法人破産 [公開日] [更新日]

取引に大打撃!会社法人の銀行口座が凍結された場合の解除方法は?

取引に大打撃!会社法人の銀行口座が凍結された場合の解除方法は?

【この記事を読んでわかる事】

  • 会社の銀行口座も凍結されてしまうことがある
  • 法人口座が凍結されると、あらゆる取引ができなくなり経営破綻というケースもあり得る
  • 凍結解除方法には様々なものがあるが、弁護士に相談することが得策

 

個人名義の銀行口座は、名義人が死亡すると凍結されることはご存じの方も多いと思います。

会社の銀行口座も凍結されてしまうことがあります。

口座の凍結は、場合によっては、会社自体に存続危機を招くことも少なくありません。口座が凍結されないように注意をするべきですが、もし凍結されたときには、速やかに、正しく対処する必要があります。

この記事では、法人の銀行口座が凍結される原因とその際の対処法について説明します。

1.法人口座が凍結される場合

銀行口座凍結の典型例は、「個人の銀行口座について名義人が死亡した場合」です。これは、一般的には、相続の発生による相続財産の保全などの理由があります。

なお、法人の場合には、代表者が死亡したとしても、法人がなくなるわけではないので、口座は凍結されません。

法人の銀行口座が凍結されるのは、次のような場合です。

  • 債務整理の開始
  • 公租公課(税金や社会保険料など)の滞納による差押えがあったとき
  • 二度目の手形不渡りによって銀行取引停止処分となった場合
  • 犯罪に関与したことが「疑われる」場合

(1) 債務整理の開始

弁護士に債務整理を依頼すると、債務整理の対象となる債権者に「受任通知」を送付します(手続の内容によっては全債権者に送付します。)。受任通知を送付することで、弁護士が「債務についてのすべての窓口」となります。

債権者に銀行や信用金庫などの金融機関があった場合、債権者は、受任通知を受け取った時点で、該当の法人名義の口座を凍結します。そして、口座に残っている預金残高を債権(法人債務)の一部に充当(相殺)します。

口座が凍結されれば、売上金の受領も資金の引出もできず、経費やその他の支払もできなくなってしまうので業務に大きな影響がでます。

もっとも、債務整理の中でも、廃業前提の破産の場合は、資産の保全に関与してくるので凍結に対する対応も事前に準備しておく必要があります。

法人の債務整理では、個人の債務整理以上に、営業を継続する場合も、廃業する場合も、受任通知の送付時期の見極めが重要です。

また、法人の債務整理では、弁護士の費用や裁判所の手続費用の捻出に苦慮することも少なくありません。

口座が凍結されれば、口座に入ってくる売掛金の引出もできないので、手続費用を工面することも難しくなります。

債務整理を検討している場合には、口座凍結に備えてさまざまな対応措置を事前に講じておく必要があります。

そのための期間を確保するためにも、できるだけ早めに専門家へ相談されるとよいでしょう。

(2) 公租公課の滞納処分

経営が苦しい法人には、社会保険料や税金の未納があることがあります。

公租公課の未納が原因で口座が差し押さえられると、銀行などが債権回収のために口座を凍結することがあります。役所関係は、未納が長期におよぶと比較的早い段階で差押えをしてくるので注意が必要です。

ところで、中小企業では法人の債務を経営者もしくは他の取締役や家族が連帯保証している場合が少なくありません。

たとえば、経営者個人に公租公課の未納があり、経営者個人名義の口座が公租公課の未納のために差し押さえられた場合にも、「銀行の判断」で法人口座が凍結される可能性があります。

一般的な融資契約では、「経営者や保証人の口座が差し押さえられたような場合には、法人融資の一括返済を求める」契約となっていることが多いためです。

金策に翻弄したために、社会保険料や税金の未納について、役所などに相談することを失念していたというケースは少なくありませんので注意が必要です。

(3) 銀行取引停止処分

1度目の手形不渡りから半年以内に2度目の不渡りを出してしまうと、いわゆる「銀行取引停止処分」となります。

この場合には、当座取引と新規融資が2年間停止となります。さらに、当座口座を開設している銀行から融資を受けている場合には、銀行は債権回収のために、「銀行の判断」として普通預金口座も凍結することがあります。

なお、1度目の手形不渡りは、たとえば同日決済の手形が2通あって、両方とも決済ができなかったとしても、2回になるのではなく、不渡りとしては1回と数えられます。

(4) 犯罪利用が疑われた場合

以上で説明したような法人の信用状態が原因で口座凍結となる場合に加えて、口座が「犯罪に利用されたことが疑われる場合」には、警察などからの通報に基づいて凍結される場合があります。

この場合の口座凍結は、犯罪被害拡大の防止と、被害者救済を目的としています。

なお、全国銀行協会の資料によれば、犯罪利用が疑われたことによる口座凍結が行われるのは、次の場合です。

  1. 捜査機関、弁護士会、金融庁および消費生活センターなど公的機関ならびに弁護士、認定司法書士から通報があった場合
  2. 被害者から被害の申し出があり、振込が行われたことが確認でき、他の取引の状況や口座名義人との連絡状況から、直ちに口座凍結を行う必要がある場合
  3. 口座が振り込め詐欺などの犯罪に利用されているとの疑いがある、または口座が振り込め詐欺などの犯罪に利用される可能性があるとの情報提供があり、以下のいずれかに該当するとき
    ①名義人に電話で連絡し、名義人本人から口座を貸与・売却した、紛失した、口座開設の覚えがないとの連絡が取れた場合
    ②複数回・異なる時間帯に名義人に電話で連絡したが、連絡が取れなかった場合
    ③一定期間内に通常の生活口座取引と異なる入出金、または過去の履歴と比較すると異常な入出金が発生している場合
  4. 本人確認書類の偽造・変造が発覚した場合

<出展>振り込め詐欺救済法における口座凍結の手続について

犯罪利用による口座凍結の典型例は、いわゆる「オレオレ詐欺」、「振り込め詐欺」の振込先として口座が用いられた場合です。

個人名義の口座凍結のケースでは、法人にも当てはまる場合もありますが、以上に加えて、ヤミ金への代物弁済として銀行口座を提供することなどがあり、それがヤミ金の返済口座として利用されたり、闇市場で売買され犯罪利用されたりすることがあります。

法人口座では、マネーロンダリング(不正収益の移転)に巻き込まれる場合があります。

経営が傾き出すと、「おいしい話」だからと話を持ち掛けられ、お金を受け取って他の口座に送金してもらうだけとか、相手方も不確かな者との取引をしてしまうこともありますので、注意が必要です。

2.口座凍結されるとどうなるか

口座が凍結されると、その口座を介したあらゆる取引ができなくなります。

つまり、預金の引き出しはもちろん、給与の振り込み、公共料金や公租公課の引き落としの一切ができなくなります。

そのため、口座凍結がきっかけで経営破綻というケースもあり得ます。

(1) 対象の金融機関の口座はすべて凍結される

たとえば、三井住友銀行本店に開設している銀行口座が凍結されたとします。

この場合、三井住友銀行で開設している同じ名義人の他店口座は、すべて名寄せされて凍結されます。

法人にとっては、メインバンクの銀行口座が凍結されるのは、とても大きな打撃となります。

(2) 犯罪関与が疑われると問題はさらに深刻に

下で説明するように、犯罪に利用されたことが疑われた銀行口座は凍結されることがあります。犯罪関与による凍結では、預金を失う可能性もあります。

また、犯罪利用のケースでは、他銀行の口座もすべて凍結される可能性があります。銀行口座の犯罪利用に関する情報が、すべての銀行で共有される仕組みになっているからです。

つまり、上の例で言えば、三井住友銀行だけでなく、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行で開設している口座まで凍結される可能性があるということです。

さらに、今後一切の口座開設ができない可能性もあります。法人によって口座の犯罪利用を疑われることは、企業生命に直結する可能性のある問題です。

3.口座凍結された場合の対処法

口座凍結の場合には、次に説明するような対処法があります。

法人の口座凍結は、経営破綻に直結しかねない大きな問題です。「口座凍結」に不安を感じた段階で、できるだけ早く弁護士にご相談されることをおすすめします。

(1) 債務整理の場合

債務整理(信用悪化)を原因とする口座凍結の場合には、保証会社による代位弁済によって凍結が解除される場合があります。

この場合、債権者が銀行から保証会社に変わりますので、銀行自体が債権を保全するために口座を担保にとっておく必要がなくなるのです。もっとも、保証会社から代位弁済を受けても、その他に銀行に債務が残っている場合は、凍結が継続されます。

なお、保証会社が代位弁済したからといって、返済義務がなくなるわけではなく、返済先が銀行から保証会社に変わるだけです。

上記の例として、信用保証協会の部分保証方式を利用した融資を利用していた場合には、全額が代位弁済されないので、銀行に債務が残り、凍結が解除されない場合があります。

(2) 犯罪関与が疑われた場合

犯罪利用が疑われた口座の凍結は、より慎重な対応が必要となります。解除が難しいだけでなく、預金を失う(失権)可能性があるからです。

失権を回避するためには、口座凍結後に行われる預金保険機構による「権利消滅の公告」から60日以内に、「権利行使の届出」をしなければなりません。

しかし、届出をしたことでただちに凍結が解除されるとはかぎりません。実際には、警察や銀行との協議によって解除が判断されるからです。

(3) 凍結解除が難航した場合には民事訴訟を起こすことも

銀行との協議が難航・長期化した場合には、民事訴訟を提起して、預金の返還請求を行うこともあります。

特に、犯罪利用が疑われたときには、銀行との協議がまとまらず、司法手続で犯罪に関与していないことを認めてもらうことが必要なケースもあり得ます。

4.まとめ

法人口座の凍結は、法人の存続問題に発展することが少なくありません。

まだ建て直す余力があったにも関わらず、口座凍結によって破綻を余儀なくされるケースも少なくありません。

信用悪化・犯罪利用の疑いなど、いずれのケースであっても、「もしかしたら口座が凍結されるかもしれない」と不安を感じたときには、速やかに弁護士にご相談ください。

万が一、口座凍結となった場合にも、弁護士が交渉することで、凍結が解除される可能性もあります。

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