産を申立てるので、準債務者と呼ばれます。

ただ、準債務者は、あくまで「会社」についての破産を申立てるだけの立場ですから、自分が破産するわけではありません。
取締役個人が会社の準自己破産を申立てたとしても、その取締役自身の借金や財産が清算されるわけではありません。

(5) 準自己破産が認められた背景

破産法に準自己破産の手続が認められているのは、過去の商法(現在の会社法)の規定に関係があります。
今は、取締役が1名でも会社を設立できますが、昔は取締役が3人以上いないと、会社を設立できなかったのです。そこで、人数集めのために、関係の薄い人を取締役にすることがよくありました。

ところが、そのような人は、それまで全く経営にノータッチですから、会社経営が立ちゆかなくなったときに、連絡を取ろうとしても取れないことが多く発生しました。その状態では取締役会を開催することができず、いつまで経っても会社が自己破産することができません。

そこで、会社に残った取締役が単独でも会社の破産を申立てることができるように、準自己破産の手続が認められたのです。

2.準自己破産する場合はどんな時か

(1) 準自己破産をおすすめするケースの例

準自己破産をすべきケースは、以下のような場合です。

・代表取締役が逃げてしまった
・他の取締役と連絡が取れない
・他の取締役に同意書の作成を求めたが、断られた
・他の取締役が、破産申立に反対している
・代表取締役が死亡してしまった
・債権者からの取り立てが来て困っているのに、会社の意思決定を待っているといつまでも手続ができない

上記のようなケースでは、取締役一人であっても、弁護士に依頼することによって会社の破産手続を進めていくことができます。

(2) 準自己破産をするときの注意点

準自己破産を申立てる際、1点注意しておきたいことがあります。
それは、通常の自己破産をすることが可能な場合、できるだけ通常の自己破産をした方がよい、ということです。

確かに、他の取締役らと連絡が取れない場合や行方不明の場合などには、1人の取締役が準自己破産申立をせざるを得ません。
ただ、先走って準自己破産申立をしてしまうと、あとでそのことを知った他の取締役との間でトラブルになってしまうことがあります。

そのため、多少の努力をすれば同意書を集めることが可能である場合には、できるだけ頑張って同意書を集めて通常の方法で破産をする方がよいと言えます。

また、他の取締役に連絡をする手段があるのであれば、相手が応答をしないとしても、準自己破産を申立てる前に、「破産申立を行う」という一報を入れておく方がよいでしょう。

3.準自己破産と通常の破産手続との違い

会社の準自己破産と自己破産には、何か違いがあるのでしょうか?
まず、大まかな手続の流れや、自己破産による効果については、特段の違いはないと考えてよいです。準自己破産の場合にも、破産手続が終了したら会社は清算されて消滅します。

(1) 準自己破産と通常の破産の違い

申立時において、①誰の署名押印が必要か、②裁判所や管財人による聞き取り調査の対象が誰になるか、という2点が異なります。

通常の自己破産の場合には、会社の代表取締役の印鑑が必要であり、過半数の取締役による同意書か、取締役会議事録の添付が必要とされます。

これに対し、準自己破産の場合には、申立てる取締役1名による署名押印で足りますし、添付資料は、取締役であることの証明書のみとなります(法人の商業登記簿謄本など)。

(2) 裁判所や管財人に関する違い

また、会社が破産する場合、裁判所や管財人は、代表取締役から事情聴取をしますが、準自己破産の場合には、申立てた取締役個人から、必要な事情を聴取することになります。

さらに、裁判所の運用方法にもよりますが、準自己破産申立をする場合、管財予納金が通常の自己破産のケースよりも高額になることがあります。

準自己破産の場合、通常の会社の意思決定ができないということなので、何らかの複雑な事情があることが推測され、管財業務がスムーズに進みにくい可能性があるからです。

ただ、準自己破産にしても通常の破産にしても、破産の費用については、会社の財産から支出することが認められています。準自己破産だからといって、申立てる取締役個人が、会社の破産費用を捻出する必要はありません。

4.準自己破産手続の流れ

準自己破産手続の流れ

準自己破産を進める際には、以下のような手続の流れとなります。

(1) 弁護士に依頼する

会社の破産は、個人のケース以上に複雑ですし、検討しなければならないことも多いです。

資料が多いだけではなく、債権者や従業員との関係を調整する必要などもありますし、資産調査もしなければなりません。まして、準自己破産の場合、申立人は取締役の1人に過ぎないわけですから、自分で進めようと思っても、困難を極めるでしょう。そこで、弁護士によるサポートが必須となります。

まずは、法人の債務整理に力を入れている弁護士に相談をしましょう。

(2) 資料を集める、各種の調査、準備をする

弁護士に相談をして、準自己破産の手続を利用することが決まり、手続を委任すると、弁護士は債権者らに対し、受任通知を発送します。
そして、その後は弁護士が債権者らとやり取りをすることになります。

ただ、会社破産の場合、個人とは異なり、弁護士が受任通知を送っても、完全に債権者からの督促や取り立てが止まるとはかぎりません。

また、場合によっては、債権者に対する受任通知を発送しないケースもあります。会社破産の場合、秘密で手続をすすめるべきケースがあるからです。

さらに、破産を申立てるためには、さまざまな準備が必要です。経理の状態の確認、資料の整理、収集、従業員の解雇や退職の処理、事務所の物件の明け渡しなどをしなければなりませんし、売掛金も、できるだけ回収しておくべきです。

(3) 破産申立と破産審尋

必要な準備を整えたら、破産申立書を作成して資料を揃えて裁判所に破産申立を行います。
すると、裁判所において「破産審尋」が行われます。

破産審尋とは、裁判官が債務者や準債務者に対して質問を行い、破産手続を開始すべきかどうかを決定するための手続です。
裁判所の運用方法によっては、裁判官と債務者だけではなく、破産管財人候補を交えて三者で面談をすることもあります。

また、東京地方裁判所では、即日面接といって、弁護士が申立日に裁判官と面談を行うことにより、裁判官が破産手続開始決定の是非を決めるので、破産審尋が行われることは少ないです。

(4) 破産手続開始決定が下りる

破産申立をして破産審尋を終えると、裁判所が「破産手続開始決定」を下します。これにより正式に、破産の手続が開始されます。
また、破産手続開始決定と同時に、破産管財人が選任されます。

破産管財人とは、破産者の財産を換価して債権者に配当を行う人です。通常は、裁判所管内の弁護士の中から選ばれます。

(5) 管財人と面談する

破産手続開始決定が下りて、破産管財人が選任されたら、速やかに破産管財人と面談を行います。

準自己破産の場合には、申立をした準債務者(取締役など)が、管財人の事務所に行って面談をすることになります。

破産管財人との面談時には、自己破産を担当した申立人弁護士も出席するので、準債務者、申立弁護士、破産管財人の3者で話をすることになります。

このとき、破産管財人からは、事前に渡しておいた資料にもとづいて、気になる点や不明な点などを中心に質問されることになります。分かる範囲で、正確に答えていきましょう。

(6) 管財人による換価が進められる

破産管財人との面談が終了したら、管財人によって、会社財産の調査や財産の保全手続が行われます。

そして、明け渡し未了の賃貸借物件の明け渡しや、雇用関係が継続している従業員の解雇、未回収の売掛金回収などの諸手続や、その他の資産の換価を進めます。

(7) 債権者集会、財産状況報告集会が開かれる

破産手続開始決定後2~3ヶ月くらいが経過した頃、第1回目の債権者集会、財産状況報告集会が開かれます。

このときには、裁判官、破産管財人、債務者(準債務者)、申立代理人、債権者が出席して、破産管財人により、財産の換価状況の説明などが行われます。

債権者の出席は必須ではないので、実際には来ないことも多いです。ただ、個人の債権者などがいる場合には、債権者が出席して騒動になることも、ときにはあります。

1回目の債権者集会までに換価と配当が済んでいないときには、2回目以降に集会期日が続行されます。その後は、だいたい月1回程度、債権者集会と財産状況報告集会が開かれます。

その間も、破産管財人は換価業務を進めていきます。

(8) 管財業務が終了する

破産管財人による換価業務がすべて終了したら、管財人は裁判所に報告をして、配当を実施します。
換価した財産が配当に足りない場合には、破産手続は異時廃止によって終了します。

配当をするときには、別途配当期日が指定されますが、配当期日は形式的なもので、実際には期日前に配当をしてしまいますし、管財人も裁判官も出席しません。したがって、(準)債務者も出席する必要はありません。

(9) 手続が廃止、終了する

以上のように、配当が行われない場合には、そのまま異時廃止となりますし、配当が行われる場合には、配当が終了したのち、破産手続が終了します。

すると、裁判所の書記官が、破産した法人について、「破産手続終結」の登記をします。この登記をもって、会社は消滅することになります。

会社の破産の場合、個人破産のような「免責」はありません。免責とは、「負債の免除」のことですから、免責を受けるということは、存続していくことが前提になるからです。会社破産では会社は消滅するので、免責を認める必要がありません。

5.まとめ

今回は、法人や会社が破産するときの「準自己破産」について、説明をしました。

会社自身が動くためには取締役会における意思決定が必要ですが、「いよいよ会社が破産しよう」というときには、会社の意思決定機関が機能していないことが非常に多いです。
そのようなとき、準自己破産をする必要がありますが、取締役一人で手続を進めるのは困難を極めます。

泉総合法律事務所では、会社の倒産案件についても非常に力を入れており、多くの解決実績があります。それゆえ、それぞれの会社の現状に沿った最適な解決方法をアドバイスすることができますので、会社の破産についてお悩みの方は、まずは当事務所にご相談いただければと思います。

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