法人破産(会社破産)できない場合がある?破産手続開始の要件

法人破産

【この記事を読んでわかる事】

  • ただ赤字が続いているというだけでは法人破産は認められないのか?
  • 法人破産が認められるための条件にはどんなものがあるのか?
  • 法人破産には「準自己破産」があると聞いたが、どのような手続なのか?

 

会社の営業には、従業員や取引先など、多くの人々や会社が関わっています。

もし会社が破産すると、これらの関係者に大きな影響を及ぼすため、破産法には、破産の条件が詳細に定められています。

そこで、会社の破産が認められるための条件を解説します。

尚、会社とは、株式会社などの「法人」を指しますが、平易な表現とするため、ここでは「会社」と表記します。

1.破産手続きの開始原因があること

会社の破産は、数か月(長い場合には1年以上)にわたって手続きが続きます。
会社が破産を申し立てると、裁判所はまず、手続きを「開始」するだけの「原因」があるか否かを審査します。
破産法には、破産手続きの開始原因として「支払不能または債務超過」という条件を挙げています。
それでは、「支払不能」と「債務超過」を順に解説しましょう。

(1) 支払不能

支払不能とは、「債務者が支払能力を欠くために、弁済期にある債務を一般的、継続的に弁済することができない状態」と定義されています。

ごく簡単に説明するならば、「約束の支払い日に支払いができないし、おそらくその先も支払いができない」という状態です。

たとえば、「現時点で現預金が足りないため、今月末の支払い日には支払いができないが、来月初めに納品予定があり、その代金が入金されれば支払いができる」という場合には、支払不能とはいえません。

一時的に資金繰りが厳しいだけでは、「一般的、継続的に弁済することができない状態」とまではいえないからです。

もちろん、約定の返済が滞ると、事実上、会社の信用に影響は生じるでしょうが、それだけで直ちに「支払不能」とはならないのです。

一方で、「この商品は近い将来、爆発的にヒットするので、多額の売り上げが見込める。」と確信していたとしても、現実的に売り上げがなく、支払いもままならない状態であれば、その会社は「支払不能」といえるでしょう。

また、「今は支払えないが、営業を継続して、いずれは支払う」という心意気があったとしても、会社が支払を停止したといえる状況にあれば、「支払不能」だと推定されます。

たとえば、巨額の手形不渡りを出した場合などは、よほど確実な返済のあてがない限り、常識的に考えて「支払不能」と推定されても仕方ないでしょう。

このほかにも、弁護士に依頼して債権者に支払停止を通知した場合、営業していた店舗をすべて閉鎖した場合などが考えられます。

このような場合、会社は支払を停止したと考えられるので、「支払不能」の状態にあると推定されます。

(2) 債務超過

債務超過とは、「会社の財産をもってしても債務を完済できない状態」をいいます。

(貸借対照表が真正に作成されている前提で)会社の貸借対照表が債務超過であれば、破産法上も債務超過ということになります。

債務超過については、客観的な数字で判断できるので、分かりやすいでしょう。

なお、債務超とは、「会社の財産で債務を支払えるかどうか」が問題なので、仮に代表者の財産を投入すれば債務を支払えるとしても、会社の財産で支払えなければ債務超過です。

2.破産障害事由がないこと

破産手続きの開始原因(支払不能または債務超過)があったとしても、次のような破産障害事由がある場合には、破産は認められません。

(1) 破産手続の費用の予納がない

弁護士に依頼して裁判所に破産を申し立てる場合には、当然、弁護士費用がかかりますが、破産にかかる費用は弁護士費用だけではありません。

これとは別に、裁判所に「予納金」を納めなければなりません。

裁判所に破産を申し立てても、予納金が納められなければ、破産手続き開始決定は出ません。
たとえば、東京地裁に破産を申し立てる場合、会社の負債が1億円~だと「200万円以上」、会社の負債が5億円~だと「300万円以上」の予納金が必要になります。

ただし、予納金の額は、債権者数や事案の内容によって裁判所が裁量で決定するため、上記の金額は参考程度に考えた方がよいでしょう。

(2) 不当・不誠実な目的による破産申立ての場合

誠実に努力した結果、会社の経営が立ち行かなくなり、破産を申し立てるのは仕方がないことです。

その代わり、破産手続きを通じて、会社に残った財産があれば、債権者に公平に分配することになります。

しかし、初めから会社を倒産させるつもりで、どんぶり勘定で放漫経営をして破産を申し立てるのは、不当・不誠実な破産といえるでしょう。

不当・不誠実な目的で破産を申し立てても、破産は認められません。

もっとも、「会社の経営が苦しくなり、起死回生を狙って、新規事業を始めたり、追加融資を受けたりしたが、結果的に破産を申し立てるしかなくなった」というのが実際でしょう。

このような場合に、債権者や取引先に迷惑をかけたからといって、直ちに不当・不誠実と評価されるわけではありません。

3.手続き上の要件

破産手続き開始のためには、手続き上の要件も満たさなければなりません。

手続き上の要件はいくつかありますが、「申立ての権利者」について確認しておきましょう。

会社の場合、「誰に破産を申し立てる権利があるのか」という問題は、意外と奥が深く難しいのです。

(1) 債権者破産

実は、債権者にも破産を申し立てる権利があります。

「債権者が破産を申し立てて何の得があるのか」と不思議に思うかもしれませんが、会社を畳むことだけが破産の目的ではありません。

破産の本来の目的は、会社に残った財産を債権者に公平に分配することです。

事例をもとに債権者破産の意義を解説しましょう。

A社では、運転資金が底をついたので、唯一の財産である「不動産」を売却して、運転資金をねん出しようと計画しています。

(抵当権などが設定されていなければ)不動産を売却することも、売却代金を運転資金に使うことも、原則としてA社の自由です。

しかし、A社に多額の融資をしている債権者(B銀行)から見るとどうでしょうか。

B銀行としては、「もはやA社の経営が立ち直る見込みはない。不動産まで売り払った挙句にA社に倒産されたら、1円も回収できなくなる。」と考えることもあり得るでしょう。

このような場合に、B銀行がA社の破産を申し立て、破産手続きによって、A社の財産(不動産の売却代金)から配当を受けるのです。

実際に、銀行などの金融機関が債権者破産を申し立てるケースも少なくありません。

(2) 自己破産と準自己破産

債権者破産に対し、会社が自身の判断で破産申し立てする場合を「自己破産」といいます。

会社の経営が立ち行かなくなり、社長が苦渋の決断で破産を申し立てる、というのが典型的なイメージかもしれませんが、そう単純ではありません。

なぜなら、会社の経営者は社長1人だけとは限らないからです。

10年以上前までは、株式会社を設立する場合には3人以上の取締役が必要だったため、今でもその名残で3人以上の取締役がいる会社が多く存在します。

そこで、3人の取締役がいる会社が破産を申し立てようとしているケースを例に考えてみましょう。

破産を申し立てるには、通常は、取締役会の決議が必要になります。

会社が破産を申し立てるときは、破産申立書に「破産申立てすることを決定した」という内容の取締役会議事録を添付します。

取締役会で3人の取締役全員が破産申立てに賛成すれば、満場一致ですから何ら問題はありません。もし、3人のうち1人が破産申立てに反対しても、過半数の賛成があるので、破産申立てが可能です。

しかし、3人の取締役のうち2人が反対し、議案が否決された場合はどうでしょうか。

「これ以上営業を続けると、かえって取引先に迷惑をかけるので破産する方がよい。」という場面もあるはずです。

そのような場合には、取締役1人だけでも破産を申し立てることができます。

これを「準自己破産」といいます。

親戚や友人に頼んで就任してもらった名目取締役(会社設立時に名前を借りただけの取締役)に連絡がつかず、やむなく準自己破産を申し立てる、というケースの方が実態に近いかもしれません。

4.まとめ

会社が破産すると、取引先や従業員に大きな影響を与えるため、会社の経営が悪化した時点で、できるだけ早く対応を考えることが肝心です。

早期のご相談であれば、破産ではなく会社再建の方法もあるかもしれません。もし、迷っているのであれば、早期に一度ご相談ください。

債務整理コラム一覧に戻る